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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第726話 旭 樹 再召喚 20 Lv上げ&娘の契約竜

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 月~金曜日のダンジョン攻略を終え、土曜日は午後から摩天楼まてんろうのダンジョンに出現する魔物を倒してLv上げをする。
 沙良ちゃんと賢也けんや君はLv上げの必要がないので、これから商業ギルドへ馬車の手配に行くそうだ。
 異世界の家で子供達が楽器を弾けるように、送迎を頼むらしい。
 楽器の練習をするのは、冒険者登録していない10歳以下の子供達だから移動が心配なんだろう。

 俺はティーナを妊娠した頃を思い出す。
 胎教にいいからと、ひびきが宮廷楽師を呼び演奏させていたな。
 娘は冒険者ではなく他の職業が選べるよう、子供達に楽器の練習をさせる心算つもりなのかも知れない。
 支援している子供達が、死亡率の高い冒険者になるのをうれいてそうだ。
 『お菓子の店』も、その一環なんだろう。

 沙良ちゃんが俺達用に魔物を次々と出していく。
 おいおい、そんなに一気に倒せないぞ! そう思っていると魔物の姿が突然消える。
 どういう事だ? それまで俺は、娘が魔物を移転させていると思っていた。
 そうではなくアイテムBOXに収納していたと知り驚く。
 生き物も入るのか!?
 アイテムBOXの能力がある結花ゆか尚人なおとも、バレたらまずいじゃないか……。
 秘密にしなければならない事が増え頭が痛くなった。
 今回のLv上げでは、妻に合わせLv40になったと報告する。
 あと30Lv……、出来るだけLv70に近付けておきたい。

 これから『製麺店』に向うらしく、異世界へ移転する。
 俺は響に新しいメンバーの話を聞いていから興味津々だった。
 娘の契約竜は、どんな人物だろう?
 『製麺店』に到着すると、既にお目当ての人物がいた。
 見た目は日本人なので竜人と分からず、背も思ったより低い。
 彼はバスクさんを知っているようで、身体が欠損した状態を見て泣いていた。
 同じパーティーメンバーだったのか……。

「オーナー! セイが到着しましたぞ!」 

 俺達に気付いたバスクさんが声を掛けてくれる。
 それを聞き背を向けていた彼が振り返った。
 ここで響がセイと呼ばれた人物と再会する流れだ。
 しかし、彼は息子と賢也君を見るなり固まってしまう。

「……運命の人が……2人?」

 そう呟くと2人の手をそれぞれ握り、

「結婚して下さい!」

 いきなりプローポーズした!
 えっ? 響から聞いていた再会のシーンは、どこにいったんだ?
 呆気あっけに取られている間、響がすかさず彼の手を離させ間に割って入る。

「ひ……セイじゃないか! こんな所で会うなんて偶然だな! 元気にしていたか? いや~相変わらず、お前の冗談は分かりにくい! 2人は俺の息子だ」

「響さん! お久振りです、ええっと息子さんでしたか……何故なぜまた出遅れてしまったんでしょう……」

 プロポーズを冗談にしたようだが、本人の言葉で台無しになっている。
 娘の契約竜は少し残念な人物のようだ。
 それでも設定を思い出し、なんとか再会を演じていた。

「セイとサラちゃんの親父殿は知り合いでしたか」

 2人が知己であったと確認したバスクさんが、『お菓子の店』の護衛をしているリュートさんを呼びに行き、他の従業員達は気を利かせ2階へ上がった。
 メンバーだけになったところで、義父も摩天楼のダンジョンでパーティーを組んでいたと話し、響はセイさんが銀行の後輩であると伝え同じ日本人の転移者だと紹介する。
 これで、パーティー加入の布石ふせきは整ったか?

 15分後、バスクさんがリュートさんを連れてくる。
 彼は片腕がないリュートさんに会い再び泣き出した。
 その後も、1階に下りてきた従業員達の欠損した姿を見て大泣きしている。
 不思議な事に初対面で彼からプロポーズされた2人は嫌悪感を見せず、泣いているセイさんをどこか優しい眼差しで見つめていた。
 もしかすると、前世では近しい間柄だったのかも知れない。

 その後、再会を祝い『製麺店』の庭で『バーベキュー』をした。
 そこでリュートさんの娘を紹介されたが、妻と同じ名前に首をかしげる。
 アリサは日本名じゃないか? 疑問に思い注視すると、『とうもろこし』を見ても驚いた様子がない。
 んん? 響は知らないのか? 彼も転生者じゃ?
 夕食を食べたあと、セイさんもホームに移転する。
 
「わぁ~、日本だぁ~」

 少々オーバーリアクション気味に彼は言い、ホーム内を初めて見る演技をしていた。
 今夜は響の家じゃなく息子達の家へ泊まるらしい。
 俺は響に合図し、いつもの場所で待っていると伝えた。
 近所の居酒屋で2人分のビールを注文し、枝豆をまんでいると5分程で響が顔を出す。

「何か問題でもあったか?」

 呼び出された理由が気になるのか、開口一番尋ねられる。
 
「あぁ……。リュートさんは転生者じゃないか?」

 俺も時間を無駄にせず簡潔に答えた。

何故なぜ、そう思うんだ?」

「娘の名前が妻と一緒だし、義父が付けたのは日本名だろう。沙良ちゃんが出した、異世界にない野菜にも驚いてなかったぞ?」

「それは……、気付かなかったな」

 俺の言葉に響が押し黙り、しばらく考え込んでから口を開いた。

「アリサちゃんか……。義姉の可能性がある」

「義姉? なら、義父の奥さんか!」

「性別が変わっているなら俺達同様、内緒にしているかも知れん」

 それを聞いて衝撃を受けた。
 記憶があるまま女性から男性に変化するのも大変だろう。
 響や賢也君は若返っただけで、姿が同じだから彼女は身内だと気付いたはず
 夫の義父については、別人になっているからどうだか分からない。
 
「義父に気付いてると思うか?」

「どうだろう。結花ゆかさんの名前を聞いて、見当は付く気がするが……」

「こりゃ下手に知らせない方がいいかもな。本人が言うまで、俺達は黙っておこう」

「異世界で元夫婦が再会しても、一緒になれる訳じゃない。別の家族がいれば尚更、難しい問題だ」

「まっ俺達も一応その元夫婦とやらだが、お前とまた結婚する気はない」

「あれは偽装結婚だったろうが。お互い異世界に家族がいるんだから、お前と一緒になる必要がどこにある」

「分かってるよ。記憶を持ったまま異世界に転生すると厄介やっかいだって話だ」

「今回の場合は特にな……」

 俺達は知った事実を秘密にすると決め、その後2人で酒を交わした。
 結花が美容ポーションといつわった物を、美佐子みさこさんへ渡したらしく響に恨めしそうな目でにらまれる。
 夜の誘いを断られたのか? それは全面的に俺が悪かった。
 魔道具の腕輪で許してくれ……。

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