自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

如月 雪名

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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第662話 迷宮都市 武術稽古 セイさんとガーグ老の手合わせ

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 子供達の演奏を聴いた後、今日は母親達が子供達と残ると言うので私達はガーグ老の工房へ向かう。
 山吹やまぶきには旭とシュウゲンさんが騎乗しているため、セイさんは私と一緒にシルバーへ乗ってもらった。
 パーティーメンバーが1人増えたので、従魔が足りないなぁ。
 稽古が終わったら、兄にセイさんの従魔をテイムする相談をしてみよう。

 工房へ到着し中に入ると、ポチとタマにガルム達が飛んでくる。
 2匹の白ふくろういつきおじさんの両肩に乗り定位置に止まると、ご機嫌な様子で体を揺らしていた。
 体の大きい10匹のガルちゃん達は、私の周囲に群がり良い子にしていたのをめてと言っているみたい。
 1匹ずつ頭をでてあげると交代し下がっていく。

「こんにちは~。今日も、よろしくお願いします」

「おお、サラ……ちゃんが来てくれたか! うむ、昼食は期待出来そうだわ」

 先週は子供達に楽器の演奏を教えていたから稽古に参加出来ず、しずくちゃんのお母さんが作った激甘カレーを食べさせられたガーグ老は、私の姿を見て安心したようだ。

「新しいメンバーを紹介しますね。セイさん、私の結婚相手のガーグ老です」

「えっ! このご老人が?」

 ガーグ老が結婚相手と知りセイさんの目付きが変わる。

「セイと申します。摩天楼まてんろうのダンジョンで冒険者をしていました。是非ぜひ一度、手合わせをお願いします」

「ほう、儂は若い者には負けんぞ」

 私は突然仕合を申し込むセイさんへ、ガーグ老は王族の護衛をしていた騎士だった事を小声で話す。
 普段は魔法メインで攻略をする姿しか見ていないから、心配になったのだ。
 セイさんは大丈夫ですと笑顔で言いマジックバッグから、その小柄な体躯たいくに似合わない大槍を取り出す。
 私は初めて見るセイさんの武器に驚いてしまう。
 まるでケンタウロスが持っている突撃槍のようだ。
 セイさんの得物えものを見たシュウゲンさんとかなで伯父さん、そしてガーグ老が感心したように息を吐く。

 大槍を扱うには相応の体力と腕力が必要になる。
 見た目が華奢きゃしゃなセイさんの武器としては、合わないような気がするんだけど……。
 ガーグ老が三男のキースさんから槍を受け取り、物騒な笑みを浮かべ仕合が始まった。

「では、お相手致そう!」
   
 唐突に始まった仕合を私達は見守る。
 ガーグ老の強さを知っているだけに、ハラハラするよ!
 2人は一度大きく距離を取った後、一気に肉薄し槍を交わす。
 武器同士がぶつかる鈍い音が響き渡った。
 この一撃でセイさんは打ち負けるかと思いきや、その後ガーグ老と何度も槍を交わし続けている。
 思った以上に、セイさんはやるらしい。

 武闘派のシュウゲンさんと奏伯父さんは、2人の様子を興味深く見ているようだ。
 伯父さんと一緒にパーティーを組んでいた時、セイさんは槍を使用しなかったんだろうか?
 10分後、勝負が付かない2人の間に入った長男のゼンさんが、終了の合図を告げる。
 予想とは違い、引き分けとなった結果にメンバー全員が驚いていた。

「セイとやら、お主はシュウゲンと同族か?」

「いえ、私はドワーフではありません」

「人族には有り得ん腕力だな。サラ……ちゃんのパーティーに強い者が入るのは喜ばしい。これからも精進しょうじん致せ」

「はい。手合わせ頂き、ありがとうございました」

 セイさんはガーグ老へ深く一礼し戻ってきた。
 
「セイさん、すごいですね~。ガーグ老と引き分けるなんて驚きました!」

 その技量を素直に称賛すると、

「私は護衛隊長ですから、負ける訳にはいきません」

 にっこり笑って意味不明な返事をされる。
 冒険者なのに、誰かの護衛をしていた経験があるのだろうか?
 日本では父の後輩だと言っていたから銀行マンだったはず
 異世界に転移後は、迷宮都市と摩天楼のダンジョンを攻略していただけだと思う。
 銀行マンだった父と同様、もしかして家族に言えない仕事をしていたの? 再び父の職業に疑問を感じてしまった。

 それから樹おじさんとセイさんが私の稽古相手になり、槍術がLv10になったと伝えると2人が褒めてくれた。
 2人を相手にした稽古は防戦一方になり面白くない。
 こちらも数を増やそう! シルバーを呼んで連携するとすきが生まれた。
 今だ! 樹おじさんに踊り掛かり槍を突き出す。
 勝ちを確信した瞬間、私の槍はかわされ空を切った。

 Lvは私の方が高いのに、樹おじさんの方が速度は上なのか……。
 悔しくなってフォレストと泰雅たいがを追加投入したら、そりゃ反則だと怒られた。
 ちぇっ、たまには勝たせてくれてもいいのに~。
 従魔達は私の戦力だから卑怯ひきょうじゃないよ?
 黄金こがね山吹やまぶきは待機させてるじゃん。
 
 2時間後、ガーグ老が終了の合図を告げ稽古は終了。
 今日もシュウゲンさんとガーグ老、奏伯父さんとゼンさんの勝負は着かなかったらしい。
 奏伯父さんが残念そうにしている。
 私は昼食を作りながら、午後から何の魔物をテイムしようかなと考えていた。
 迷宮タイガーは2匹なので、同じ種族を増やしてあげた方がいいかしら?
 それにしても、おすしかテイム出来ないのは何とかならないものか……。
 これじゃつがいがいないから、子狼も子虎も生まれないよ~。

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