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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第510話 迷宮都市 地下15階 新たな果物 3

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 私はいい人材が見付かったと破顔する。
 彼女なら勘違いする事もないし、地下18階を攻略出来る強さもある。
 
 公爵令嬢で魔法も使用出来るから、自衛手段もバッチリだ。
 善は急げとばかりに、私はアマンダさんの両手をしっかりと握りプロポーズした。

「アマンダさん。私と結婚して下さい!」

「おや? サラちゃん、相手は私でいいのかい? なんなら本当にお嫁にきてくれてもいいんだよ?」

 アマンダさんの声が、ほんのわずかに真剣味を帯びる。

 あれ?
 もしかして彼女は、そっち・・・の人だったのかしら?
 これは夜の営み込みで、お嫁にきてほしいという意味じゃ……。

 それとも私の料理を食べたいの?

 アマンダさんとの会話を聞いていた父が、あわてた様子で私達の間に入り込んできた。

「あ~沙良? 相手はもう決まっているだろう? 少し年上だが、偽装結婚の相手に不足はない人だ」

「それは残念だね。私はいつでもOKだよ! 是非ぜひ、本気で考えておくれ」

 父の言葉にアマンダさんは笑いながら返し、メンバーと一緒に安全地帯を出ていった。
 最後まで、私を嫁にしたい事を伝えながら……。

 アマンダさんのパーティーは現在治癒術師がいないから、勧誘も兼ねているのかな?
 結婚したら、兄と旭もオマケに付いてくると考えての発言だろうか?

 なんとなくそうじゃないような気もするけど、この件は保留にしておこう。
 そういえばミリオネの町で、私のお嫁さんになると言ってくれた子供がいたっけ……。

 有耶無耶うやむやになったまま、返事をしていなかった。
 次回会う時までに上手い返答を考えておかないと。

「沙良、そろそろ俺は地下11階に行く。くれぐれも無茶な攻略はしない事。旭、後は頼んだぞ」

「了解! いってらっしゃ~い」

 フォレストに乗った兄を見送り、私達も攻略開始だ。

 兄に父との別行動を許可されたけど、今朝はアマンダさんに地下16階以降の魔物情報を聞いている余裕がなかったから、今日1日は地下15階を攻略する事にした。

 まずは地下13階に移動する。
 私を見付けて、ハニーが上空から降りてきた。
 
 折角せっかくだから父にも、コロニーを見せてあげようとハニーにお願いする。
 するとブンっという音が聞こえた瞬間、54匹のキラービーが集団で上空に現れた。

 おおっ、相変わらず圧巻の一言だ。
 54匹のキラービーはハニーに統制されているのか、次々と地上に降り整列して並ぶ。

 その内の1匹が、薬草の入ったマジックバッグを首に掛け私の下にくる。
 マジックバッグを受け取り中身をアイテムBOXに収納したら、再びマジックバッグを首に掛けてあげた。

