上 下
505 / 709
第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第638話 迷宮都市 武術稽古 届いた騎獣 2 増えた従魔達

しおりを挟む
 私は空を飛んできた赤い魔物に興味津々だ。
 ただ、家具職人のガーグ老達に騎獣が必要なのかは大いに疑問だったけど……。
 遠くに移動する予定でもあるのかしら?

「ガーグ老。この魔物は何という名前なんですか?」

 ワクワクしながらたずねると、先程の美しい容姿をした男性が答えてくれた。

「ガルムです」

 ガルム!? 確か神話に出てくる地獄の番犬よね?
 といっても、異世界ではユニコーンやバイコーンの性質が違っているから同じとは限らない。
 ユニコーンは乙女好きじゃないし!

「羽もないのに、どうやって空を飛んでいるんですか?」

「風魔法を使用しているのだと思います。魔物の生態はいまだ謎の部分が多く、はっきりとは申し上げられませんが……」

 へぇ~、この魔物は風魔法で空を飛ぶのかぁ。
 じゃあ、私も練習したら空を飛べるようになるかしら?

「沙良。風魔法が使えるからといって、お前に空は飛べない」

 考えている事を先読みされ、すかさず兄から牽制けんせいされた。

「わっ、分かってるよ。空を飛ぶ従魔が欲しいと思っただけだもん。え~っと、この騎獣は私でも乗れますか?」

「サラ……ちゃん。調教はされておるが、空を飛ぶ騎獣に乗るのは訓練が必要だでな。騎乗するのは、止めた方が良い」

 なんだ乗れないのか……残念。
 
「その、ここにいる従魔達は誰がテイムされたのですか?」

 同じテイマーとして、従魔が気になったのか男性に質問された。

「私と、彼女です」

 そう言って、しずくちゃんのお母さんを紹介した。

「私の従魔は5匹ですね。シルバー、フォレスト、泰雅たいが黄金こがね山吹やまぶき

 名前を呼ぶと皆が私の前に整列する。

「あら、じゃあ私の従魔も紹介するわ。アレク・源五郎げんごろう・マリー」

 雫ちゃんのお母さんに名前を呼ばれ、フォレストウサギ3匹がピョンピョン飛び跳ね向かってきた。
 それを見た男性の顔がわずかに引きってみえるのは、騎獣として適さない魔物だからだろうな。

「どれも皆、良く調教されているようですね」

 調教? した覚えはないけど、うちの従魔達は芸達者だし良い機会だから披露ひろうしてあげよう。
 アイテムBOXからフリスビーを5個取り出し次々に投げると、シルバーを先頭に全員がジャンプし口にくわえ戻ってくる。
 次に1mの土の壁を幾つか出し飛び越えるよう指示すると、5匹は壁に激突する事なく華麗なジャンプをしてくれた。
 私は、どうだと言わんばかりに胸を張ってみせる。

「いや……あの、そういった意味ではなく……」

 彼は少し困ったように、ガーグ老へ顔を向けた。
 
「おぉ! サラ……ちゃんの従魔達は皆賢いようだわ!」

 でしょ~? ガーグ老からめられた私は、にっこり笑顔になる。
 
「ガルム達に名前は付いているんですか?」

「いえ。この子達は繁殖はんしょくした魔物ですから、名付けはしておりません」

「名前がないなんて可哀想かわいそう……。ガルちゃんも名前が欲しいよね~」

 そう何気に呟くとガルム達が一斉に尻尾を振るから、嫌な予感がしてステータスを確認すると……。
 10匹のガルムがテイムされたと分かる表示があった。
 魅了を使用した訳じゃないのに何で~!?
 そして同じ名前は付けらないのか、自動的に番号が割り振られている。
 こんな所だけシステマチックな仕様らしい。
 あぁ、『ちゃん』まで名前になってるよ……。

 【従魔のステータス】
 ●ガルちゃん 1号リーダー Lv55(消費MP550)HP550/MP550 ガルム(雄)
 使用魔法 飛翔魔法Lv5(MP消費15)
 使用魔法 ファイアーボールLv5(MP消費15)・ファイアーウォールLv5(MP消費15)
   
 ●ガルちゃん 2号 Lv55(消費MP0)HP550/MP550 ガルム(雄)
 使用魔法 飛翔魔法Lv5(MP消費15)
 使用魔法 ファイアーボールLv5(MP消費15)・ファイアーウォールLv5(MP消費15)
 ・
 ・
 ・  

 そして風魔法ではなく、飛翔魔法で飛んでいるようだ。
 1号と付いているのがリーダーで、2号以下は消費MPが0だった。
 ハニーのコロニーみたいなものかな? って感心している場合じゃない!
 テイムを解除したら狂暴な魔物に戻るのか、元の主人へ権限が戻るのか……。
 博打すぎて試せない!

