上 下
695 / 755
第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第782話 迷宮都市 地下16階&地下17階の果物

しおりを挟む
 周囲のソルジャーアントから魔石を抜き、襲撃がなくなったので早崎さんに魔石取りをお願いする。
 B級冒険者のスキップ制度では、魔石取りが必要な魔物が多い。
 一応、出来るように練習してもらおう。
 最初に収納したソルジャーアントを8匹出し、解体ナイフを手渡した。
 旭が手本を見せたあと、早崎さんが真似る。
 胸部を切り裂いた途端とたん、何か変な汁が出てきたよ……。
 中に手を突っ込み魔石を取り出している。

 特に嫌がりもせず行っているから、問題なさそうだ。
 一応、哺乳類も出しておこう。
 ゴブリンを2体出し、旭に手本を見せてもらい早崎さんへお願いした。
 昆虫と違い、こちらはしっかりと内臓があるし出血もする。
 難易度は高めだ。
 私はいまだに苦手だけど、事件の凄惨せいさんな現場や司法解剖に立ち会った経験がある彼は、顔色も変えず魔石を取り出していた。
 魔物はアイテムBOXに入っていたから、腐敗してないだけマシなんだろう。
 しずくちゃんとお母さんがバナナの採取を終えた頃、兄が戻ってきた。
 ランダムに生るスナックパインを発見し、全て採り終えたと満足そうに笑っている。

 迷宮アリゲーターを倒しに川へ向かおう。
 旭が嬉々ききとしてサンダーボールを水面へ打ち込むと、体長4mの魔物が浮かび上がる。
 兄が眉間にライトボールを撃ち絶命させた。
 ワニを見た雫ちゃんは、爬虫はちゅう類が苦手なのか旭の背中に隠れている。
 長い口には鋭い牙が沢山生えているから、恐怖を感じても仕方ない。
 私も日本で一緒のおりに入れられたらパニックになりそうだ。
 皮は貴族に人気があるらしく、高級鞄の素材として使用される。
 肉も食べるんだろうなぁ……。

 まだクインアントを発見していないけど、出現率が低そうだから私とあかねは別行動しハニー達のもとへ移動した。
 薬草を回収して地下17階の安全地帯でテントを設置後、果物をマッピングで探す。
 木に赤い実が付いているのを確認して、拡大すると苺だった。
 視界に映る範囲全てを収穫する。
 アイテムBOXから取り出すとてのひらサイズの大きさがある。
 これは、またデカイな~。
 1個食べただけで満足出来そう。

 ランダムに生る果物は何かしら? 目をらして、広い階層内をくまなく調べる。
 30分後、発見したのはメロンだった! 編み目模様が美しい、マスクメロンかな?
 大きさはスイカサイズで大興奮だ。
 これは半分に切り、スプーンで食べる夢のような食べ方をしたい。
 メロンは兄も好きなので喜ぶだろう。

 昼食を実家で食べ、いつきおじさんを連れ摩天楼まてんろうダンジョン32階へ移転。
 こちらも、31階から32階へ移動する。
 私が安全地帯から出ずテント内で魔物を倒すので、兄が攻略進度を変更してくれたのだ。
 ポチを肩に乗せた樹おじさんは、父と泰雅たいがに2人乗りし嬉しそうに駆け出していく。
 午前中、ダンジョンを攻略出来ず暇だったのだろう。
 シュウゲンさんは玄武げんぶ甲羅こうらを武器にするため、しばらくダンジョンへ行かないらしい。
 
 父が戻ってきたので、階層は移動せず大人しくテント内にいる。
 今日が初日の早崎さんは、旭家と一緒にいるから心配ない。
 かなで伯父さんが、危険だと思ったら何とかしてくれるはず
 早崎さんのLv上げ用に生きたまま魔物を収納し、空いた時間で料理する。
 茜はDVDプレイヤーで、13年の間レンタルになった映画を見ていた。
 2回の攻略後、樹おじさんをホームに帰して迷宮都市ダンジョン地下16階の安全地帯へ戻る。

 2パーティーとの夕食時、知らない冒険者がやって来た。
 地下16階を拠点にしている人だろうか?
 アマンダさんのクランメンバーらしく、彼女に耳打ちしている。
 それを聞いたアマンダさんは、ちょっと席を外すよと言い離れていった。
 何かあったのかな? 夕食を食べ終えても、アマンダさんは戻らず心配になる。
 彼女のメンバーはリーダーが不在で、どこか落ち着かない様子だった。
 
 翌日、火曜日。
 アマンダさんの姿を見てほっとする。
 何があったか分からないけど、ダンジョン攻略を中止する程ではなかったらしい。
 挨拶を交わし攻略に向かった。
 ガーグ老に地下15階までの魔物を倒していいと許可を貰ったから、私は地下12階で槍のLv上げを行う。
 兄は単独で地下11階から果物採取に行った。
 どんどん階層が増えるので大変だな。
 
