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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略
第576話 世界樹の精霊王との邂逅 フェンリルの女王 3
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天蓋付きのベッドに描かれた精霊王の姿を見た瞬間、全ての記憶が戻る。
旭 結花としての私は眠ったらしく、今はフェンリルの女王となり世界樹の精霊王の下を訪れていた。
「おや、久しいね女王。転生先の人生は、どうだったかい?」
この御方はどこまで把握しているのか分からないけど、中々答え辛い件を聞いてくる。
私は苦笑しながら事実を伝えた。
「予想以上に辛い想いをしました。ですが失った2人の子供達に、この世界で会えたのは幸せだと思います」
「代償は、やはり大きかったようだね。君の夫の姿が見えないけど、まだ向こうの世界にいるのかな?」
何気なく言われた精霊王の言葉に、はたと気付く。
一体、私の夫は誰に転生したのだろう?
それに娘と長男は……。
転生先の人生は選べないため、何が起きても問題にすまいと思っていたけど……。
実際、人としての新しい家族が出来ると難しいものがある。
どちらの家族も私にとっては大切な存在だ。
人族は寿命が短いから、そう長くは一緒にいられないだろう。
もしかしたら、夫にも新しい家族がいるかも知れない。
「私の夫は、誰に転生したのか分からないので……。それに子供達も……」
「君の娘なら、前に一度ここへきているよ。それに、息子は隣にいるようだけど?」
もう娘は、この世界に戻っているのか。
隣を見ると気配を消し、項垂れている長男の姿があった。
ここへ同時にきたという事は……。
もしかして……雫?
あぁ、この子は性別と娘に引き継がれる虚弱さを代償に払ったのか。
なら娘は?
「精霊王。会いにきたという娘は今、何処にいるのでしょう?」
「ティーナの傍にいる筈だけど……。人族としての名前は聞いてなくてね。あぁでも性別は雄に変わり苦労したらしい。ティーナを好きになり嘆いていたから」
……。
それ、どう考えてもうちの尚人じゃないかしら?
私の子供達は、再び私が産んだようで安心する。
性別が逆になってしまったのは、もう仕方ない。
あれ?
でも雫は、賢也君が好きだったわよね。
「母上。記憶がないというのは恐ろしい。私は娘として育ちましたが……。現在、非常に混乱しています」
息子が項垂れていた理由は、男性を好きになったからかしら?
「あ~、どうやら尚人が娘のようよ?」
「えっ!? あの子にはハルクがいるのに、偽装とはいえ他の男性と結婚してますよ!」
「そうなのよね~。許嫁に知られたら大変。ハルクは誰に転生しているのかしら?」
「そういう問題ではありません。精霊王、私達はもうフェンリルとなり戻って良いでしょうか?」
記憶が戻った息子はこれ以上、雫として生きるのは嫌らしい。
「申し訳ないけど、それは許可出来ない。転生組が全員揃うまで、君達は人族として生きる必要がある。勿論、記憶は封じさせてもらうよ」
「何故ですか! それでは護衛役の意味がありません。雫としての個体は強くない。魔法も制限されている。何より、面倒を掛けてばかりでは兄として情けないではないですか……」
尚人に可愛がられて育った記憶がある雫は、自分が妹の面倒を見られなかったのを憂いているのだろう。
性別ばかりか、立場も逆になってしまい精霊王からの言葉に頷けないようだ。
まぁ理由は分かる。
だけど、こればかりは巫女姫の安全が関わっているからどうしようもない。
彼女を狙う敵は強大で狡猾だ。
今でも、虎視眈々と巫女姫を我が物にせんと狙っているだろうから。
僅かな綻びで、危険を招く恐れがある。
その時まで私達は巫女姫の存在を知られないよう、傍にいる事が何よりも重要だ。
「精霊王の言葉に従い、必ず巫女姫を守り通してみせます」
「ありがとう女王。あの子は少し抜けている所があるから頼んだよ。君も、あと数年頑張って」
「数年……」
精霊王から数年と言われ、愕然とする長男。
大丈夫よ、私達フェンリルには数年なんて一瞬だから。
何があっても、転生先の出来事と笑い飛ばせばいいわ。
娘の結婚相手の賢也君が初恋なのは、他の兄妹達に黙っておくから。
きっと兄として憧れた存在だったのね。
自分が身近にいられず、妹の面倒を見ていた獅子族の次代を思い出したのかも……。
そうして私達は再び、精霊王から記憶を封印された。
「あっ、2人とも起きたみたい。やっぱり、このベッドは眠り易いのかな? 雫ちゃんもお母さんも、気分は大丈夫ですか?」
目を開けると、どうやら私はベッドに横になった瞬間眠っていたらしい。
心配そうな沙良ちゃんが、覗き込んできた。
「ええっと、寝てしまったみたいでごめんなさいね。何だか複雑な夢を見ていた気がするんだけど……思い出せないわ」
「私は、どうしてか尚人兄に凄く会いたくなったんだけど……。今すぐ抱き締めてあげたい気分なの!」
あらあら、お兄ちゃんがまだ恋しいのね。
「じゃあ今日は、もう家へ帰りましょうか。偶には家族で、一緒に過ごして下さい。私は兄と2人で食べますから」
「そうね。いつも雫と2人じゃ寂しいし、今夜は沢山料理を作ろうかしら?」
「おおおぉ、お母さん! 稼いでいる尚人兄に奢ってもらおうよ!」
かなりの勢いで迫る娘に驚きながら、そんなに外食がしたいのかと思い了解した。
何を食べようかしら?
