上 下
507 / 709
第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第640話 迷宮都市 セイさんのリクエスト&飛翔魔法の練習

しおりを挟む
 シュウゲンさんを王都の武器屋へ送り荷物をまとめてもらった。
 弟子のバールさんに店を譲り鍛冶職人は引退していたらしく、

「儂は放浪の旅に出る」

 と言って、祖父は実家へ引っ越す事を決めたようだ。
 いつきおじさんへ10個のポシェットを渡し、またマジックバッグにしてほしいとお願いする。
 魔力は寝たら回復するので、攻略のない日ならMPを使用しても大丈夫だろう。
 旭家へ送った後3人を連れ実家へ戻り玄関を開けると、母が夕食の準備をしていたのか美味しそうな匂いが鼻をくすぐる。
 煮物を作っているのかな?
 
「お母さん、ただいま~。後でお兄ちゃんと旭が増えても大丈夫?」 

「おかえりなさい。2人増えても大丈夫よ」

「じゃあ、メインは私が作るね。今日は餃子にしよう!」

「あら、いいわね」

 セイさんのリクエストは餃子なので、沢山作れば残りをアイテムBOXに収納でき一石二鳥だ。
 私は材料を刻み種を作り、母と餃子の皮に包んでいく。
 7人家族だと100個は作る必要があるから、数が少なくて済むよう椎名家は大判の皮にたっぷり種を入れる。
 兄へ念話の魔道具で連絡を入れ、夕食は実家で食べる事を伝えた。
 旭がアイテムBOXに2人分のバイクを収納しているから、20分もすれば戻ってくるだろう。

 ホットプレートを出し餃子を焼き始めると、男性陣は母が作った筑前煮ちくぜんにをつまみにビールを飲み出す。
 祖父は異世界生活が長かった分、日本のビールが飲めて幸せそう。
 もしかして引っ越しの決め手はドワーフだけに、お酒だったりするのかしら?
 餃子が焼きあがる頃に兄達が戻り、よく食べる2人へ丼でご飯を大盛にして出す。
 人数が増えてにぎやかな食卓を見ながら母が嬉しそうに言った。

「早く、あかね遥斗はると雅人まさとに会いたいわ」
 
 日本にいる子供達が心配なのだろう。
 あぁ、雅人の名前は祖父の雅美まさみという名前から取ったのか……。

「3人の他に、まだ子供がいるのか?」

 双子達が生まれる前に亡くなってしまった祖父が驚いている。

「ええ、あれから双子を産んだの。2人の写真を後で見せるわ」

「そうかそうか、儂は孫が沢山じゃの」

 スパルタ勉強会は既に始まっているようで食後に、兄がまた病院へ戻ると言い嫌がる旭を連れ帰る。
 珍しく夕食にお酒を飲んでいなかったから、変だと思ったんだよね~。
 私はセイさんの所へいく必要があるため、祖父へアルバムを見せている母に気付かれないよう、父へ目配せしリビングから出てもらった。
 異世界には1人でいかないと兄と約束しているから、なるべく誰かと一緒に行動するように心がけているんだよ。
 母へ父とシルバー達の散歩に出かけると伝え家を出た。
 セイさんの所へいく前に、父にはガルムをテイムしてしまった件を話しておこう。

「お父さん。今日ガーグ老の所に騎獣が届いたでしょ? 魅了みりょうを使ってないんだけど、名前を呼んだら10匹共テイムしちゃったみたいなの」

「何だって!? 10匹分も、魔力が足りないだろう!」

「あ~、同じ種族の所為せいなのか魔力を消費するのは1匹だけみたいで、リーダーになってたよ?」

「群れをテイムした状態になっているのか……。じゃあガルム達は、お前の言う事しか聞かないんじゃないか? それはまずいだろう」
 
「ガーグ老の笛に合わせて行動するよう、お願いしたから大丈夫!」

「はぁ~。本当に、お前のテイム方法はバレたら大変だな。沙良、今回は仕方ないが、これからは充分気をつけるんだぞ」

「うん! 勝手にテイムすると、お兄ちゃんに怒られるから内緒にしてね!」

「あぁ、分かった」

「それで、ガルム達の飛翔魔法を習得したんだよね~。私、空を飛べるんだよ!」

「飛翔魔法だと!? ……いや、より安全に逃げられるようになるか?」

 新しい魔法を覚えたと伝えたら、父が何かを考えている。
 どうせなら父にも覚えてもらおうと、異世界の庭に移転して直ぐガルちゃん1号を呼びだした。

「ガルちゃん1号、ここにきて!」

「1号って……」

「全部同じ名前になっちゃったから、番号が付いたみたい」

 5分程で1匹のガルムが上空から庭に降りてくる。

「お父さんに、飛翔魔法を掛けてくれる?」

 ガルちゃん1号は一度軽く頭を上下させ魔法を掛けてくれたので、魔法を習得出来たか父にステータスを確認してもらう。
 お礼を言い体をでた後、ガーグ老の指示をよく聞いて、いい子にしてねとお願いし元の場所へ戻るよう伝えると、ガルちゃん1号は尻尾をフリフリさせながら空高く舞い上がり、しばらくして姿が見えなくなった。
 新しい魔法の練習をしたい所だけど、夕食を待っているセイさんの所へ先にいかなければ……。

