上 下
602 / 709
第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第735話 旭 樹 再召喚 29 魅惑魔法の効果 1&摩天楼のダンジョンで犯人の捜索

しおりを挟む
 火曜日。
 魅惑みわく魔法のLvを上げるため、ダンジョンへ行く前にひびきへ掛けてみた。
 すると彼は俺の顔を見るなり近付いてきて、

いつき。お前、何か香水を付けているのか?」

 そう言いながら首元の匂いをいでいる。
 おっ、ちゃんと効果が出ているみたいだ。
 Lv0の魔法なら、この程度なのかな? そもそも魅惑魔法の効果が、よく分からない。
 魔物は敵をき付ける目的で使用していると思うが……。
 そう考えると、相手をれさせる要素もありそうだ。
 言いなりの状態にして口を割らせるには、どれだけLvを上げればいいんだろう?
 効果を確認するためには、響が内緒にしている話を聞き出せば分かるか……。
 でも、あいつに隠し事はあるかな?
 
「香水は付けてない」

 更に近付いてくる響を押しのけると、

「変だな……。お前から甘い匂いがする」

 彼は不思議そうに首をかしげていた。
 一応、魅惑魔法は効いたようだから引き続き実験してみよう。
 午前中は迷宮モンキーばかりを倒す。
 これだけ沢山たくさん、同じ魔物を相手にするのは初めてだ。 
 いつか猿に呪われそうな気がする。

 お昼を食べにホームへ戻った。
 美佐子みさこさんが作る料理は、いつも美味しいなぁ。
 朝食の微妙な味を思い出し、げんなりした。
 残ったおでんの味を変えたと言い、出てきたのは真っ赤に染まった物だった。
 食べるとトマトの味がして、トマトジュースを入れたのが分かる。
 トマト味のおでんは、正直もう一度食べたいと思わない。
 妻は何を考え味を変えたんだろう?

 沙良ちゃん達は、午後から摩天楼まてんろうの冒険者ギルドで情報収集をするらしい。
 昨日発見した呪具の件で、潜入している帝国人が捕まったか確認する必要があるからな。
 俺は妻としずくの3人で、迷宮都市のダンジョンに戻る。
 3時間後にホームで休憩中、沙良ちゃんから帝国人が18人捕まった報告を受けた。
 しかし、まだダンジョン内に36人の犯人がいる可能性があると言われたら、何もしない訳にはいかない。

「それはそれは……。結花ゆか、雫と2人でも大丈夫だよな?」

「ええ、問題ないわ」

「という訳で、俺も一緒に摩天楼のダンジョンへ行くからよろしく!」

 一度、響がガーグ老達と攻略していたダンジョンに入ってみたいと思っていたから、一石二鳥いっせきにちょうだ。
 最終攻略階層に犯人達がいると予想したらしく、着いたのは50階の安全地帯。
 この階層の魔物ならLv上げも出来るだろう。
 そう思っていたが、娘から呪具対策に全ての魔物をアイテムBOXへ収納済みだと聞かされ、少しがっかりする。
 犯人を見付けるため、移動速度の速いシルバーに騎乗し捜索開始。
 しばらくすると、シルバーの動きが明確なものに変化した。
 どうやら犯人を見付けたらしい。
 俺は皆に分かるようハンドサインを送り後を付けた。

 前方には12人の冒険者が森の中へ入っていく姿が見える。
 魔物がいない階層で、安全地帯へ戻らないのは犯人に違いない。
 気付かれないよう距離を取り、俺達も森に入った。
 すると彼らは大きな木の前で立ち止まり、1人ずつ中に入り姿を消す。
 どうやら何らかの魔法を掛け、木の中を拠点にしているみたいだ。

 中に入る方法を模索していると、シルバーが木を前足で叩く。
 その途端、セイさんが目の前の木を燃やし出した。
 あぁ俺達が中へ入るより、犯人達に出てもらった方が早いと判断したのか。
 それにしても、一切躊躇ちゅうちょしないその行動に驚いた。
 このまま死なせてもよいと思っているのか?
 これには犯人達もたまらず、焼死体になる前に木から出てきた。
 そこへ仁王におう立ちした義祖父が立ちはだかる。
 正体がバレたと気付いた犯人達が一斉に剣を抜き、襲い掛かってきた。

