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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第690話 迷宮都市 地下15階&摩天楼のダンジョン(31階・99階) ちょっとした実験&新しい政策

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 どうしてこうなった!?
 劇の発表まで時間がないのに急遽きゅうきょ、白雪姫役をする羽目はめになった私はアマンダさんに連行され稽古に強制参加させられた。
 前回リリーさんと扇舞おうぎまいをした時とは違い、今回は台詞を覚える必要がある。
 しかも主役で、ほぼ出ずっぱりの私は台詞の量が多い。
 そして、その覚えた台詞も当日言えるかどうか……。
 人魚姫の衣装を着るよりはマシかも知れないけど、旭同様アドリブが待っていそうだ。
 兄に却下されたキスシーンがなくても、毒に倒れた白雪姫が生き返る内容を考えないと……。
 月曜日から遅くまで稽古に付き合わされ、寝不足の状態で翌日の朝を迎えた。

 火曜日、朝9時。
 テントから出てアマンダさんと挨拶を交わす。
 ケンさんがフォレストウサギの首に掛かっているポシェットに気付き、〇ーターラビットの刺繍ししゅうを見て新種の魔物かと聞いてきた。
 この世界のウサギの魔物は狂暴なので、可愛らしい刺繍のウサギとはまったく似ていない。 
 想像上の生き物だと答えると、食べる部分が少なそうだと言われてしまった。
 異世界では食肉扱いだから仕方ないとはいえ、〇ーターラビットが可哀想かわいそう……。

 地下16階の果物を収穫後、今日は地下9階の魔物でLv上げをする。
 地下8階? アンデッド階層は、旭と兄がいないと臭いがキツイから攻略しません。
 早速さっそく、突進してきたユニコーンへシルバーに騎乗したまま槍を繰り出す。
 乙女に向かってくる魔物は瞬殺だ!
 そして襲ってこないバイコーンは、こちらから攻撃を仕掛ける。
 あれ? 茜に対し、ユニコーンが襲ってこない。
 私との違いは何?
 逆にバイコーンからは敵意をあらわにされていた。
 う~ん、魔物の生態が謎すぎる。
 
 ケンタウロスにターンラカネリの槍を投擲とうてきしてもかわされ、肉薄する前に茜がさえぎり剣を振るう。
 一振りで首を落とされた魔物は、横倒しになって倒れた。
 相変わらず妹の剣の腕はえ渡っているなぁ。
 どうして私の槍は当たらないんだろうか……。
 索敵したバジリスクが蜷局とぐろを巻いている。
 兄がいない今がチャンスだと思い、前から確認したかった事を試してみた。
 バジリスクが石化の魔法を使用する瞬間に合わせ姿見を出す。
 
 魔法が鏡で跳ね返るのか知りたかったんだけど、結果は姿見が石化されただけだった。
 お話のような効果は、ないらしい。
 魔物に対し攻撃もせず姿見を出しただけで動かない私に気付いたシルバーが、アイスボールを撃ちバジリスクを絶命させる。
 それを見ていた父にあきれた表情で怒られた。

「沙良。好奇心旺盛おうせいなのは分かるが、魔物相手に危険な真似はするな」

「ちょっと興味があって……。石化の魔法は厄介やっかいだから、新しい討伐方法になるかも知れないでしょ?」

 ダンクさんの両親のパーティーが20年も石化状態でいたのを考え、安全に倒せればいいと思ったんだよね。

「これで鏡は意味がないと分かっただろう? あんまり心配させないでくれ」

 やれやれと首を振る父に、大人しくコクコクとうなずいておく。
 そんな私を妹が胡乱うろんげに見ていたので、しばらく実験するのは止めた方がいいか。
 いや、気になったら確かめたいと思うのは人間心理だと思うよ?
 その後は至って普通に槍のLv上げをし、3時間後に地下15階の安全地帯へ戻る。
 ホームの実家で昼食を食べてから、シュウゲンさんを連れ摩天楼まてんろうのダンジョン31階へ移転。
 私と茜は99階を内緒で攻略する。

