上 下
346 / 709
第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第482話 旭 樹 7 現在のステータス&第一王妃の魔の手

しおりを挟む
 俺の懐妊の報告は、その日の間に王宮中へ知れ渡った。

 報告を聞いたひびきが、政務を放り出して第二王妃の宮へとやってくる。
 ショックで寝込んでいた俺は、相手の顔を見るのも嫌で女官長に追い出すよう指示を出す。
 
 本来慶事けいじであるはずの懐妊を、俺が少しも喜んでいない様子を見て女官達も困惑していた。
 王に会おうとしない俺の態度にあきらめたのか、女官長はかなり穏便な言葉で伝え響に帰ってもらったようだ。

 自分が妊娠した事は何かの間違いじゃないかと考えてみたが、確かに結婚してから月の物・・・がなかった。
 そして初夜から3ヶ月経った今、つわりが起きたという事だろう。

 否定出来る材料がひとつもない。

 そこで俺は思い出す。
 もうすっかり忘れてしまっていた、曾婆ひいばあちゃんの宣託せんたく内容を……。

 もしかして【苦痛】を伴うお役目は、この事かっ!?

 てっきり精神的な苦痛とばかり……。
 肉体的なものだとは思ってもみなかった。
 出産は苦痛というより【激痛】だ!

 しかも俺の子供を産んでくれる女性・・を大切にしろって、俺自身・・・の事じゃね~か!
 となると運命の相手は響だったのか?

 まぁ、こいつと生涯を共にする事が出来なくても全然構わないんだが……。
 いや俺達もう既に結婚してるし!

 王族に離婚は有り得ないから、一生を共にする事は確定だ。
 しかもハイエルフと人間では寿命が違い過ぎる。
 俺は響が旅立った後、独りとり残されるんだろうな……。

 そんなかなり先の事に想いをせ、しばし現実逃避に浸る。
 これが曾婆ひいばあちゃんが言った、俺のお役目なら子供を産み育てる事が使命なんだろう。

 きっとそれが終わったら、日本に帰れるはずだ……多分。
 こちらの世界では180年経っているが、日本に戻った時に浦島太郎状態じゃない事を祈ろう。

 結花ゆか尚人なおと、俺の家族に早く会いたくなってきた。
 もうこうなったら覚悟を決めて産むしかない。

 もう少し気持ちの整理に時間が掛かりそうだが……。
 現実に俺のお腹の中には新しい生命が宿っているんだから、大切に守ってやらないと。

 あぁ、お酒はしばらく飲めないなぁ~。
 後、他に気をつける事は何だったか?

 俺は結花が妊娠した時の事を思い出し、注意事項を確認していった――。

 翌日。
 再び俺の宮を訪れた響が満面の笑みを浮かべて、「おめでとう!」と言ったので殴っておいた。

 こいつには賢也君と沙良ちゃんと茜ちゃん? の他に、交通事故で亡くしてしまった子供がいる。
 29歳の時だった。

 だから俺に子供が出来たと知り、素直に喜んだのだろう。
 亡くしてしまった子供の事を、ずっと気にしていたから……。

 第一王妃との間に出来た王子は、後で聞いた所に依ると行為なしで【秘伝薬】に頼ったものであったらしい。

 彼女とは完全な政略結婚で、王宮内の第一派閥である筆頭貴族の娘だとか。
 同性同士じゃなくても、【秘伝薬】で妊娠出来ると知り驚いた。

 それなら不妊に悩んでいる夫婦にも需要がある。
 エルフの国の財政がうるおう訳だ。
 外交を担当している兄達は強気の貿易が出来るだろう。

 とにかく響は子供が出来た事を大いに喜び、俺の世話を甲斐甲斐かいがいしく焼こうとする。
 毎日宮を訪れては何か食べたい物はないかと尋ねたり、心が穏やかになるようにと宮廷楽師を呼んでは演奏させて聞かせた。

 まぁ日本でも胎教という言葉がある通り、それはあながち間違いではないんだろう。
 ただ響のその行動が、どうやら第一王妃のかんさわったらしい。

 それから度々たびたび第一王妃の手の者と思われる人物から狙われるようになる。

 庭を歩いていると上から物が落ちてきたり、階段に油をかれたり、懐妊祝いに毒を盛った品を渡したりと……。
 まぁ、よく飽きないなぁと思う程、頻繁ひんぱんに手を出してくる。

