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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第813話 迷宮都市 母へのプレゼント&ファイト・カンガルーの紹介

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 実家でシーリーを引き取り、自宅に戻ると兄達がいた。
 
「お兄ちゃん、ただいま~」

「おかえり沙良。最近、土曜日はよく出掛けているな。一体、毎週どこへ遊びに行ってるんだ?」

「ホーム内の移動距離が増えたから、県外の観光名所に行ってるの」

 不思議そうに質問され、いつ聞かれてもいいように考えていた内容を話すと兄は納得したようだ。

「そうか、マッピングを使えば旅行も簡単に行けるしな。近い内に、サヨさんも呼んで旅行をしようか」

「うん、お母さんが安定期に入ったら誘ってみよう!」

「じゃあ、うちの家族も一緒に!!」

 すかさず旭が参加表明する。

勿論もちろんだよ。しずくちゃんは、旅行した事ないから嬉しがるね!」

 病気で遠出するのが難しかった彼女は、家族旅行に行った経験もなく県外に出るのも初めてだ。
 私が移動時間を短縮出来る分、沢山見て回れるだろう。
 
「夕食は弁当を買ってあるから、あかねは早崎さんを呼んできてくれ」

「分かった」

 茜が早崎さんを呼びに行く間に、人数分のお茶をれて待つ。
 兄が購入したのはコンビニ弁当ではなく、少しお高いお店の物のようだ。
 早崎さんと茜が席に座り「頂きます」と言った瞬間、食いしん坊の旭が真っ先にふたを開ける。
 刺身、天麩羅、海老フライ、西京焼き、煮物、苺が入っている。
 わぁ~、豪華なお弁当! これは3,000円くらいしそう。

「お義兄さん、ありがとうございます」

 早崎さんは茜から兄が購入した物だと聞いたのか、お礼を伝えてからはしをつけた。
 私も食べよう。
 食事中、兄がセイさんを妹2人に連れ回されるのは大変じゃないか心配していた。
 セイさんから「一緒にいると楽しいですよ」と機嫌よく返事をもらい、ほっとしている。
 旭と勉強するので忙しく、セイさんに私達の面倒を押し付けているように感じるのだろう。
 ダンジョンの攻略は仕事より疲れないけど、セイさんもたまには1人でいたいかも知れないな。
 いつも私達と一緒じゃ悪いから、来週は休んでもらおうかしら?

 食後に兄から摩天楼まてんろうダンジョンの洞窟で発見した宝石を加工した、母とおそろいのネックレスとイヤリングを渡された。
 宝石は紫、オレンジ、赤の3色だったので、それぞれ2セットずつある。
 明日、母に渡してあげよう。

「お兄ちゃん、素敵に仕上げてくれてありがとう! あっ、まだ宝石は残ってる?」

「かなり大きいから、まだ作れるぞ」

「それなら茜の分も、お願いしていい?」

「姉さん、私はつけないから雫ちゃんにあげたらどうだ?」

 宝飾品に興味がない妹は、そう言って断り代案を出す。

「じゃあ、俺が母さんと雫の分を作るよ!」

 話を聞いていた旭が口を挟み手を挙げた。
 
「茜がいらないなら、そうしようか。お兄ちゃん、後で残った分を旭に渡してね」

 兄は茜を見て苦笑し、やれやれと首を横に振り、女性なら喜ぶ装飾品を不要だと言う妹にあきれている。
 結婚指輪もめてないし、本当に興味がないんだろう。
 寝室のベッドで寝ているシーリーを起こさないよう、そっと隣に入り魔力を与え眠った。

 翌日、日曜日。
 見るからに機嫌がいい雫ちゃんのお母さんは、母へ樹おじさんがプレゼントした指輪をめ見せている。
 樹おじさんも満足気な表情をして、父に何かを言っていた。
 話を聞いた父が少しうらやましそうだったのは、どうしてかしら?
 私も兄が作製したネックレスとイヤリングを母に渡し、姿見の前で着けてあげた。

「まぁ、綺麗! 娘から貰えるなんて母親冥利みょうりに尽きるわね~」

「宝石はダンジョンで見つけた物だけど、加工したのはお兄ちゃんなんだよ。私と、お揃いになってるの」

賢也けんやは、何でも出来るのね。ありがとう、とっても嬉しいわ!」

 タイミングよく雫ちゃんのお母さんと一緒にプレゼントされたので、2人はお互いの装飾品を見せ合う事が出来たようだ。
 これで、自分だけ父から何も貰えないとねないよね?
 雫ちゃんのお母さんが母に耳打ちした瞬間、母がかなり驚いた様子だったのが気になったけど……。
 教会の炊き出しに行く前に、メンバーへテイムした2匹のファイト・カンガルーを紹介した。
 2匹はずっとマンションの駐車場で待機していたから、母、シュウゲンさん、かなで伯父さん、雫ちゃんとお母さんは初めて見る。
 
「まぁ、カンガルーの魔物もいるのね~」

 母はそう言って2匹に近付き、お腹にある袋の中をのぞき込んでいた。 

「お母さん、雄だから赤ちゃんはいないよ」

「そうなの、残念だわ」

 雫ちゃんとお母さんはカンガルーの魔物に興味津々の様子で筋肉質の腕をぺたぺた触り、シュウゲンさんと奏伯父さんは2匹を見て固まっていた。

「沙良ちゃん! どうしてカンガルーなの!?」

「強そうでしょう? ガルボとガルシングは警備用の従魔ですから!」

 私が胸を張り自慢すると、奏伯父さんは父に視線を向け溜息を吐く。
 おや? 思った反応と違うな。
 
「確かに強そうな魔物だが、うちの孫は少し趣味が変わっておるようだ」

 シュウゲンさんは母を見ながら笑っていた。
 異世界の家へ移転後、炊き出しの準備に来た母親達へ2匹を紹介すると、珍しい魔物に目が釘付けになる。
 自宅警備用だと言えば、安心したように表情をなごませ子供達をよろしくと頼んでいた。
 集まってきた子供達に増えた従魔を紹介したら、大興奮し喜んでいる。
 危険な時はお腹の袋に入るんだよと伝え、ガルボにお願いして実際入れてもらった。
 見た目より大きな袋には、小さな子供なら5人入る事が出来るらしい。
 袋から顔を出し、にこにこ笑っている子供達の姿は可愛いな。

 それを見た雫ちゃんが私も入りたいと両手を上げたので、ガルシングにお願いしてあげた。
 雫ちゃんは両脇をひょいっと持ち上げられ、袋の中に入ると顔を出し旭に手を振ってみせる。
 まだまだ子供ね~。
 2匹には、この家の警備を任せるから子供達をしっかり守るよう伝え、門の前で待機させた。
 食事が出来るまで子供達は庭の遊具や従魔達と楽しそうに遊び、スープとパンを渡すと気になるのか2匹にちらちら視線を向ける。
 新しい従魔は大歓迎されているみたいだ。

 お土産に苺を持たせ子供達を見送り、私達もガーグ老の工房へ向かう。
 工房内に入ると、何故なぜかルシファーが女官長に筋トレさせられていた。
 これは、昨日のお仕置きが1日早くなったのかしら?

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