上 下
495 / 709
第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第628話 迷宮都市 樹おじさんの召喚 4 冒険者登録&スキップ申請

しおりを挟む
 確実に当たると自信がなければ、普通武器は投げたりしない。
 丸腰になってしまうからだ。
 ファングボアを仕留められると分かっていて槍を投げたのだろう。
 でもそれは、初めて見る魔物に対する動きじゃないよね?
 牛より大きな魔物だよ?
 見た目は鋭い牙を持った猪だ。
 強さも分からないのに一度で倒せると思うだろうか?
 絶命したファングボアから、いつきおじさんが槍を回収した後にアイテムBOXへ収納する。

「次は人型のトカゲです。武器を持っているから注意して下さいね」

 C級冒険者のスキップ制度対策に、試験の対象である槍持ちのリザードマンを出す。
 これにもひるんだ様子を見せず、接近すると槍を絡め取り首筋を切り裂いた。
 冒険者活動をするのに不安要素は一切感じない。
 日本で証券マンだったおじさんは、いつ槍を習ったんだろう?
 剣を使用出来る父といい、どこか2人は似ている。
 
 一応、魔石の取り方も教えておこう。
 旭がミスリル製の解体ナイフを渡し、魔石の場所を伝えた。
 これは流石さすがに少し嫌そうな顔をしている。
 まぁ、私も人型の魔物から魔石を取った事はないんだけど……。
 アイテムBOXに魔石を直接収納する手は、昇格試験で使用出来ないだろうなぁ。
 
 その後、地下1階の魔物を次々と出し樹おじさんに倒してもらった。
 3時間後にLvを確認すると、10だったのでHP/MPが858になっている。
 これならスキップ制度を受けても大丈夫かな? 
 冒険者登録をする前に、武器と防具を購入しないと……。
 あぁ、従魔もまだ見せていなかった。
 私だけホームに帰り、5匹の従魔を連れ戻ってくる。
 シルバー・フォレスト・泰雅たいが黄金こがね山吹やまぶきを樹おじさんに紹介すると、

「大型の魔物を5匹もテイムしてるのか!? 娘が強すぎるんだけどっ!」

 魔物を見るなり父に絶叫している。

「あぁ……。沙良のテイム方法は、かなり特殊なんだ。ちなみに結花ゆかさんも、2匹の魔物をテイムしているぞ」

 父は何の魔物か言わず、驚いている親友に対しニヤリと笑った。
 フォレストウサギを見て残念に思わないといいけど……。
 家の門に樹おじさんの血を登録し外へ出る。
 初めて異世界の景色を見るおじさんの様子をうかがうと、あまり興味がないのか兄達のように態度を変えなかった。
 何か、もやもやするなぁ~。
 シルバーに樹おじさんと騎乗し武器屋へ向かう。
 ドワーフがいないとがっかりし、店内の槍を見て溜息を吐いている。

「俺の武器……。ひびきは何を持ってるんだ?」

 父がガーグ老から渡された剣を見せると、樹おじさんが笑顔になった。

「いい剣だな……」

「あぁ、気に入っている」

 2人の短い遣り取りに、何か別の意味があるんじゃないかとふと思う。
 どこか言葉に重みを感じたのだ。
 それから、どれも同じだと言って樹おじさんは兄と同じミスリル製の槍を購入した。
 祖父にお願いすれば、もっといい武器を鍛えてくれるだろう。
 防具は私達と同じワイバーン製の革鎧に決めた。

 再び従魔に騎乗し冒険者ギルドへいき、受付嬢に冒険者登録とスキップ制度の申請をすると、そのまま会議室へと案内された。
 冒険者登録は受付嬢の仕事だと思うけど、毎回何故なぜかオリビアさんがしてくれるんだよね。
 会議室で待つ事もなく、直ぐにオリビアさんが入ってきた。

「新しいパーティーメンバーの冒険者登録と、スキップ制度を受けにきました。旭のの旦那さんです」

結花ゆかの夫の樹です。よろしくお願いします」

 立ち上がって挨拶をした樹おじさんに、オリビアさんが固まっている。

「……えっ? ユカさんの夫って……」

 あぁ、年齢差が気になるのか……。
 20歳と42歳だもんね。
 20歳以上、年が離れているから驚いたんだろう。
 オリビアさんは衝撃から直ぐに立ち直り、冒険者登録用紙を渡してきた。
 これは私が記入した方がいいだろう。
 『手紙の人』からの保障で、異世界の言葉を話せるし文字を読めるようになっているけどいきなり書くのは難しい。

 用紙を記入してオリビアさんへ返却すると、冒険者カードに血を垂らし登録は完了。
 鉄製のF級冒険者カードを持ち、樹おじさんが嬉しそうにしている。
 また代金を請求するのを忘れているオリビアさんへ、登録料の銀貨1枚(1万円)を渡すと不思議そうな顔をされてしまった。
 絶対、ギルドマスターの仕事じゃないですよね?

