自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

如月 雪名

文字の大きさ
上 下
471 / 709
第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第604話 迷宮都市 武術稽古 お礼の『焼売』と『焼きそば』&新しい魔物のテイム

しおりを挟む
 ガーグ老の合図で稽古が終了すると、私と母は昼食の準備を始める。
 父とかなで伯父さんは、ガーグ老と一緒に工房へ入っていった。
 武人同士、気が合ったのだろう。
 現在の姿は40代後半だけど、実際の年齢はそう変わらない。
 今日の昼食メニューは、『焼売しゅうまい』と『焼きそば』。
 炒飯チャーハンが作りたかったけど、まだお米が見付からないんだよね~。

 ハイオーク肉をしずくちゃんへ渡し、ミンサーで挽肉ひきにくにお願いする。
 その間、玉ねぎをみじん切りにしておく。
 挽肉に醤油・酒・砂糖・ごま油・塩を入れよく練り合わせ、玉ねぎのみじん切りと片栗粉を加え混ぜ合わせたら種が完成。
 後は、焼売の皮に包んで蒸すだけだ。
 1人10個もあれば足りるだろう。

 餃子ギョーザと違い包むのは簡単なので、雫ちゃんとお母さんに手伝ってもらった。
 私は焼きそばの材料を刻み、2台のバーベキュー台を出し大量の『焼きそば』を焼き始める。
 焼売は蒸しあがりを熱々の状態で食べてほしい。
 出来上がった料理とショートブレッドを、妖精さんへお供えに木の下へ持っていこうとすると、雫ちゃんのお母さんがバスケット持参で付いてくる。
 思わず雫ちゃんの方を見ると、やはり首を横に振り肩を落としていた。
 あぁ、妖精さん。
 ごめんなさい……。

「お待たせしました。皆さん、今日もありがとうございます。お昼のメニューは、『焼きそば』と『焼売』です。『焼売』は蒸すのに時間が掛かるので、先に『焼きそば』を食べて下さいね。それでは頂きましょう」

「頂きます!」

 最初に蒸しあがった分の『焼売』をガーグ老へ渡し、食べてもらった。

「サラ……ちゃん。これは姫様が話しておったギョーザとは、また違う食べ物かの? ギョーザはエールと合うそうだが……」

「『餃子』は、中に入れる野菜も形も違いますね~。ニラ・・があれば作れるんですけど……」

「そうか、でもこれも旨いのぉ」

 満面の笑みを浮かべながら食べるガーグ老に、雫ちゃんのお母さんが稽古のお礼だと言い、とある料理を取り出した。

「おお、気を使わせて悪いな。では、ありがたく頂こう」

「あっ!」

 その場にいたパーティーメンバー全員が、小さく悲鳴を上げる。
 ガーグ老は気付かず、その料理を一口で食べてしまった。
 そして口の中の味を中和させようと、雫ちゃんのお母さんが準備した苦い紅茶を飲んでしまう。
 かろうじて、紅茶を吹き出す事はなかったけど……。

「……何事も修行が必要だ。ユカさん、儂の分は用意せんでいいから妖精達にあげて下され」

 ガーグ老の言葉を聞いた妖精さん達は、抗議のためか木の枝を大きくバサバサと揺らしていた。
 全員に焼売が行き渡り食事を済ませ再び木の下へいくと、お礼の手紙が2通置かれている。

『サラ様。今日も美味しい料理を、ありがとうございます。ショートブレッドは、お腹が空いた時に食べさせて頂きます。また次回も、よろしくお願い致します。』

『ユカ様。私達はダンジョン産の果物が大好物・・・です。どうか果物だけ、お願いします。』 

 ……。

「妖精さんは果物が大好きのようですよ?」

「まぁ、甘い物が好きなのね? じゃあ、次回は『善哉ぜんざい』にしようかしら?」

 兄達が食べたしょっぱい善哉か……。
 ひとつで、ご飯1杯必要なくらい塩辛い卵焼きよりはましだろう。
 ガーグ老へ稽古のお礼を言い、ショートブレッドを渡し私達は工房を後にした。
 奏伯父さんが明日からパーティーに追加されると、騎獣の従魔が足りないな。
 母の従魔であるボブは、妊娠中の母を気遣いそばを離れないと思う。
 泰雅たいがへ一緒に騎乗するのも、体格の良い2人では大変かも?
 かと言って、雫ちゃんのお母さんと源五郎げんごろうに乗るのも無理がありそう……。

「お兄ちゃん。奏伯父さんの騎獣をテイムした方が良いかな?」

「沙良、Lvは上がってるか?」

「うん、32になったよ!」

「それなら問題ない。父さんと一緒に、テイムしてきていいぞ」

 兄が許可をくれたので皆をホーム内に送り届けた後、父と奏伯父さんと一緒にダンジョンへ向かう。
 念のため奏伯父さんの冒険者カードを確認すると、オリハルコン製のSS級だった。
 雫ちゃんのお母さんが私と同じ20歳なのに、40代でSS級冒険者?

