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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第660話 迷宮都市 地下15階&摩天楼のダンジョン(30階) エリクサーの原料

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 花が咲いた状態の癒し草をアイテムBOXに収納し、私はいま驚愕きょうがくしているかなで伯父さんに詳しい話を聞いた。
 薬師ギルドが秘匿ひとくしていそうなエリクサーの原料を、何故なぜ知っているかというと過去に採取クエストを受けたからだそうだ。
 A級冒険者以上になると、ギルドマスターから直接クエストを依頼される事があるらしい。
 クエスト内容はギルド内の壁に貼り出されたりせず、どのパーティーが何の依頼を受けたのか分からないようになっているんだとか。

 奏伯父さんは薬師ギルドが依頼した採取依頼を受け、癒し草の花がエリクサーの原料になっているのを知ったようだ。
 勿論もちろんその依頼には守秘義務が課せられていたけど、私が知らずにヒールを掛け原料となる花を咲かせてしまったため、厄介やっかいな事態になると思い話してくれたみたい。
 Lv上げのために、癒し草の花を次々と咲かせるのはまずいと判断したのだろう。
 奏伯父さんが受けたクエストは、満月の夜に特定の場所でしか咲かない癒し草の採取だった。
 場所は流石さすがに言えないのか、何処どこかは分からない。

 エリクサーの数が少なく貴族しか購入出来ないのは、そもそもこの原料となる癒し草の花が貴重なためである。
 ヒールを掛ける事で、簡単に原料が採取出来ると知られるのは危険だ。
 それにしても、今まで誰も試さなかったのかしら?
 私は癒し草でヒールのLv上げをするのは断念し、次にハニーが見付けた魔力草へヒールを掛けた。
 すると魔力草も赤い花を咲かせる。
 これも何かの原料になるのかと思い、奏伯父さんを見ると驚きに目をみはっていた。
 
「それもエリクサーの原料だ……」

 ふむ、エリクサーは癒し草と魔力草の花から作られるのか……。
 多分他にも必要な物はあるだろうけど、魔力草へヒールを掛けてのLv上げも止めた方が良さそうね。
 私が思い付いた方法では出来ないと分かり、摩天楼まてんろうのダンジョン30階へ移動する。
 3時間後、テント内に戻ってきた兄達と迷宮都市地下15階のダンジョンへ戻った。
 安全地帯へ行く前に、気になった事を兄に確認しよう。

「お兄ちゃん。癒し草にヒールを掛けたらLv上げ出来ないかな?」

「あぁ、怪我の治療以外でLv上げしたいんだな。少し試してみるか」

 私の提案にうなずいた兄は、近くにある癒し草へヒールを掛ける。
 けれど癒し草の花は咲かず、少しだけ葉の色が濃くなっただけだ。

「……これはLv上げになるのか?」

 見た目に、あまり変化がない癒し草をながめ兄が首をかしげる。

「お父さん。鑑定してくれる?」

「【癒し草++】ポーションの原料だな。ヒールを掛ける前は【癒し草+】だから、効能が高くなったようだ」
  
 兄はLv50になり、ヒールLvが20へ上がっている。
 念のためLv20のヒールも癒し草に掛けてもらった。
 父が鑑定すると、【癒し草+++++】となっているそうだ。
 それでも花は咲かない。
 同じヒールの魔法で、私はまだLv0の状態なのにおかしいな……。
 
「効能が変わるのならLv上げが可能かもな。怪我人の治療は出来ないから、薬草にヒールを掛ければ良さそうだぞ?」

「じゃあ、新しく覚えたメンバーに伝えておくね」

 私はそう言い、花が咲いた件は黙っておいた。
 後で奏伯父さんと相談しよう。
 ホーム内で休憩後、再び摩天楼のダンジョン30階へ移動。
 安全地帯のテント内で奏伯父さんと癒し草の話をする。
 エリクサーの原料だと知っているのは伯父さんだけだろう。

「お兄ちゃんがヒールを掛けても、花は咲きませんでしたね。何故なぜでしょう?」 

「それは俺の方が聞きたい。この問題はひびき君に話そう。取りえず、沙良ちゃんが薬草にヒールを掛けるのは禁止だ」

 奏伯父さんは難しい顔をすると黙ってしまう。
 私が思っている以上に、この件は重大なのかも知れないな。

 この日の夜。
 ホームへ帰宅した後、奏伯父さんと父が私の家に来て話をした。
 事情を聞いた父から真剣な表情で、誰にも口外するなと注意される。
 ただいつきおじさんには、話しておく必要があると言われたのが不思議だった。
 兄ではなく、どうして樹おじさんに?
 話は父がすると言っていたけど……。
 理由が分からず、もやもやした気持ちのまま眠る。

 その後3日間、何事もなくダンジョン攻略を終え冒険者ギルドで換金。
 大量の薬草を提出すると、解体場のアレクおじさんがギルマスを呼んで来ると言い席を外してしまった。
 オリビアさんを連れ戻ってきたアレクおじさんは、薬草の量が多すぎ保管に困ると訴えている。
 今回はマジックバッグ21個分だからね~。
 ハニー達が採取した一部の薬草の量を見たオリビアさんが、額に手をやりしばらく考えた後で口を開く。

「サラさん。ゼリア様に話しておきますから、申し訳ありませんが今後は直接薬師ギルドへ卸して下さい。換金額は冒険者ギルドの常設依頼と同じです」

 換金額が同じなら、冒険者ギルドは利益が一切なかったんじゃ?
 今まで薬草は薬師ギルドに、そのまま卸していたのか……。

「分かりました。これからは薬師ギルドで換金しますね」 
 
 毎週土曜日は薬師ギルドに行くから手間にならない。
 換金額が同じなら、どちらに卸しても一緒だ。
 増えた薬草の量に驚かれるかも知れないけど、沢山あっても困らないだろう。
 私は提出した一部の薬草をアイテムBOXに再び収納し、冒険者ギルドを出た。
 帰り際、オリビアさんに言われた言葉に嬉しくなる。

「ポーションの値段が下がるといいですね」

「はい!」

 同じ事を考えてくれていると知り、オリビアさんは優しい人なんだなと思った。

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