上 下
663 / 709
第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第796話 迷宮都市 魔族との契約 4

しおりを挟む
 しずくちゃんは、ルシファーに角を触らせてもらっている。
 その際、尻尾はないのかと残念そうにしていた。
 悪魔みたいな種族だと言ったから、尻尾もあると思ったんだろう。
 旭が剣での勝負をいどみ、あっさり勝つとルシファーは意気消沈しうずくまってしまった。
 童顔で子供だと思った旭に負けたのが、余程悔しかったのか……。
 毎週、ガーグ老の部下達に鍛えられているから兄よりも強いんだけどね。

「儂が鍛えてやろう」

 シュウゲンさんが、庭を100周しろと走らせる。
 150坪ある庭を100週させられたルシファーは、息も絶え絶えだ。
 その後、かなで伯父さんから懸垂けんすい100回を課せられる。
 器具がないため急遽きゅうきょ、私が鉄棒に似た物を作製した。
 それを見た早崎さんが、逆上がり100回を注文。
 仕方なく高さを低くした物を再び作製する。
 これは子供達も遊べるから、そのまま残しておこう。

 いつきおじさんと戻ってきた父が、縄跳び100回を指示。
 不器用なルシファーは、何度も縄に引っ掛かり連続で100回続けるのに苦戦していた。
 可哀想かわいそうに思ったのか樹おじさんは、うさぎ跳び10回を願う。
 しかし続く茜の指示は、ほふく前進を10往復……。
 セイさんの願いは腹筋100回。
 最後に兄がサッカーボールを出し、ゴールキーパーをさせていた。
 勢い良く飛んでくるボールをキャッチするのは、慣れていないと怖いだろう。
 顔面を蒼白にさせながらルシファーが震えている。
 虐めじゃないよね?

 メンバー全員の願いを聞いた彼は満身創痍まんしんそういだったけど、まだガーグ老達もいる。
 早崎さんと旭を残してメンバーをホームへ送り、私は茜と一緒にルシファーをガーグ老の工房へ届け、女官長達に契約を済ませたら異界へ帰すよう伝えた。
 家に帰ると、旭が魔物を出し早崎さんのLv上げをしているところだった。
 私はその間、エーテルとハイエーテルを飴にしておこう。
 茜は早崎さんの動きを見ながら指示を飛ばしている。
 人間とは違い、魔物は種族により特性があるから教えているのかな?
 2時間後、早崎さんがLv30になったのを確認してホームへ戻る。
 夕食はアイテムBOX内のピザで済ませ、竜の卵に魔力を与え就寝。

 翌日、月曜日。
 今週はダンジョン攻略を中止して、ルシファーの爵位を上げよう。
 異世界の家には子供達が来るので、メンバーを連れガーグ老の工房へ向かう。
 門を開けると、顔をポーションまみれにしたガーグ老達と女官長達の姿が見える。
 朝から顔に怪我をするような作業をしていたんだろうか?
 樹おじさんの姿を見付けたポチとタマが飛んでくる。
 2匹は両肩に止まり、顔を頬に寄せていた。
 私に向かってガルちゃん達が駆け寄り、尻尾を振り出迎えてくれる。
 よしよしと可愛い従魔達の頭をでてガーグ老に挨拶した。

「ガーグ老、おはようございます。工房の庭を、お借りしてもいいですか?」

「おはよう、サラ……ちゃん。今日はダンジョンを攻略せんのか?」

「はい。青龍の巫女が気になるから、早くルシファーを強化したくて……」

「そうか、儂達も協力しよう」

「よろしくお願いします」

 ルシファーの姿はないため、昨日異界へ帰ったのだろう。
 召喚陣を庭に描き呪文を唱える。

「魔族召喚!」

 召喚陣の上に出現したルシファーは、辺りを見渡し樹おじさんを探す。
 駆け出そうとした瞬間、ガーグ老に転ばされていた。
 魅惑魔法は、まだ効果が切れないらしい。
 ポチの足に1週間ダンジョン攻略を中止する旨を書いた羊皮紙をくくり付け、アマンダさんのもとへ届けるようお願いする。
 白ふくろうは「ホー」と一声鳴き、飛び立っていった。
 シルバーに頼んでもいいけど、Lv500あるガーグ老の従魔の方が速い。
  
 時間が掛かりそうな武闘派の願い事から先に伝えてもらおう。
 シュウゲンさんから長い棒が欲しいと言われ、トレントを1本出す。
 何をするのか見ていると、斧で枝を切り落とした状態にし地面へ突き刺していた。
 そして、ルシファーに登れと伝える。
 木登りですか? しかし、枝を切り落としているため難しそう……。
 出来るかしらと心配していると、女官長達に工房へ案内される。
 何か話があるのかな? そう思ったのも束の間、着替えさせられた。
 
