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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第608話 迷宮都市 地下15階 秘密のLv上げ22(摩天楼のダンジョン30階)&2人のアリサ

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「他人の従魔が言うことを聞くのは、明らかに変だ。まさか他の従魔達もじゃないよな?」

 何かを危惧きぐしたかなで伯父さんが、真剣な声で問い詰める。

「私の言葉を理解するのは、ポチとタマだけみたい。お母さんのボブには伝わらなかったよ」

 従魔は主人を守る特性がある。
 主人以外の指示を聞くのは問題だろう。
 私の返事を聞き奏伯父さんは、ほっとした表情をみせた。

「それにしたって、普通は主人以外の命令を聞かないもんだがな……。ガーグ老の従魔は、お前達と深い関係があるのか?」

「どうだろう? 最初に会った時から、なついてくれてるからよく分からないんだよね~。ポチ、何で私の言葉が分かるの?」

 右肩に乗っているポチに質問してみたけど、白ふくろうは機嫌よく「ホー、ホー」と鳴くだけで何を言っているか私には理解出来なかった。

「ガーグ老のさんと私がよく似ているらしく、その所為せいかも?」

「娘がいたのか……。従魔達にポチとタマと名付けるなら、元日本人だった可能性が高いな」

「うん。でも、もう亡くなってしまったそうだから確かめられないんだよね。会ってみたかったけど……」

「カルドサリ王国には、元日本人の転生者か転移者が意外と多かったんだな」

 奏伯父さんはそう言うと、マジックバッグから魔道調理器を取り出しお湯をかし始めた。
 私達と冒険者をすると決め、当時使用していたマジックバッグ100㎥を引っ張り出してきたらしい。
 私はくつろぎ始めた彼の隣で、料理をせっせと作り出す。
 結婚式の参加者は200人以上だ。
 しかも冒険者達は、よく食べる。
 幾らあっても困らないだろう。
 アシュカナ帝国の襲撃に備え、実際の挙式前に食事をする予定ではいるけど汁物は除外しておこう。

 今日は、ハイオーク肉を使用した『カツサンド』の準備をする
 大量の揚げ物をテント内でするのは、換気扇がないため却下。
 大きく切った肉に衣を付ける作業を延々としていく。
 それが終了したら、今度は『ナン』を焼く作業だ。
 これは奏伯父さんが、ファイアーボールを器用に使用し手伝ってくれた。
 年の功なのか、魔力操作が巧みだ。
 兄達のように焦がす事もない。
 この週、私は午後からテント内で沢山の料理の下準備をしておいた。
 『唐揚げ』・『ミートボール』・『鰻の蒲焼』・『グラタン』・『ピザ』・『マドレーヌ』、これだけあれば足りるだろう。
 
 4日後。
 冒険者ギルドへ換金にいき、まだ新しいメンバーを紹介していなかった『製麺店』へ寄る。
 雫ちゃんとお母さん、父と奏伯父さんが従業員達と挨拶を交わし増えた従魔も見せると、その数に驚きバスクさん達が苦笑していた。
 3人だけだったパーティー人数が増えたので安心したのか、従業員達は「オーナーのパーティーは最強だな!」と笑顔になる。
 奏伯父さんは私が迷宮都市で3店舗の店を経営していると知り、『肉うどん店』へ食べにいきたかったとぼやく。
 同じ領内でも、貴族は迷宮都市には用事がない限りくる機会がないみたい。

 次に、新しい『お菓子の店』へ向う。
 母はいないけど、リュートさんは父の顔を知っているはずだ。
 『お菓子の店』に入ると、子供達が営業後の清掃作業をしている所だった。

「サラお姉ちゃん! 『ショートブレッド』沢山売れたよ~」

 リーダーのカレンちゃんが、嬉しそうに報告をしてくれた。
 特に宣伝はしていなかったけど、甘い匂いがただってくれば物珍しさから集客につながる。
 冒険者ギルドからも近いので、店の前を通る冒険者達は足を止めたに違いない。
 それに試食も置いてあるから、食べてもらえば購入してくれる可能性が上がる。
 店内にいたリュートさんへ声を掛け、パーティーメンバーの紹介をした。
 そっと父が挨拶をする様子をうかがってみたけど、リュートさんは何も言わなかった。

 う~ん。
 これはやはり、知らせる心算つもりがないのかな?
 そこに、アリサちゃんが登場する。

「娘のアリサです。父が、このお店の護衛を任されているので安心して下さいね」

 名前を聞いた奏伯父さんが反応した。

「アリサちゃんっていうのかい? 偶然だな、私の娘も同じ名前なんだよ」

「へぇ~、私の名前は珍しいってよく言われるのに……。ねぇ、お父さん?」

 ほんの一瞬、奏伯父さんとリュートさんの視線が交わる。
 でも、本当にそれだけだった。
 店を出た後、奏伯父さんが「カルドサリ王国には、元日本人が本当に多いみたいだな」と小さな声で呟いたのを聞き、リュートさんが元妻だと気付いたんじゃないかと思ったけど……。
 実際の所は分からず、また確認するのもはばかられた。

 誰もが、前世の記憶に縛られ生きている訳じゃない。
 2人がそうと決めたのなら、私達はそっとしておこう。
 兄と旭へ無言でうなずき、知りえた事実は秘密にしようと決めた。
 いつか、2人が話してくれるかもしれないしね。

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