 響しか知らない事だが、俺には影衆かげしゅう当主率いる10名の精鋭部隊が常に姿を隠し付き従っていた。

 女官長も元騎士の出身でかなり腕は立つ。
 エルフにしては結構な年齢なので、不思議に思っていたが肉体Lvが相当高いのだろう。

 俺の専属護衛である影衆達は、ハイエルフである俺の寿命に合わせるためにダンジョンにこもりかなりLvを上げたと聞く。

 この世界の仕様では、肉体Lvが上がると何故なぜか寿命が延びる仕組みになっていた。
 エルフであるガーグ老が現在800歳なのを考えると、女官長も500歳を優に過ぎているかも知れないな。

 どうあっても勝てないはずだ。
 初夜に関しては、もう見事な采配だったとしか言えない。
 
 ちなみに現在俺のステータスは、こうなっている。

 【ヒルダ・エスカレード 300歳】
 ★加護(世界樹の精霊王・火の精霊・水の精霊・土の精霊・風の精霊)
 レベル 70
 HP 8,520
 MP 8,520
 剣術 Lv20
 槍術 Lv20
 盾術 Lv20
 体術 Lv20
 魔力操作 Lv20
 魔法 火魔法(ファイアーボールLv20、ファイアーアローLv20・ファイヤーニードルLv20)
 魔法 水魔法(ウォーターボールLv20、ウォーターアローLv2・ウォーターニードルLv20)
 魔法 土魔法(アースボールLv20、アースアローLv20、アースニードルLv20)
 魔法 風魔法(ウィンドボールLv20、ウィンドアローLv20・ウィンドニードルLv20)
 魔法 氷魔法(アイスボールLv20、アイスアローLv20、アイスニードルLv20)
 魔法 雷魔法(サンダーボールLv20、サンダーアローLv20・サンダーニードルLv20)
 魔法 テイム魔法(テイムLv20)▼
 【従魔のステータス】
 ●ポチ Lv70(消費MP300)HP700/MP700 白ふくろう(雄)
 使用魔法 ウィンドボールLv20(MP消費40)
      念話Lv20(MP消費0)→主人より半径200Km以内で使用可能。
      移転Lv20(MP消費0)→主人より半径200Km以内で使用可能。
      変態Lv20(MP消費0)→20種類の鳥型魔物の姿に変態出来る。またその性質も受け継ぐ事が可能。
                   
 ●タマ Lv70(消費MP300)HP700/MP700 白ふくろう(雌)
 使用魔法 ウィンドアローLv20(MP消費40)
      念話Lv20(MP消費0)→主人より半径200Km以内で使用可能。
      移転Lv20(MP消費0)→主人より半径200Km以内で使用可能。
      変態Lv20(MP消費0)→20種類の鳥型魔物の姿に変態出来る。またその性質も受け継ぐ事が可能。           

 俺は120歳の時に初めてLvが上がったため基礎値が120と高い。
 Lvが50になると、魔法Lvの上限が解除されLvが最高20になる。
 更にLvが100に上がれば、魔法Lvは最高50になるそうだ。

 180年の間、ちょくちょく王宮を抜け出してLv上げに勤しんだ結果Lv70となった。
 これは歴代の王族の中でも最高Lvだと自負している。

 そもそも王族は、外敵がいない事からLvを上げる必要性がなかった。
 1人に10名の影衆が付き常にその身の安全を確保しているし、王宮には滅多な人物は入れない。

 例外は精霊殿に住む事を許される【存在を秘匿された御方】だけだろう。
 時空魔法適性持ちで移転が出来ると聞く。

 その警護に当たるのは、影衆当主率いる50名の精鋭部隊【万象ばんしょう】。
 それだけ厳重に守られるのは、エルフ国最後の砦と言われる所以ゆえんか……。 
 
 さながら最終兵器のような存在だ。
 人や物資を無尽蔵むじんぞうに移転出来るなら戦況が一変する。

 ちなみに現在エルフの国は、どの国とも戦争をしていない。
 これは過去に多くの国を殲滅せんめつした歴史から、無謀な戦を仕掛けようとする国がもう残っていないからだと思う。

 そんな中でもLvを上げた俺は、相当な変わり種だったかも知れない。
 いや、Lvが上がるのなら最高まで上げるのが男のロマンじゃないか?

