上 下
553 / 709
第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第686話 迷宮都市 武術稽古 お礼の『チーズバーガーセット』&忘れられた犯人達

しおりを挟む
あかね殿は良い従魔を持っておるな」

 ガーグ老が、ダイアンとアーサー達を感心したように見るとうなずいている。
 黒ひょう達は、摩天楼まてんろうのダンジョン55階に出現する魔物だ。
 迷宮都市ダンジョン地下10階にいたシルバー達や、地下14階にいたフォレスト達より当然高Lvだろう。
 シルバーだけはゴールデン・・・・・ウルフに進化しているから、どれくらい強くなっているか分からないけど……。
 ガルちゃん達はダンジョンでテイムした訳じゃないからなぁ。
 出現する階層で魔物のLvを判断しているので、こちらも不明だった。

「私は、姉と違い種族の違う魔物はテイム出来ませんが……。ましてやあんな方法で……、いやすごいのは姉の方でしょう」

 茜はそう言って苦笑する。
 冒険者登録をした後で迷宮都市ダンジョンの魔物から魅了魔法を覚え、テイムをしようと地下15階に出現する迷宮イーグルに試した妹は、魔物をテイム出来なかったんだよね。
 テイム魔法を先に覚えてしまうと、魅了ではテイム不可能らしい。
 種族の異なる魔物を私以外が魅了出来るかは、試してないため何とも言えない。
 母はシルバーウルフ、しずくちゃんのお母さんはフォレストウサギしかテイムしていないからだ。
 主人のLvが上がると従魔達のMP消費が多くなるから、2人はこれ以上従魔を増やさない方がよいだろう。
 既にパーティーメンバー全員の騎獣がそろった状態だし。

 茜の紹介後は、ガーグ老の一声で稽古が始まる。
 妹はいつきおじさんとセイさんと一緒に私の稽古相手をするそうだ。
 シュウゲンさんとかなで伯父さんは、ガーグ老とゼンさん相手に仕合を申し込んでいる。
 私の稽古相手が3人になり、旭の事を笑えなくなった。
 もう絶対勝てないじゃん!

 悔しいから従魔達に牽制けんせいをお願いすると、茜がダイアン達を投入。
 うっ、数が負けてる。
 ここはガルちゃん達にも応援してもらおう。
 更に10匹の従魔を増やすと、稽古場は従魔達であふれ練習する場所がなくなってしまった。

「姉さん。大人しく槍の練習をした方がいい」

 あきれた茜にそう言われ、呼び出した従魔達を戻す。
 
「稽古相手は1人でいいよ。樹おじさんとセイさんは、2人で仕合でもして下さい」

 一番高Lvの茜1人がいれば充分だ。
 
「そんな! ただでさえ一緒の時間が少ないのに……」

 樹おじさんは私の提案に反対なのか、涙目になっている。
 私じゃなく雫ちゃんとの時間を増やしてあげてよ!
 セイさんは素直に受け取り樹おじさんを連れ、その場を離れていった。
 やれやれ、これで一対一の稽古が出来る。
 茜と相対稽古を始めると、ガーグ老としていた時のような安定感があった。
 私がどんな攻撃をしても怪我をする事はないだろう。
 槍術Lv12の私は、Lv150ある茜には勝てない。
 ここは胸を貸りる心算つもりで、思いっきりやらせてもらおう。
 かなり手加減していると分かるけど、茜も私のLvに合わせ相手をしてくれた。
 実際の所、誰が一番強いんだろうなぁ。

 ガーグ老・セイさん・シュウゲンさん・茜・奏伯父さん。
 私の予想では、こんな感じで順位付けしている。
 その後に父・樹おじさん・サヨさん・雫ちゃんだろうか?
 多分、雫ちゃんのお母さんと私は同Lvだ。
 ダンジョン攻略を中止している母が一番低いかも?

 ガーグ老から稽古終了の合図が掛かった。
 旭の方を見ると虫の息をしている。
 今日も沢山しごかれたようだ。
 さて、私は皆の昼食準備を始めよう。
 妖精さんの分は『チーズバーガーセット』を20食準備してある。
 作っている間、父と奏伯父さんが食べたそうにしていたから同じメニューにしよう。

 今回は『ナン』ではなく『バンズ』を手作りしていた。
 ガーグ老達と妖精さんが食べる分には問題ない。
 中に入れる『ハンバーグ』を雫ちゃんと一緒に作り、『ナゲット』と『フライドポテト』を揚げる。
 『ナゲット』には、袋に入っていたバーベキューソースとマスタードソースを小皿に移し付けてもらおう。
 完成した料理を三男のキースさんが運び、相変わらず、お嫁さん達は動かない。
 用意した料理を、雫ちゃんのお母さんと木の下へお供えに行く。
 その際、摩天楼のダンジョンで犯人を捕まえてくれたお礼を伝えると、木の枝を揺らし返事をしてくれた。

