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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略
第759話 旭 樹 再召喚 53 アシュカナ帝国への襲撃 1
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翌日の早朝。
周囲の音で目が覚めた。
冒険者の恰好に着替えマジックテントから出ると、族長の天幕前に人が集結している。
全員が武装し傍らには麒麟が付き従っていた。
戦いに赴く男性達のため、朝食の準備をしている女性達の姿が見える。
出発の時間までに俺達も何か食べておこう。
でもその前に……。
「響。もうホームへ戻りたくなった」
「はっ? ホームシックには早すぎるだろう」
「そうじゃない。トイレが問題なんだよ!」
女性は外で適当に済ませられない。
「あぁ、そうか。不便だな……」
この集落にあるトイレを利用するのは躊躇われ、俺は天幕が張られた場所から移動し土魔法で四方に壁を作った。
地面を1m程掘って用を足し、再び穴を塞いでおく。
トイレットペーパーを購入して正解だった。
朝食に何を食べようか迷う。
炊飯器や電子レンジがあれば、まともな食事が出来るんだがな。
するとセイが土鍋で、ご飯を炊いてくれた。
そして手際よく親子丼を作り出す。
日本では毎日自炊していたらしく、簡単な料理は作れるから任せて下さいと言う。
独身の彼は1人暮らしをしていたみたいだ。
異世界では材料が揃わず大変だったと苦笑している。
俺達は親子丼を食べてから、族長の天幕前へ向かう。
族長とハイドが一族に対し作戦を伝えているところだった。
昨日、話し合った内容に齟齬がない事を確認し30分後出発となる。
アシュカナ帝国の情報は、ガーグ老達が教えてくれた。
南大陸にあるアシュカナ帝国は、国の規模がエルフのナージャ王国より大きい。
隣国を次々と攻め併呑していったようだ。
精霊信仰をしているが、国に加護を与えているのは闇の精霊王らしい。
世界樹の精霊王から加護を受けているエルフとは相容れない存在のため、ガーグ老は帝国人を嫌っている。
浅黒い肌をし目が赤く、耳が少し尖っている特徴的な種族だ。
エルフ同様、スレンダーな体つきをした者が多いと聞く。
非常に好戦的な性格をしており、その王は大陸制覇を狙っている。
数年後、南大陸から出てカルドサリ王国のある大陸に戦を仕掛ける心算でいるみたいだ。
戦力となる兵士の数は凡そ10万人。
併呑した国も合わせれば、その5倍は見た方がいい。
その国に襲撃を仕掛けるのだから、数の少ない俺達は無防備に突っ込むのを避けるため上空からの奇襲を取る。
地上からだと、数の多い兵士に阻まれてしまうだろう。
国境を守っている騎獣の数が一番の問題だ。
聖獣の麒麟は、魔法が使用出来るから滅多な事はないと思うが……。
ここはセキに竜の本体へ戻ってもらった方がいい。
「セキ。竜になってくれる? ケスラーの民より先行して、アシュカナ帝国の国境へ向かいたいの」
「あぁ、露払いが必要なんだな。邪魔な騎獣を追い払ってやるよ」
セキはそう言ってニヤリと笑い上空へ姿を消し、代わりに大きな赤竜が現れた。
質量保存の法則を無視した変態に、竜族はどういう体の作りをしているのか気になって仕方ない。
赤竜の姿を間近で見たケスラーの民達がどよめき、片足を地面に突き敬う態度をみせた。
これは昨日治療した、お礼もあるんだろう。
実際治療を施したのはセキじゃなくセイの方だけどな。
「族長。私達は先行し王宮までの上空を確保します。時間通り出発して下さい」
「姫よ、かたじけない。今回のお礼は必ず致します!」
『エルフの姫。ケスラーの民に力を貸してくれ感謝する』
「えっ! 喋った!」
族長の隣にいた麒麟から声が聞こえ、思わずのけ反った。
『話すくらい、人に変態する竜族より驚く事ではない』
いやまぁ、そうだけど……。
麒麟が言葉を発するとは思わないじゃないか。
「それでは、行きますね」
片手をひらりと振って、ガーグ老のガルムへ騎乗し赤竜の背に移動した。
「セキ、よろしくね!」
「おう!」
その瞬間、アシュカナ帝国の上空へ移転する。
赤竜を発見した帝国兵が、ワイバーンに乗り向かってきた。
帝国は竜騎士隊を揃えているのか……。
その数は約100騎。
ここで、セキが威圧を兼ねた咆哮を上げた。
「ガアアアアアアア!」
空気がビリビリと振動する。
これに下竜のワイバーンが恐れをなし、尻尾を巻いて逃げ出した。
騎乗した竜騎士達が、必死に方向転換しようと手綱を引いている姿が見える。
が、どのワイバーンも赤竜から少しでも離れたいのか、どんどん遠ざかっていく。
露払いは成功だな。
「巣に戻り大人しくしてるよう言ったから、ワイバーンはもう出てこないだろう」
単なる咆哮だと思っていた音は、ワイバーンに指示を与えるものだったらしい。
俺には分からない竜語だろうか?
