上 下
551 / 709
第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第684話 迷宮都市 地下15階&摩天楼のダンジョン(31階・99階) 3店舗へ妹の紹介

しおりを挟む
 午後から私達は、迷宮都市と摩天楼まてんろうのダンジョンに分かれ攻略する。
 いつもは旭を摩天楼のダンジョンに連れていくんだけど……。
 しずくちゃんが狙われたと聞いては、何も対策をしない訳にはいかない。
 いつきおじさんと雫ちゃんとお母さんの3人はLvが40しかないのだ。
 Lv上げは土曜日に行うとして、誰か高Lvのメンバーを付けた方がいいだろう。
 一番高Lvのあかね(Lv200)は、私のそばを離れるのは嫌がりそう。
 次にLvが高いシュウゲンさん(Lv175)は、迷宮都市で活動していない。
 となると、かなで伯父さん(Lv120)が適任か……。
 娘が冒険者をしているのが心配だという理由で、パーティーを組んだんだしね。

「奏伯父さん。午後から旭の代わりに、樹おじさん達と迷宮都市のダンジョンへ行ってくれませんか?」

「あぁ、勿論もちろんだ。娘と孫を危険な目に合わせる訳にはいかない。俺が付いていくから安心しろ」

「よろしくお願いします」

 犯人への対策は、これで大丈夫かな?
 雫ちゃん達を迷宮都市ダンジョン地下15階に送った後、シュウゲンさんを連れ私達は摩天楼のダンジョン31階へ移動した。
 茜は99階へ攻略に行きたいみたいけど、明日のLv上げのため生きたまま魔物を収納する必要があるから我慢してもらう。
 99階の魔物なんか出したら、速攻で兄にバレるからね。
 2人で階層を移動した件は内緒にしないと……。

 私達は大人しくテント内でこもり、暇そうな茜にDVDプレイヤーを渡し録画したTVドラマを見てもらった。
 ダンジョンマスターだった13年。
 娯楽とは無縁な生活を送っていた茜は喜び、結構楽しんでいたようだ。
 私は魔物をアイテムBOXへ収納しながら、別の作業も同時にこなす。
 シルバー達が首に掛けているポシェットを雫ちゃんがうらやましそうに見ていたから、フォレストウサギ用も作製してあげよう。
 刺繍ししゅう人参にんじんか〇ーターラビットと迷ったけど、結局どちらも入れた。
 これなら異世界の人が見ても、可愛いと思うだろう。

 あっ、でもウサギは魔物だった……。
 人参との関連性は私達しか分からないかしら?
 アレク・源五郎げんごろう・マリー用のポシェットが完成。
 樹おじさんにマジックバッグにしてもらうのは、明日Lv上げが済んだ後でしよう。
 多分Lvが5くらい上がると思う。
 5㎥の差は大きい。

 その後、2回の攻略を終え冒険者ギルドで換金を済ませる。
 茜は私が槍のLv上げの最中倒した魔物を換金し異世界のお金を初めて手にすると、金貨を丁寧に洗った後、んでいたよ……。
 私達に、その発想はなかった。
 パーティーメンバーが増えたので、各店舗へ茜を紹介しに行こう!
 まずは『肉うどん店』へ寄り、母親達に妹を紹介する。
 茜の顔を見て数人の顔が赤く染まった。
 おやおや? まさか、これは……。

「オーナー。そのっ……、妹さんは独身ですか?」

 その内の1人が気になったらしく聞いてきた。

「残念だけど、既に結婚してるの。その内、旦那さんも紹介出来ると思うわ」

 私の返事を聞いた母親達が、落胆した表情を見せる。
 子供は既にいるから、同性の茜でも問題ないのかな?
 うちのパーティーは高収入なので再婚相手には最適だろう。
 子供達にバナナを1本ずつ渡し店を出る。
 次は『製麺店』に向かい茜を紹介すると、妹だと信じてもらえず悲しかった。
 
 最後に寄った『お菓子の店』は遅い時間だったため、子供達が帰宅した後で店にはリュートさんとアリサちゃんしかいない。
 2人に茜を妹だと紹介したら、リュートさんは驚かず、一瞬だけ茜を懐かしそうに見つめた気がした。
 アリサちゃんは、「沙良お姉ちゃんの、お姉ちゃん?」と不思議そうに首をかしげる。
 私が妹だと言ったのは、綺麗に忘れられてしまったようだ。
 『肉うどん店』の母親達が驚かなかったのは、茜を見るなり品定めしていたからなのか……。
 父親似の妹は、兄と良く似ているからイケメン? だとは思うけどね!

