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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第816話 魔界へ ベヒモスの捕獲

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 2024年5月20日に書籍が発売されました!
 レンタルも開始になったので、無料話だけでもイラストを楽しんで下さいね。
 届いた献本を手にし感動しており、また読んで下さる読者様には感謝で一杯の気持ちです。
 これからも応援よろしくお願い致します。

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 黒竜の能力で私達は一瞬にして、魔界へと移転したらしい。
 もっと時間が掛かるかと思っていたけど、異界に渡るのは私がホームへ移動する時とよく似ている。
 見慣れたガーグ老の工房の庭から、何もない平原に連れて来られたようだ。
 異世界と時間が連動しているのか、辺りは薄暗く月明りだけが頼りみたい。

「ここは、魔界の中心地点じゃ。ちい姫は、何処どこへ行きたいのかの?」

 黒竜の腕に抱き抱えられたまま、顔をのぞき込まれ質問される。
 
「S級ダンジョンに行きたいです!」

 誰かと勘違いされるのは慣れっこなので、このままちい姫と呼ばれておこう。
 黒竜と知り合いのようだから、便宜べんぎを図ってくれるかも知れないしね。
 
「今からS級ダンジョンへ向かうのか!?」

 聞いたルシファーが大仰おおぎょうに驚き、いつきおじさんを心配そうに見つめる。
 私達の目的がダンジョンボスのベヒモスだと知り、危険だと思っているのだろう。
 
「ルシファーは、家に帰ってもいいよ」

 ついて来られると、ダンジョン内を移転出来ず面倒だ。

「姫! 私も少しは強くなったので、お伴致します!」

 樹おじさんに良いところを見せたいのか、ルシファーが同行すると言う。

「あ~、申し訳ないけど足手まといだから遠慮して下さいな」

 目で合図を送った私の意図をんだ樹おじさんが却下してくれた。
 実力不足を指摘されたルシファーはショックを受け地面に座り込み、のの字を書いている。
 その分かりやすい態度に笑ってしまう。
 彼をあわれんだ黒竜が声を掛けた。

「魔族の若造、そう落ち込むでない。ありえんほど最強のメンバーがそろっているから、S級ダンジョンなぞ鼻歌をしながら攻略するであろう。ちい姫は、目当ての魔物がおるのか?」

「はい、ベヒモスが欲しいんです!」

「ベヒモスとな? 南の大魔王がペットにしておったが……、相変わらず趣味が変わっておる」

 私はペットにしたいわけじゃないけど、ここは黙っておこう。
 あまり時間がないので、早くS級ダンジョンへ向かいたい。
 急かすように黒竜の腕を引っ張ると、「では移動しよう」と言い再び景色が変化する。
 ルシファーは置いていかれたのか、そばにいるのはメンバーだけだ。
 目の前には、ダンジョンの入口が見える。
 摩天楼まてんろうダンジョンのように塔ではなく、地下へ潜るタイプのようだ。

「ベヒモスはダンジョンの地下99階層におる。儂は待っておるから、行ってきなされ」

 腕の中にいる私を何故なぜかセイさんに預け、黒竜は手を振って見送る。
 セイさんは黒竜から子供のように受け渡された私を、そっと地面へ降ろした。
 黒竜の突然の行動に、セイさんは戸惑とまどった様子も見せない。
 何だろう? この恥ずかしい遣り取りは……。
 茜だけが不思議そうな顔をしていたけど、他のメンバーは何事もなかったかのように普段通りだった。

「じゃあ、早速さっそくダンジョンに入ろう!」

 気持ちを切り替えダンジョン内に足を進め、教えてもらった地下99階へ移転を繰り返す。
 ベヒモスはダンジョンボスだと聞いていたから、てっきり切りのよい地下100階にいると思っていた。
 地下100階層には、ダンジョンマスターでもいるのかしら?
 数分で地下99階に到着したあと、安全地帯を探したけど見つからず困ってしまう。

