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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略
第602話 迷宮都市 『お菓子の店』の護衛人 1
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「初めまして、沙良と申します」
「私はリュートだ」
まずは立ち上がり、お互い挨拶を交わして席に着く。
兄と旭は、少し離れた場所から様子を見る心算らしい。
「月曜から新しい店の従業員の護衛をしてほしいのですが、問題ありませんか?」
「あぁ、大丈夫だ」
「店の2階に空き部屋があるので住む事も出来ますが、どうされますか?」
「それは助かる。宿を引き払い、住まわせてもらおう」
リュートさんは、必要最低限しか話さないタイプなのかしら……。
隻腕だけど、とにかく横幅があるので護衛するのは問題なさそうね。
バスクさんのパーティーメンバーだったのなら、セイさんを知っているだろうと話題を振ってみた。
「同じメンバーだったセイさんを覚えてますか?」
「黒炎か……。懐かしい名前だな」
セイさんの渾名を呟くと、彼は無表情だった顔を和ませる。
セイさんは、クランメンバーに可愛がられていたと聞いたけど……。
彼もまた、童顔で背の低いセイさんを可愛がっていたようだ。
「ジョンさんへ会いに摩天楼のダンジョンから迷宮都市にくると思うので、もう直ぐ会えますよ」
「それは楽しみだ」
私の言葉に頷きを返し、リュートさんは破顔する。
顔が怖いので、そうするとより一層凄みが増した。
バスクさんにお礼を伝え、『お菓子の店』でショートブレッド作りの練習をしている子供達へ紹介しに移動する。
道中、兄と旭が名乗ると一瞬立ち止まり、「そうか……」と言って再び歩き出した。
賢也と尚人という、異世界では聞きなれない珍しい名前に驚いたのだろうか?
『お菓子の店』へ入ると、焼き上げのタイミングだったのか店内は甘い匂いが充満している。
子供達に、これから護衛をしてくれる人だと紹介すると、アリサちゃんが大きく目を開けてリュートさんへ抱き着いた。
「お父さん!」
「お父さん!?」
これには、全員が唖然とする。
言われた本人も、怪訝な表情をしアリサちゃんを見ていた。
何か事情がありそうだと、アリサちゃんを連れ2階の部屋へいきテーブルと椅子を出す。
するとアリサちゃんが話し始めた。
「あのね、リュートおじさん。お母さんが、病気で亡くなる前に本当の父親が誰か教えてくれたの。迷惑かけたくないからと黙っていたそうなんだけど……。私は、リュートおじさんの娘なんだって」
おっと、何やら大変な場面に遭遇してしまったらしい。
「……本当なのか?」
「うん。最後に、本当の事を伝えて私を一緒に育てれば良かったと言い残してたから……」
「だからアリサだったのか……」
思い当たる節でもあるのか、リュートさんは黙り込んだ。
あれ?
アリサって、雫ちゃんのお母さんも一緒の名前だよね?
異世界では珍しい名前じゃないかしら……。
「知らなかったとは言え、寂しい思いをさせてすまない。これからは、一緒に暮らそう」
彼は即断し、アリサちゃんを片腕で抱き上げた。
ここは2人きりにさせた方がいいだろうと、私達は部屋から出る。
ガーグ老の亡くなった奥さん達も、子供を産んだのを内緒にしていたらしいけど……。
独りで子供を産み育てるのは大変だっただろうなぁ。
ガーグ老の息子さん達は、本当かどうか全く似ていないから怪しいけどね!
1階に降りると、子供達が心配そうな顔をしている。
詳しい事情はアリサちゃんが伝えるだろう。
私は「大丈夫」とだけ言い残し店を出た。
再び『製麺店』に戻り、バスクさんへ先程の話をするとリュートさんの事を色々教えてくれた。
クランが解散になってから、暫くは迷宮都市で冒険者をしていたらしい。
不動の渾名を持つ盾士だったようで、メンバーを庇い腕を失くしてしまったそうだ。
一度故郷へ帰り、最近迷宮都市に戻ってきたと言っていた。
体格が良いのは教会の炊き出しに並んでいた人じゃなかったからなのか……。
本人の知らない娘がいたのをバスクさんも驚いていたから、異世界でも父親に内緒で産むのは普通じゃないみたい。
その後。
父をマッピングで探すと、ガーグ老の工房から出た後で泰雅に騎乗し家へ向かっていた。
私達も従魔に乗り家へいく。
ホームへ戻り、実家にいた奏伯父さんへ娘の名前をアリサと付けた理由を聞いてみた。
どうも偶然とは思えなかったからだ。
すると伯父さんは少し口籠った後、娘が生まれたらアリサと名付けようと前世の奥さんと約束していた話をしてくれた。
確か息子ばかりが3人だった筈。
そうなんだ……。
じゃあ、アリサちゃんの亡くなったお母さんは……。
ひょっとしてと思ったけれど、もう既に確かめる術もないため奏伯父さんへは話さない方がいいだろうか?
それに、リュートさんの言葉も何か引っかかる。
兄へ視線を向けると首を横に振られた。
今は、まだ黙っておけという意味か……。
後で相談しよう!
奏伯父さんは娘を連れ帰る予定で家を出たから、明日雫ちゃんのお母さんと一緒に一度家へ戻るらしい。
今日は娘の家族と過ごすと言うので、旭と一緒に雫ちゃんの家へ送った。
あぁ! 夕食は大丈夫だろうか?