「サラ様。お似合いですわ」

 淡いピンクのワンピースを着せられ、髪は両サイドを編み込まれている。
 これはエルフの正装ではなく普段着なのだろう。
 何故なぜ、私の体に合う服が用意されているのか謎だ。
 でも、満面な笑みを浮かべた女官長達に聞ける雰囲気ふんいきじゃない。
 姫様の代わりに着せ替えを楽しんでいるのかもね。
 その恰好かっこうで工房を出ると、雫ちゃんが「沙良お姉ちゃん、可愛い!」とめてくれた。
 隣にいた父と樹おじさんが、同意するよううなずく。

 ルシファーはシュウゲンさんの課題を済ませたのか、スクワットをしている最中だった。
 暇なメンバーは、ガーグ老の部下達と稽古している。
 シュウゲンさんはガーグ老と、奏伯父さんはゼンさんと、早崎さんは茜と対戦中だ。
 しばらく筋トレが続きそうなルシファーは放っておき、私はセイさん相手に槍を繰り出した。
 セイさんは大槍ではなく長槍を手にして、私の攻撃をかわす。
 回避してばかりで一向に攻撃しない相手にれ、足を狙うとセイさんはフワリと飛び上がり短槍の上に立つ。
 得物えものを押さえられ、攻撃手段を失った私を見たシルバーが加勢に入った。
 飛び掛かるシルバーを避けるためセイさんが移動した瞬間、自由になった槍を振るう。
 渾身こんしんの一撃が、セイさんの指先で止められ唖然あぜんとなった。
 どれだけ力が強いの!? 私、Lv100超えてるんだけど……。

 -------------------------------------
 お気に入り登録をして下さった方、エールを送って下さった方とても感謝しています。
 読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。
 応援して下さる皆様がいて大変励みになっています。
 これからもよろしくお願い致します。
 -------------------------------------
しおりを挟む
感想 2,333

あなたにおすすめの小説

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

転生皇女は冷酷皇帝陛下に溺愛されるが夢は冒険者です!

akechi
ファンタジー
アウラード大帝国の第四皇女として生まれたアレクシア。だが、母親である側妃からは愛されず、父親である皇帝ルシアードには会った事もなかった…が、アレクシアは蔑ろにされているのを良いことに自由を満喫していた。 そう、アレクシアは前世の記憶を持って生まれたのだ。前世は大賢者として伝説になっているアリアナという女性だ。アレクシアは昔の知恵を使い、様々な事件を解決していく内に昔の仲間と再会したりと皆に愛されていくお話。 ※コメディ寄りです。

異世界でお取り寄せ生活

マーチ・メイ
ファンタジー
異世界の魔力不足を補うため、年に数人が魔法を貰い渡り人として渡っていく、そんな世界である日、日本で普通に働いていた橋沼桜が選ばれた。 突然のことに驚く桜だったが、魔法を貰えると知りすぐさま快諾。 貰った魔法は、昔食べて美味しかったチョコレートをまた食べたいがためのお取り寄せ魔法。 意気揚々と異世界へ旅立ち、そして桜の異世界生活が始まる。 貰った魔法を満喫しつつ、異世界で知り合った人達と緩く、のんびりと異世界生活を楽しんでいたら、取り寄せ魔法でとんでもないことが起こり……!? そんな感じの話です。  のんびり緩い話が好きな人向け、恋愛要素は皆無です。 ※小説家になろう、カクヨムでも同時掲載しております。

精霊王女になった僕はチートクラスに強い仲間と世界を旅します

カオリグサ
ファンタジー
病で幼いころから病室から出たことがなかった少年 生きるため懸命にあがいてきたものの、進行が恐ろしく速い癌によって体が蝕まれ 手術の甲斐もむなしく死んでしまった そんな生を全うできなかった少年に女神が手を差し伸べた 女神は少年に幸せになってほしいと願う そして目覚めると、少年は少女になっていた 今生は精霊王女として生きることとなった少女の チートクラスに強い仲間と共に歩む旅物語

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜

家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。 そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?! しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...? ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...? 不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。 拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。 小説家になろう様でも公開しております。

異世界でスローライフとか無理だから!

まる
ファンタジー
突如青白い光に包まれ目を開ければ、目の前には邪神崇拝者(見た目で勝手に判断)の群れが! 信用できそうもない場所から飛び出していざ行かん見慣れぬ世界へ。 ○○○○○○○○○○ ※ふんわり設定。誤字脱字、表現の未熟さが目につきます。 閲覧、しおり、お気に入り登録ありがとうございます!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。