 12人対5人。
 1人が2・3人倒せばいいかと考えていると、セイさんが大槍で5人をぎ倒す。
 その攻撃の速さに呆気あっけに取られ、ワンテンポ行動が遅れた。
 その間に、義祖父と義父が次々と敵を戦闘不能にしていく。
 5分後、1人も相手に出来ず戦いが終了。
 俺の活躍の場はなかった……。

 メンバーが強すぎる! せめてもと、地面に倒れた犯人を拘束するため縄を掛けた。
 つっ、次は遅れないよう頑張ろう。
 邪魔な犯人達は、娘がアイテムBOXに収納したのか消えた。
 残り24人。
 沙良ちゃんがマッピングで犯人を見付けたらしく、再びシルバーが走り出す。
 その時、上空からポチが降下し俺の右肩に止まった。
 ガルムに騎乗したガーグ老達が追いついたと分かり、響と笑顔を交わす。
 犯人達は50階から51階に逃げようとしているようだ。

 階段を上がり、安全地帯へ向かう彼らの後を追う。
 娘が事前に安全地帯へ逃げ込まれないよう、周囲を高い塀で囲んでいた。
 塀にはばまれた犯人達が右往左往している姿が見える。
 シルバーが敵の方へ駆け出すと、目の前で犯人達がバタバタ倒れ簀巻すまきにされていく。
 相変わらず見事な手際てぎわのよさに感心する。
 自殺防止のため猿轡さつぐつわもされると、姿変えの魔道具を解除されたのか帝国人特有の容姿に変化した。

 隠形おんぎょうした影衆達が、犯人達を捕縛する状態を見て義祖父達が驚いた表情をしている。
 俺と響は何が起きているか分かっているため普段通りだ。
 少しして、1枚の羊皮紙が落ちてくる。
 読むと残りの12人は既に捕縛し、50階の安全地帯に置いてきたと書かれてあった。
 なら、もう犯人は全員捕まったんだな。
 沙良ちゃんも内容を確認したようで、簀巻きにされた帝国人をアイテムBOXに収納したのか姿が消える。
 響が妖精の仕業しわざだとフォローをしていた。
 毎週、ガーグ老の工房にある庭の木へ娘達がお供えをしているから、助けてくれたんだろうと話している。

 実際の妖精は可愛らしい見た目に反し、甘くみると痛い目にう凶悪な種族だけどな……。
 愛玩あいがん動物のように、捕獲しようとすれば命を落とすだろう。
 俺達は再び50階の安全地帯へと戻った。

 -------------------------------------
 お気に入り登録をして下さった方、エールを送って下さった方とても感謝しています。
 読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。
 応援して下さる皆様がいて大変励みになっています。
 これからもよろしくお願い致します。
 -------------------------------------
しおりを挟む
感想 2,333

あなたにおすすめの小説

家ごと異世界ライフ

ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!

異世界でお取り寄せ生活

マーチ・メイ
ファンタジー
異世界の魔力不足を補うため、年に数人が魔法を貰い渡り人として渡っていく、そんな世界である日、日本で普通に働いていた橋沼桜が選ばれた。 突然のことに驚く桜だったが、魔法を貰えると知りすぐさま快諾。 貰った魔法は、昔食べて美味しかったチョコレートをまた食べたいがためのお取り寄せ魔法。 意気揚々と異世界へ旅立ち、そして桜の異世界生活が始まる。 貰った魔法を満喫しつつ、異世界で知り合った人達と緩く、のんびりと異世界生活を楽しんでいたら、取り寄せ魔法でとんでもないことが起こり……!? そんな感じの話です。  のんびり緩い話が好きな人向け、恋愛要素は皆無です。 ※小説家になろう、カクヨムでも同時掲載しております。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!

七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」 その天使の言葉は善意からなのか? 異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか? そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。 ただし、その扱いが難しいものだった。 転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。 基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。 ○○○「これは私とのラブストーリーなの!」 主人公「いや、それは違うな」

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

私の家族はハイスペックです! 落ちこぼれ転生末姫ですが溺愛されつつ世界救っちゃいます!

