475 / 709
第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略
第608話 迷宮都市 地下15階 秘密のLv上げ22(摩天楼のダンジョン30階)&2人のアリサ
しおりを挟む
「他人の従魔が言うことを聞くのは、明らかに変だ。まさか他の従魔達もじゃないよな?」
何かを危惧した奏伯父さんが、真剣な声で問い詰める。
「私の言葉を理解するのは、ポチとタマだけみたい。お母さんのボブには伝わらなかったよ」
従魔は主人を守る特性がある。
主人以外の指示を聞くのは問題だろう。
私の返事を聞き奏伯父さんは、ほっとした表情をみせた。
「それにしたって、普通は主人以外の命令を聞かないもんだがな……。ガーグ老の従魔は、お前達と深い関係があるのか?」
「どうだろう? 最初に会った時から、懐いてくれてるからよく分からないんだよね~。ポチ、何で私の言葉が分かるの?」
右肩に乗っているポチに質問してみたけど、白梟は機嫌よく「ホー、ホー」と鳴くだけで何を言っているか私には理解出来なかった。
「ガーグ老の娘さんと私がよく似ているらしく、その所為かも?」
「娘がいたのか……。従魔達にポチとタマと名付けるなら、元日本人だった可能性が高いな」
「うん。でも、もう亡くなってしまったそうだから確かめられないんだよね。会ってみたかったけど……」
「カルドサリ王国には、元日本人の転生者か転移者が意外と多かったんだな」
奏伯父さんはそう言うと、マジックバッグから魔道調理器を取り出しお湯を沸かし始めた。
私達と冒険者をすると決め、当時使用していたマジックバッグ100㎥を引っ張り出してきたらしい。
私は寛ぎ始めた彼の隣で、料理をせっせと作り出す。
結婚式の参加者は200人以上だ。
しかも冒険者達は、よく食べる。
幾らあっても困らないだろう。
アシュカナ帝国の襲撃に備え、実際の挙式前に食事をする予定ではいるけど汁物は除外しておこう。
今日は、ハイオーク肉を使用した『カツサンド』の準備をする
大量の揚げ物をテント内でするのは、換気扇がないため却下。
大きく切った肉に衣を付ける作業を延々としていく。
それが終了したら、今度は『ナン』を焼く作業だ。
これは奏伯父さんが、ファイアーボールを器用に使用し手伝ってくれた。
年の功なのか、魔力操作が巧みだ。
兄達のように焦がす事もない。
この週、私は午後からテント内で沢山の料理の下準備をしておいた。
『唐揚げ』・『ミートボール』・『鰻の蒲焼』・『グラタン』・『ピザ』・『マドレーヌ』、これだけあれば足りるだろう。
4日後。
冒険者ギルドへ換金にいき、まだ新しいメンバーを紹介していなかった『製麺店』へ寄る。
雫ちゃんとお母さん、父と奏伯父さんが従業員達と挨拶を交わし増えた従魔も見せると、その数に驚きバスクさん達が苦笑していた。
3人だけだったパーティー人数が増えたので安心したのか、従業員達は「オーナーのパーティーは最強だな!」と笑顔になる。
奏伯父さんは私が迷宮都市で3店舗の店を経営していると知り、『肉うどん店』へ食べにいきたかったとぼやく。
同じ領内でも、貴族は迷宮都市には用事がない限りくる機会がないみたい。
次に、新しい『お菓子の店』へ向う。
母はいないけど、リュートさんは父の顔を知っている筈だ。
『お菓子の店』に入ると、子供達が営業後の清掃作業をしている所だった。
「サラお姉ちゃん! 『ショートブレッド』沢山売れたよ~」
リーダーのカレンちゃんが、嬉しそうに報告をしてくれた。
特に宣伝はしていなかったけど、甘い匂いが漂ってくれば物珍しさから集客に繋がる。
冒険者ギルドからも近いので、店の前を通る冒険者達は足を止めたに違いない。
それに試食も置いてあるから、食べてもらえば購入してくれる可能性が上がる。
店内にいたリュートさんへ声を掛け、パーティーメンバーの紹介をした。
そっと父が挨拶をする様子を窺ってみたけど、リュートさんは何も言わなかった。
う~ん。
これはやはり、知らせる心算がないのかな?
