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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第601話 迷宮都市 奏伯父さんとの再会 2&子供達とショートブレッド作り

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 食事を終えてデザートにダンジョン産の桃を出すと、かなで伯父さんはその味に驚いていた。

「貴族の自分より、高価な物を食べているな」

 と言い笑う。

美佐子みさこに聞いたが、アリサは結花ゆかさんだったのか……。それならもう大人だし、冒険者をするのは許可しよう。いや、急にしょっぱい・・・・・善哉ぜんざいを作り出したからおかしいとは思っていたんだが……。娘に他人の記憶があるのは、どうにも不思議な感覚で慣れないし寂しいものだなぁ。あぁ、妻と息子の説得は任せてくれ。それに沙良ちゃんが、アシュカナ帝国の王から狙われているのも捨て置けん。姪を9番目の妻にしようとするとは、片腹痛いわ! 美佐子が抜けるなら、私が一緒にパーティーを組もう!」

 うん?
 最後に、とんでもない一言が加わったような?

「義兄さんは伯爵家の当主でしょう? 冒険者には、なれませんよ」

 冗談を言う奏伯父さんへ、父が笑いながら答える。

「なに、俺は入り婿むこだからな。伯爵家当主は妻の方だし、問題ない。アリサが心配だと言えば、しばらくの間は許してくれるだろう。偽装結婚の相手にも、挨拶をしなきゃならん。明日、お手合わせ願おう」

 えっと、これは月曜から本気で一緒に冒険者をする心算つもり

「伯父さん。ダンジョン攻略をするには、C級冒険者の資格がいるから無理だよ?」

勿論もちろん、冒険者資格なら持っているさ!」

 その言葉に、サヨさんと母が顔を見合わせ溜息を吐く。
 そう言えば奏伯父さんは武闘派だった。
 男は強くあらねばならんと、武術に精通していたんだよね~。
 子供の頃、誘拐された私に護身術だと金的や目潰しを教えてくれたのも彼だった。
 どうやら異世界でも、信条は変わらずにいるらしい。
 父は奏伯父さんがやる気になっている姿を見て、説得するのをあきらめたのか好きにさせるみたいだ。

 しずくちゃんのお母さんは、複雑な気分になりそうだけど……。
 まぁパーティー人数が増える分には、安全性が増すから問題ないかな?
 午後から、私は子供達にお菓子作りを教えるので時間がない。
 兄と旭はポーションへ、浄化とヒールを掛けに薬師ギルドへいく必要がある。
 私はサヨさん、奏伯父さん、母をホームの実家に連れていった後、旭を呼び父と兄の4人で薬師ギルドへ向かった。
 先週、ゼリアさんから父に話があると言われていたんだよね。

 薬師ギルドの受付嬢に挨拶をすると、父だけ別室に案内される。
 何だろう?
 私達はいつもの応接室へ入り、テーブルの上に準備してあるポーションへ兄達が浄化とヒールの魔法を掛けていく。
 浄化の魔法で淡く光るポーション瓶を綺麗だなぁと見ながら、父とゼリアさんがくるのを待った。
 20分後、2人が部屋に入ってくる。
 父の表情が硬い。
 ゼリアさんからの話は、あまり良い内容ではなかったらしい。
 浄化代とヒール代をそれぞれ受け取り、薬師ギルドを後にした。

 何の話をされたのか聞こうとした所で、父からガーグ老の工房へいくと告げられる。
 その態度が普段と違っていたため、私は何も言わず送り出した。
 父の様子が気になりつつも兄達と新しい店へ向かう。
 約束した14時に30人の子供達がやってきた。
 気を取り直してお菓子作りだ。
 商業ギルドのカマラさんに、パン焼きがまがある店をお願いしたから店内には大きな窯がある。
 
 3つの材料を取り出し、店内にテーブルを置き子供達へ作り方の見本を見せた。
 分量を量りバター・小麦粉・ハニービーの蜂蜜を混ぜ合わせ、成型するだけなので子供達でも簡単に作れるだろう。
 問題は火加減が難しい、釜での焼きだ。
 オーブンは温度調整が出来るしファイアーボールも調節可能なんだけど、まきを使用するのは初めて。
 低温で焼き上げるのは、何度も様子を見ながら試行錯誤するしかない。
 と思っていたら普段、薪を使用し料理をする子供達が上手く調整してくれた。

 これなら直ぐに商品として売れるだろう。
 焼き上がりを子供達へ食べさせ、リーダーには最年長のカレンちゃん(15歳)を指名した。
 プレーンタイプは、1本銅貨2枚(2,000円)。
 ダンジョン産の木の実やドライフルーツが入った物は、1本銅貨3枚(3,000円)とかなり強気な値段設定。
 ターゲットは、ダンジョン攻略中の冒険者だからね。
 甘味の少ない異世界では、この値段でも充分勝負出来るはず。 
 営業時間は9時~17時で、子供達が休めるよう月~金曜日を営業日にした。
 給料は売上を見ながら考えよう。

「サラお姉ちゃん。私達に安全な仕事をくれてありがとう! ショートブレッド、沢山売ってみせるね~」

 冒険者以外で生活手段がなかった少女達が満面な笑みを浮かべ、お礼を言ってくれる。
 皆、危険な冒険者の仕事をしたくてやっている訳じゃない。
 お店で働けるなら、危険のない職場を選ぶだろう。
 今回の募集には30人の子供が手を挙げたけど、本当はもっと大勢希望者が出ると思っていた。
 きっと、年長の男の子達は遠慮したんじゃないかと思う。
 体力的にも腕力的にも、どうしたって男女差は出る。
 魔法が使えなければ、冒険者に向いているのは男性なのだ。
 うん、これも支援として私が出来る範囲内。
 いずれ、ショートブレッド以外にもお菓子のメニューを広げよう。
 
「応援するから頑張って!」

 カレンちゃんに、材料の入ったマジックバッグと店の鍵を渡し店を出る。
 従業員が子供達だけだと心配なので、護衛の大人を1人雇おう。
 店の2階には、空き部屋もあるから店の警備も兼ね住んでもらえばいい。
 『製麺店』に寄り、バスクさんへ新しい店の護衛に良い人を紹介してくれないかお願いする。
 教会の炊き出しに並んでいた大人は、まだ沢山いた。
 その内の高齢者を10人だけ雇ったので、仕事がない男性はいるだろう。

「なら同じパーティーメンバーだった者に頼んでみましょう。強面こわもての男なので護衛役ならピッタリです」

 バスクさんは少し待ってほしいと言い、店を出る。
 少しして、大柄な中年男性と一緒に戻ってきた。
 ……。
 ヤクザの親分、その2が見える。
 冒険者ギルドのウォーリーさんを彷彿ほうふつとさせるその姿に、思わずのけ反った。
 旭は怖がり、兄の背中に隠れてしまう。
 確かに護衛役には最適な人物だろう。
 客が冒険者なら、逃げ出す事もないか……。

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