 まぁ、そんな訳で俺自身もかなり強い方だ。
 
 だから懐妊を知った第一王妃が、あらゆる手を使い策略を巡らせようと特に危険は感じなかった。
 そう、毒見役の女官が倒れるまでは……。

 -------------------------------------
 お気に入り登録をして下さった方、エールを送って下さった方とても感謝しています。
 読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。
 応援して下さる皆様がいて大変励みになっています。
 これからもよろしくお願い致します。
 -------------------------------------
しおりを挟む
感想 2,333

あなたにおすすめの小説

家ごと異世界ライフ

ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!

異世界でお取り寄せ生活

マーチ・メイ
ファンタジー
異世界の魔力不足を補うため、年に数人が魔法を貰い渡り人として渡っていく、そんな世界である日、日本で普通に働いていた橋沼桜が選ばれた。 突然のことに驚く桜だったが、魔法を貰えると知りすぐさま快諾。 貰った魔法は、昔食べて美味しかったチョコレートをまた食べたいがためのお取り寄せ魔法。 意気揚々と異世界へ旅立ち、そして桜の異世界生活が始まる。 貰った魔法を満喫しつつ、異世界で知り合った人達と緩く、のんびりと異世界生活を楽しんでいたら、取り寄せ魔法でとんでもないことが起こり……!? そんな感じの話です。  のんびり緩い話が好きな人向け、恋愛要素は皆無です。 ※小説家になろう、カクヨムでも同時掲載しております。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

野草から始まる異世界スローライフ

深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。 私ーーエルバはスクスク育ち。 ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。 (このスキル使える)   エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。 エブリスタ様にて掲載中です。 表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。 プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。 物語は変わっておりません。 一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。 よろしくお願いします。

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!

七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」 その天使の言葉は善意からなのか? 異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか? そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。 ただし、その扱いが難しいものだった。 転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。 基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。 ○○○「これは私とのラブストーリーなの!」 主人公「いや、それは違うな」

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

私の家族はハイスペックです! 落ちこぼれ転生末姫ですが溺愛されつつ世界救っちゃいます!

りーさん
ファンタジー
 ある日、突然生まれ変わっていた。理由はわからないけど、私は末っ子のお姫さまになったらしい。 でも、このお姫さま、なんか放置気味!?と思っていたら、お兄さんやお姉さん、お父さんやお母さんのスペックが高すぎるのが原因みたい。 こうなったら、こうなったでがんばる!放置されてるんなら、なにしてもいいよね! のんびりマイペースをモットーに、私は好きに生きようと思ったんだけど、実は私は、重要な使命で転生していて、それを遂行するために神器までもらってしまいました!でも、私は私で楽しく暮らしたいと思います!

おばあちゃん(28)は自由ですヨ

美緒
ファンタジー
異世界召喚されちゃったあたし、梅木里子(28)。 その場には王子らしき人も居たけれど、その他大勢と共にもう一人の召喚者ばかりに話し掛け、あたしの事は無視。 どうしろっていうのよ……とか考えていたら、あたしに気付いた王子らしき人は、あたしの事を鼻で笑い。 「おまけのババアは引っ込んでろ」 そんな暴言と共に足蹴にされ、あたしは切れた。 その途端、響く悲鳴。 突然、年寄りになった王子らしき人。 そして気付く。 あれ、あたし……おばあちゃんになってない!? ちょっと待ってよ! あたし、28歳だよ!? 魔法というものがあり、魔力が最も充実している年齢で老化が一時的に止まるという、謎な法則のある世界。 召喚の魔法陣に、『最も力――魔力――が充実している年齢の姿』で召喚されるという呪が込められていた事から、おばあちゃんな姿で召喚されてしまった。 普通の人間は、年を取ると力が弱くなるのに、里子は逆。年を重ねれば重ねるほど力が強大になっていくチートだった――けど、本人は知らず。 自分を召喚した国が酷かったものだからとっとと出て行き(迷惑料をしっかり頂く) 元の姿に戻る為、元の世界に帰る為。 外見・おばあちゃんな性格のよろしくない最強主人公が自由気ままに旅をする。 ※気分で書いているので、1話1話の長短がバラバラです。 ※基本的に主人公、性格よくないです。言葉遣いも余りよろしくないです。(これ重要) ※いつか恋愛もさせたいけど、主人公が「え? 熟女萌え? というか、ババ專!?」とか考えちゃうので進まない様な気もします。 ※こちらは、小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。