 通信の魔道具で連絡をもらった町へマッピングで移動し、宿屋の場所を見付けセイさんがいる部屋に移転した。
 リクエストの餃子に炊き立てのご飯・筑前煮と中華スープ・デザートの杏仁豆腐を出すと、喜んで食べ出す。
 
ひじり、食事以外に困っている事はないのか?」

 父が長期の移動を心配してかセイさんに尋ねていた。
  
「馬車の旅は慣れていますから、他は問題ありませんよ。ただ日本食を食べてしまうと、どうしてもこの世界の食事を美味しいと感じられなくなりますね」

「そうか……悪いな。後2週間、迷宮都市で合流するまで頑張ってくれ」

「また来週、食べたい物を持ってきますね。これ、朝ごはん用のお握りです」

 鮭と昆布と明太子が入ったお握りを3個渡し、宿から再び家の庭へ戻ってくる。
 よし! まだ時間があるから飛翔魔法の練習をしよう!

「お父さん。飛翔魔法を使ってみよう?」

「まだLv0だから、そんなに高く飛べないと思うが練習はした方がいいか……。高さに注意しながら使用するんだぞ」

「は~い」

 元気良く返事をし飛翔魔法を唱えた瞬間、体が10cmくらい浮き上がった。
 特にバランスを取る必要もないらしく、空中に浮いたままでも静止した状態で助かる。
 後は飛ぶイメージを持てばいけそう。
 徐々に高さを上げ、最初は3mくらいで練習開始。
 私が落ちても大丈夫なように、飛翔魔法を使用した父がぴったりと隣についた。  
 
 まずは自転車の速さくらいで移動する。
 うん、問題なさそうかな? 次はもう少し高く飛んでみよう。
 家の塀は10mなので高さ10mまでゆっくり上昇し下を見ると、かなりの高さがある。
 高所恐怖症の人は飛翔魔法を使えないかも? 何せ支える物が何もない。
 この魔法は自分しか使用出来ないのかしら? 庭で待機しているシルバー達に掛けてみよう。
 
 思ったら直ぐに実行だ。
 一旦いったん地面に降りシルバー達が浮くようイメージし、浮遊魔法を掛けてみたけど駄目だった……。
 どうやら浮遊魔法は習得した人しか使えないらしい。
 便利な魔法だから、転移組のパーティーメンバーにも習得させたいなぁ。
 何か良い方法がないか考えておかなくちゃ。
 その後、30分ほど練習してから実家に父を送り届け自宅へ帰った。

 -------------------------------------
 お気に入り登録をして下さった方、エールを送って下さった方とても感謝しています。
 読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。
 応援して下さる皆様がいて大変励みになっています。
 これからもよろしくお願い致します。
 -------------------------------------
しおりを挟む
感想 2,333

あなたにおすすめの小説

家ごと異世界ライフ

ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

異世界でお取り寄せ生活

マーチ・メイ
ファンタジー
異世界の魔力不足を補うため、年に数人が魔法を貰い渡り人として渡っていく、そんな世界である日、日本で普通に働いていた橋沼桜が選ばれた。 突然のことに驚く桜だったが、魔法を貰えると知りすぐさま快諾。 貰った魔法は、昔食べて美味しかったチョコレートをまた食べたいがためのお取り寄せ魔法。 意気揚々と異世界へ旅立ち、そして桜の異世界生活が始まる。 貰った魔法を満喫しつつ、異世界で知り合った人達と緩く、のんびりと異世界生活を楽しんでいたら、取り寄せ魔法でとんでもないことが起こり……!? そんな感じの話です。  のんびり緩い話が好きな人向け、恋愛要素は皆無です。 ※小説家になろう、カクヨムでも同時掲載しております。

野草から始まる異世界スローライフ

深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。 私ーーエルバはスクスク育ち。 ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。 (このスキル使える)   エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。 エブリスタ様にて掲載中です。 表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。 プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。 物語は変わっておりません。 一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。 よろしくお願いします。

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!

七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」 その天使の言葉は善意からなのか? 異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか? そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。 ただし、その扱いが難しいものだった。 転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。 基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。 ○○○「これは私とのラブストーリーなの!」 主人公「いや、それは違うな」

私の家族はハイスペックです! 落ちこぼれ転生末姫ですが溺愛されつつ世界救っちゃいます!

りーさん
ファンタジー
 ある日、突然生まれ変わっていた。理由はわからないけど、私は末っ子のお姫さまになったらしい。 でも、このお姫さま、なんか放置気味!?と思っていたら、お兄さんやお姉さん、お父さんやお母さんのスペックが高すぎるのが原因みたい。 こうなったら、こうなったでがんばる!放置されてるんなら、なにしてもいいよね! のんびりマイペースをモットーに、私は好きに生きようと思ったんだけど、実は私は、重要な使命で転生していて、それを遂行するために神器までもらってしまいました!でも、私は私で楽しく暮らしたいと思います!

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う

たくみ
ファンタジー
 圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。  アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。  ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?                        それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。  自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。  このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。  それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。 ※小説家になろうさんで投稿始めました

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。