「お待たせしました。皆さん、今日もありがとうございます。お昼のメニューは、『チーズバーガー』・『ナゲット』・『フライドポテト』です。それでは頂きましょう」

「頂きます!」

「おおっ! これが姫様の食べたがっておった『ハンバーガー』とやらだな」

 そう言って、ガーグ老が真っ先に『チーズバーガー』にかぶり付く。
 
「姫様! 美味しいですぞ! 付け合わせの『フライドポテト』にも良く合いますな。『ナゲット』も、このソースに付けて食べると旨い!」

 ここにはいない姫様へ想いを伝えているのだろうか……。
 
「ガーグ老、『チーズバーガー』も旨いが『テリヤキバーガー』も捨てがたい! 今度、娘に作ってもらおう」

 ガーグ老の隣にいる樹おじさんが、父を見た後でそう返事をしている。
 
「そうですか! サラ……ちゃん、作ってくれるかの?」

「ええ、いいですよ」

 しかし、どうして樹おじさんは私をやたらと連呼するんだろう。
 そしてガーグ老は、おじさんが娘だと言ったのに雫ちゃんではなく迷わず私にお願いしてくる。
 料理を作っているのは確かに私だけど……何かに落ちない。
 父が一緒にいるから、娘と呼ばれても問題はないと思うよ?
 だけど、名前を呼んでほしいなぁ。
 知らない人が聞いたら、私が樹おじさんの娘に間違われちゃう。
 そんな事を思いながら、私も『チーズバーガー』を完食する。
 大量に揚げた『ナゲット』と『フライドポテト』は、健啖家けんたんかのご老人達が黙々と食べていた。

 食後に木の下へ行くと、2通の手紙が残されている。
 雫ちゃんのお母さんは先週リクエストされた『ホットケーキ』を持参したようで、来週もまた食べたいと書かれているのを読みニコニコしていた。
 私の方は、『チーズバーガー』が絶品だったと感激した内容になっている。
 20食分は多いかも知れないと心配していたけど、そこは問題なかったようだ。

 シュウゲンさんと奏伯父さん、父と樹おじさんを残し私達は一度ホームに帰る。
 兄と旭は、これから病院で勉強会をするらしい。
 セイさんと茜は休日だから、ゆっくりしてもらおう。
 私はサヨさんと一緒に劇の衣装作りをする予定。
 サヨさんを迎えに行こうとした所、雫ちゃんのお母さんから袖をつかまれた。

「沙良ちゃん、相談があるんだけど……。ええっと、雫を襲った冒険者達を出すの忘れていたわ」

 非常に困ったような表情で言われ、私は唖然あぜんとなる。
 あああぁ~! 金曜日、冒険者ギルドに引き渡してなかったよ!
 今日は日曜日だ。
 襲ってきた犯人を2日間も、どうしていたのか理由を考えないと……。
 アイテムBOXに入っている犯人達には記憶がないのが救いか。
 私は急遽きゅうきょ予定を変更し、簀巻すまきにされた犯人達を冒険者ギルドへ引き渡す方法を考え始めた。

 -------------------------------------
 お気に入り登録をして下さった方、エールを送って下さった方とても感謝しています。
 読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。
 応援して下さる皆様がいて大変励みになっています。
 これからもよろしくお願い致します。
 -------------------------------------
しおりを挟む
感想 2,333

あなたにおすすめの小説

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

転生皇女は冷酷皇帝陛下に溺愛されるが夢は冒険者です!

akechi
ファンタジー
アウラード大帝国の第四皇女として生まれたアレクシア。だが、母親である側妃からは愛されず、父親である皇帝ルシアードには会った事もなかった…が、アレクシアは蔑ろにされているのを良いことに自由を満喫していた。 そう、アレクシアは前世の記憶を持って生まれたのだ。前世は大賢者として伝説になっているアリアナという女性だ。アレクシアは昔の知恵を使い、様々な事件を解決していく内に昔の仲間と再会したりと皆に愛されていくお話。 ※コメディ寄りです。

転生してしまったので服チートを駆使してこの世界で得た家族と一緒に旅をしようと思います

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
俺はクギミヤ タツミ。 今年で33歳の社畜でございます 俺はとても運がない人間だったがこの日をもって異世界に転生しました しかし、そこは牢屋で見事にくそまみれになってしまう 汚れた囚人服に嫌気がさして、母さんの服を思い出していたのだが、現実を受け止めて抗ってみた。 すると、ステータスウィンドウが開けることに気づく。 そして、チートに気付いて無事にこの世界を気ままに旅することとなる。楽しい旅にしなくちゃな

異世界でお取り寄せ生活

マーチ・メイ
ファンタジー
異世界の魔力不足を補うため、年に数人が魔法を貰い渡り人として渡っていく、そんな世界である日、日本で普通に働いていた橋沼桜が選ばれた。 突然のことに驚く桜だったが、魔法を貰えると知りすぐさま快諾。 貰った魔法は、昔食べて美味しかったチョコレートをまた食べたいがためのお取り寄せ魔法。 意気揚々と異世界へ旅立ち、そして桜の異世界生活が始まる。 貰った魔法を満喫しつつ、異世界で知り合った人達と緩く、のんびりと異世界生活を楽しんでいたら、取り寄せ魔法でとんでもないことが起こり……!? そんな感じの話です。  のんびり緩い話が好きな人向け、恋愛要素は皆無です。 ※小説家になろう、カクヨムでも同時掲載しております。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜

家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。 そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?! しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...? ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...? 不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。 拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。 小説家になろう様でも公開しております。

異世界でスローライフとか無理だから!

まる
ファンタジー
突如青白い光に包まれ目を開ければ、目の前には邪神崇拝者(見た目で勝手に判断)の群れが! 信用できそうもない場所から飛び出していざ行かん見慣れぬ世界へ。 ○○○○○○○○○○ ※ふんわり設定。誤字脱字、表現の未熟さが目につきます。 閲覧、しおり、お気に入り登録ありがとうございます!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。