541 / 709
第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略
第674話 迷宮都市 妹の召喚
しおりを挟む
手紙を読み終わると、ある一文が気になった。
『冒険者がいる階層には移動出来ません』って、茜は51階より下には行けないという事?
「あの……、これだと茜さんは51階からしか移動出来ませんよね?」
セイさんも同じ疑問を感じたのか、今まで家族に遠慮し黙っていたようだけど質問を投げかけた。
「そこが憎い所だな。武器も防具もなくLv0の状態で、いきなり51階の魔物と戦う羽目になった。今となっては、あれも良い思い出だよ……」
その時の記憶を思い起こしたのか、茜は遠い目になって呟く。
いやいや、普通に考えて無理でしょ!
Lv0で魔物と戦うなんて無謀過ぎる!
「茜、51階の魔物なら相当強い筈よ? 武器がないのに倒せたの?」
「幸い風魔法が使用出来たから、ウィンドウォールで防御しつつウィンドボールを何度も撃った。それで最初の内は魔法Lvを上げ、一つ目の二足歩行していた大きな魔物に狙いを定め、足を徹底的に蹴り続けた。膝を落とし立てなくなった所で、延髄にLvを上げた魔法を撃ち倒したんだ。1ヶ月も掛かり大変だったが1匹倒した後はLvが一気に50まで上がったから、その後は体術を鍛え敵の持っている武器を奪い剣術や槍術Lvを上げたよ」
何て事ないように言ってるけど、それが出来る人間はいないと思う……。
もしかして一つ目の二足歩行した魔物はサイクロプスじゃ?
祖父の血がそうさせるのか、武闘派の茜にとってダンジョンの魔物を倒すのは鍛錬の延長なのかも知れない。
それなら強くなるのに貪欲な性格の妹が、ダンジョン攻略するのを楽しかったと言うのも頷ける。
「茜は凄いわね! 私が最初に倒したのはスライムよ。それも槍で突いたら簡単に死んじゃう魔物だったし」
「私は、姉さんが冒険者をしている方が驚いた。まさか、摩天楼のダンジョンを攻略してるとは思わなかったな。それに、どうしていきなり最終階層まで来たんだ? 冒険者が攻略しているのは50階までだったろう?」
不思議そうに言われ、宝箱の中身について思い出す。
「あぁそれはね、30階で出現する宝箱の中身があまりにも酷かったからよ! ビ……スケスケの踊り子の衣装と鬼のパンツなんて、もう絶対ダンジョンマスターは日本人の男性に違いないと思い殴り込みに行ったの」
ついうっかり、兄の知らない1回目の宝箱の中身を口にしてしまいそうになり焦る。
危なかった~。
黄金色のビキニとブーメランパンツは秘密にしないと!
「宝箱? へぇ~、そんな物があるなんて知らなかったよ」
「じゃあ、やっぱり茜が宝箱の中身を操作してた訳じゃないのね。私達の運が単に悪かっただけかしら?」
「そうとも言えないんじゃない? 結果的には家族と再会出来た訳だし、『手紙の人』が会えるようにしてくれたのかも?」
旭がそう推測を口にする。
うん、まぁ茜と再会出来たのは確かに嬉しい。
残念な宝箱の中身は、その対価だと思おう。
「私、今はLv55なの。Lv60になったら2人召喚出来るから、旦那さんを呼んであげるよ」
「旦那? あぁ相棒の事か……、いやあいつは呼ばなくてもいい。それより私だけ年齢が高い方が問題だ。姉さんが再召喚し若返らせてほしい」
「旦那さんはいいの? 寂しくない?」
「ここに家族がいるから大丈夫だ」
やけにきっぱり言われ、それ以上何も聞けなくなってしまう。
13年も独りだったから旦那さんの存在を忘れてしまったのかしら?
でもそれを聞いた母の顔が真剣な表情に変わった。
「茜、それは駄目よ。子供達の中で唯一結婚しているのに、孫の顔くらい見せてちょうだい」
「母さんには、これから子供がまた増えるじゃないか」
「子供と孫は違います。取り敢えず沙良に召喚してもらった後、早崎君を呼びましょ」
「わっ、分かった。でも子供を産むのは……」
「何か言った?」
「いえ、……何でもありません」
母に詰め寄られ、旦那さんを召喚するのを了解したみたいだけど……。
どうやら茜は子供を産みたくないらしい。
旦那さんは欲しくないのかな?
