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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第815話 迷宮都市 結界魔法のLv上げ&黒竜の召喚

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 眠ってしまったシーリーをサヨさんに任せ、転移組は結界魔法のLv上げをしよう。
 シュウゲンさん、しずくちゃん、かなで伯父さんを残して、ホーム内にある広いグラウンドへ移動した。
 
「ファイト・カンガルーをテイムした時に、摩天楼まてんろうダンジョンの魔物から結界魔法を習得したの。皆も覚えてほしいから、魔物を出すね」

「結界魔法か、それは役に立ちそうだな」

 新しい魔法を聞いて、兄がやる気を見せる。
 私はアイテムBOXから蛍光ピンクのゴリラを出し魅了みりょうしたあとで、まだ習得していないメンバーに結界魔法を掛けてくれるようお願いした。
 
「派手な色をしたゴリラだね~」

 見た事もない色合いをしたゴリラを見て旭が目を丸くし、早崎さんは驚いたのかっている。
 兄に瞬殺される前に魅了を解除し、さっさとアイテムBOXへ収納しておこう。
 
「沙良、今のゴリラはテイムしてないんだよな?」

 兄がジト目で私に視線を向け確認してきた。

「うん! ちゃんと魅了を解除したから大丈夫!」

 テイム魔法に魔力が必要だと知っている兄は、従魔を増やす事に対しかなりうるさい。
 ゴリラは騎獣に向かないから、私もテイムしようと思ってないよ。

「あら、そうなの? 残念ねぇ。沙良がテイムしないなら、私がしようかしら?」

 話を聞いていた母が口を挟み、もう一度出してほしいと言う。
 母は迷宮タイガーのボブしか従魔がいないから、魔力的には問題ないけど……。
 嫌な予感がしたのか父が尋ねた。

美佐子みさこ、ゴリラだぞ?」

「両手が使えるし、力仕事が出来そうでしょ?」

 にっこり笑う母に、父はそれ以上言えず黙り込み小さく肩を落とす。
 母は、一体ゴリラに何をさせる心算つもりなんだろう?
 兄は特に反対しなかったので、私は母の希望通り再びゴリラをアイテムBOXから出した。
 出現した瞬間、母が魅了を掛けゴリラはテイムされる。

「あなたの名前はピンキーよ!」

 うん、色を見て決めたのね……。
 
 魔法 テイム魔法(テイムLv4)
 現在テイム中 プロテクト・ゴリラ(雄)
 【ピンキー】 消費MP300

 母のテイムLvじゃ従魔の詳細なステータスが見られないけど、魔物のLvはテイム者と同じなので50だろう。
 結界魔法が使用出来るのも確認済みだ。
 まぁ、アイテムBOXに入れたままにしておくのは可哀想かわいそうだったし、良かったかな?
 
 皆が結界魔法を習得したので、各自Lv上げを行う。
 母はテイムしたばかりのピンキーと仲良く魔法を掛け合い、楽しそうにしていた。
 私はあかねと組み、何度も結界を破壊されながら張り直す。
 兄と旭は新しい魔法が気に入ったようで、お互いの結界を壊す事に執着している。
 2人はLvに差がないから結界魔法の強さも同じくらいだけど、私と茜の場合は違う。
 槍で思い切り突いても、茜の結界を壊すのは無理だった。
 他のメンバーを見てみると、父と早崎さんを相手にしたセイさんと奥さんを相手にしている樹おじさんの結界は壊れていないみたい。

 3時間後。
 全員の結界Lvが5に上がったので実家へ戻ると、母はピンキーに肥料を担がせこれから畑へ行くらしい。
 ゴリラをテイムした理由は、畑仕事を手伝わせたいからのようだ。
 蛍光ピンクのゴリラを見たシュウゲンさんとサヨさんは苦笑いし、奏伯父さんは絶句していたけどね。
 私は茜とサヨさんを華蘭からんに送り届けて、ガーグ老の工房へ向かう。
 工房の庭では、まだルシファーがガーグ老達にしごかれていた。

「こんにちは~。ゼンさんはいますか?」

「おや? サラ……ちゃん、どうしたのかの?」

「ベヒモスを捕まえるため魔界へ行きたいので、今夜ゼンさんの予定が空いているか聞きに来たんです」

「ゼンは暇だから問題ないわ。一緒に行ける人数は10人だったの。同行者は他に誰がおる?」

 ゼンさんの代わりにガーグ老が答えてくれたけど、大丈夫かしら?