「お父さん、ハニーとそのコロニーだよ!」

 父の方を振り返りハニー達を紹介すると、何故なぜか父がのけ反って顔色を青くしている。

斥候せっこうが、こんなに沢山……」

 うん?
 石膏せっこう

「沙良、このコロニー全体にお前の指示は伝わるのか?」

 あぁ、斥候の事か……。

 空を飛べる魔物は念話が使用出来れば、優秀な斥候に早変わりする。
 54匹もいれば、戦場で死角はないと言ってもいいだろう。

 まぁ私のマッピング範囲は45kmあるので、自分で俯瞰ふかんして見た方が早いんだけど……。

 それよりもハニーのコロニーは、薬草採取にとても役立っている。

「ハニーの眷属扱いだから、皆言う事を聞いてくれるよ! 右に一回転して~」

 私の言葉に反応し、54匹のキラービーが一斉に回転する。
 それを見た父が、

「お前のテイム魔法は、どうなっているんだ……」

 と頭を抱えてしまった。

 私は気にせず、ハニーに父と泰雅たいがを紹介する。
 2匹は頭をコクリと動かし、挨拶をしているようだ。

「それに、ハニーのしま模様の色が変わっているみたいだが……」

 クインビーに進化中なので、現在ハニーの体色は黄色と黒ではなく蛍光ピンクと黒に近い色になっている。

「クインビーに進化中なの。進化したら、コロニーがキングビーに変化するかもね~」 
  
「そんな話は聞いた事がない……」

 絶句している父には悪いけど、今日の目的はランダムに生る果物を発見する事だ。
 早く知りたいので、地下15階へ攻略に行きたい。

「じゃあ皆、薬草採取を頑張ってね~」

 キラービーが触角をピコピコ動かし答えてくれる姿を見て、私達は地下15階に移動した。

 旭達が何処どこにいるのかマッピングで調べると、迷宮モンキーが生息している森の中にいる。
 きっとアメリカンチェリーを採取したいと、雫ちゃんとお母さんからリクエストがあったんだろう。

 旭のお母さんと母が向かってくる迷宮モンキーを、覚えたばかりのドレインで昏倒させ、雫ちゃんがアースボールを眉間に撃ち倒している。

 3人は魔法Lvを上げる事にしたようだ。
 旭はその後を追い、死んだ迷宮モンキーをアイテムBOXに収納していく。

 うん、旭達は安全に攻略出来ているみたい。
 特に危険もないだろう。

 私はその場で立ち止まり、周囲の警戒を従魔達に任せマッピングで地下15階を俯瞰ふかんしてみる。 

 拡大と縮小を何度も繰り返し、ピンク色の実が生っている木を発見!
 今日は川沿いにあるらしい。

 確か、この川に出現するのは迷宮ナマズだったよね。
 また旭が嬉々ききとして狩るだろう。

 日本では高級魚として知られる魚だけど、私は一度も食べた事がない。
 お店では時価と書いてあるし、小心者の私に注文は出来なかった。

 何で、本日の値段・・・・・を書いてくれないんだろう?

 それはともかくピンクの実は何かな~。
 拡大して見ると、さくらんぼだった。
 これは佐藤錦に違いない。

 大きさはアメリカンチェリーと同じで卵くらいある。
 うわ~、食べるのが楽しみ。

 いつかしてみたいと思っていた、さくらんぼ狩り。
 その前に転移させられたから、行けなかったんだよね。

 でもランダムに生る果物の方は兄のお楽しみなので、私は採取せず何だったか教えてあげるだけにしよう。
 
 果物探しをしている間に襲ってきた、三つ目ベアとポイズンアントは父と3匹が倒していたらしく地面に転がっていた。

 ポイズンアントの魔石取りを父にお願いして、三つ目ベアを収納する。
 
 私?
 昆虫から魔石を取るのは、まだ苦手なので勘弁して下さい。

 父は平気のようで、魔石の場所を教える前に解体ナイフで取り出していた。
 
「お父さん。私の結婚相手は誰に頼む心算つもりなの?」

 父が魔石の取り出し作業をしている間、暇なので気になっていた事を尋ねてみる。

「あぁ。ガーグ老に、お願いしてある。きっと息子さん達を紹介してくれるはずだ」

 へえ~。
 父は、初めて会ったガーグ老の事を信用しているみたい。

 剣を交わした事で、信頼に足る人物だと思ったのかな?
 武人同士、何か分かり合えるものがあったのかもね。

 ガーグ老も姫様の大切な剣を渡していたし……。
 実年齢の近い2人は馬が合ったようだ。
 将棋という共通の趣味も楽しめる。
 父は異世界で良い友人を見付ける事が出来たらしい。

 息子さん達というと、結婚していないのは長男・次男・三男の3人か……。
 一番若く見えるのは長男のゼンさんだけどね。

 王族の護衛をしているくらいだから、腕も立つし適任かも?
 リーシャには、確かに少し・・年上だろう。

 56歳の私にとっては、若い相手になるけど……。

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