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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第730話 旭 樹 再召喚 24 ガーグ老とセイさんの手合わせ

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 日曜日。
 朝食はホットケーキだったのでしずくと喜ぶ。
 多少、生焼けだろうがげていようが妻の作る料理の中では、かなりましな部類に入る。
 バターとメープルシロップをたっぷり掛ければ、我が家の人気No.1だ。
 沙良ちゃんは目が覚めたらしく、いつも通り子供達の炊き出し準備に向かう。
 俺は魔力欠乏の経験がないから心配していたが、娘の様子を見る限り大丈夫らしい。
 昨日は、あのまま亡くなってしまうんじゃないかとすごあせり、ティーナの名前を何度も呼んでしまった。
 人前で、うっかり呼ばないよう気を付けないと……。

 炊き出し終了後。
 娘が楽器の弾き方を教えた子供達による、『きらきら星』と『カエルの歌』の演奏を聴く。
 1週間で、これほど上手になるとは驚きだ。
 楽器が高価な事や、自分達が練習出来るのは恵まれた環境だと理解しているんだろう。
 一生懸命練習したと分かる子供達の演奏に、俺達は心から拍手を送った。

 ガーグ老の工房へ着くと、ポチとタマにガルム達が飛んでくる。
 ガルム達は娘の前に行儀よく並び、1匹ずつ頭をでてもらい尻尾を振り喜んでいた。
 他人の騎獣がなついている様子を見て、皆は不審に思わないだろうか?
 ポチとタマがひびきと娘のそばにいたし、俺の肩には2匹が止まっている状態だから見慣れているかもな。
 
「こんにちは~。今日も、よろしくお願いします」

「おお、サラ……ちゃんが来てくれたか! うむ、昼食は期待出来そうだわ」

 妻が作った激甘カレーの洗礼を受けたガーグ老が、ほっとした表情で挨拶を返す。
 残りの影衆達も、どこか安心しているように見えた。
 今日の昼食は美味しいと思うから大丈夫だぞ?

「新しいメンバーを紹介しますね。セイさん、私の結婚相手のガーグ老です」

「えっ! このご老人が?」

 セイさんはガーグ老が結婚相手だと紹介された途端とたん、目の色を変えた。

「セイと申します。摩天楼まてんろうのダンジョンで冒険者をしていました。是非ぜひ一度、手合わせをお願いします」

「ほう、儂は若い者には負けんぞ」

 そして唐突とうとつに仕合を申し込んでいる。
 おっ、竜族の強さが分かるな。
 得物えものは何だろうと思っている間に、彼が大槍を取り出す。
 こりゃまた、相当な腕力が必要になる武器だ。
 見た目が華奢きゃしゃに見えるセイさんだが、本来の種族特性が残っているんだろう。
 相手の得物に合わせ、ガーグ老も槍を構えた。

「では、お相手致そう!」

 仕合が始まると、セイさんは何度もガーグ老と槍を交わしている。
 その度に武器がぶつかる鈍い音が響く。
 ガーグ老は全力を出してないが、セイさんも力をセーブしているようにみえた。
 互角というより、お互い本気を出さず腕を確かめているのか?
 案の定、長男のゼンが10分程で終了の合図を告げた。
 目的は果たしたという事だろう。

「セイとやら、お主はシュウゲンと同族か?」

「いえ、私はドワーフではありません」

「人族には有り得ん腕力だな。サラ……ちゃんのパーティーに強い者が入るのは喜ばしい。これからも精進しょうじん致せ」

「はい。手合わせ頂き、ありがとうございました」

 セイさんが一礼し戻ってきた。

「セイさん、すごいですね~。ガーグ老と引き分けるなんて驚きました!」

 娘が2人の仕合を見た感想を伝えている。

「私は護衛隊長ですから、負ける訳にはいきません」

 うんんっ? 今、護衛隊長って言ったよな?
 やっぱり記憶が戻ってるんじゃないか?
 聞きとがめた響もいぶかし気な表情をしている。
 俺達は、彼に笑顔でかわされたんだろうか?
 稽古が始まると、当然のようにセイさんが沙良ちゃんの相手になった。
 槍術のLvが10になったと嬉しそうに報告をもらいめてやる。
 娘は二対一になった稽古で、自分の攻撃が通らないのが不満らしくシルバーを呼び出す。
 子供の頃からの負けず嫌いを発揮する姿に、微笑ましくなった。
 それでも俺が槍を避けると、次にフォレストと泰雅たいがを追加する。
 おいおい、それじゃ反則だ! 従魔達が参加したら武術稽古にならないだろ。

 娘が昼食の準備をしている間、俺と響はガーグ老と工房内に入る。
 午後から王都の隠れ家へ行く予定なので、その打ち合わせだ。
 沙良ちゃんが迎えにくる前に戻る必要があるから、あまり時間がない。
 移動手段をどうするか相談しておこう。

「ガーグ老。食事が終ったら王都へ行きたいのです。ポチかタマを風竜に変態させた場合、どれくらいで到着しますか?」

「そうさな、10分もあれば問題ない。王都の何処どこへ行かれる予定かの」

「王が購入した隠れ家を見に行くんです。そこに、王宮の地図もあるそうなので……」

 第二王妃の肖像画を盗む手筈てはずもしないといけない。
 事前に飾られている場所と、衛兵達の動きも把握する必要がある。
 
「承知した。姫様、今日は大人しくしておいて下され」

 えっ? 俺は、いつも大人しいぞ?
 じいは何を心配してるんだ?
 隣では、ガーグ老の言葉に響が苦笑していた。

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