上 下
403 / 754
第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第493話 迷宮都市 両親の召喚 9 両親のLv上げ 2&魔法の習得

しおりを挟む
 父に剣術の心得があるとは思わなかったけど、これは冒険者活動をする上で非常に役立つ。
 4人追加して7人パーティーとなっても、私と兄は単独行動をするので実際は5人での活動になるからだ。

 旭が雫ちゃんとお母さん、両親と一緒に行動を共にする事になるのでお荷物は少ない方がいい。
 雫ちゃんとお母さんは、既に王都のダンジョンを攻略しているから問題ないだろう。
 
 両親が心配だったけど、父がある程度魔物を倒す事が可能なら旭の負担が減る。

 それから2時間程、母はスライム、父には角ウサギを倒してもらった。
 2人にLvを確認すると母はLv2、父はLv3。

 基礎値が78と高いので、MPとHPは234と312。
 この数字は、10歳でLvを上げる異世界ではLv23~31相当となる。

 本当に基礎値は重要だ。
 こんな所で身分制度の闇をみた気がした。

 でも貴族にとっては、こういったアドバンテージが必要なんだろう。

 そろそろ大丈夫かと思い、私はLv上げのため事前にアイテムBOXへ収納しておいた4匹の属性スライムを出す。

 突然現れた属性スライムに、父が驚愕きょうがくしていた。

「さっ……沙良、もしかしてアイテムBOXには生き物も収納出来るのか?」

「うん、そうだよ。2人はまだダンジョンに入れないから、色んな魔物を収納してきたの」

「それは……ちょっと不味いな」

 そう言うと父は押し黙り、眉間にしわを寄せ額に手をやり考え込んでしまった。
 その隣で母は不思議そうな顔をしている。

 そんな中、当然魔物は待ってくれないので私達を見付け魔法を撃ってきた。
 両親には魔法の習得の仕方を教えてあるので、母には避けないよう言い、体で受けてもらう事にする。

 兄がスライムの魔法を受けた母の状態を確認し、素早く治療をしていた。
 スライムは一度魔法を撃った後、しばらく魔法を使用してこないので、その間に母が槍で突き倒してしまう。

 父がまだ、魔法を習得していないんだけど……。
 直ぐに倒されるとは思っていなかったので、属性スライムは1匹ずつしか収納していないのにどうしよう?

 母はスライムを槍で突く作業が気に入ったらしい。
 地面の魔石を楽しそうに取っていた。
 
 しばらくして考え込んでいた父が、急に私の両肩をつかみ真剣な表情で視線を合わせてきた。

「沙良。理解していると思うが、お前の能力は規格外過ぎる。それは、ともすれば戦況を一変させる事が可能だ。知られれば、利用したいと思う人間が多くいるだろう。いいか、絶対に秘密にするんだ!」

 私の能力を知り、父は戦場での戦略として有効的な事に気付いたらしい。
 発想が兄と全く同じなので、親子だなぁと思う。

 そしてその事は、私も痛いくらい承知している。
 数年後に訪れるアシュカナ帝国との戦争を回避するために、現在兄達には内緒でLv上げをしている身だからね。

「うん、お兄ちゃんからも言われて注意しているから大丈夫だよ! それにアイテムBOX持ちは、旭とお母さんも一緒だし」

「この国に、3人もアイテムBOX持ちがそろうとは……。何かあるのか? いつきを早く召喚した方が良さそうだな……」

 父は独り言のように呟くと、再び口を閉ざしてしまった。
 聞いていた母が不安そうな表情を見せる。

 娘の能力が、ある者にとって狙われる価値があると知り心配なのだろう。
 大丈夫だよ、ちゃんと人前で使用しないように充分気を付けているから。

 兄が私達の遣り取りを聞き、安心させるように母の背中を優しくでた。

「賢也、沙良は大丈夫なの?」

「あぁ、心配は要らない。妹の事は俺と旭が絶対に守るから」

「そう……お願いね。あの子は迂闊うかつな所があるから、よく注意して見てあげて」

 何気に失礼な事を母から言われたような気がする……。

 そんな事より、両親が明日のスキップ制度に受かるか心配だ。
 時間がないので、まだLv上げをしないと!

