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1章辺鄙な領にて
10話街
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「やるじゃねぇか。赤ん坊の癖に」
「あの、魔術発動方法のこと教えてくれてありがとう」
「ふんっ、珍しいもんだな、人間がオレ達に礼を言うなんてな……アセドラ以来か……」
アセドラ?
俺の祖父?
「お前、自分の爺さん名も知らねのかー」
城から東(現在地)は連なる、なだらかな丘が続き、それは向こうの絶壁の山まで広がっている。開かれた距離ごとに牛舎、馬舎が点在し、そのヤギラギやミルクフォードが草を食べに走っている。
西側は、東側からのネギルギル畑やジャガジャガが広がり、更にもっと行き丘を降りると、広大な森林が広がる。どこかに森神が奉られている社があるとは言われる。 また、その先に、隣接国に繋がる橋や崖がある。
南は一般領民が暮らす都市ウゼルゲート。趣き深い中世の街並みが一望できる。
城の北の方角には、家から近い方から広大なネギルギル畑やジャガジャガ畑が広がる。
もう少し下ると、黄金のトウモロコシ畑と小麦粉畑が二つに分かれて、向こうの丘まで広がる。その頂上には枯れた立木の群が並び、不気味だ。更に高低差のある丘が乱高下し、その先に広大な樹海のダンジョンが広がる。その奥には巨大樹(アルト)が悠然と雲を浮かばせながら、立っている。このダンジョンをアルトダンジョンと呼ばれている。
「20年前にオレはそのアルトダンジョンで冒険者に捕獲され、この牧場に売られ、飼われるようになったのさ。まあ、飼われるといっても、ほとんど放飼だがな」
「そうか」
「まあ、お前には知らなくていいことだろうがな。それより、大変なことになってるぞ」
「大変なことになってる?」
そして、ヤギラギの後をついていく。ベビーカーで丘を下り、上りを繰り返し、到着したのは鶏舎だった。灰色の石造りの鶏舎と外の檻がセットになったL字形の鶏舎。
外の網状の檻は鶏が走り回れるスペースがあり、真ん中に切れた太い幹が3本建っている。鶏舎側の壁には横幅の長く、縦に低い、長方形の小さな箱がある。各々鶏が入れるサイズの穴が開いており、藁が敷き詰められている。
だが、それぞれそこには鶏は一匹もいない。
よく見ると、本体の鶏舎の入り口から黒煙が上がり、時折、赤い火の粉が舞い散っている。
「火事だ」
「あぁ‥‥大火事になってないが、中にはまだ、コッコケトスがいるのか? 火に弱いコッコケトスこれじゃ全員……」
「コッコケトスが? 早く助けないと駄目だ!」
「‥‥馬鹿か、中は危険だ、たかが、家畜のコッコケトスだ」
「コッコケトスは今も苦しんでるかもしれない。だったら、助けられる俺達が助けないと」
「コッコケトスは三歩歩けば、苦なんてすぐ忘れる奴らだ、命を賭けて助ける必要なんてない」
「可哀想じゃないかそんなの」
急いでベビーカーを急発進させ、手元にあった水鉄砲を持って乗り込む。
「馬鹿野郎! 火事を起こしたであろう、危険なファイアイノシシが彷徨ついてる」
煙の中に近づくと、火元の正面は大人の腰ぐらいの高さのある柵があり、真ん中には円形状のマグマが溶けたような惨状痕がある。
「ごほっごほっごほっ」
まだ、火の粉は息を潜め、拡大する気配はないが、一部の火の粉が中へ燃え移っているようで、煙は一向に消えようとはしない。
煙はベビーカーの完全防護装置で防護ができるが、問題はベビーカーではこの柵を乗り越えられない。
その時、白く細い身体を押し当て、一匹の動物が柵を一気に壊した。
突然のことで、呆気に取られる俺だったが、くぐもった生意気な声を聞き取り、ベビーカーを前へと走らせた。
中は藁が敷き詰められているが、とうに赤黒に色めき、真ん中には焚き火があり、そこから火の粉が四方八方に燃え広がり、モクモクと黒い煙を発生させ、そこに、1匹のヤギラギが懸命に両足でじたばたしながら。広がるのを食い止めているのが現状だ。
「何してんだ! 早くお前も手伝え!」
「あっ、うん!」
すぐさま、水鉄砲で、鎮火にあたるが、水鉄砲でビュー、ビューという量では火は消えない。
何か方法は無いかと煙を掻き分け、見渡すと、水の入った大きなタライがあった。
「水は火には効果的だ。今すぐに掛けろ」
すぐさまそのタライの水で、広がりを見せる炎を鎮火し、ホッと胸を撫でおろす。
その時、助けてくださいと藁にも縋るような声と途中からコッコッコッコッという鳴き声も入ってくる。
「コッコッケトスか!」
「あの、魔術発動方法のこと教えてくれてありがとう」
「ふんっ、珍しいもんだな、人間がオレ達に礼を言うなんてな……アセドラ以来か……」
アセドラ?
