上 下
530 / 709
第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第663話 迷宮都市 武術稽古 お礼の『カルボナーラ』&セイさんの飛翔魔法習得&母の成長魔法 

しおりを挟む
 業務用寸胴鍋で大量のパスタをでていく間にソースを作ろう。
 玉ねぎとベーコンをいためバターと牛乳を加える。
 ベーコンに関しては、もう解禁する事にした。
 今までも異世界にない食材を散々使用しているから、ガーグ老達は何も聞かないだろう。
 しずくちゃんのお母さんは、妖精さんに激辛のホットドッグを食べさせていたしね。

 茹で上がったパスタをフライパンに入れ、卵と粉チーズを混ぜ合わせた物と絡め上に胡椒こしょうを掛けたら完成。
 卵がダマになってしまわないよう、火は切った状態で混ぜるのがコツだ。
 完成した料理は三男のキースさんが運んでくれる。
 私はバスケットを持った雫ちゃんのお母さんと、木の下へお供えに行った。

「お待たせしました。皆さん、今日もありがとうございます。お昼のメニューは、『カルボナーラ』です。それでは頂きましょう」

「頂きます!」

 兄達とガーグ老達のパスタは1.5人分にしてある。
 パスタだけでは物足りないだろうと、食後にはデザートを出す予定。

「これは『ミートパスタ』と違い白いのだな。『シチュー』によく似ておるが……。うむ、こりゃまた旨い!」

 ガーグ老がパスタをフォークに巻き付け大口を開け食べている。
 1.5人分でも直ぐになくなりそうだと思っていたら、わずか3分で完食してしまったガーグ老達を見て苦笑する。
 麺類は食べるのに時間が掛からないとはいえ、早食いだなぁ。
 私達が食べ終えるのを待ってもらい、デザートにドライフルーツをたっぷりと入れたパウンドケーキを出した。

 1人分を大きくカットしたから、お腹もふくれるだろう。
 洋酒に漬け込んだドライフルーツを入れた物にしてあるので、お酒が好きなガーグ老達も喜んでいる。
 異世界の紅茶にも合うしね。
 デザートを食べた後、ガーグ老へセイさんだけガルムに乗せてほしいとお願いし、飛翔魔法を習得してもらった。
 そういえば今日は妖精さんが落下する音を聞かないな。
 2人で木の下に行くと、羊皮紙に書かれたお礼の手紙が2通置いてある。

『ユカ様 甘いパンをありがとうございます。毎週このパンを食べたいです。』

 雫ちゃんのお母さんに、何を作ったのか尋ねたらホットケーキのようだ。
 あぁ、それならホットケーキMIXを使用するので味に問題はない。
 妖精さんも食べて安心しただろう。

「本当に甘い物が好きなのね~」

 手紙を読んだ雫ちゃんのお母さんが笑っている。
 ホットケーキは子供が好きな食べ物だけど、旭家では朝食の人気No.1だ。
 理由は聞かなくても分かるよ……。
 兄達を残し、女性陣と将棋が出来ないセイさんを連れホームに帰ってきた。
 セイさんに従魔のリクエストを聞いておこう。

「セイさん。騎獣用の従魔をテイムする予定ですが、どの魔物にしますか?」

「私は自分で飛ぶから必要ありませんよ」

 当然のように言われ、戸惑とまどってしまう。

「あの、人前で飛翔魔法を使用して移動するのは出来ませんけど……」

 ダンジョン内を飛びながら移動されたら目立って仕方ない。
 
「あぁ、そうでした。必要なのはダンジョンの移動くらいですよね? 沙良さんや尚人なおとさんの従魔に2人乗りすればいいから大丈夫です。それに私は人を乗せる方が……」

 騎獣は必要ないらしく、そのまま続けた言葉にセイさんが首をひねっている。
 人を乗せるって車じゃないよ?
 
「新しい魔法を覚えたので少し練習しますね」

 セイさんは、マンションの最上階にあるベランダへ出るとそのまま飛び出していく。
 飛翔魔法を使用するのは初めてなのに、こんな高さから飛び降りるとは……。
 普通、地面から飛んで練習するものじゃないかしら?
 一瞬で姿が見えなくなり、何処どこを飛んでいるのか分からない。
 あせりながらマッピングで探すと、かなりの高さを移動している姿が見えた。
 5分ほど大空を自由に飛び、再びベランダへ戻ってくる。
 
「この魔法は私と相性がいいみたいです。なんだか空を飛ぶのが懐かしい」

 そう言って、セイさんは目を細め空を見上げた。
 まぁ、あんなに高い場所を悠々ゆうゆうと飛び回れるなら楽しいだろうな。
 私は護衛付きの練習で、あんなに高くは飛ばせてもらえない。
 セイさんは従魔が必要ないみたいなので、私は彼に付き添いを頼みサヨさんを華蘭からんまで迎えにいった。
 劇の衣装を作らないと間に合わないからね。
 セイさんをサヨさんへ簡単に紹介し、今回の劇の内容を伝える。
 『白雪姫』と『人魚姫』だ。
 問題は人魚姿の衣装をどうするか……。

 人魚って、上半身がほぼ裸なんだよね~。
 この世界の人は肌の露出を嫌うから、胸を隠しただけの状態にはなれない。
 サヨさんと相談し、胸以外は肌色の生地でう事にした。
 それでも体のラインがはっきり分かる衣装だと却下されるかも?
 白雪姫と小人の衣装は……、2m超えの小人って変よね。
 冒険者は皆背が高いから、少し内容を修正する必要がありそう。