「私達以外に、父、樹おじさん、セイさん、シュウゲンさんを連れて行こうと思ってます」

「なら儂も参加しよう。出発は何時かの?」

「19時頃で、お願いします」
 
「承知した」

 ガーグ老は気軽に請け負うと、ゼンさんを呼んで承諾させた。
 筋トレを続けていたルシファーが魔界に帰れると知り、安堵あんどした表情を見せる。
 朝からお仕置きされ、かなり参っていたんだろうな。

 茜とホームへ帰ったあと、魔界に行くメンバーに話をして夕食後集まってもらう。
 兄と旭は病院で勉強をしているから、多少帰りが遅くなってもバレない。
 父と樹おじさんとシュウゲンさんは、3人で飲みに行くと言い家を出たそうだ。
 異世界の家に移転し、ガーグ老の工房へ従魔に騎乗して向かう。
 工房の庭には疲れ切った様子のルシファーにガーグ老とゼンさんが待っていた。
 
「ルシファー、黒竜はどうやって召喚するの?」

「指輪をこすりながら、魔界へ行きたいと念じればいい」

 そんな簡単な方法なのか……、召喚陣も必要ないらしい。

「じゃあゼンさん、よろしくお願いします」

「はっ!」

 魔王からめられた指輪を擦りながら、ゼンさんが目を閉じる。
 しばらくすると頭上に大きな影が掛かり、黒竜を一目見ようと目を凝らしている間に、その姿がどんどん小さくなって人型へと変化し地上に近付いてくる。
 トンッっと軽い音を立てて降り立ったのは、偉丈夫な高齢の男性だった。
 褐色の肌は艶めいており眼光が鋭い。
 3mはありそうな背丈に圧倒され、私は固まってしまう。

「北東の魔王の新しい伴侶は、どこにおる?」

 黒竜に低く威厳のある声で質問されたゼンさんが、おずおずと手を挙げた。

「……私です」
 
「なんとっ! あやつは宗旨替えでもしたのか?」   

「ご安心下さい。此度こたびは契約を結んだだけです」

 伴侶が男性だと思い、驚いた声を上げる黒竜にゼンさんが落ち着いて対応した。

「あぁ、魔界へ行きたいのだな」

「はい、お願い出来ますか?」

「指輪の持ち主であれば願いを叶えよう。そなたの他に……、おや? ちい姫がおるではないか!! 相変わらず、めんこいのぅ」

 ゼンさんが契約を結んだ伴侶だと分かり、これで魔界へ行けるとほっとしていた私は、唐突に目の前の黒竜に抱き抱えられ目を白黒させる。
 
「儂が与えた指輪は、どうしたのだ? いつでも遊びに来て良いと言ったではないか」

 う~ん、これはまた誰かと勘違いされているみたい。
 玄武や青龍の会った事がある巫女姫様かしら?

「娘と親しくされているようですね。私は母親のヒルダと申します」

 そこで樹おじさんが自己紹介した。

「おおっ、母君もいらしておったか。ちい姫は、お転婆で大変ですなぁ」

 黒竜は私そっくりな樹おじさんの姿を見て笑いかけ、続いてセイさんとシュウゲンさんを見遣る。
 2人を見た途端とたん、ぶはっと吹き出し背を向けてゴホゴホと咳き込んだ。
 少しして正面に向き直り、笑い出しそうになるのをこらえるような表情をする。

「あ~、同行者は非常に濃い・・メンバーのようだ。それでは、異界へ参ろうか」

 何がそんなに可笑おかしいのか、まだ頬をひくつかせている黒竜の言葉を聞いた瞬間、景色ががらりと変わった。

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