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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第743話 旭 樹 再召喚 37 魅惑魔法の効果 5&王妃の行方

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 ガーグ老の合図で稽古が終了し、沙良ちゃんがしずくと昼食の準備を始める。
 俺は、どうにも魅惑みわく魔法の効果が思ったように出ないのが気になり、いい機会だから他の人にも掛けてみようと考えていた。
 女性陣は全員身内だし、ここは一番問題なさそうなゼンにしよう。
 少し離れた場所で工房の庭全体を警戒していたゼンに近付き、魅惑魔法を掛けてみる。

「姫様。御戯おたわむれを……」

 すると彼は顔を赤く染め、俺から視線をらし口に手を当て顔を背けた。
 ひびきと違い、こちらは魅惑魔法を掛けられたと気付いているようにみえる。
 個人によって効果に違いがあるのか?
 それとも王族を護衛する影衆達は、あらゆる魔法に耐性を持っているんだろうか……。
 
「ゼン。どうかしましたか?」

「姫様。その……魔法で私を誘惑するのは、何か意図があっての事でしょうか? 王族に対し忠誠を誓う私を試しておられるのでしたら、期待に応えるのは無理かと……」

 あぁ、やっぱりバレてるんだな。
 そして意識も、はっきりしているらしい。
 どうやら人選を誤ったみたいだ。

「ごめんなさいね。ちょっと魔法の効果を試してみたかったの。特に意味はないから忘れて下さい」

「はい。他の者には使用しない方がよろしいかと存じます」

 ゼンには効果がなかったが、魔法Lvを上げるのは相手に掛けるしか方法がない。
 影衆達に掛けても意味がないという忠告だろう。
 返事はせず手をひらひらと振り、その場を離れた。
 それからガーグ老と響を呼んで工房内に入る。

「ガーグ老。言い忘れていたけど、お母様が国を出てから行方が分からないみたいなの。もしかしたら、私の生存を聞いてカルドサリ王国へ来る可能性があるわ。もし、見付けたら連絡を下さい」

「なんとっ! 王妃様が、また国を出ておられるのか? あの方は王と結婚されても、相変わらず単独行動を止めぬで困るの。姫様に会う心算つもりなら、既に到着していそうなものだが……」

 ドラゴンの風太ふうたに乗り移動すれば、別大陸にあるエルフの国からカルドサリ王国まで1日の距離だ。
 ガーグ老と再会してから3週間は過ぎている。
 俺に会いに来るには、少し時間が掛かり過ぎているよなぁ。

「既にカルドサリ王国に到着し、魔道具で姿を変えている可能性はないか?」

 響が若干じゃっかん顔色を悪くして、王妃の行動を予想し口にする。
 まぁ可能性として否定はしないが、その線はない。
 
「それよりティーナの話を聞き、アシュカナ帝国に行く可能性の方が高いんじゃないかしら?」
 
 娘が生きている連絡を受けたならガーグ老達が護衛に就くと安心し、別の問題を解決しに向かったかも知れない。

「王妃様のなさりそうな事だわ。無茶をせんといいがの」

「お母様は王妃なのに、身軽でいらっしゃるから困りますね」

 そう言うと、ガーグ老と響が俺を見て大きな溜息を吐いた。
 なんか感じ悪いなぁ。

「王妃様の件は承知した。姫様も勝手な行動はせんでくれると助かる」

「娘がいるから離れるような真似はしないわ」

 ガーグ老に気付かれないよう笑顔で返す。
 結婚式のあと、アシュカナ帝国へ乗り込む気でいるのは内緒にしておかないと。
 工房から出ると、昼食を三男役が配膳しているところだった。
 嫁役の『万象ばんしょう』2人は動かず、恐妻家だと思われてそうだ。

「お待たせしました。皆さん、今日もありがとうございます。お昼のメニューは、『チーズバーガー』・『ナゲット』・『フライドポテト』です。それでは頂きましょう」

「頂きます!」

 娘の挨拶で昼食が始まる。
 メニューを見て響が嬉しそうな表情をしていた。

「おおっ! これが姫様の食べたがっておった『ハンバーガー』とやらだな」

 ガーグ老が料理名を聞き、俺の言った話を思い出したらしい。

「姫様! 美味しいですぞ! 付け合わせの『フライドポテト』にもよく合いますな。『ナゲット』も、このソースに付けて食べると旨い!」

 チーズバーカーにかぶり付きながら、感想を伝えてきた。

「ガーグ老、『チーズバーガー』も旨いが『テリヤキバーガー』も捨てがたい! 今度、娘に作ってもらおう」

 俺はつい、姫様と言われた事を忘れ答えてしまう。
 
「そうですか! サラ……ちゃん、作ってくれるかの?」

「ええ、いいですよ」

 娘に変に思われるかもと心配したが、普通に返事をしていたから問題なさそうだな。
 妖精さんのお供え用に結花ゆかがホットケーキを焼いていたので、今日は誰も木から落ちなかった。
 食後、娘が迎えに来るまでガーグ老達と将棋を指しホームへ戻る。
 何か話があるようで響の家に集まった。
 夕食を沙良ちゃん達と食べられると知った雫が、美佐子みさこさんから料理を教わりにいく。
 先日食べた中華が美味しかったのか、自分でも作りたくなったみたいだ。
 その調子で、どんどん料理を覚えてくれ。

 中華がそろっているのに、どうして今回も鰻の蒲焼と肝焼きが俺だけ出されてるんだ?
 箸を付けないでいたら、息子が隣から食べようとし妻から怒られている。
 結花が御飯の上へ蒲焼を載せてきたので、食べない訳にはいかなくなった。

 俺は響に若返った反動で、あるアイテムのお世話になった話を聞いていたから、賢也けんや君へ目配せを送る。
 相手のいない彼は持っているだろう。
 俺の視線に気付き軽くうなずいてくれたから、後で忘れず貰わないと大変な目にいそうだ。
 観念して鰻の蒲焼を食べる。
 味は文句なく美味しいんだよ! 精力剤の効果さえなければ……。

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