俺の祖父?
「お前、自分の爺さん名も知らねのかー」
城から東(現在地)は連なる、なだらかな丘が続き、それは向こうの絶壁の山まで広がっている。開かれた距離ごとに牛舎、馬舎が点在し、そのヤギラギやミルクフォードが草を食べに走っている。
西側は、東側からのネギルギル畑やジャガジャガが広がり、更にもっと行き丘を降りると、広大な森林が広がる。どこかに森神が奉られている社があるとは言われる。 また、その先に、隣接国に繋がる橋や崖がある。
南は一般領民が暮らす都市ウゼルゲート。趣き深い中世の街並みが一望できる。
城の北の方角には、家から近い方から広大なネギルギル畑やジャガジャガ畑が広がる。
もう少し下ると、黄金のトウモロコシ畑と小麦粉畑が二つに分かれて、向こうの丘まで広がる。その頂上には枯れた立木の群が並び、不気味だ。更に高低差のある丘が乱高下し、その先に広大な樹海のダンジョンが広がる。その奥には巨大樹(アルト)が悠然と雲を浮かばせながら、立っている。このダンジョンをアルトダンジョンと呼ばれている。
「20年前にオレはそのアルトダンジョンで冒険者に捕獲され、この牧場に売られ、飼われるようになったのさ。まあ、飼われるといっても、ほとんど放飼だがな」
「そうか」
「まあ、お前には知らなくていいことだろうがな。それより、大変なことになってるぞ」
「大変なことになってる?」
そして、ヤギラギの後をついていく。ベビーカーで丘を下り、上りを繰り返し、到着したのは鶏舎だった。灰色の石造りの鶏舎と外の檻がセットになったL字形の鶏舎。
外の網状の檻は鶏が走り回れるスペースがあり、真ん中に切れた太い幹が3本建っている。鶏舎側の壁には横幅の長く、縦に低い、長方形の小さな箱がある。各々鶏が入れるサイズの穴が開いており、藁が敷き詰められている。
だが、それぞれそこには鶏は一匹もいない。
よく見ると、本体の鶏舎の入り口から黒煙が上がり、時折、赤い火の粉が舞い散っている。
「火事だ」
「あぁ‥‥大火事になってないが、中にはまだ、コッコケトスがいるのか? 火に弱いコッコケトスこれじゃ全員……」
「コッコケトスが? 早く助けないと駄目だ!」
「‥‥馬鹿か、中は危険だ、たかが、家畜のコッコケトスだ」
「コッコケトスは今も苦しんでるかもしれない。だったら、助けられる俺達が助けないと」
「コッコケトスは三歩歩けば、苦なんてすぐ忘れる奴らだ、命を賭けて助ける必要なんてない」
「可哀想じゃないかそんなの」
急いでベビーカーを急発進させ、手元にあった水鉄砲を持って乗り込む。
「馬鹿野郎! 火事を起こしたであろう、危険なファイアイノシシが彷徨ついてる」
煙の中に近づくと、火元の正面は大人の腰ぐらいの高さのある柵があり、真ん中には円形状のマグマが溶けたような惨状痕がある。
「ごほっごほっごほっ」
まだ、火の粉は息を潜め、拡大する気配はないが、一部の火の粉が中へ燃え移っているようで、煙は一向に消えようとはしない。
煙はベビーカーの完全防護装置で防護ができるが、問題はベビーカーではこの柵を乗り越えられない。
その時、白く細い身体を押し当て、一匹の動物が柵を一気に壊した。
突然のことで、呆気に取られる俺だったが、くぐもった生意気な声を聞き取り、ベビーカーを前へと走らせた。
中は藁が敷き詰められているが、とうに赤黒に色めき、真ん中には焚き火があり、そこから火の粉が四方八方に燃え広がり、モクモクと黒い煙を発生させ、そこに、1匹のヤギラギが懸命に両足でじたばたしながら。広がるのを食い止めているのが現状だ。
「何してんだ! 早くお前も手伝え!」
「あっ、うん!」
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すぐさまそのタライの水で、広がりを見せる炎を鎮火し、ホッと胸を撫でおろす。
その時、助けてくださいと藁にも縋るような声と途中からコッコッコッコッという鳴き声も入ってくる。
「コッコッケトスか!」
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