ちなみに、妹夫婦は仕事の関係上で別姓にしたらしい。
旦那さんの名前は早崎 順一だ。
「じゃあ、召喚! 椎名 茜!」
後にする必要もないだろうと、私は茜を再召喚する。
茜の体が眩しく光った後は18歳になった姿で現れた。
床にひらりと例の手紙が落ちる。
私は手紙を拾い茜に手渡してあげた。
【召喚された椎名 茜様へ】と書かれた封筒
『椎名 沙良様から、召喚された方へ
すべての元凶は私です。
この責任を取り、出来うる限りの保障をさせて頂きました。
まず、いま貴方がいる世界は地球ではありません。
剣と魔法のファンタジーである所の異世界です。
椎名 沙良様にあわせ、年齢は設定させて頂きました。
また、貴方様の能力を変更致しました。
なお既に覚えた能力は、そのままとさせて頂きます。
椎名 茜様の能力
【時空魔法】
●アイテムBOX 容量無限・時間停止。
【風魔法】
●ウィンドボール 攻撃魔法。
●ウィンドウォール 防御魔法。
まずは「ステータス」と唱え、能力の確認をお勧めします。
最後に、このような不幸な目に遭わせてしまいましたが、これからの貴方の人生が幸多き事でありますよう、お祈り申し上げます。』
-------------------------------------
お気に入り登録をして下さった方、エールを送って下さった方とても感謝しています。
読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。
応援して下さる皆様がいて大変励みになっています。
これからもよろしくお願い致します。
-------------------------------------
『冒険者がいる階層には移動出来ません』って、茜は51階より下には行けないという事?
「あの……、これだと茜さんは51階からしか移動出来ませんよね?」
セイさんも同じ疑問を感じたのか、今まで家族に遠慮し黙っていたようだけど質問を投げかけた。
「そこが憎い所だな。武器も防具もなくLv0の状態で、いきなり51階の魔物と戦う羽目になった。今となっては、あれも良い思い出だよ……」
その時の記憶を思い起こしたのか、茜は遠い目になって呟く。
いやいや、普通に考えて無理でしょ!
Lv0で魔物と戦うなんて無謀過ぎる!
「茜、51階の魔物なら相当強い筈よ? 武器がないのに倒せたの?」
「幸い風魔法が使用出来たから、ウィンドウォールで防御しつつウィンドボールを何度も撃った。それで最初の内は魔法Lvを上げ、一つ目の二足歩行していた大きな魔物に狙いを定め、足を徹底的に蹴り続けた。膝を落とし立てなくなった所で、延髄にLvを上げた魔法を撃ち倒したんだ。1ヶ月も掛かり大変だったが1匹倒した後はLvが一気に50まで上がったから、その後は体術を鍛え敵の持っている武器を奪い剣術や槍術Lvを上げたよ」
何て事ないように言ってるけど、それが出来る人間はいないと思う……。
もしかして一つ目の二足歩行した魔物はサイクロプスじゃ?
祖父の血がそうさせるのか、武闘派の茜にとってダンジョンの魔物を倒すのは鍛錬の延長なのかも知れない。
それなら強くなるのに貪欲な性格の妹が、ダンジョン攻略するのを楽しかったと言うのも頷ける。
「茜は凄いわね! 私が最初に倒したのはスライムよ。それも槍で突いたら簡単に死んじゃう魔物だったし」
「私は、姉さんが冒険者をしている方が驚いた。まさか、摩天楼のダンジョンを攻略してるとは思わなかったな。それに、どうしていきなり最終階層まで来たんだ? 冒険者が攻略しているのは50階までだったろう?」
不思議そうに言われ、宝箱の中身について思い出す。
「あぁそれはね、30階で出現する宝箱の中身があまりにも酷かったからよ! ビ……スケスケの踊り子の衣装と鬼のパンツなんて、もう絶対ダンジョンマスターは日本人の男性に違いないと思い殴り込みに行ったの」
ついうっかり、兄の知らない1回目の宝箱の中身を口にしてしまいそうになり焦る。
危なかった~。
黄金色のビキニとブーメランパンツは秘密にしないと!
「宝箱? へぇ~、そんな物があるなんて知らなかったよ」
「じゃあ、やっぱり茜が宝箱の中身を操作してた訳じゃないのね。私達の運が単に悪かっただけかしら?」
「そうとも言えないんじゃない? 結果的には家族と再会出来た訳だし、『手紙の人』が会えるようにしてくれたのかも?」
旭がそう推測を口にする。
うん、まぁ茜と再会出来たのは確かに嬉しい。
残念な宝箱の中身は、その対価だと思おう。
「私、今はLv55なの。Lv60になったら2人召喚出来るから、旦那さんを呼んであげるよ」
「旦那? あぁ相棒の事か……、いやあいつは呼ばなくてもいい。それより私だけ年齢が高い方が問題だ。姉さんが再召喚し若返らせてほしい」
「旦那さんはいいの? 寂しくない?」
「ここに家族がいるから大丈夫だ」
やけにきっぱり言われ、それ以上何も聞けなくなってしまう。
13年も独りだったから旦那さんの存在を忘れてしまったのかしら?