 茜と再会後、1週間の攻略を終え夕食はメンバー全員で外食する事にした。
 妹のリクエストを聞き高級中華料理店へ向かう。
 本人はラーメンが食べたかったらしいけど、いくらなんでも、それじゃねぇ~。
 1人1万円のコース料理を注文し、豪華な内容の料理を楽しんだ。
 私は母の隣へ座り、お腹の中にいる香織かおりちゃんへ色々と話しかける。
 地球の料理を食べたがっていたから1品1品、味を教えてあげた。
 そんな私を見て母が笑っている。

「この子が食べられるようになるのは、まだまだ先よ? 本当に、気の早いお姉ちゃんで困るわね~」

 妊娠中の母に中華の匂いは大丈夫か心配だったけど、悪阻つわりはまだのようで問題なく完食していた。 
 夕食後、明日はLv上げをすると雫ちゃん達に伝え、メンバーを各家へ送り届ける。
 私も竜の卵に魔力をあげて就寝。

 翌日、土曜日。
 兄達と奏屋かなでやで果物を卸し、雫ちゃんのお母さんを連れ薬師ギルドへ。
 受付嬢からいつもの部屋へ案内されると、3人がポーションに浄化とヒールの魔法を掛けていく。 
 作業が終わる頃、ゼリアさんが部屋に入ってきた。
 
「ゼリアさん、おはようございます。薬草を沢山採取したので、よろしくお願いしますね」

「おはよう、サラちゃん。薬師ギルドでマジックバッグを購入したから、今日は全部買い取れるだろう」

「じゃあ、まず癒し草から出します」

「あぁ、少し待っておくれ」

 ゼリアさんが、別のマジックバッグへポーション瓶を入れテーブルを片付ける。
 何もない状態になった所で、私は癒し草を出していった。
 出した癒し草をゼリアさんがマジックバッグへ入れていく。
 次々と出すうちにゼリアさんの表情が変わる。

「あ~、サラちゃん? 一応マジックバッグ100㎥を用意したんだけどねぇ。これ以上は入らないようだよ……」

 ハニー達には1匹ずつマジックバッグを渡しているから、100㎥の量を超えてしまったらしい。
 アイテムBOXは容量無制限なので、中にどれだけ入っているか本数でしか分からないんだよね。

「えっと、じゃあ今日はこれだけで!」

「参考までに聞いておくけど、あとどれくらいの量がありそうなんだい?」

 癒し草の他にも魔力草があるんだよね~。

「多分、倍はあるかと……」

「そっ……そうかい。なら、マジックバッグをもう一つ購入しておこうかね。あぁ、それと摩天楼のダンジョンに呪具を設置しようとした帝国人が捕まったそうだよ。30階で設置前の呪具が大量に発見されたらしい。最終攻略階層の50階には呪具が設置されていたようだけど、何故なぜか魔物が1匹もいなくなり呪具として機能しなかったみたいだ。事前に送った『毒消しポーション』で解呪出来たとお礼があったから、作製者のサラちゃん達に伝えておこうと思ってね」 

「それは、役に立って良かったです! これで、呪具を設置するのをあきらめてくれるでしょうか?」

 知っている情報だったけど、初めて聞くような顔をして食い気味に返事をする。

「さて、それはどうだろうね。ただ連中も摩天楼のダンジョンへの設置は、かなり力を入れていたみたいだ。それが失敗したとなると、次は少し慎重に動くかも知れない」

 高価な呪具を、これでもかと投入した計画がご破算になったのだ。
 帝国もかなり痛手を受けただろう。
 冒険者に成りすました犯人達も全員捕まり、最早もはや帝国の関与は疑うべくもない。
 なにより、それだけの人材を育成するには時間が必要だ。
 他国に潜入し、工作活動をする事の出来る人間は多くないだろう。
 私の結婚式当日に襲ってくると考えれば、カルドサリ王国にいる帝国人の数はかなり減るに違いない。
 ゼリアさんに情報のお礼を伝え、お金を受け取り受付嬢から大量のハイエーテルを購入した後で薬師ギルドを後にした。

