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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第609話 迷宮都市 病院をホームに追加&武術稽古 タマからの連絡 

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 土曜日。
 兄達と奏屋かなでやへ果物を卸しにいく。
 新しい店用のバターを購入し、今後は定期的に『お菓子の店』へ配達してくれるようお願いした。
 その後、薬師ギルドでポーションの浄化とヒールを掛けたらホームに戻る。
 母の妊娠が分かり、出産に備え今日は兄達の勤務先であった病院をホームに設定する予定だ。
 兄の運転するSUVに乗り、マンションから病院へ向かう。
 車で20分の距離に病院はあった。

 今まで敷地内に入れなかったけど、ホームへ追加すれば入れるようになる。
 Lv30で4ヶ所の設定が可能になっているため、兄から不審に思われる事もなく追加出来た。
 兄は8年振り、旭は13年振りの職場だ。
 2人は職員用の入口から鍵を開けて入り、真っ先に外科病棟へ進んでいく。
 医局に入ると、懐かしそうに中を確認していた。
 外科部長だった兄の部屋は、現在別の人物が使用しているようで私物がないとがっかりしている。
 多分、家族が引き取ったと思うから後で母に聞いてみよう。 

 次に産科へ移動。
 兄が真剣な表情で資料を探す。
 幾つか手に取った後、何冊か選び旭へ渡している。
 産科では外科医が使用しない特殊な器具があるらしい。
 研修医のための映像も役立つだろうと、何枚かDVDも持ち出していた。

「沙良。俺達は、ここで勉強するから帰っていいぞ。帰宅は遅くなると思う。院内には飲食店もコンビニもあるから、夕食の準備はしなくて大丈夫だ」

「了解! 旭、勉強頑張ってね~」

 これから兄のスパルタ式勉強会が始まると気付いた旭の顔色が悪い気がするけど、香織かおりちゃんを無事取り上げる大仕事が待っているから兄と一緒に沢山知識を詰め込んでほしい。
 素人しろうとじゃないし、吸収するのも早いだろう。
 Lvが上がり、記憶力も良くなっているしね!
 私はテント内で出来なかった揚げ物を作るか……。
 自宅に戻りトンカツを大量に揚げていく。
 途中、油酔いで気持ち悪くなり休憩しつつ何とか人数分を揚げ終えた。
 もう当分、揚げ物は食べたくない。
 兄達の夕食を作る必要がないので、夜は簡単にお茶漬けと漬物で済ませる。
 2人は日付が変わる頃、帰宅したようだ。

 翌日、日曜日。
 母とかなで伯父さん以外のパーティーメンバーで、異世界の家へ移動する。
 母親達と子供達の炊き出しの準備を始めると、タケルが3人の護衛と共に家を訪ねてきた。
 冒険者をしている妹と父親が心配で様子見にきたと言う。
 私は2階にいる奏伯父さんを呼んでくるフリをしながら、ホームの実家へ移動し朝食の最中だった伯父さんを連れ戻ってきた。
 私の家へ泊まっている事にしているので、2階にある1部屋は伯父さんの部屋となっている。
 伯父さんは服を着替えあわただしく降り、息子へ会いにいった。

 70過ぎの父親が冒険者活動するのが不安だったのだろう。父親の無事な姿を見てタケルが安心した表情になる。
 そして、食料が入ったマジックバッグを兄に渡し帰っていった。
 兄との遣り取りに頬を染めるタケルの様子を見ていた奏伯父さんが、恐る恐る尋ねてくる。

「沙良ちゃん、とても嫌な予感がするんだが……。うちの息子は、もしかして賢也けんや君が好きなのか?」

「あ~、そうみたいです。でも兄は旭と結婚しているから、片思いですね~。話すとこじれそうなんで、内緒にして下さい」

「いやいや、賢也君と孫の尚人君が結婚しているのは初耳なんだが!?」

 あれ?
 まだ伝えてなかったかしら?
 話を聞いていた父が、奏伯父さんの肩を叩きながら家の中へと入っていった。
 息子が好きな相手が妹の子供で、その相手と娘の子供が結婚していると聞けば混乱するのも分かる。
 父が上手くなだめてくれると信じよう。

 8時になると、子供達が従魔と遊ぶためにやってきた。
 増えたシルバーウルフの黄金こがねを紹介。
 兄達が従魔の背に乗せ広い庭を走らせていた。
 今日は具沢山スープの中に『うどん』を入れてある。
 『製麺店』では、毎日売り切れるので子供達も中々食べられないだろう。
 『肉うどん店』で使った事があるのか、子供達は全員はしを器用に使用し食べていた。
 帰り際、バナナを1本ずつ手渡し子供達を見送る。
 その後、全員でガーグ老の工房へ。

 稽古が始まって直ぐ槍術Lvが3になった報告をすると、ガーグ老が「良かったのぉ」と笑顔になり喜んでくれた。
 Lv5になったら、地下5階の魔物を倒していいとOKをもらい嬉しくなる。
 地下5階からはハイオークが出現するので、肉の確保もしながら槍術を上げよう。
 寝不足の旭は目の下にくまを作っていたけど、何とかご老人達と息子さん&お嫁さんとの稽古をこなしている。
 旭だけは、地下15階の魔物の討伐許可が下りたみたいだ。
 兄は地下5階までらしい。
 従魔に乗り地下11階まで駆け抜けるから、あまり魔物を倒す機会はなさそうだけど……。
 稽古が終了し昼食の準備を始めると、上空からタマがガーグ老の所へ飛んでくる。
 足にくくり付けられた丸筒の中身を取り出し、書かれた内容を読んだガーグ老の顔が険しいものに変化した。

「サラ……ちゃん。どうやら、王都のダンジョンにも呪具が設置されたようだ」

「アシュカナ帝国の仕業しわざですね。オリビアさんから、迷宮都市での事件は報告済みだと聞きました。冒険者ギルドは事前に対応策を考えているでしょうか?」

「教会の司教に、いつでも動けるよう連絡は入れていると思うがの。薬師ギルドから、浄化の出来るポーションを送ったと言っておった」

 うん?
 『毒消しポーション』が浄化の効果もあると、ガーグ老は知らないはずだよね? 

「あぁ、薬師ギルドのゼリア婆とは知己である。浄化可能なポーションの件は、秘密にしておくで心配せんでよい」

 ゼリアさんと顔見知りなのか……。
 ガーグ老は案外顔が広いようだ。
 
「なら、安心ですね。呪具が設置されても解呪出来るなら、その間に増えた魔物を討伐すればいいですし、事前に呪具が設置される可能性があると知っているだけでも対応はかなり違います」

「教会の司教は、出番がないといいがの。あの組織はがめつい。これ幸いと大金を要求してくるだろう」 
 
「なんだか、マッチポンプみたいなやり方ですよね。実は、教会組織が一枚んでると言われても不思議じゃないと思います」

「実際、きな臭いぞ? そりゃもう、ボウボウだわ」

 ふむ。
 火のない所に煙は立たないと言う。
 もしアシュカナ帝国と教会が手を組んでいるとしたら、司教の出番がなければ教会の利益はなくなり、予想外の結果に終わるかも知れない。
 他に何らかの確約をしていた所で、何の利益も生み出さないと分かれば教会は手を切るだろうか……。

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