上 下
409 / 755
第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第499話 迷宮都市 両親の召喚 15 従魔の紹介&武術稽古 追加メンバーの紹介

しおりを挟む
 日曜日。
 朝7時に全員でホームから異世界の家に移転する。

 魔物を初めて見る事になる両親を怖がらせないようにと、私の従魔を見せていなかったけど母のテイムも無事済んだので、皆にシルバーとフォレストを紹介した。

 ゴールデン・・・・・ウルフのシルバーと迷宮タイガーのフォレストを見た雫ちゃんが、目をキラキラさせている。
 旭のお母さんにも今日魅了を習得後テイムしてもらう心算つもりだと話すと、2人は早速さっそく何の魔物にするか相談しているようだ。

 その際、母もシルバーウルフのボブを皆に紹介する。
 名前を聞き、旭のお母さんが「何故なぜボブ……」と絶句している様子に笑ってしまう。

 旭のお母さんは、自分のテイムした魔物にもう少し真面まともな名前を付けてくれるだろう。

 父がシルバーを見て、母のテイムしたボブと毛色が違っている事に気付いた。

「沙良、お前のテイムしたシルバーウルフは黄金色をしているようだが……。特殊個体なのか?」

 特殊個体!?
 そんな魔物がいるんだろうか?

「違うよ。シルバーには、お願いしてゴールデン・・・・・ウルフに進化してもらったの! うちの子はすごく優秀なんだよ~」

「テイムした魔物が、ゴールデン・・・・・ウルフに進化しただと!?」

 私にめられ嬉しそうに尻尾をブンブン振っているシルバーを見て、父が絶叫する。
 そしてシルバーをじっと見つめながら、

「テイム魔法に、そんな事が可能なのか……?」

 ぽつりとこぼし、考え込んでしまったようだ。

 まだ紹介していないハニーが、ハニービーからクインビーに進化中の事はもう少し後で話そう。
 魔物がおすからめすに進化する事を知ったら、また絶叫しそうだよ……。

 新居に『肉うどん店』の母親達がやってくると、追加メンバーの両親と旭の2人を紹介する。

 母親達は、私が店の従業員にしてくれた事を本当に感謝していますと両親に頭を下げていた。
 それを聞いた両親は、これからもよろしくお願いしますと言って挨拶を交わす。

 雫ちゃんは『肉うどん店』の経営者が私だと知り、以前迷宮都市で『肉うどん』を食べた時に気付けば良かったとなげいていた。

 うん確かに、サリナの事は徹底的に避けてたからなぁ~。
 雫ちゃんの方からアクションがなければ、私達は気付かなかっただろう。

 8時30分。
 大勢の子供達が集まる姿を見て、父の表情が変化する。

 人数を聞かれたから、約150人程だと伝えると更に険しい表情に変わった。
 国の福祉が機能していない異世界について、何か思う所があるんだろう。

 こればかりは、個人で何とか出来る問題じゃないので国が動かないと無理だ。

 そういえば、王領である王都には路上生活している人が1人もいなかった事を思い出す。
 あの場所は王族がちゃんと支援をしているみたいだった。

 福祉に関しては、領主の管轄なのかも知れないな。

「沙良、今はカルドサリ王国暦何年なんだ?」

「確かカーランド王朝863年だったと思うよ」

「300年か……」

 うん?
 父は若返ったのに耳が遠いのかしら?
 863年だと言ったのに、最後の3しか合ってないよ!

 私が訂正しようとした所、子供達がもう1匹増えたシルバーウルフを見て色が違うね~と集まってきた。
 シルバーはゴールデン・・・・・ウルフだからね。

 子供達にも両親と旭の2人を紹介すると、全員が頭を下げてきちんと挨拶をする。
 皆、良い子に育っている事が嬉しい。

 礼儀作法を教えた訳じゃないけど、感謝の言葉を口に出来るのは環境がそうさせたのだろう。
 人は当たり前だと思っている事に関して、感謝の念を抱く事は難しい。

 家がある事や毎日3食食べられる環境で育てば、それが普通だと感じるからだ。
 路上生活をしていた子供達にとっては、それは当たり前の事ではなかった。

 この子達は大変な苦労をしてきた分、自然に感謝の気持ちを伝える事が出来る大人になるだろう。

 その後、母から従魔の名前が『ボブ』だと聞き不思議そうな顔をしていた。
 まぁ異世界の子供達には、『ボブ』と言われても分からないかもね。

 子供達に『ボブ?』と何度も言われたシルバーウルフは、ちょっとしょんぼりして見える。
 母が付けた名前は、気に入ってないんだろうなぁ。
 
 一度名付けた名前を変更する事は出来ないんだろうか?

