上 下
496 / 709
第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第629話 迷宮都市 樹おじさんの召喚 5 兄達の結婚報告と沙良の結婚予定

しおりを挟む
 緑茶をれきんつばを出すと、いつきおじさんが一口飲んで満足そうな顔をする。

「沙良ちゃんの淹れたお茶は美味いなぁ~」

 まぁ奥さんのお茶を毎日飲んでいたら、誰が淹れたお茶でも美味しく感じるんじゃないかな?
 一緒に出したきんつばを半分に割って食べた後、残りのお茶を飲み干している。
 再び緑茶を淹れ湯呑ゆのみに注いだ。
 甘い物を食べて疲れを癒した頃を見計らい、私は口を開く。
 こういう事はタイミングが結構重要になる。
 反対されないよう子供の件も伝えよう!

「樹おじさん。落ち着いて聞いて下さいね……。兄と息子さんが結婚しました!」

 私の言葉を聞いた瞬間、おじさんはブハッと吹き出し手にした残りのきんつばを落とした。

「えっ!? 尚人なおと賢也けんや君が結婚しただと!?」

 かなり衝撃を受けたのか、大きな声を出し2人を凝視している。

「はい。2人の子供は私が産む予定なので、心配しなくても大丈夫ですよ!」

 懸念事項を払拭ふっしょくするために考えた案を告げると、

「いや、それは絶対駄目だ! 沙良ちゃん、子供を産むのは大変なんだよ。2人のために身を犠牲にする必要はない。子供なら当て・・があるから、うちの尚人に任せよう!」

 父同様、樹おじさんは私が2人の子供を産むのに反対のようだ。
 それにしても、子供に当て・・があるとはどういう意味だろう?
 養子を貰い旭に子育てさせる心算つもりなのかな?

「いや~、全然気付かなかったなぁ。尚人、賢也君に大切にしてもらいなさい」

 驚いていた割には、簡単に2人の仲を認めたから旭が唖然あぜんとなっている。
 もっと父親に反対されると思っていたんだろう。
 そして、樹おじさん的には息子が大切にしてもらう方らしい……。
 兄は大切にしてもらえないのか……。
 それまで黙ったままだった父が、樹おじさんを手招きしてリビングの方へ連れていった。
 しばらく父親同士で話をしたのかダイニングへ戻ってくるなり、

「尚人。結婚おめでとう! 幸せにな!」

 と祝福の言葉を贈る。
 それを聞いて、どうやら2人の結婚は問題なさそうだとほっと安心した。
 次は私の結婚式の話をしよう。
 といっても、こちらは偽装結婚だけどね。

「樹おじさん。実は私も、近々結婚する予定なんです」

「……何だって? 相手は誰だ!」

 兄達の結婚報告をした時より、大きな声を上げるので驚いてしまう。

「ええっと、元近衛騎士で引退後は家具職人をしている方ですけど……」

「近衛騎士を引退してるなら、かなり年上じゃないか!」

 興奮状態で席を立ったおじさんを、父が両肩を押さえ座らせる。

「樹、落ち着け。アシュカナ帝国の王から沙良が9番目の妻に狙われているため、偽装結婚をするだけだ」

「娘を9番目の妻にだと? ふざけてるのか!」

 何故なぜか大激怒するおじさんは、目付きが鋭い物に変わる。

「使い道がないと思っていたが……。性別変化の能力があって良かった。俺が代わりに結婚しよう」

 うん? 
 何を言ってるのか分からない。

「ええっと、おじさんが女性になっても私とは別人ですよね?」

「いや、俺は女性になれば沙良ちゃんの姿になれる……と思う」

 いやいや、なれませんよ!