あんまり食事に興味がないんだけどね~。
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お気に入り登録をして下さった方、エールを送って下さった方とても感謝しています。
読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。
応援して下さる皆様がいて大変励みになっています。
これからもよろしくお願い致します。
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旭 結花としての私は眠ったらしく、今はフェンリルの女王となり世界樹の精霊王の下を訪れていた。
「おや、久しいね女王。転生先の人生は、どうだったかい?」
この御方はどこまで把握しているのか分からないけど、中々答え辛い件を聞いてくる。
私は苦笑しながら事実を伝えた。
「予想以上に辛い想いをしました。ですが失った2人の子供達に、この世界で会えたのは幸せだと思います」
「代償は、やはり大きかったようだね。君の夫の姿が見えないけど、まだ向こうの世界にいるのかな?」
何気なく言われた精霊王の言葉に、はたと気付く。
一体、私の夫は誰に転生したのだろう?
それに娘と長男は……。
転生先の人生は選べないため、何が起きても問題にすまいと思っていたけど……。
実際、人としての新しい家族が出来ると難しいものがある。
どちらの家族も私にとっては大切な存在だ。
人族は寿命が短いから、そう長くは一緒にいられないだろう。
もしかしたら、夫にも新しい家族がいるかも知れない。
「私の夫は、誰に転生したのか分からないので……。それに子供達も……」
「君の娘なら、前に一度ここへきているよ。それに、息子は隣にいるようだけど?」
もう娘は、この世界に戻っているのか。
隣を見ると気配を消し、項垂れている長男の姿があった。
ここへ同時にきたという事は……。
もしかして……雫?
あぁ、この子は性別と娘に引き継がれる虚弱さを代償に払ったのか。
なら娘は?
「精霊王。会いにきたという娘は今、何処にいるのでしょう?」
「ティーナの傍にいる筈だけど……。人族としての名前は聞いてなくてね。あぁでも性別は雄に変わり苦労したらしい。ティーナを好きになり嘆いていたから」
……。
それ、どう考えてもうちの尚人じゃないかしら?
私の子供達は、再び私が産んだようで安心する。
性別が逆になってしまったのは、もう仕方ない。
あれ?
でも雫は、賢也君が好きだったわよね。
「母上。記憶がないというのは恐ろしい。私は娘として育ちましたが……。現在、非常に混乱しています」
息子が項垂れていた理由は、男性を好きになったからかしら?
「あ~、どうやら尚人が娘のようよ?」
「えっ!? あの子にはハルクがいるのに、偽装とはいえ他の男性と結婚してますよ!」
「そうなのよね~。許嫁に知られたら大変。ハルクは誰に転生しているのかしら?」
「そういう問題ではありません。精霊王、私達はもうフェンリルとなり戻って良いでしょうか?」
記憶が戻った息子はこれ以上、雫として生きるのは嫌らしい。
「申し訳ないけど、それは許可出来ない。転生組が全員揃うまで、君達は人族として生きる必要がある。勿論、記憶は封じさせてもらうよ」
「何故ですか! それでは護衛役の意味がありません。雫としての個体は強くない。魔法も制限されている。何より、面倒を掛けてばかりでは兄として情けないではないですか……」
尚人に可愛がられて育った記憶がある雫は、自分が妹の面倒を見られなかったのを憂いているのだろう。
性別ばかりか、立場も逆になってしまい精霊王からの言葉に頷けないようだ。
まぁ理由は分かる。
だけど、こればかりは巫女姫の安全が関わっているからどうしようもない。
彼女を狙う敵は強大で狡猾だ。
今でも、虎視眈々と巫女姫を我が物にせんと狙っているだろうから。
僅かな綻びで、危険を招く恐れがある。
その時まで私達は巫女姫の存在を知られないよう、傍にいる事が何よりも重要だ。
「精霊王の言葉に従い、必ず巫女姫を守り通してみせます」
「ありがとう女王。あの子は少し抜けている所があるから頼んだよ。君も、あと数年頑張って」
「数年……」
精霊王から数年と言われ、愕然とする長男。
大丈夫よ、私達フェンリルには数年なんて一瞬だから。
何があっても、転生先の出来事と笑い飛ばせばいいわ。
娘の結婚相手の賢也君が初恋なのは、他の兄妹達に黙っておくから。
きっと兄として憧れた存在だったのね。
自分が身近にいられず、妹の面倒を見ていた獅子族の次代を思い出したのかも……。
そうして私達は再び、精霊王から記憶を封印された。
「あっ、2人とも起きたみたい。やっぱり、このベッドは眠り易いのかな? 雫ちゃんもお母さんも、気分は大丈夫ですか?」
目を開けると、どうやら私はベッドに横になった瞬間眠っていたらしい。
心配そうな沙良ちゃんが、覗き込んできた。
「ええっと、寝てしまったみたいでごめんなさいね。何だか複雑な夢を見ていた気がするんだけど……思い出せないわ」
「私は、どうしてか尚人兄に凄く会いたくなったんだけど……。今すぐ抱き締めてあげたい気分なの!」
あらあら、お兄ちゃんがまだ恋しいのね。
「じゃあ今日は、もう家へ帰りましょうか。偶には家族で、一緒に過ごして下さい。私は兄と2人で食べますから」
「そうね。いつも雫と2人じゃ寂しいし、今夜は沢山料理を作ろうかしら?」
「おおおぉ、お母さん! 稼いでいる尚人兄に奢ってもらおうよ!」
かなりの勢いで迫る娘に驚きながら、そんなに外食がしたいのかと思い了解した。
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