そこに、アリサちゃんが登場する。
「娘のアリサです。父が、このお店の護衛を任されているので安心して下さいね」
名前を聞いた奏伯父さんが反応した。
「アリサちゃんっていうのかい? 偶然だな、私の娘も同じ名前なんだよ」
「へぇ~、私の名前は珍しいってよく言われるのに……。ねぇ、お父さん?」
ほんの一瞬、奏伯父さんとリュートさんの視線が交わる。
でも、本当にそれだけだった。
店を出た後、奏伯父さんが「カルドサリ王国には、元日本人が本当に多いみたいだな」と小さな声で呟いたのを聞き、リュートさんが元妻だと気付いたんじゃないかと思ったけど……。
実際の所は分からず、また確認するのも憚られた。
誰もが、前世の記憶に縛られ生きている訳じゃない。
2人がそうと決めたのなら、私達はそっとしておこう。
兄と旭へ無言で頷き、知りえた事実は秘密にしようと決めた。
いつか、2人が話してくれるかもしれないしね。
-------------------------------------
お気に入り登録をして下さった方、エールを送って下さった方とても感謝しています。
読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。
応援して下さる皆様がいて大変励みになっています。
これからもよろしくお願い致します。
-------------------------------------
何かを危惧した奏伯父さんが、真剣な声で問い詰める。
「私の言葉を理解するのは、ポチとタマだけみたい。お母さんのボブには伝わらなかったよ」
従魔は主人を守る特性がある。
主人以外の指示を聞くのは問題だろう。
私の返事を聞き奏伯父さんは、ほっとした表情をみせた。
「それにしたって、普通は主人以外の命令を聞かないもんだがな……。ガーグ老の従魔は、お前達と深い関係があるのか?」
「どうだろう? 最初に会った時から、懐いてくれてるからよく分からないんだよね~。ポチ、何で私の言葉が分かるの?」
右肩に乗っているポチに質問してみたけど、白梟は機嫌よく「ホー、ホー」と鳴くだけで何を言っているか私には理解出来なかった。
「ガーグ老の娘さんと私がよく似ているらしく、その所為かも?」
「娘がいたのか……。従魔達にポチとタマと名付けるなら、元日本人だった可能性が高いな」
「うん。でも、もう亡くなってしまったそうだから確かめられないんだよね。会ってみたかったけど……」
「カルドサリ王国には、元日本人の転生者か転移者が意外と多かったんだな」
奏伯父さんはそう言うと、マジックバッグから魔道調理器を取り出しお湯を沸かし始めた。
私達と冒険者をすると決め、当時使用していたマジックバッグ100㎥を引っ張り出してきたらしい。
私は寛ぎ始めた彼の隣で、料理をせっせと作り出す。
結婚式の参加者は200人以上だ。
しかも冒険者達は、よく食べる。
幾らあっても困らないだろう。
アシュカナ帝国の襲撃に備え、実際の挙式前に食事をする予定ではいるけど汁物は除外しておこう。
今日は、ハイオーク肉を使用した『カツサンド』の準備をする
大量の揚げ物をテント内でするのは、換気扇がないため却下。
大きく切った肉に衣を付ける作業を延々としていく。
それが終了したら、今度は『ナン』を焼く作業だ。
これは奏伯父さんが、ファイアーボールを器用に使用し手伝ってくれた。
年の功なのか、魔力操作が巧みだ。
兄達のように焦がす事もない。
この週、私は午後からテント内で沢山の料理の下準備をしておいた。
『唐揚げ』・『ミートボール』・『鰻の蒲焼』・『グラタン』・『ピザ』・『マドレーヌ』、これだけあれば足りるだろう。
4日後。
冒険者ギルドへ換金にいき、まだ新しいメンバーを紹介していなかった『製麺店』へ寄る。
雫ちゃんとお母さん、父と奏伯父さんが従業員達と挨拶を交わし増えた従魔も見せると、その数に驚きバスクさん達が苦笑していた。
3人だけだったパーティー人数が増えたので安心したのか、従業員達は「オーナーのパーティーは最強だな!」と笑顔になる。
奏伯父さんは私が迷宮都市で3店舗の店を経営していると知り、『肉うどん店』へ食べにいきたかったとぼやく。
同じ領内でも、貴族は迷宮都市には用事がない限りくる機会がないみたい。
次に、新しい『お菓子の店』へ向う。
母はいないけど、リュートさんは父の顔を知っている筈だ。
『お菓子の店』に入ると、子供達が営業後の清掃作業をしている所だった。
「サラお姉ちゃん! 『ショートブレッド』沢山売れたよ~」
リーダーのカレンちゃんが、嬉しそうに報告をしてくれた。
特に宣伝はしていなかったけど、甘い匂いが漂ってくれば物珍しさから集客に繋がる。
冒険者ギルドからも近いので、店の前を通る冒険者達は足を止めたに違いない。
それに試食も置いてあるから、食べてもらえば購入してくれる可能性が上がる。
店内にいたリュートさんへ声を掛け、パーティーメンバーの紹介をした。
そっと父が挨拶をする様子を窺ってみたけど、リュートさんは何も言わなかった。
う~ん。
これはやはり、知らせる心算がないのかな?
