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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略
第586話 迷宮都市 行方不明の子供達 1
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日曜日、朝7時。
パーティーメンバーを連れ、異世界の家の庭へ移転。
母親達と炊き出しの準備を始めて直ぐに、3人の子供がやってきた。
何やら様子がおかしい。
普段は家単位で移動するのに、10歳以下の子供達だけでくるのは変だ。
増えた従魔と早く遊びたいにしても、兄や姉が一緒にこないのはありえない。
3人の子供が近付くにつれ、真っ赤に泣き腫らした目と不安そうな表情が見えた。
私の姿を見付け走ってくる。
「昨日から、お兄ちゃん達が戻ってこないの! 朝まで寝ずに待っても、家へ帰ってこなかった。玄関の外に羊皮紙が落ちていたけど、僕達まだ文字が読めなくて何が書いてあるか分からないから読んでもらおうと持ってきたんだよ! お兄ちゃん達からの手紙かな?」
そう一気に話した子供から羊皮紙を手渡され文面を読んだ瞬間、表情を取り繕うのに苦心した。
「お兄ちゃん達はモグラの討伐へいった時、少し道に迷ったみたい。保護してくれた人から、皆元気だから心配しなくても良いってお手紙だったよ」
「本当? お兄ちゃん達、大丈夫なの?」
それでも不安そうな表情を隠せない子供達へ、笑顔で大きく頷くと漸く3人の子供がほっとした様子に変わる。
冒険者の親を亡くした子供達だ。
戻ってこない家族が魔物にやられたと思うのは当然だろう。
二度と会えないかも知れないと一晩中、誰にも相談出来ず夜を明かしたのか……。
警察がない世界で最寄の交番もない。
庶民が行方不明だからと衛兵所へ連絡しても、取りあってはくれないだろうな。
まずは子供達を寝かせようと、家の中へ入れ蜂蜜入りのホットミルクを飲ませた。
その間にマジックテントとマジック寝袋を用意し、魔石に血液を登録後ポーションで治療。
ずっと気を張っていた状態から、安心した事で子供達も眠くなったようだ。
マジック寝袋に入った直後、スースーと寝息を立て始める。
私は厳しい表情になり、家の外へ出た。
子供達が持ってきた羊皮紙には、犯人からの要求が書いてあったのだ。
よりにもよって、クランリーダーのアマンダさんが保護している子供達を誘拐するとは……。
しかも彼女は、この迷宮都市があるリザルト公爵令嬢でもある。
保護者の彼女へ連絡しない訳にはいかない。
私は母親達とパーティーメンバーへ、子供達が誘拐され犯人から身代金の要求があったと手短に伝え、アマンダさん宛ての手紙を羊皮紙へ書きシルバーの首輪に結んだ。
行動は、なるべく早い方がいい。
私と一緒だとシルバーは全力で走れないから、アマンダさん一人を乗せてもらおう。
休日の今日は、攻略をせず安全地帯で休んでいる筈。
兄、シルバー、フォレスト、泰雅と共に地下15階へ移転。
3匹の従魔達にアマンダさんのパーティーへ手紙を渡し、家まで乗せてくれるようお願いした。
了解の合図に、リーダー役のシルバーが大きく「ウォン」と吠える。
私は兄と再び家の庭へ戻ってきた。
今回の犯人は100%アシュカナ帝国とは無関係だと分かる。
要求が身代金の時点で、他領からきた人間の仕業だと思う。
子供達が珍しい防寒具を着ているから、家が金持ちだと勘違いし攫ったのだろうか?
迷宮都市の冒険者や都市に住む人々は、路上生活をしていた子供達へ私や冒険者達が支援していると知っている。
耳当てとスヌードにポンチョを着た子供達を見れば、孤児だと全員が分かるだろう。
その子供達を誘拐するリスクを冒す人間は迷宮都市にいない。
「お父さん、冒険者ギルドのオリビアさんに報告した方がいいかな?」
迷宮都市は独立採算制を採っているため、最高権力者は冒険者ギルドマスターだ。
衛兵所へ連絡するより確実だろう。
「そうだな、アマンダ嬢がきてから一緒に冒険者ギルドへいった方がいい。彼女が頼めば、衛兵も動いてくれるだろう」
公爵令嬢のアマンダさんが保護している子供達なら、衛兵達も探してくれるかしら?