料理が下手だと伝え忘れてしまった。
娘の手料理だから頑張って食べるわよね~。
それよりも、月曜から一緒にパーティーを組んでダンジョン攻略する報告の方が衝撃的かしら……。
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読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。
応援して下さる皆様がいて大変励みになっています。
これからもよろしくお願い致します。
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「私はリュートだ」
まずは立ち上がり、お互い挨拶を交わして席に着く。
兄と旭は、少し離れた場所から様子を見る心算らしい。
「月曜から新しい店の従業員の護衛をしてほしいのですが、問題ありませんか?」
「あぁ、大丈夫だ」
「店の2階に空き部屋があるので住む事も出来ますが、どうされますか?」
「それは助かる。宿を引き払い、住まわせてもらおう」
リュートさんは、必要最低限しか話さないタイプなのかしら……。
隻腕だけど、とにかく横幅があるので護衛するのは問題なさそうね。
バスクさんのパーティーメンバーだったのなら、セイさんを知っているだろうと話題を振ってみた。
「同じメンバーだったセイさんを覚えてますか?」
「黒炎か……。懐かしい名前だな」
セイさんの渾名を呟くと、彼は無表情だった顔を和ませる。
セイさんは、クランメンバーに可愛がられていたと聞いたけど……。
彼もまた、童顔で背の低いセイさんを可愛がっていたようだ。
「ジョンさんへ会いに摩天楼のダンジョンから迷宮都市にくると思うので、もう直ぐ会えますよ」
「それは楽しみだ」
私の言葉に頷きを返し、リュートさんは破顔する。
顔が怖いので、そうするとより一層凄みが増した。
バスクさんにお礼を伝え、『お菓子の店』でショートブレッド作りの練習をしている子供達へ紹介しに移動する。
道中、兄と旭が名乗ると一瞬立ち止まり、「そうか……」と言って再び歩き出した。
賢也と尚人という、異世界では聞きなれない珍しい名前に驚いたのだろうか?
『お菓子の店』へ入ると、焼き上げのタイミングだったのか店内は甘い匂いが充満している。
子供達に、これから護衛をしてくれる人だと紹介すると、アリサちゃんが大きく目を開けてリュートさんへ抱き着いた。
「お父さん!」
「お父さん!?」
これには、全員が唖然とする。
言われた本人も、怪訝な表情をしアリサちゃんを見ていた。
何か事情がありそうだと、アリサちゃんを連れ2階の部屋へいきテーブルと椅子を出す。
するとアリサちゃんが話し始めた。
「あのね、リュートおじさん。お母さんが、病気で亡くなる前に本当の父親が誰か教えてくれたの。迷惑かけたくないからと黙っていたそうなんだけど……。私は、リュートおじさんの娘なんだって」
おっと、何やら大変な場面に遭遇してしまったらしい。
「……本当なのか?」
「うん。最後に、本当の事を伝えて私を一緒に育てれば良かったと言い残してたから……」
「だからアリサだったのか……」
思い当たる節でもあるのか、リュートさんは黙り込んだ。
あれ?
アリサって、雫ちゃんのお母さんも一緒の名前だよね?
異世界では珍しい名前じゃないかしら……。
「知らなかったとは言え、寂しい思いをさせてすまない。これからは、一緒に暮らそう」
彼は即断し、アリサちゃんを片腕で抱き上げた。
ここは2人きりにさせた方がいいだろうと、私達は部屋から出る。
ガーグ老の亡くなった奥さん達も、子供を産んだのを内緒にしていたらしいけど……。
独りで子供を産み育てるのは大変だっただろうなぁ。
ガーグ老の息子さん達は、本当かどうか全く似ていないから怪しいけどね!
1階に降りると、子供達が心配そうな顔をしている。
詳しい事情はアリサちゃんが伝えるだろう。
私は「大丈夫」とだけ言い残し店を出た。
再び『製麺店』に戻り、バスクさんへ先程の話をするとリュートさんの事を色々教えてくれた。
クランが解散になってから、暫くは迷宮都市で冒険者をしていたらしい。
不動の渾名を持つ盾士だったようで、メンバーを庇い腕を失くしてしまったそうだ。
一度故郷へ帰り、最近迷宮都市に戻ってきたと言っていた。
体格が良いのは教会の炊き出しに並んでいた人じゃなかったからなのか……。
本人の知らない娘がいたのをバスクさんも驚いていたから、異世界でも父親に内緒で産むのは普通じゃないみたい。
その後。
父をマッピングで探すと、ガーグ老の工房から出た後で泰雅に騎乗し家へ向かっていた。
私達も従魔に乗り家へいく。
ホームへ戻り、実家にいた奏伯父さんへ娘の名前をアリサと付けた理由を聞いてみた。
どうも偶然とは思えなかったからだ。
すると伯父さんは少し口籠った後、娘が生まれたらアリサと名付けようと前世の奥さんと約束していた話をしてくれた。
確か息子ばかりが3人だった筈。
そうなんだ……。
じゃあ、アリサちゃんの亡くなったお母さんは……。
ひょっとしてと思ったけれど、もう既に確かめる術もないため奏伯父さんへは話さない方がいいだろうか?
それに、リュートさんの言葉も何か引っかかる。
兄へ視線を向けると首を横に振られた。
今は、まだ黙っておけという意味か……。
後で相談しよう!
奏伯父さんは娘を連れ帰る予定で家を出たから、明日雫ちゃんのお母さんと一緒に一度家へ戻るらしい。
今日は娘の家族と過ごすと言うので、旭と一緒に雫ちゃんの家へ送った。
あぁ! 夕食は大丈夫だろうか?
料理が下手だと伝え忘れてしまった。
娘の手料理だから頑張って食べるわよね~。
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