そこに、アリサちゃんが登場する。
「娘のアリサです。父が、このお店の護衛を任されているので安心して下さいね」
名前を聞いた奏伯父さんが反応した。
「アリサちゃんっていうのかい? 偶然だな、私の娘も同じ名前なんだよ」
「へぇ~、私の名前は珍しいってよく言われるのに……。ねぇ、お父さん?」
ほんの一瞬、奏伯父さんとリュートさんの視線が交わる。
でも、本当にそれだけだった。
店を出た後、奏伯父さんが「カルドサリ王国には、元日本人が本当に多いみたいだな」と小さな声で呟いたのを聞き、リュートさんが元妻だと気付いたんじゃないかと思ったけど……。
実際の所は分からず、また確認するのも憚られた。
誰もが、前世の記憶に縛られ生きている訳じゃない。
2人がそうと決めたのなら、私達はそっとしておこう。
兄と旭へ無言で頷き、知りえた事実は秘密にしようと決めた。
いつか、2人が話してくれるかもしれないしね。
-------------------------------------
お気に入り登録をして下さった方、エールを送って下さった方とても感謝しています。
読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。
応援して下さる皆様がいて大変励みになっています。
これからもよろしくお願い致します。
-------------------------------------
405
お気に入りに追加
6,072
あなたにおすすめの小説
家ごと異世界ライフ
ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!
異世界でお取り寄せ生活
マーチ・メイ
ファンタジー
異世界の魔力不足を補うため、年に数人が魔法を貰い渡り人として渡っていく、そんな世界である日、日本で普通に働いていた橋沼桜が選ばれた。
突然のことに驚く桜だったが、魔法を貰えると知りすぐさま快諾。
貰った魔法は、昔食べて美味しかったチョコレートをまた食べたいがためのお取り寄せ魔法。
意気揚々と異世界へ旅立ち、そして桜の異世界生活が始まる。
貰った魔法を満喫しつつ、異世界で知り合った人達と緩く、のんびりと異世界生活を楽しんでいたら、取り寄せ魔法でとんでもないことが起こり……!?
そんな感じの話です。
のんびり緩い話が好きな人向け、恋愛要素は皆無です。
※小説家になろう、カクヨムでも同時掲載しております。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
野草から始まる異世界スローライフ
深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。
私ーーエルバはスクスク育ち。
ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。
(このスキル使える)
エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。
エブリスタ様にて掲載中です。
表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。
プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。
物語は変わっておりません。
一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。
よろしくお願いします。
集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!
七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」
その天使の言葉は善意からなのか?
異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか?
そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。
ただし、その扱いが難しいものだった。
転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。
基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。
○○○「これは私とのラブストーリーなの!」
主人公「いや、それは違うな」
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
私の家族はハイスペックです! 落ちこぼれ転生末姫ですが溺愛されつつ世界救っちゃいます!
りーさん
ファンタジー
ある日、突然生まれ変わっていた。理由はわからないけど、私は末っ子のお姫さまになったらしい。
でも、このお姫さま、なんか放置気味!?と思っていたら、お兄さんやお姉さん、お父さんやお母さんのスペックが高すぎるのが原因みたい。
こうなったら、こうなったでがんばる!放置されてるんなら、なにしてもいいよね!
のんびりマイペースをモットーに、私は好きに生きようと思ったんだけど、実は私は、重要な使命で転生していて、それを遂行するために神器までもらってしまいました!でも、私は私で楽しく暮らしたいと思います!
おばあちゃん(28)は自由ですヨ
美緒
ファンタジー
異世界召喚されちゃったあたし、梅木里子(28)。
その場には王子らしき人も居たけれど、その他大勢と共にもう一人の召喚者ばかりに話し掛け、あたしの事は無視。
どうしろっていうのよ……とか考えていたら、あたしに気付いた王子らしき人は、あたしの事を鼻で笑い。
「おまけのババアは引っ込んでろ」
そんな暴言と共に足蹴にされ、あたしは切れた。
その途端、響く悲鳴。
突然、年寄りになった王子らしき人。
そして気付く。
あれ、あたし……おばあちゃんになってない!?
ちょっと待ってよ! あたし、28歳だよ!?
魔法というものがあり、魔力が最も充実している年齢で老化が一時的に止まるという、謎な法則のある世界。
召喚の魔法陣に、『最も力――魔力――が充実している年齢の姿』で召喚されるという呪が込められていた事から、おばあちゃんな姿で召喚されてしまった。
普通の人間は、年を取ると力が弱くなるのに、里子は逆。年を重ねれば重ねるほど力が強大になっていくチートだった――けど、本人は知らず。
自分を召喚した国が酷かったものだからとっとと出て行き(迷惑料をしっかり頂く)
元の姿に戻る為、元の世界に帰る為。
外見・おばあちゃんな性格のよろしくない最強主人公が自由気ままに旅をする。
※気分で書いているので、1話1話の長短がバラバラです。
※基本的に主人公、性格よくないです。言葉遣いも余りよろしくないです。(これ重要)
※いつか恋愛もさせたいけど、主人公が「え? 熟女萌え? というか、ババ專!?」とか考えちゃうので進まない様な気もします。
※こちらは、小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。