 -------------------------------------
 お気に入り登録をして下さった方、エールを送って下さった方とても感謝しています。
 読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。
 応援して下さる皆様がいて大変励みになっています。
 これからもよろしくお願い致します。
 -------------------------------------
しおりを挟む
感想 2,333

あなたにおすすめの小説

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

引きこもり転生エルフ、仕方なく旅に出る

Greis
ファンタジー
旧題:引きこもり転生エルフ、強制的に旅に出される ・2021/10/29 第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞 こちらの賞をアルファポリス様から頂く事が出来ました。 実家暮らし、25歳のぽっちゃり会社員の俺は、日ごろの不摂生がたたり、読書中に死亡。転生先は、剣と魔法の世界の一種族、エルフだ。一分一秒も無駄にできない前世に比べると、だいぶのんびりしている今世の生活の方が、自分に合っていた。次第に、兄や姉、友人などが、見分のために外に出ていくのを見送る俺を、心配しだす両親や師匠たち。そしてついに、(強制的に)旅に出ることになりました。 ※のんびり進むので、戦闘に関しては、話数が進んでからになりますので、ご注意ください。

転生皇女は冷酷皇帝陛下に溺愛されるが夢は冒険者です!

akechi
ファンタジー
アウラード大帝国の第四皇女として生まれたアレクシア。だが、母親である側妃からは愛されず、父親である皇帝ルシアードには会った事もなかった…が、アレクシアは蔑ろにされているのを良いことに自由を満喫していた。 そう、アレクシアは前世の記憶を持って生まれたのだ。前世は大賢者として伝説になっているアリアナという女性だ。アレクシアは昔の知恵を使い、様々な事件を解決していく内に昔の仲間と再会したりと皆に愛されていくお話。 ※コメディ寄りです。

転生してしまったので服チートを駆使してこの世界で得た家族と一緒に旅をしようと思います

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
俺はクギミヤ タツミ。 今年で33歳の社畜でございます 俺はとても運がない人間だったがこの日をもって異世界に転生しました しかし、そこは牢屋で見事にくそまみれになってしまう 汚れた囚人服に嫌気がさして、母さんの服を思い出していたのだが、現実を受け止めて抗ってみた。 すると、ステータスウィンドウが開けることに気づく。 そして、チートに気付いて無事にこの世界を気ままに旅することとなる。楽しい旅にしなくちゃな

異世界でお取り寄せ生活

マーチ・メイ
ファンタジー
異世界の魔力不足を補うため、年に数人が魔法を貰い渡り人として渡っていく、そんな世界である日、日本で普通に働いていた橋沼桜が選ばれた。 突然のことに驚く桜だったが、魔法を貰えると知りすぐさま快諾。 貰った魔法は、昔食べて美味しかったチョコレートをまた食べたいがためのお取り寄せ魔法。 意気揚々と異世界へ旅立ち、そして桜の異世界生活が始まる。 貰った魔法を満喫しつつ、異世界で知り合った人達と緩く、のんびりと異世界生活を楽しんでいたら、取り寄せ魔法でとんでもないことが起こり……!? そんな感じの話です。  のんびり緩い話が好きな人向け、恋愛要素は皆無です。 ※小説家になろう、カクヨムでも同時掲載しております。

策が咲く〜死刑囚の王女と騎士の生存戦略〜

鋸鎚のこ
ファンタジー
亡国の王女シロンは、死刑囚鉱山へと送り込まれるが、そこで出会ったのは隣国の英雄騎士デュフェルだった。二人は運命的な出会いを果たし、力を合わせて大胆な脱獄劇を成功させる。 だが、自由を手に入れたその先に待っていたのは、策略渦巻く戦場と王宮の陰謀。「生き抜くためなら手段を選ばない」智略の天才・シロンと、「一騎当千の強さで戦局を変える」勇猛な武将・デュフェル。異なる資質を持つ二人が協力し、国家の未来を左右する大逆転を仕掛ける。 これは、互いに背中を預けながら、戦乱の世を生き抜く王女と騎士の生存戦略譚である。 ※この作品はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。 ※本編完結・番外編を不定期投稿のため、完結とさせていただきます。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。