 サヨさんが衣装のデザインを考え型紙を起こす間、私は母と一緒に魔法の実験をしよう。
 植物を成長させる緑魔法を、薬草に掛けたら花が咲くのか知りたいのだ。
 ダンジョンの森で周辺の土ごと採取した癒し草をアイテムBOXから取り出し、母に成長の魔法を使用してもらった。
 すると癒し草がみるみる内に大きくなり、30cmくらいまで成長すると黄色の花を咲かせ丸い実を付ける。
 う~ん、花は咲いたけど色が違うし直ぐに実がなるから花の収穫は出来そうにないな。

 この丸い実は癒し草の種だろうか? 後で父に鑑定してもらおう。
 魔力草に成長の魔法を掛けると、青色の花を咲かせ丸い実を付けた。
 こちらも花の色が違っている。
 母にお礼を言い、自室に帰るとポーションを取り出す。
 ポーションにヒールを掛けたらどうなるのかしら?
 まず『MAXポーション』にはならないだろうと予想し、私はヒールを唱えた。

 -------------------------------------
 お気に入り登録をして下さった方、エールを送って下さった方とても感謝しています。
 読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。
 応援して下さる皆様がいて大変励みになっています。
 これからもよろしくお願い致します。
 -------------------------------------
しおりを挟む
感想 2,333

あなたにおすすめの小説

家ごと異世界ライフ

ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!

異世界でお取り寄せ生活

マーチ・メイ
ファンタジー
異世界の魔力不足を補うため、年に数人が魔法を貰い渡り人として渡っていく、そんな世界である日、日本で普通に働いていた橋沼桜が選ばれた。 突然のことに驚く桜だったが、魔法を貰えると知りすぐさま快諾。 貰った魔法は、昔食べて美味しかったチョコレートをまた食べたいがためのお取り寄せ魔法。 意気揚々と異世界へ旅立ち、そして桜の異世界生活が始まる。 貰った魔法を満喫しつつ、異世界で知り合った人達と緩く、のんびりと異世界生活を楽しんでいたら、取り寄せ魔法でとんでもないことが起こり……!? そんな感じの話です。  のんびり緩い話が好きな人向け、恋愛要素は皆無です。 ※小説家になろう、カクヨムでも同時掲載しております。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!

七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」 その天使の言葉は善意からなのか? 異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか? そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。 ただし、その扱いが難しいものだった。 転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。 基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。 ○○○「これは私とのラブストーリーなの!」 主人公「いや、それは違うな」

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

私の家族はハイスペックです! 落ちこぼれ転生末姫ですが溺愛されつつ世界救っちゃいます!

りーさん
ファンタジー
 ある日、突然生まれ変わっていた。理由はわからないけど、私は末っ子のお姫さまになったらしい。 でも、このお姫さま、なんか放置気味!?と思っていたら、お兄さんやお姉さん、お父さんやお母さんのスペックが高すぎるのが原因みたい。 こうなったら、こうなったでがんばる!放置されてるんなら、なにしてもいいよね! のんびりマイペースをモットーに、私は好きに生きようと思ったんだけど、実は私は、重要な使命で転生していて、それを遂行するために神器までもらってしまいました!でも、私は私で楽しく暮らしたいと思います!

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う

たくみ
ファンタジー
 圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。  アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。  ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?                        それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。  自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。  このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。  それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。 ※小説家になろうさんで投稿始めました

おばあちゃん(28)は自由ですヨ

美緒
ファンタジー
異世界召喚されちゃったあたし、梅木里子(28)。 その場には王子らしき人も居たけれど、その他大勢と共にもう一人の召喚者ばかりに話し掛け、あたしの事は無視。 どうしろっていうのよ……とか考えていたら、あたしに気付いた王子らしき人は、あたしの事を鼻で笑い。 「おまけのババアは引っ込んでろ」 そんな暴言と共に足蹴にされ、あたしは切れた。 その途端、響く悲鳴。 突然、年寄りになった王子らしき人。 そして気付く。 あれ、あたし……おばあちゃんになってない!? ちょっと待ってよ! あたし、28歳だよ!? 魔法というものがあり、魔力が最も充実している年齢で老化が一時的に止まるという、謎な法則のある世界。 召喚の魔法陣に、『最も力――魔力――が充実している年齢の姿』で召喚されるという呪が込められていた事から、おばあちゃんな姿で召喚されてしまった。 普通の人間は、年を取ると力が弱くなるのに、里子は逆。年を重ねれば重ねるほど力が強大になっていくチートだった――けど、本人は知らず。 自分を召喚した国が酷かったものだからとっとと出て行き(迷惑料をしっかり頂く) 元の姿に戻る為、元の世界に帰る為。 外見・おばあちゃんな性格のよろしくない最強主人公が自由気ままに旅をする。 ※気分で書いているので、1話1話の長短がバラバラです。 ※基本的に主人公、性格よくないです。言葉遣いも余りよろしくないです。(これ重要) ※いつか恋愛もさせたいけど、主人公が「え? 熟女萌え? というか、ババ專!?」とか考えちゃうので進まない様な気もします。 ※こちらは、小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。