「2人とも、次の魔物を倒しに行くよ!」

 父の魔法習得については、後日改めてしよう。
 剣術がそれなりに使用出来るなら、魔物を倒して剣術Lvを上げた方が早い。

 ミリオネの森にいるウルフをマッピングで探し、移動を開始する。
 母に槍で倒す事は難しいので、覚えたばかりの魔法を使用してもらった。

 遠距離から眉間を狙いアースボールを撃つよう伝えると、母は直ぐに魔法を唱えて実践する。
 MP値が高いので威力も充分にあり、1発で倒す事が出来たようだ。

 父は剣で簡単に討伐完了。
 一体、どうしてそんなに動じないのか不思議でならない。
 
 次は必須の魔石取り。
 ウルフを換金する際には本体ごと提出するので必要ないけど、迷宮都市では何の魔物が対象になるか分からないので出来るようになった方がいい。

 兄が心臓近くの魔石を取り出して、両親にお手本を見せる。
 相変わらず出血は最小限に抑えながらの、見事な手際てぎわだった。

 母は嫌そうにしながらも、試験に必要だと言うと渋々しぶしぶ真似て取り出していた。

 父は嫌な顔を見せる事もなく、普通に魔石を取り出す。
 普段全く料理をしないのに、解体ナイフを使用出来るのは何故なぜなのか……。

 次はボアとベアの大型魔物。
 ミリオネの町では、確かボアが昇格試験の対象だった。
 迷宮都市にはいないけど……。

 初めて目にする、大きな魔物に母が固まってしまう。
 私は母の能力である光合成を使用して、魔物を拘束する事を思いついた。
 丁度小豆が大量にあるから、母に渡し能力を使用するようお願いする。

 母が小豆を突進してくるボアに向けて投げ、「光合成」と唱えた瞬間に小豆が急成長しつるが伸びボアが拘束され地面に倒れた。

 殺傷能力はないけど、それなりに有効な能力だろう。
 ただ、人前で使用するのは避けた方がいいかも知れない。
 父も母も『手紙の人』から与えられた能力が特殊すぎる!

 身動き出来なくなったボアの首に、母が槍を突き刺し絶命させていた。
 すると小豆から急成長した蔓がみるみるうちに枯れ、ほろりと崩れたと思ったら消えてなくなってしまう。

 いや~、かなりファンタジーな能力で……。

 まぁ小豆の種1個で魔物を拘束出来る、大変コスパが良い能力だという事は分かった。
 攻撃にも使用可能と書いてあったから、蔓で窒息させたり出来るのかも知れない。

 母は自分の能力が非常に有効的な事が分かり、満足そうに笑っていた。
 
 異世界定番のゴブリンを見せるのは刺激が強そうなので、今日は止めておく。
 最後に父がベアを鮮やかに討伐し、午前中のLv上げは終了。

 ホームに戻り、昼食は外食をする事にした。
 母が肉系はちょっと……、と言うのでメニューはパスタに決定。

 アパートの住人さんが持っていたSUVを兄が運転し、お薦めのパスタ屋さんに連れて行ってくれた。
 電子メニューからそれぞれ注文した物がテーブルの上に置かれると、母が「便利な世の中になったわね~」と少しズレた感想をらす。

 いやいや、便利なのはホーム内だけだよ?

 食事の最中、突然母が「あっ!」と声を上げた。
 どうしたのか聞いてみると、借りている畑が心配だと言う。

 私が召喚してから3日間。
 畑の世話をしていない事に気付き、どうなっているか見に行きたいみたいだ。

 ただ、畑はホームに設定していないから入れないかも知れない。

 食事を終えた後、母の畑に行ってみる。
 到着後、一番に車から降りた母が畑に入ろうとした所、なんとそのまま進んで行ってしまった!?

 『手紙の人』は、畑も「出来うる限りの保障」としてくれたらしい。
 実家をホームに設定した際、付属で付けてくれたのかな?

 母が畑の様子を見て少し水をきたいと言うので、私がウォーターボールを雨状に降らせてあげる。

「何それ、私にも教えて!」

 どうやら母にとって一番嬉しいのは、水遣りが出来る魔法のようだった。

 -------------------------------------
 お気に入り登録をして下さった方、エールを送って下さった方とても感謝しています。
 読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。
 応援して下さる皆様がいて大変励みになっています。
 これからもよろしくお願い致します。
 -------------------------------------
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】身売りした妖精姫は氷血公爵に溺愛される

鈴木かなえ
恋愛
第17回恋愛小説大賞にエントリーしています。 レティシア・マークスは、『妖精姫』と呼ばれる社交界随一の美少女だが、実際は亡くなった前妻の子として家族からは虐げられていて、過去に起きたある出来事により男嫌いになってしまっていた。 社交界デビューしたレティシアは、家族から逃げるために条件にあう男を必死で探していた。 そんな時に目についたのが、女嫌いで有名な『氷血公爵』ことテオドール・エデルマン公爵だった。 レティシアは、自分自身と生まれた時から一緒にいるメイドと護衛を救うため、テオドールに決死の覚悟で取引をもちかける。 R18シーンがある場合、サブタイトルに※がつけてあります。 ムーンライトで公開してあるものを、少しずつ改稿しながら投稿していきます。

最強で美人なお飾り嫁(♂)は無自覚に無双する

竜鳴躍
BL
ミリオン=フィッシュ(旧姓:バード)はフィッシュ伯爵家のお飾り嫁で、オメガだけど冴えない男の子。と、いうことになっている。だが実家の義母さえ知らない。夫も知らない。彼が陛下から信頼も厚い美貌の勇者であることを。 幼い頃に死別した両親。乗っ取られた家。幼馴染の王子様と彼を狙う従妹。 白い結婚で離縁を狙いながら、実は転生者の主人公は今日も勇者稼業で自分のお財布を豊かにしています。