でもそれを聞いた母の顔が真剣な表情に変わった。
「茜、それは駄目よ。子供達の中で唯一結婚しているのに、孫の顔くらい見せてちょうだい」
「母さんには、これから子供がまた増えるじゃないか」
「子供と孫は違います。取り敢えず沙良に召喚してもらった後、早崎君を呼びましょ」
「わっ、分かった。でも子供を産むのは……」
「何か言った?」
「いえ、……何でもありません」
母に詰め寄られ、旦那さんを召喚するのを了解したみたいだけど……。
どうやら茜は子供を産みたくないらしい。
旦那さんは欲しくないのかな?
ちなみに、妹夫婦は仕事の関係上で別姓にしたらしい。
旦那さんの名前は早崎 順一だ。
「じゃあ、召喚! 椎名 茜!」
後にする必要もないだろうと、私は茜を再召喚する。
茜の体が眩しく光った後は18歳になった姿で現れた。
床にひらりと例の手紙が落ちる。
私は手紙を拾い茜に手渡してあげた。
【召喚された椎名 茜様へ】と書かれた封筒
『椎名 沙良様から、召喚された方へ
すべての元凶は私です。
この責任を取り、出来うる限りの保障をさせて頂きました。
まず、いま貴方がいる世界は地球ではありません。
剣と魔法のファンタジーである所の異世界です。
椎名 沙良様にあわせ、年齢は設定させて頂きました。
また、貴方様の能力を変更致しました。
なお既に覚えた能力は、そのままとさせて頂きます。
椎名 茜様の能力
【時空魔法】
●アイテムBOX 容量無限・時間停止。
【風魔法】
●ウィンドボール 攻撃魔法。
●ウィンドウォール 防御魔法。
まずは「ステータス」と唱え、能力の確認をお勧めします。
最後に、このような不幸な目に遭わせてしまいましたが、これからの貴方の人生が幸多き事でありますよう、お祈り申し上げます。』
-------------------------------------
お気に入り登録をして下さった方、エールを送って下さった方とても感謝しています。
読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。
応援して下さる皆様がいて大変励みになっています。
これからもよろしくお願い致します。
-------------------------------------
479
お気に入りに追加
6,155
あなたにおすすめの小説

家ごと異世界ライフ
ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!

【完結】精霊に選ばれなかった私は…
まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。
しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。
選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。
選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。
貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…?
☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。
聖女としてきたはずが要らないと言われてしまったため、異世界でふわふわパンを焼こうと思います!
伊桜らな
ファンタジー
家業パン屋さんで働くメルは、パンが大好き。
いきなり聖女召喚の儀やらで異世界に呼ばれちゃったのに「いらない」と言われて追い出されてしまう。どうすればいいか分からなかったとき、公爵家当主に拾われ公爵家にお世話になる。
衣食住は確保できたって思ったのに、パンが美味しくないしめちゃくちゃ硬い!!
パン好きなメルは、厨房を使いふわふわパン作りを始める。
*表紙画は月兎なつめ様に描いて頂きました。*
ー(*)のマークはRシーンがあります。ー
少しだけ展開を変えました。申し訳ありません。
ホットランキング 1位(2021.10.17)
ファンタジーランキング1位(2021.10.17)
小説ランキング 1位(2021.10.17)
ありがとうございます。読んでくださる皆様に感謝です。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
伯爵令嬢の秘密の知識
シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のグランディア王国ルナリス伯爵家のミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。

あなた方はよく「平民のくせに」とおっしゃいますが…誰がいつ平民だと言ったのですか?
水姫
ファンタジー
頭の足りない王子とその婚約者はよく「これだから平民は…」「平民のくせに…」とおっしゃられるのですが…
私が平民だとどこで知ったのですか?

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました
紗南
ファンタジー
異世界に神の加護をもらって転生した。5歳で前世の記憶を取り戻して洗礼をしたら魔力が∞と記載されてた。異世界にはない記号のためか魔力0と判断され公爵家を追放される。
国2つ跨いだところで冒険者登録して成り上がっていくお話です
更新は1週間に1度くらいのペースになります。
何度か確認はしてますが誤字脱字があるかと思います。
自己満足作品ですので技量は全くありません。その辺り覚悟してお読みくださいm(*_ _)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。