あっ、今日は稽古日だった。
私からゼンさんへ連絡しておこう。
念話の魔道具を握り締め魔力を注ぎ起動させると、直ぐにゼンさんから応答があった。
支援している子供達が誘拐されたため、今日の稽古はいけない事をガーグ老へ伝えてほしいとお願いする。
やや沈黙が流れた後、了解しましたと返ってきた。
30分後、アマンダさんを乗せたシルバーが一番に帰ってきた。
えっ?
速すぎなんですけど!?
私を乗せてる時のシルバーが、かなり手加減し走っているのを再確認してしまった。
それとも従魔Lvが上がり、速度も速くなったのだろうか?
アマンダさんはシルバーから飛び降りると、
「サラちゃん。連絡と従魔達を寄越してくれてありがとね。家の子供達を誘拐するなんて、命が幾つあっても惜しくないらしい」
物騒な台詞を吐き不敵な笑みを浮かべ、目は爛々としていた。
当然、可愛がっている子供達を誘拐されたアマンダさんは、臨戦態勢に入っている。
あぁ、こりゃ犯人は死んだな……。
5分後、パーティーメンバーを乗せたフォレストと泰雅が戻ってくる。
こちらは騎獣へ乗るのが初めてだったのか、その非常識なスピードに驚いたのだろう。
従魔達から降りた途端、少しよろめいていた。
アマンダさんに、これから冒険者ギルドへ連絡にいくと伝えると彼女は衛兵所へ向かうと言う。
時間を無駄にしないため、私達は別行動する事にした。
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お気に入り登録をして下さった方、エールを送って下さった方とても感謝しています。
読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。
応援して下さる皆様がいて大変励みになっています。
これからもよろしくお願い致します。
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パーティーメンバーを連れ、異世界の家の庭へ移転。
母親達と炊き出しの準備を始めて直ぐに、3人の子供がやってきた。
何やら様子がおかしい。
普段は家単位で移動するのに、10歳以下の子供達だけでくるのは変だ。
増えた従魔と早く遊びたいにしても、兄や姉が一緒にこないのはありえない。
3人の子供が近付くにつれ、真っ赤に泣き腫らした目と不安そうな表情が見えた。
私の姿を見付け走ってくる。
「昨日から、お兄ちゃん達が戻ってこないの! 朝まで寝ずに待っても、家へ帰ってこなかった。玄関の外に羊皮紙が落ちていたけど、僕達まだ文字が読めなくて何が書いてあるか分からないから読んでもらおうと持ってきたんだよ! お兄ちゃん達からの手紙かな?」
そう一気に話した子供から羊皮紙を手渡され文面を読んだ瞬間、表情を取り繕うのに苦心した。
「お兄ちゃん達はモグラの討伐へいった時、少し道に迷ったみたい。保護してくれた人から、皆元気だから心配しなくても良いってお手紙だったよ」
「本当? お兄ちゃん達、大丈夫なの?」
それでも不安そうな表情を隠せない子供達へ、笑顔で大きく頷くと漸く3人の子供がほっとした様子に変わる。
冒険者の親を亡くした子供達だ。
戻ってこない家族が魔物にやられたと思うのは当然だろう。
二度と会えないかも知れないと一晩中、誰にも相談出来ず夜を明かしたのか……。
警察がない世界で最寄の交番もない。
庶民が行方不明だからと衛兵所へ連絡しても、取りあってはくれないだろうな。
まずは子供達を寝かせようと、家の中へ入れ蜂蜜入りのホットミルクを飲ませた。
その間にマジックテントとマジック寝袋を用意し、魔石に血液を登録後ポーションで治療。