「伯父さん。Lv120まで、どうやって上げたの?」
 
「俺は伯爵家の三男で後継ぎじゃなかったから、15歳から30年近くは冒険者の活動をしていたのさ」

 うん?
 計算が合わない。
 
「え? じゃあ今は何歳?」

「70歳を超えてるな」

 高Lvだと、老化が遅くなるのを忘れていた!

「じゃあ、摩天楼まてんろうのダンジョンを潜っていたりする?」

「あぁ、そこで当時のフィンレイ伯爵に見初められてな。娘の結婚相手にと、頭を下げられたんだよ」

 そうだったのか……。
 伯父さんには冒険者の方が合ってそうだけど、色々あったのかも知れない。

「それより、俺は従魔にするなら空を飛べる魔物がいいな」

「う~ん。迷宮都市のダンジョンは、地下1階~地下10までは迷路状になってるから天井が低いんだよね。鳥系の魔物は、移動が難しいと思う」

 私の言葉にガッカリした伯父さんは、じゃあ何でもいいと言い肩をすくめた。
 いきはシルバーへ一緒に乗り、地下10階のシルバーウルフをテイムする。
 子供達の捜索に大活躍したから、嗅覚が鋭い魔物にしたのだ。
 シルバーも同じ種族の方が嬉しいだろう。
 残念ながら、テイム出来るのはおすだけのためつがいにはならないけど……。
 私のモフモフパラダイスの夢は、いつ叶うんだろう。

「貴方の名前は、黄金こがねよ! これからよろしくね」

 名付けを済ませてステータスを確認。
 私の現在Lvは55だ。
 
 ●黄金こがね Lv55(消費MP160)HP550/MP550 シルバーウルフ(雄)
 使用魔法 アイスボールLv5(MP消費15)

 シルバーと同じLvだけど、種族が違うから消費MPが少ない。 
 今回はゴールデン・・・・・ウルフに進化するのを踏まえ、最初から進化後の名前にした。
 シルバーウルフがテイムされた状況を見た奏伯父さんが、後ろで絶叫している。

「何だ、そのテイム方法は!?」

 私は魅了みりょうを使用してテイムするんです。
 この世界のテイム魔法が、どんなものかは知りません。
 父が彼の肩を叩き、あきらめろと言っているような気がする。
 私達とパーティーを組むと、これから沢山驚く事になりますよ?

 -------------------------------------
 お気に入り登録をして下さった方、エールを送って下さった方とても感謝しています。
 読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。
 応援して下さる皆様がいて大変励みになっています。
 これからもよろしくお願い致します。
 -------------------------------------
しおりを挟む
感想 2,333

あなたにおすすめの小説

家ごと異世界ライフ

ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う

たくみ
ファンタジー
 圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。  アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。  ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?                        それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。  自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。  このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。  それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。 ※小説家になろうさんで投稿始めました

【完結】精霊に選ばれなかった私は…

まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。 しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。 選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。 選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。 貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…? ☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

聖女としてきたはずが要らないと言われてしまったため、異世界でふわふわパンを焼こうと思います!

伊桜らな
ファンタジー
家業パン屋さんで働くメルは、パンが大好き。 いきなり聖女召喚の儀やらで異世界に呼ばれちゃったのに「いらない」と言われて追い出されてしまう。どうすればいいか分からなかったとき、公爵家当主に拾われ公爵家にお世話になる。 衣食住は確保できたって思ったのに、パンが美味しくないしめちゃくちゃ硬い!! パン好きなメルは、厨房を使いふわふわパン作りを始める。  *表紙画は月兎なつめ様に描いて頂きました。*  ー(*)のマークはRシーンがあります。ー  少しだけ展開を変えました。申し訳ありません。  ホットランキング 1位(2021.10.17)  ファンタジーランキング1位(2021.10.17)  小説ランキング 1位(2021.10.17)  ありがとうございます。読んでくださる皆様に感謝です。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

伯爵令嬢の秘密の知識

シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のグランディア王国ルナリス伯爵家のミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。

あなた方はよく「平民のくせに」とおっしゃいますが…誰がいつ平民だと言ったのですか?

水姫
ファンタジー
頭の足りない王子とその婚約者はよく「これだから平民は…」「平民のくせに…」とおっしゃられるのですが… 私が平民だとどこで知ったのですか?

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。