「そうか……その手が使えるな。沙良、結婚式には樹に出てもらおう」

 樹おじさんの言葉に父がうなずいている。
 アシュカナ帝国の諜報員ちょうほういんは私の姿を知っているから、だませないと思うんだけど……。 

「父さん。その方法は上手くいくと思えない」

 兄も同じ意見なのか反対のようだ。

「樹が女性になれば分かってもらえるんだが……。まだ・・10日間しか続かないんだよな」

「沙良ちゃん、結婚式までにLvを70に上げられない?」

 やけに具体的な数字だな……。

「無理だと思います。私達がLv40になったばかりなので……」

「じゃあ、女性になるのは結婚式当日にしよう。それまで、なるべくLvを上げるという事で決まりだ!」

 私の結婚報告をしたら、樹おじさんが女性化して代わりに結婚式を上げる事になってしまった。

「結婚相手に挨拶しないとなぁ」

「明日、祖父と一緒に相手の工房へいく予定です。毎週、武術稽古を受けてるんですよ」

「おぉ、そうか! そりゃ楽しみだ。腕前を試してみないと」

 ここにも武闘派がいる。
 ガーグ老には、祖父と樹おじさんとの仕合が待っていそうだ。
 最後に旭がぽつりと呟く。

「女性化するんだ……。見たくないかも……」

 樹おじさんが、どんな女性姿に変わるか分からないけど父親が女性になるのは複雑だろう。
 予想出来るのは、同じ顔のままで体が女性に変化する事だからね~。
 結婚式当日に変化した姿を見て、無理だと思ったら予定通り私が出よう。
 ガーグ老達や出席予定の冒険者達もいるから、下手な対応は出来ない。
 かなで伯父さんと祖父との関係は明日伝えよう。
 召喚したばかりで、一気に情報を与えると混乱してしまうだろうから……。
 ガーグ老に会わせるのが心配だなぁ。
 話が済んだ後、樹おじさんは父が運転する〇ンツに乗り帰っていった。

 ちなみに、旭の〇ルシェは返してもらったらしい。
 今はマンションの駐車場に停めてある。
 これから兄と一緒にドライブへいくと張り切って出掛けた。
 久し振りの愛車を運転するのに、兄は付き合わされるみたいね。
 結婚後も仲良しの2人を見て、なごんだと同時に一抹の不安がぎる。
 これで良かったのかしら?

 -------------------------------------
 お気に入り登録をして下さった方、エールを送って下さった方とても感謝しています。
 読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。
 応援して下さる皆様がいて大変励みになっています。
 これからもよろしくお願い致します。
 -------------------------------------
しおりを挟む
感想 2,333

あなたにおすすめの小説

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

転生皇女は冷酷皇帝陛下に溺愛されるが夢は冒険者です!

akechi
ファンタジー
アウラード大帝国の第四皇女として生まれたアレクシア。だが、母親である側妃からは愛されず、父親である皇帝ルシアードには会った事もなかった…が、アレクシアは蔑ろにされているのを良いことに自由を満喫していた。 そう、アレクシアは前世の記憶を持って生まれたのだ。前世は大賢者として伝説になっているアリアナという女性だ。アレクシアは昔の知恵を使い、様々な事件を解決していく内に昔の仲間と再会したりと皆に愛されていくお話。 ※コメディ寄りです。

転生してしまったので服チートを駆使してこの世界で得た家族と一緒に旅をしようと思います

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
俺はクギミヤ タツミ。 今年で33歳の社畜でございます 俺はとても運がない人間だったがこの日をもって異世界に転生しました しかし、そこは牢屋で見事にくそまみれになってしまう 汚れた囚人服に嫌気がさして、母さんの服を思い出していたのだが、現実を受け止めて抗ってみた。 すると、ステータスウィンドウが開けることに気づく。 そして、チートに気付いて無事にこの世界を気ままに旅することとなる。楽しい旅にしなくちゃな

異世界でお取り寄せ生活

マーチ・メイ
ファンタジー
異世界の魔力不足を補うため、年に数人が魔法を貰い渡り人として渡っていく、そんな世界である日、日本で普通に働いていた橋沼桜が選ばれた。 突然のことに驚く桜だったが、魔法を貰えると知りすぐさま快諾。 貰った魔法は、昔食べて美味しかったチョコレートをまた食べたいがためのお取り寄せ魔法。 意気揚々と異世界へ旅立ち、そして桜の異世界生活が始まる。 貰った魔法を満喫しつつ、異世界で知り合った人達と緩く、のんびりと異世界生活を楽しんでいたら、取り寄せ魔法でとんでもないことが起こり……!? そんな感じの話です。  のんびり緩い話が好きな人向け、恋愛要素は皆無です。 ※小説家になろう、カクヨムでも同時掲載しております。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜

家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。 そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?! しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...? ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...? 不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。 拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。 小説家になろう様でも公開しております。

異世界でスローライフとか無理だから!

まる
ファンタジー
突如青白い光に包まれ目を開ければ、目の前には邪神崇拝者(見た目で勝手に判断)の群れが! 信用できそうもない場所から飛び出していざ行かん見慣れぬ世界へ。 ○○○○○○○○○○ ※ふんわり設定。誤字脱字、表現の未熟さが目につきます。 閲覧、しおり、お気に入り登録ありがとうございます!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。