「ありがとう、助かったわ。ガーグ老、王宮に潜入し族長の娘を探し出して」
「承知! 3名は待機せよ」
迷彩を使用し、ガルムと共に姿が見えなくなった影衆達が王宮へ向かう。
人質を取られたままだと、ケスラーの民が充分動けない。
早く発見出来るといいんだが……。
王宮以外に監禁されていると困るな。
赤竜は目立つので、もう一度セキに人の姿へ変態してもらい族長達の到着を待った。
その間、地上にいる国境兵は無視する。
今ここで不要な血を流す必要はない。
俺達の標的は帝国の王ただ1人。
暫くすると、麒麟に騎乗したケスラーの民が追いついてきた。
さぁ、いよいよ襲撃開始!
俺達は、敵に阻まれる事なく王宮の上空へ辿り着く。
王宮全体に張り巡らされている結界に向かい、麒麟達が一斉に氷魔法を使用した。
もしかして、物量作戦だったのか!?
上空からの敵襲に備え、張られた結界は万能じゃない。
ある程度の攻撃は跳ね返せるだろうが、その耐久性を割れば崩壊する。
物理攻撃を延々と続ければ、結界を破る事が可能だろう。
ただ普通は、そこまで魔力が続かないから結界に侵入する作戦を立てないのが常識だ。
テイムされた訳じゃない麒麟は、主人のLvに依存しないから魔力量が多いのかも知れないな。
バスケットボール程の氷の塊が、上空から何千と落とされる。
落下速度の衝撃も加わるため、結界が維持出来なくなるのも時間の問題か……。
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お気に入り登録をして下さった方、エールを送って下さった方とても感謝しています。
読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。
応援して下さる皆様がいて大変励みになっています。
これからもよろしくお願い致します。
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全員が武装し傍らには麒麟が付き従っていた。
戦いに赴く男性達のため、朝食の準備をしている女性達の姿が見える。
出発の時間までに俺達も何か食べておこう。
でもその前に……。
「響。もうホームへ戻りたくなった」
「はっ? ホームシックには早すぎるだろう」
「そうじゃない。トイレが問題なんだよ!」
女性は外で適当に済ませられない。
「あぁ、そうか。不便だな……」
この集落にあるトイレを利用するのは躊躇われ、俺は天幕が張られた場所から移動し土魔法で四方に壁を作った。
地面を1m程掘って用を足し、再び穴を塞いでおく。
トイレットペーパーを購入して正解だった。
朝食に何を食べようか迷う。
炊飯器や電子レンジがあれば、まともな食事が出来るんだがな。
するとセイが土鍋で、ご飯を炊いてくれた。
そして手際よく親子丼を作り出す。
日本では毎日自炊していたらしく、簡単な料理は作れるから任せて下さいと言う。
独身の彼は1人暮らしをしていたみたいだ。
異世界では材料が揃わず大変だったと苦笑している。
俺達は親子丼を食べてから、族長の天幕前へ向かう。
族長とハイドが一族に対し作戦を伝えているところだった。
昨日、話し合った内容に齟齬がない事を確認し30分後出発となる。
アシュカナ帝国の情報は、ガーグ老達が教えてくれた。
南大陸にあるアシュカナ帝国は、国の規模がエルフのナージャ王国より大きい。
隣国を次々と攻め併呑していったようだ。
精霊信仰をしているが、国に加護を与えているのは闇の精霊王らしい。
世界樹の精霊王から加護を受けているエルフとは相容れない存在のため、ガーグ老は帝国人を嫌っている。
浅黒い肌をし目が赤く、耳が少し尖っている特徴的な種族だ。
エルフ同様、スレンダーな体つきをした者が多いと聞く。
非常に好戦的な性格をしており、その王は大陸制覇を狙っている。
数年後、南大陸から出てカルドサリ王国のある大陸に戦を仕掛ける心算でいるみたいだ。