「あのっ、繁殖した魔物ならテイムはされていないんでしょうか?」

「騎獣用に調教してありますが、MPが沢山必要になりますから直接テイムはしておりません。」

「それなら、どうやって言う事を聞かせているんですか?」

「調教用の笛の音を組み合わせて、指示を出すのです」

 なるほど……、ならガーグ老の笛に従ってもらえば当面は問題なさそうね。
 私はテイムしたのをさとられないよう、念話でガルちゃん達にガーグ老の笛の指示通り行動してくれるようお願いした。
 10匹が首を上下に動かしたから伝わっただろう。
 あ~もう、心臓に悪い! ここは早く食事を作って、気をまぎらわせよう!
 色々と教えてくれた男性にお礼を伝え、私はこれから昼食を作るのでと言いそそくさとその場から逃げ出した。
  
 私のテイム方法は特殊すぎないかしら? 名前を呼んだだけでテイムされるとは……。
 今後はテイムされていない魔物に対し、迂闊うかつに名前を呼ばない方がいいかも知れない。
 母や雫ちゃんのお母さんの従魔は、2人が名付けた名前を呼んでいたから大丈夫だったのかなぁ。
 思わぬ出来事に動悸どうきしながら、無心で料理を作り始めた。

 -------------------------------------
 お気に入り登録をして下さった方、エールを送って下さった方とても感謝しています。
 読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。
 応援して下さる皆様がいて大変励みになっています。
 これからもよろしくお願い致します。
 -------------------------------------
しおりを挟む
感想 2,333

あなたにおすすめの小説

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

転生皇女は冷酷皇帝陛下に溺愛されるが夢は冒険者です!

akechi
ファンタジー
アウラード大帝国の第四皇女として生まれたアレクシア。だが、母親である側妃からは愛されず、父親である皇帝ルシアードには会った事もなかった…が、アレクシアは蔑ろにされているのを良いことに自由を満喫していた。 そう、アレクシアは前世の記憶を持って生まれたのだ。前世は大賢者として伝説になっているアリアナという女性だ。アレクシアは昔の知恵を使い、様々な事件を解決していく内に昔の仲間と再会したりと皆に愛されていくお話。 ※コメディ寄りです。

転生してしまったので服チートを駆使してこの世界で得た家族と一緒に旅をしようと思います

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
俺はクギミヤ タツミ。 今年で33歳の社畜でございます 俺はとても運がない人間だったがこの日をもって異世界に転生しました しかし、そこは牢屋で見事にくそまみれになってしまう 汚れた囚人服に嫌気がさして、母さんの服を思い出していたのだが、現実を受け止めて抗ってみた。 すると、ステータスウィンドウが開けることに気づく。 そして、チートに気付いて無事にこの世界を気ままに旅することとなる。楽しい旅にしなくちゃな

異世界でお取り寄せ生活

マーチ・メイ
ファンタジー
異世界の魔力不足を補うため、年に数人が魔法を貰い渡り人として渡っていく、そんな世界である日、日本で普通に働いていた橋沼桜が選ばれた。 突然のことに驚く桜だったが、魔法を貰えると知りすぐさま快諾。 貰った魔法は、昔食べて美味しかったチョコレートをまた食べたいがためのお取り寄せ魔法。 意気揚々と異世界へ旅立ち、そして桜の異世界生活が始まる。 貰った魔法を満喫しつつ、異世界で知り合った人達と緩く、のんびりと異世界生活を楽しんでいたら、取り寄せ魔法でとんでもないことが起こり……!? そんな感じの話です。  のんびり緩い話が好きな人向け、恋愛要素は皆無です。 ※小説家になろう、カクヨムでも同時掲載しております。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜

家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。 そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?! しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...? ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...? 不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。 拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。 小説家になろう様でも公開しております。

結婚記念日をスルーされたので、離婚しても良いですか?

秋月一花
恋愛
 本日、結婚記念日を迎えた。三周年のお祝いに、料理長が腕を振るってくれた。私は夫であるマハロを待っていた。……いつまで経っても帰ってこない、彼を。  ……結婚記念日を過ぎてから帰って来た彼は、私との結婚記念日を覚えていないようだった。身体が弱いという幼馴染の見舞いに行って、そのまま食事をして戻って来たみたいだ。  彼と結婚してからずっとそう。私がデートをしてみたい、と言えば了承してくれるものの、当日幼馴染の女性が体調を崩して「後で埋め合わせするから」と彼女の元へ向かってしまう。埋め合わせなんて、この三年一度もされたことがありませんが?  もう我慢の限界というものです。 「離婚してください」 「一体何を言っているんだ、君は……そんなこと、出来るはずないだろう?」  白い結婚のため、可能ですよ? 知らないのですか?  あなたと離婚して、私は第二の人生を歩みます。 ※カクヨム様にも投稿しています。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。