 地下12階のリザードマンソルジャー相手に槍を突き出す。
 Lvが100を超えたお陰か、私の方が魔物より速い。
 HPが増えたので、付随ふずいする各種能力も上がったんだろう。
 槍無双出来る気がしてきたよ! シルバーに騎乗しながらだけど……。
 従魔から降りて戦う必要はないからいいのだ。
 シルバーとは一心同体。
 私の意識を読み取り行動してくれるので、呼吸もピッタリ。
 リザードマンソルジャーを倒し、ドヤ顔している私に皆が微笑ましい視線を送る。
 何だろう、強くなった気がしない。
 
 3時間後、地下16階の安全地帯へ戻るとテント前に怪我人がいる。
 ソルジャーアントに腕をみ付かれた男性冒険者だ。
 死んでも口を離さないため、首を落とした状態で腕に着けたまま来たのか……。
 普段は噛みつかれた部分の肉をぎ落し、切り離すらしい。
 旭が治療に当たり、魔物の口へ両手を入れ上下に引っ張る。
 Lv50ある旭は、この世界の冒険者より力が強い。
 見た目が小柄で童顔な旭が、魔物の口を開けたのに怪我人が驚いていた。
 素早く水を掛け治療すると、傷跡も残らず肌は元に戻った。

「ありがとう。その……、お礼を受け取ってくれないか?」

 若干じゃっかん、頬を染める冒険者からのお礼は例のアレか……。

「要りません!」

 狼狽うろたえる旭に代わり、速攻で雫ちゃんが断っていた。
 もう、いつになったら自分で断れるようになるの?
 妹に助けられるなんて情けないわよ!

 -------------------------------------
 お気に入り登録をして下さった方、エールを送って下さった方とても感謝しています。
 読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。
 応援して下さる皆様がいて大変励みになっています。
 これからもよろしくお願い致します。
 -------------------------------------
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

断罪されているのは私の妻なんですが?

すずまる
恋愛
 仕事の都合もあり王家のパーティーに遅れて会場入りすると何やら第一王子殿下が群衆の中の1人を指差し叫んでいた。 「貴様の様に地味なくせに身分とプライドだけは高い女は王太子である俺の婚約者に相応しくない!俺にはこのジャスミンの様に可憐で美しい女性こそが似合うのだ!しかも貴様はジャスミンの美貌に嫉妬して彼女を虐めていたと聞いている!貴様との婚約などこの場で破棄してくれるわ!」  ん?第一王子殿下に婚約者なんていたか?  そう思い指さされていた女性を見ると⋯⋯? *-=-*-=-*-=-*-=-* 本編は1話完結です‪(꒪ㅂ꒪)‬ …が、設定ゆるゆる過ぎたと反省したのでちょっと色付けを鋭意執筆中(; ̄∀ ̄)スミマセン

【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断

Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。 23歳の公爵家当主ジークヴァルト。 年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。 ただの女友達だと彼は言う。 だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。 彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。 また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。 エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。 覆す事は出来ない。 溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。 そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。 二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。 これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。 エルネスティーネは限界だった。 一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。 初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。 だから愛する男の前で死を選ぶ。 永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。 矛盾した想いを抱え彼女は今――――。 長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。 センシティブな所へ触れるかもしれません。 これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

そんなに幼馴染の事が好きなら、婚約者なんていなくてもいいのですね?

新野乃花(大舟)
恋愛
レベック第一王子と婚約関係にあった、貴族令嬢シノン。その関係を手配したのはレベックの父であるユーゲント国王であり、二人の関係を心から嬉しく思っていた。しかしある日、レベックは幼馴染であるユミリアに浮気をし、シノンの事を婚約破棄の上で追放してしまう。事後報告する形であれば国王も怒りはしないだろうと甘く考えていたレベックであったものの、婚約破棄の事を知った国王は激しく憤りを見せ始め…。

【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?

碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。 まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。 様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。 第二王子?いりませんわ。 第一王子?もっといりませんわ。 第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は? 彼女の存在意義とは? 別サイト様にも掲載しております

婚約破棄された私と、仲の良い友人達のお茶会

もふっとしたクリームパン
ファンタジー
国名や主人公たちの名前も決まってないふわっとした世界観です。書きたいとこだけ書きました。一応、ざまぁものですが、厳しいざまぁではないです。誰も不幸にはなりませんのであしからず。本編は女主人公視点です。*前編+中編+後編の三話と、メモ書き+おまけ、で完結。*カクヨム様にも投稿してます。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

ここは私の邸です。そろそろ出て行ってくれます?

藍川みいな
恋愛
「マリッサ、すまないが婚約は破棄させてもらう。俺は、運命の人を見つけたんだ!」 9年間婚約していた、デリオル様に婚約を破棄されました。運命の人とは、私の義妹のロクサーヌのようです。 そもそもデリオル様に好意を持っていないので、婚約破棄はかまいませんが、あなたには莫大な慰謝料を請求させていただきますし、借金の全額返済もしていただきます。それに、あなたが選んだロクサーヌは、令嬢ではありません。 幼い頃に両親を亡くした私は、8歳で侯爵になった。この国では、爵位を継いだ者には18歳まで後見人が必要で、ロクサーヌの父で私の叔父ドナルドが後見人として侯爵代理になった。 叔父は私を冷遇し、自分が侯爵のように振る舞って来ましたが、もうすぐ私は18歳。全てを返していただきます! 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。