戦力となる兵士の数は凡そ10万人。
併呑した国も合わせれば、その5倍は見た方がいい。
その国に襲撃を仕掛けるのだから、数の少ない俺達は無防備に突っ込むのを避けるため上空からの奇襲を取る。
地上からだと、数の多い兵士に阻まれてしまうだろう。
国境を守っている騎獣の数が一番の問題だ。
聖獣の麒麟は、魔法が使用出来るから滅多な事はないと思うが……。
ここはセキに竜の本体へ戻ってもらった方がいい。
「セキ。竜になってくれる? ケスラーの民より先行して、アシュカナ帝国の国境へ向かいたいの」
「あぁ、露払いが必要なんだな。邪魔な騎獣を追い払ってやるよ」
セキはそう言ってニヤリと笑い上空へ姿を消し、代わりに大きな赤竜が現れた。
質量保存の法則を無視した変態に、竜族はどういう体の作りをしているのか気になって仕方ない。
赤竜の姿を間近で見たケスラーの民達がどよめき、片足を地面に突き敬う態度をみせた。
これは昨日治療した、お礼もあるんだろう。
実際治療を施したのはセキじゃなくセイの方だけどな。
「族長。私達は先行し王宮までの上空を確保します。時間通り出発して下さい」
「姫よ、かたじけない。今回のお礼は必ず致します!」
『エルフの姫。ケスラーの民に力を貸してくれ感謝する』
「えっ! 喋った!」
族長の隣にいた麒麟から声が聞こえ、思わずのけ反った。
『話すくらい、人に変態する竜族より驚く事ではない』
いやまぁ、そうだけど……。
麒麟が言葉を発するとは思わないじゃないか。
「それでは、行きますね」
片手をひらりと振って、ガーグ老のガルムへ騎乗し赤竜の背に移動した。
「セキ、よろしくね!」
「おう!」
その瞬間、アシュカナ帝国の上空へ移転する。
赤竜を発見した帝国兵が、ワイバーンに乗り向かってきた。
帝国は竜騎士隊を揃えているのか……。
その数は約100騎。
ここで、セキが威圧を兼ねた咆哮を上げた。
「ガアアアアアアア!」
空気がビリビリと振動する。
これに下竜のワイバーンが恐れをなし、尻尾を巻いて逃げ出した。
騎乗した竜騎士達が、必死に方向転換しようと手綱を引いている姿が見える。
が、どのワイバーンも赤竜から少しでも離れたいのか、どんどん遠ざかっていく。
露払いは成功だな。
「巣に戻り大人しくしてるよう言ったから、ワイバーンはもう出てこないだろう」
単なる咆哮だと思っていた音は、ワイバーンに指示を与えるものだったらしい。
俺には分からない竜語だろうか?
「ありがとう、助かったわ。ガーグ老、王宮に潜入し族長の娘を探し出して」
「承知! 3名は待機せよ」
迷彩を使用し、ガルムと共に姿が見えなくなった影衆達が王宮へ向かう。
人質を取られたままだと、ケスラーの民が充分動けない。
早く発見出来るといいんだが……。
王宮以外に監禁されていると困るな。
赤竜は目立つので、もう一度セキに人の姿へ変態してもらい族長達の到着を待った。
その間、地上にいる国境兵は無視する。
今ここで不要な血を流す必要はない。
俺達の標的は帝国の王ただ1人。
暫くすると、麒麟に騎乗したケスラーの民が追いついてきた。
さぁ、いよいよ襲撃開始!
俺達は、敵に阻まれる事なく王宮の上空へ辿り着く。
王宮全体に張り巡らされている結界に向かい、麒麟達が一斉に氷魔法を使用した。
もしかして、物量作戦だったのか!?
上空からの敵襲に備え、張られた結界は万能じゃない。
ある程度の攻撃は跳ね返せるだろうが、その耐久性を割れば崩壊する。
物理攻撃を延々と続ければ、結界を破る事が可能だろう。
ただ普通は、そこまで魔力が続かないから結界に侵入する作戦を立てないのが常識だ。
テイムされた訳じゃない麒麟は、主人のLvに依存しないから魔力量が多いのかも知れないな。
バスケットボール程の氷の塊が、上空から何千と落とされる。
落下速度の衝撃も加わるため、結界が維持出来なくなるのも時間の問題か……。
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