 スキップ制度は、これから受けられると聞き冒険者ギルドの裏手に回り、前回と同じ馬車に乗ってダンジョンへ。
 揺れが少ない馬車は快適だ。
 この馬車で移動するなら、お尻も痛くならない。
 私にはマッピングがあるから不要だけど……。 

 ダンジョンに到着すると、樹おじさんがワクワクした表情に変わる。
 冒険者にあこがれていたんだろうか?
 昨日も「夢が叶った」と言っていたし……。
 今回も入場料を払わずダンジョン内に入る。

「これから、ファングボアとリザードマンを見付けて1匹ずつ討伐する様子を見ます。制限時間はありませんので準備が出来次第、移動を開始して下さい」  

 そう言うと、オリビアさんは最後尾に下がった。
 ここからは樹おじさん1人で、出現する魔物を全て討伐する必要がある。
 槍の腕前を見る限り問題はないだろう。
 私達も後に続き、おじさんの姿を見守った。
 地下1階の魔物は沢山倒したからか、出現した魔物を次々と槍でほふっている。
 討伐対象であるファングボアとリザードマンも、怪我をする事なく仕留めた。

 オリビアさんから合格判定をもらい、再び冒険者ギルドに戻りC級冒険者カードを受け取る。
 これで月曜日から一緒にダンジョン攻略が可能になった。
 後はしずくちゃんのお母さんへ、明日の稽古後にテイムをお願いすればいい。
 ホームの自宅に戻り、初めての事ばかりで疲れただろうとお茶とお菓子を準備した。
 落ち着いたら、兄達の結婚報告をしよう!

 -------------------------------------
 お気に入り登録をして下さった方、エールを送って下さった方とても感謝しています。
 読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。
 応援して下さる皆様がいて大変励みになっています。
 これからもよろしくお願い致します。
 -------------------------------------
しおりを挟む
感想 2,333

あなたにおすすめの小説

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

引きこもり転生エルフ、仕方なく旅に出る

Greis
ファンタジー
旧題:引きこもり転生エルフ、強制的に旅に出される ・2021/10/29 第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞 こちらの賞をアルファポリス様から頂く事が出来ました。 実家暮らし、25歳のぽっちゃり会社員の俺は、日ごろの不摂生がたたり、読書中に死亡。転生先は、剣と魔法の世界の一種族、エルフだ。一分一秒も無駄にできない前世に比べると、だいぶのんびりしている今世の生活の方が、自分に合っていた。次第に、兄や姉、友人などが、見分のために外に出ていくのを見送る俺を、心配しだす両親や師匠たち。そしてついに、(強制的に)旅に出ることになりました。 ※のんびり進むので、戦闘に関しては、話数が進んでからになりますので、ご注意ください。

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

転生皇女は冷酷皇帝陛下に溺愛されるが夢は冒険者です!

akechi
ファンタジー
アウラード大帝国の第四皇女として生まれたアレクシア。だが、母親である側妃からは愛されず、父親である皇帝ルシアードには会った事もなかった…が、アレクシアは蔑ろにされているのを良いことに自由を満喫していた。 そう、アレクシアは前世の記憶を持って生まれたのだ。前世は大賢者として伝説になっているアリアナという女性だ。アレクシアは昔の知恵を使い、様々な事件を解決していく内に昔の仲間と再会したりと皆に愛されていくお話。 ※コメディ寄りです。

スローライフは仲間と森の中で(仮)

武蔵@龍
ファンタジー
神様の間違えで、殺された主人公は、異世界に転生し、仲間たちと共に開拓していく。 書くの初心者なので、温かく見守っていただければ幸いです(≧▽≦) よろしくお願いしますm(_ _)m

異世界でお取り寄せ生活

マーチ・メイ
ファンタジー
異世界の魔力不足を補うため、年に数人が魔法を貰い渡り人として渡っていく、そんな世界である日、日本で普通に働いていた橋沼桜が選ばれた。 突然のことに驚く桜だったが、魔法を貰えると知りすぐさま快諾。 貰った魔法は、昔食べて美味しかったチョコレートをまた食べたいがためのお取り寄せ魔法。 意気揚々と異世界へ旅立ち、そして桜の異世界生活が始まる。 貰った魔法を満喫しつつ、異世界で知り合った人達と緩く、のんびりと異世界生活を楽しんでいたら、取り寄せ魔法でとんでもないことが起こり……!? そんな感じの話です。  のんびり緩い話が好きな人向け、恋愛要素は皆無です。 ※小説家になろう、カクヨムでも同時掲載しております。

勇者を否定されて追放されたため使いどころを失った、勇者の証しの無駄遣い

網野ホウ
ファンタジー
「勇者じゃないと言われて追放されたので、帰り方が見つかるまで異世界でスローライフすることにした」から改題しました。 ※小説家になろうで先行連載してます。 何の取り柄もない凡人の三波新は、異世界に勇者として召喚された。 他の勇者たちと力を合わせないと魔王を討伐できず、それぞれの世界に帰ることもできない。 しかし召喚術を用いた大司祭とそれを命じた国王から、その能力故に新のみが疎まれ、追放された。 勇者であることも能力のことも、そして異世界のことも一切知らされていない新は、現実世界に戻る方法が見つかるまで、右も左も分からない異世界で生活していかなければならない。 そんな新が持っている能力とは? そんな新が見つけた仕事とは? 戻り方があるかどうか分からないこの異世界でのスローライフ、スタートです。

死んでないのに異世界に転生させられた

三日月コウヤ
ファンタジー
今村大河(いまむらたいが)は中学3年生になった日に神から丁寧な説明とチート能力を貰う…事はなく勝手な神の個人的な事情に巻き込まれて異世界へと行く羽目になった。しかし転生されて早々に死にかけて、与えられたスキルによっても苦労させられるのであった。 なんでも出来るスキル(確定で出来るとは言ってない) *冒険者になるまでと本格的に冒険者活動を始めるまで、メインヒロインの登場などが結構後の方になります。それら含めて全体的にストーリーの進行速度がかなり遅いですがご了承ください。 *カクヨム、アルファポリスでも投降しております

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。