いらないと言ったのはあなたの方なのに

水谷繭
恋愛
精霊師の名門に生まれたにも関わらず、精霊を操ることが出来ずに冷遇されていたセラフィーナ。 セラフィーナは、生家から救い出して王宮に連れてきてくれた婚約者のエリオット王子に深く感謝していた。 エリオットに尽くすセラフィーナだが、関係は歪つなままで、セラよりも能力の高いアメリアが現れると完全に捨て置かれるようになる。 ある日、エリオットにお前がいるせいでアメリアと婚約できないと言われたセラは、二人のために自分は死んだことにして隣国へ逃げようと思いつく。 しかし、セラがいなくなればいいと言っていたはずのエリオットは、実際にセラが消えると血相を変えて探しに来て……。 ◆表紙画像はGirly drop様からお借りしました🍬 ◇いいね、エールありがとうございます!

【R18】ひとりで異世界は寂しかったのでペット(男)を飼い始めました

桜 ちひろ
恋愛
最近流行りの異世界転生。まさか自分がそうなるなんて… 小説やアニメで見ていた転生後はある小説の世界に飛び込んで主人公を凌駕するほどのチート級の力があったり、特殊能力が!と思っていたが、小説やアニメでもみたことがない世界。そして仮に覚えていないだけでそういう世界だったとしても「モブ中のモブ」で間違いないだろう。 この世界ではさほど珍しくない「治癒魔法」が使えるだけで、特別な魔法や魔力はなかった。 そして小さな治療院で働く普通の女性だ。 ただ普通ではなかったのは「性欲」 前世もなかなか強すぎる性欲のせいで苦労したのに転生してまで同じことに悩まされることになるとは… その強すぎる性欲のせいでこちらの世界でも25歳という年齢にもかかわらず独身。彼氏なし。 こちらの世界では16歳〜20歳で結婚するのが普通なので婚活はかなり難航している。 もう諦めてペットに癒されながら独身でいることを決意した私はペットショップで小動物を飼うはずが、自分より大きな動物…「人間のオス」を飼うことになってしまった。 特に躾はせずに番犬代わりになればいいと思っていたが、この「人間のオス」が私の全てを満たしてくれる最高のペットだったのだ。

ドン引きするくらいエッチなわたしに年下の彼ができました

中七七三
恋愛
わたしっておかしいの? 小さいころからエッチなことが大好きだった。 そして、小学校のときに起こしてしまった事件。 「アナタ! 女の子なのになにしてるの!」 その母親の言葉が大人になっても頭から離れない。 エッチじゃいけないの? でも、エッチは大好きなのに。 それでも…… わたしは、男の人と付き合えない―― だって、男の人がドン引きするぐらい エッチだったから。 嫌われるのが怖いから。

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

姫プレイがやりたくてトップランカー辞めました!

椿原 守
BL
上月千尋(コウヅキチヒロ)は人気VRMMOのランキング上位チームに所属していた戦士だった。 ある日、性別や名前を変更できる課金アイテムが追加された。(※ただし使用は1回切り) ゲームアップデートが無ければ、先行攻略組こと通称ガチ勢はやることが少ない。 ここ最近、マンネリを覚えていたチヒロはこれを機に男キャラから女キャラへ転身を決意。 ちょうど良い機会だからと、ずっとやってみたかった姫プレイ(ネカマプレイ)を始めてみることにした。 あれ? 楽勝ウハウハの貢がれプレイを期待してたのに、なんか思うように上手くいかないんですけど!? ※ムーンライトノベルズにも掲載中です。

愛を知らない僕は死んじゃう前に愛を知りたい

しおりんごん
BL
「そうか、ぼくは18さいでしんじゃうんだ。」 僕、ルティアーヌ・モーリスは いわゆる異世界転生をした元日本人だった   前世の記憶をたどり、、、思い出したことは、、、 ここはBL小説の世界だった そして僕は、誰からも愛されていない 悪役令息 学園の卒業パーティーで主人公を暗殺しようとして失敗した後 自分の中の魔力が暴走して 耐えきれなくなり、、、 誰とも関わりを持たなかった彼は 誰にも知られずに森の中で一人で 死んでしまう。 誰も話してくれない 誰も助けてくれない 誰も愛してくれない 、、、、、、、、、。 まぁ、いいか、、、前世と同じだ 「でも、、、ほんの少しでいいから、、、        、、、愛されてみたい。」 ※虐待・暴力表現があります (第一章 第二章の所々) ※主人公がかなりネガティブで病んでいます(第一章 第二章の所々) ※それでも超超超溺愛のストーリーです ※固定カプは後々決まると思いますが 今現在は主人公総受けの状況です ※虐待・暴力表現など、いろいろなきついシーンがある話には※をつけておきます ※第三章あたりからコメディ要素強めです ※所々シリアス展開があります

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。