 シルバーがまた地面に何かを書き、伝えようとしているみたいだ。
 横に線が引かれ、その上に↑が描かれている。
 これは……全然意味が分からない。
 念話が通じないと意思の疎通そつうは難しいなぁ。
 私に伝わらないとれたシルバーが体を低くし、騎乗をうながしてきた。
 どうやら背中に乗ってほしいらしい。
 私がシルバーの願い通り背に乗ると、浮遊魔法を発動させ高く浮き上がった。
 
 おおっ! またLvが上がったようだ。
 今の高さは10mくらいあるだろうか?
 従魔のステータスを確認すると、浮遊魔法Lv7になっている。
 私が飛翔魔法の練習をするのが不安で、同じくらいの高さまでLv上げを頑張ったのかしら?
 従魔に心配される主人って……、考えると少し悲しい。

 10分程シルバーは安全地帯の上を飛び地面に降りた。
 尻尾をフリフリさせて、自分に乗ってほしいとアピールしているみたい。
 これはあれだな、1人で飛ばないでと言っているようだ。
 私がドラゴンに進化したら背中に乗せてね~と伝えると、シルバーがこてんと寝転がる。
 昏倒している状態を示し、魔力が足りないと訴えているのかな?

 魔力といえば、MP値を上げる玉を従魔にめさせたらどうなるんだろう?
 気になった事は直ぐに確認しよう!
 これは危険な実験じゃないから問題ない。
 私はハイエーテルが固まった丸い紫の玉を、シルバーの口に入れてみた。
 シルバーは口に入れられた玉を、そのまま飲み込んでしまう。
 まぁ飴みたいに舐める習慣はないから、それでも効果があればいい。
 食事が不要な魔物に消化器官があるのか不明だけど……。

 5分後、シルバーのステータスを調べるとMP値が100増えている! 丸い玉は従魔にも効果があった。
 『MAXポーション』が変化した赤い玉もHP値が50増えるか確認すると、こちらも同様に増えていた。
 現在、迷宮都市には素行不良の冒険者達が多く集まっている。
 従魔自身も狙われる可能性があるため、シルバー達のHP/MPを増やせるなら上げておいた方がいい。
 それに、魔力不足で進化出来ないのも解消されるだろう。
 MPが10,000くらいになったらドラゴンになれるかも?

 私が考えていた内容を知り、シルバーが激しく首を横に振っている。
 10,000じゃ足りないのかな?
 毎日与えれば、1年後には36,500増えるから大丈夫だよ! 
 そう伝えるとシルバーは、再びこてんと寝転がりそのまま動かなくなってしまった。
 ドラゴンに進化するのは、相当MPが必要なようだ。
 100,000なら3年掛かりそうね。

 2回の攻略後、31階のテント内に戻り、帰ってきた兄達と迷宮都市ダンジョン地下15階の安全地帯へ移動。
 アマンダさんが、地下10階の冒険者を襲った10人の犯人が捕まったと教えてくれた。
 夕食時に冒険者ギルドで新しい通達があった話を聞く。
 迷宮都市でクランに入っていない冒険者が罪を犯した場合、斬首刑になるのを承諾した誓約書へ署名しないと、ダンジョン攻略は出来ないそうだ。
 その署名と引き換えに魔道具の腕輪を渡され、それがないと『MAXポーション』の購入も不可となる。

 この大胆な政策を行えるのは、独立採算制の都市ならではだろう。
 犯行目的の冒険者は、処罰が重い事を知り躊躇ちゅうちょするに違いない。
 普通は鉱山送りの罪が重罪犯に課せられる斬首となれば、命を天秤にかけリスクを背負うようなものだ。
 オリビアさんはダンジョン内での犯罪が増えるのを危惧きぐし、適格な判断を下したと思う。

 今回捕まった28人の犯人達の刑が実際に実行されれば、簡単に罪を犯そうとする人間は確実に減る。
 ダンジョン内と都市内の治安回復は早急に改善されるかな?
 他領から来た冒険者も、旨味がないと分かれば都市を離れるかも知れない。
 死刑執行の書類に署名してまで、悪事を働こうとをする馬鹿はいないはず
 この新しい政策が執行されるのを、冒険者や都市の人々は賛成するだろう。

 クランに入っていない私達も署名する必要があるわよね?
 金曜日、オリビアさんの所に行こう。
 食後、アマンダさんに確保され劇の稽古に参加。
 必死に台詞を覚えているけど、役に立つのかはなはだ疑問だ……。

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