りーさん
ファンタジー
 ある日、突然生まれ変わっていた。理由はわからないけど、私は末っ子のお姫さまになったらしい。 でも、このお姫さま、なんか放置気味!?と思っていたら、お兄さんやお姉さん、お父さんやお母さんのスペックが高すぎるのが原因みたい。 こうなったら、こうなったでがんばる!放置されてるんなら、なにしてもいいよね! のんびりマイペースをモットーに、私は好きに生きようと思ったんだけど、実は私は、重要な使命で転生していて、それを遂行するために神器までもらってしまいました!でも、私は私で楽しく暮らしたいと思います!

おばあちゃん(28)は自由ですヨ

美緒
ファンタジー
異世界召喚されちゃったあたし、梅木里子(28)。 その場には王子らしき人も居たけれど、その他大勢と共にもう一人の召喚者ばかりに話し掛け、あたしの事は無視。 どうしろっていうのよ……とか考えていたら、あたしに気付いた王子らしき人は、あたしの事を鼻で笑い。 「おまけのババアは引っ込んでろ」 そんな暴言と共に足蹴にされ、あたしは切れた。 その途端、響く悲鳴。 突然、年寄りになった王子らしき人。 そして気付く。 あれ、あたし……おばあちゃんになってない!? ちょっと待ってよ! あたし、28歳だよ!? 魔法というものがあり、魔力が最も充実している年齢で老化が一時的に止まるという、謎な法則のある世界。 召喚の魔法陣に、『最も力――魔力――が充実している年齢の姿』で召喚されるという呪が込められていた事から、おばあちゃんな姿で召喚されてしまった。 普通の人間は、年を取ると力が弱くなるのに、里子は逆。年を重ねれば重ねるほど力が強大になっていくチートだった――けど、本人は知らず。 自分を召喚した国が酷かったものだからとっとと出て行き(迷惑料をしっかり頂く) 元の姿に戻る為、元の世界に帰る為。 外見・おばあちゃんな性格のよろしくない最強主人公が自由気ままに旅をする。 ※気分で書いているので、1話1話の長短がバラバラです。 ※基本的に主人公、性格よくないです。言葉遣いも余りよろしくないです。(これ重要) ※いつか恋愛もさせたいけど、主人公が「え? 熟女萌え? というか、ババ專!?」とか考えちゃうので進まない様な気もします。 ※こちらは、小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

何度も死に戻りで助けてあげたのに、全く気付かない姉にパーティーを追い出された 〜いろいろ勘違いしていますけど、後悔した時にはもう手遅れです〜

超高校級の小説家
ファンタジー
武門で名を馳せるシリウス男爵家の四女クロエ・シリウスは妾腹の子としてプロキオン公国で生まれました。 クロエが生まれた時にクロエの母はシリウス男爵家を追い出され、シリウス男爵のわずかな支援と母の稼ぎを頼りに母子二人で静かに暮らしていました。 しかし、クロエが12歳の時に母が亡くなり、生前の母の頼みでクロエはシリウス男爵家に引き取られることになりました。 クロエは正妻と三人の姉から酷い嫌がらせを受けますが、行き場のないクロエは使用人同然の生活を受け入れます。 クロエが15歳になった時、転機が訪れます。 プロキオン大公国で最近見つかった地下迷宮から降りかかった呪いで、公子が深い眠りに落ちて目覚めなくなってしまいました。 焦ったプロキオン大公は領地の貴族にお触れを出したのです。 『迷宮の謎を解き明かし公子を救った者には、莫大な謝礼と令嬢に公子との婚約を約束する』 そこそこの戦闘の素質があるクロエの三人の姉もクロエを巻き込んで手探りで迷宮の探索を始めました。 最初はなかなか上手くいきませんでしたが、根気よく探索を続けるうちにクロエ達は次第に頭角を現し始め、迷宮の到達階層1位のパーティーにまで上り詰めました。 しかし、三人の姉はその日のうちにクロエをパーティーから追い出したのです。 自分達の成功が、クロエに発現したとんでもないユニークスキルのおかげだとは知りもせずに。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。