 子供達にスープとパンを配り、アプリコット入りの巾着を交換し最後に兄がみかんを渡して見送った後、7人でガーグ老の家具工房へ向かう。

 工房の門を開くとガーグ老と職人さん、5人の息子達に初見のお嫁さん? 2人の姿があった。
 四男のフランクさんと五男のジルさんの隣にいるのが、多分お嫁さんだと思うんだけど……。

 見た目が更に老けてるし、どう見ても……男性のような?
 ガーグ老の方を見ると、なんだか精彩せいさいを欠いているような気がする。

 紹介されたお嫁さんが予想外すぎ、ショックを受けてしまったのかも知れない。

「こんにちは。今日から私の両親と旭の2人も、よろしくお願いします」

「サラ……ちゃん、ようきたな。儂もご両親殿にお会いしたかった。ガーグと呼んで下され」

 父がガーグ老を見た瞬間、体をのけ反らせて「……家具職人は無理があるだろう」と小さく呟いた。
 体格の良いご老人達を見て、そう思うのも仕方ない。

 でも、迷宮都市では家具職人として有名なんだよ?
 私の家にある立派な家具も、製作してくれたしね。

 両親が挨拶をしようと前に出た際、2匹の白ふくろうが上空から凄い勢いで飛んできた。
 そして父の両肩に止まり、頬に顔を寄せて「ホーホー」と鳴く。

 父は突然肩に2匹が止まっても驚いた様子を見せず、

「ぽ……っちゃりとした可愛い白梟だな」

 と妙な感想を漏らした。

 2匹の従魔が父になつく姿を見たガーグ老が一瞬目をみはり、部下に声を掛ける。

「姫様の剣を持って参れ!」

「はっ!」

 ガーグ老の指示に、いつも料理の配膳を手伝ってくれる人が工房へと駆け出していく。
 あの……、まだ全員の自己紹介が済んでませんが?

 何故なぜかこれから、父との手合わせが始まりそうだった。

 -------------------------------------
 お気に入り登録をして下さった方、エールを送って下さった方とても感謝しています。
 読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。
 応援して下さる皆様がいて大変励みになっています。
 これからもよろしくお願い致します。
 -------------------------------------
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

断罪されているのは私の妻なんですが?

すずまる
恋愛
 仕事の都合もあり王家のパーティーに遅れて会場入りすると何やら第一王子殿下が群衆の中の1人を指差し叫んでいた。 「貴様の様に地味なくせに身分とプライドだけは高い女は王太子である俺の婚約者に相応しくない!俺にはこのジャスミンの様に可憐で美しい女性こそが似合うのだ!しかも貴様はジャスミンの美貌に嫉妬して彼女を虐めていたと聞いている!貴様との婚約などこの場で破棄してくれるわ!」  ん?第一王子殿下に婚約者なんていたか?  そう思い指さされていた女性を見ると⋯⋯? *-=-*-=-*-=-*-=-* 本編は1話完結です‪(꒪ㅂ꒪)‬ …が、設定ゆるゆる過ぎたと反省したのでちょっと色付けを鋭意執筆中(; ̄∀ ̄)スミマセン

【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断

Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。 23歳の公爵家当主ジークヴァルト。 年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。 ただの女友達だと彼は言う。 だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。 彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。 また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。 エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。 覆す事は出来ない。 溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。 そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。 二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。 これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。 エルネスティーネは限界だった。 一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。 初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。 だから愛する男の前で死を選ぶ。 永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。 矛盾した想いを抱え彼女は今――――。 長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。 センシティブな所へ触れるかもしれません。 これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

そんなに幼馴染の事が好きなら、婚約者なんていなくてもいいのですね?

新野乃花(大舟)
恋愛
レベック第一王子と婚約関係にあった、貴族令嬢シノン。その関係を手配したのはレベックの父であるユーゲント国王であり、二人の関係を心から嬉しく思っていた。しかしある日、レベックは幼馴染であるユミリアに浮気をし、シノンの事を婚約破棄の上で追放してしまう。事後報告する形であれば国王も怒りはしないだろうと甘く考えていたレベックであったものの、婚約破棄の事を知った国王は激しく憤りを見せ始め…。

【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?

碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。 まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。 様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。 第二王子?いりませんわ。 第一王子?もっといりませんわ。 第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は? 彼女の存在意義とは? 別サイト様にも掲載しております

冤罪を掛けられて大切な家族から見捨てられた

ああああ
恋愛
優は大切にしていた妹の友達に冤罪を掛けられてしまう。 そして冤罪が判明して戻ってきたが

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

ここは私の邸です。そろそろ出て行ってくれます?

藍川みいな
恋愛
「マリッサ、すまないが婚約は破棄させてもらう。俺は、運命の人を見つけたんだ!」 9年間婚約していた、デリオル様に婚約を破棄されました。運命の人とは、私の義妹のロクサーヌのようです。 そもそもデリオル様に好意を持っていないので、婚約破棄はかまいませんが、あなたには莫大な慰謝料を請求させていただきますし、借金の全額返済もしていただきます。それに、あなたが選んだロクサーヌは、令嬢ではありません。 幼い頃に両親を亡くした私は、8歳で侯爵になった。この国では、爵位を継いだ者には18歳まで後見人が必要で、ロクサーヌの父で私の叔父ドナルドが後見人として侯爵代理になった。 叔父は私を冷遇し、自分が侯爵のように振る舞って来ましたが、もうすぐ私は18歳。全てを返していただきます! 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。