ずっと気を張っていた状態から、安心した事で子供達も眠くなったようだ。
マジック寝袋に入った直後、スースーと寝息を立て始める。
私は厳しい表情になり、家の外へ出た。
子供達が持ってきた羊皮紙には、犯人からの要求が書いてあったのだ。
よりにもよって、クランリーダーのアマンダさんが保護している子供達を誘拐するとは……。
しかも彼女は、この迷宮都市があるリザルト公爵令嬢でもある。
保護者の彼女へ連絡しない訳にはいかない。
私は母親達とパーティーメンバーへ、子供達が誘拐され犯人から身代金の要求があったと手短に伝え、アマンダさん宛ての手紙を羊皮紙へ書きシルバーの首輪に結んだ。
行動は、なるべく早い方がいい。
私と一緒だとシルバーは全力で走れないから、アマンダさん一人を乗せてもらおう。
休日の今日は、攻略をせず安全地帯で休んでいる筈。
兄、シルバー、フォレスト、泰雅と共に地下15階へ移転。
3匹の従魔達にアマンダさんのパーティーへ手紙を渡し、家まで乗せてくれるようお願いした。
了解の合図に、リーダー役のシルバーが大きく「ウォン」と吠える。
私は兄と再び家の庭へ戻ってきた。
今回の犯人は100%アシュカナ帝国とは無関係だと分かる。
要求が身代金の時点で、他領からきた人間の仕業だと思う。
子供達が珍しい防寒具を着ているから、家が金持ちだと勘違いし攫ったのだろうか?
迷宮都市の冒険者や都市に住む人々は、路上生活をしていた子供達へ私や冒険者達が支援していると知っている。
耳当てとスヌードにポンチョを着た子供達を見れば、孤児だと全員が分かるだろう。
その子供達を誘拐するリスクを冒す人間は迷宮都市にいない。
「お父さん、冒険者ギルドのオリビアさんに報告した方がいいかな?」
迷宮都市は独立採算制を採っているため、最高権力者は冒険者ギルドマスターだ。
衛兵所へ連絡するより確実だろう。
「そうだな、アマンダ嬢がきてから一緒に冒険者ギルドへいった方がいい。彼女が頼めば、衛兵も動いてくれるだろう」
公爵令嬢のアマンダさんが保護している子供達なら、衛兵達も探してくれるかしら?
あっ、今日は稽古日だった。
私からゼンさんへ連絡しておこう。
念話の魔道具を握り締め魔力を注ぎ起動させると、直ぐにゼンさんから応答があった。
支援している子供達が誘拐されたため、今日の稽古はいけない事をガーグ老へ伝えてほしいとお願いする。
やや沈黙が流れた後、了解しましたと返ってきた。
30分後、アマンダさんを乗せたシルバーが一番に帰ってきた。
えっ?
速すぎなんですけど!?
私を乗せてる時のシルバーが、かなり手加減し走っているのを再確認してしまった。
それとも従魔Lvが上がり、速度も速くなったのだろうか?
アマンダさんはシルバーから飛び降りると、
「サラちゃん。連絡と従魔達を寄越してくれてありがとね。家の子供達を誘拐するなんて、命が幾つあっても惜しくないらしい」
物騒な台詞を吐き不敵な笑みを浮かべ、目は爛々としていた。
当然、可愛がっている子供達を誘拐されたアマンダさんは、臨戦態勢に入っている。
あぁ、こりゃ犯人は死んだな……。
5分後、パーティーメンバーを乗せたフォレストと泰雅が戻ってくる。
こちらは騎獣へ乗るのが初めてだったのか、その非常識なスピードに驚いたのだろう。
従魔達から降りた途端、少しよろめいていた。
アマンダさんに、これから冒険者ギルドへ連絡にいくと伝えると彼女は衛兵所へ向かうと言う。
時間を無駄にしないため、私達は別行動する事にした。
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