「この階層には安全地帯がないみたい。皆、結界魔法を張ってね」

「サラ……ちゃん。S級ダンジョンは、安全地帯がないのが普通ですぞ」

 ガーグ老に言われ、初めて知る情報に目を丸くした。
 安全地帯がないダンジョンとは、難易度が相当高い。
 常に魔物を警戒する必要があるから、休憩も交替制で行わなければならないだろう。
 ダンジョン泊も気軽に出来ないとなれば、深層を潜るのは命掛けじゃないかしら?
 私達は、その危険をすっとばして来ちゃったけどね~。

「知りませんでした。ベヒモスを発見するまで、周囲の警戒をよろしくお願いします」

 マッピングで地下99階を見渡すと、初見の魔物が沢山いる。
 ベヒモスがいた摩天楼ダンジョンの階層は、他の魔物がいなかったのになぁ。
 魔物の強さは分からないけど、時間を掛けない方がいいだろう。
 メンバーを心配し、そう思っていると茜が目をギラつかせ、

「少し魔物を狩ってくる!」

 駆け出し行ってしまった。
 
「あっ、俺も!」

 続いて樹おじさんが離れると、あわててガーグ老と父が後を追う。
 残ったのはゼンさん、セイさん、シュウゲンさん。
 シュウゲンさんは両腕を組み、瞑目めいもくしたまま動かない。
 えっと、目を閉じた状態で魔物が接近しても大丈夫?
 ゼンさんとセイさんがいれば問題ないかしら?

 勝手に動き出すメンバーへあきれつつ、私はベヒモス探しに集中した。
 5分程で大きな魔物を発見する。
 いたいたベヒモス! 
 生きたままアイテムBOXに収納して、次の個体を探し出す。
 その後、20分経ってもベヒモスは見つからず、この階層にはいないと判断した。
 ダンジョンボスだから1匹しかいないのか……、残念だな。
 まぁ1匹だけでも、いないよりはマシだよね?

 用事が済んだのでシルバーに茜を呼びに行かせ、ゼンさんにはガーグ老から念話の魔道具で連絡を入れてもらう。
 ホクホク顔の茜と樹おじさん、疲れた顔をしたガーグ老と父が戻り地上へ移動した。
 わずか1時間程で帰って来た私達を見ても、黒竜は驚かずに首尾を聞いてくる。

「ベヒモスは、おったか?」

「はい、1匹だけ見つけました」

「あれはS級ダンジョンに1匹しか出現せん魔物だからの。魔界にも、そうそうおるまい」

「他のS級ダンジョンは、ありますか?」

「4つあるS級ダンジョンで、ベヒモスがいるのは残り2つだろう」

 ふむ、大魔王がペットにしたベヒモスがいたな。

「出来れば残りの2匹も欲しいので、また魔界に連れて来て下さいね」

「まだベヒモスが必要なのか? 変なものを欲しがるのぅ……」

 黒竜の疑問には答えず、私はニコニコ笑顔で対応する。
 3匹いれば、兄、旭、茜のLv上げが可能だ。
 1人で倒せるかどうかは、やってみれば分かるだろう。
 無理そうならメンバー全員で倒せばいい。
 黒竜に異世界へ帰してもらい、お礼を伝える。

「今日は、ありがとうございます」

「久し振りに、ちい姫の顔を見れた。礼なぞ良い。それに、面白いものも見れたしな」

 面白いもの?
 セイさんとシュウゲンさんを見ながら、笑っていた事かしら?
 言葉を聞いたシュウゲンさんが渋面じゅうめんになり、黒竜へつかつかと歩み寄って何かを耳打ちした。
 すると黒竜が、ぎょっとした表情に変わってあせり出し、シュウゲンさんに何かを手渡している。
 一瞬見えたのは、黒い指輪のようだった。
 2人の間に親密さを感じて違和感を覚える。
 初対面だよね?
 鼻息荒く戻ってきたシュウゲンさんには聞けず、私達は逃げ出すように消えた黒竜を唖然あぜんと見送りホームへ帰った。

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