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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第467話 迷宮都市 クリスマス会 3 木琴の演奏&サプライズ結婚式

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 現在妊娠中のルイスさんは治癒術師なので今後ダンジョンの攻略をどうするのか尋ねると、彼女は出産に備えて冒険者活動を休止し、5人パーティーで地下19階から地下18階へ拠点を移す事にするそうだ。

 地下19階を攻略していたのはジョンさんのパーティーだけだったので、何かあっても良いように他のパーティーがいる地下18階へ移動するのだろう。
 エクスポーションで治療出来ない怪我を負った場合は、ダンジョン価格を払い同じ拠点にいる治癒術師に治療をお願いする事が出来るからね。

 昼食を食べ終えると、午後の部が始まった。

 『肉うどん店』の母子による『木琴』の演奏に私が伴奏をする。

 母親達の緊張した表情を見て、「少しくらい失敗しても大丈夫です。私の伴奏で誤魔化す事が出来るから」と言って安心させた。

 子供達や冒険者達は、初めて見る楽器の『木琴』に注目している。
 庶民は楽器なんて見た事もないだろう。
 
 知っているのは、貴族出身のアマンダさんとルイスさんくらいかな?
 ああ、ダンクさんのパーティーの魔法士も多分貴族出身だろう。

 ただ、『木琴』がこの世界にあるかどうかは分からないけど……。

「これから、親子で『木琴』の演奏を発表します。最初は『キラキラ星』です!」

 私の伴奏に合わせて、母子が歌いながら演奏を始める。
 何度も練習した曲なので、ミスをする事もなく最後まで演奏出来たようだ。

 弾き終わると、楽器の演奏を聞いた子供達が興奮している様子が見える。
 演奏をしていたのが小さな子供達なので、冒険者達は驚き目を見開いていた。

 皆から盛大な拍手をもらい、母子も満足そうな笑顔になる。

「次は、『カエルの歌』です」

 この曲を聞きカエル・・・の事を質問したダンクさんとアマンダさんのパーティーが、ドン引きしていて笑ってしまう。

 子供達とジョンさんのパーティーは、カエル・・・が何の生き物か分かっておらず、短い曲が輪唱される間に曲を覚えて一緒に口ずさんでいた。

 うんうん、一緒に歌うと楽しい曲なんですよ~。
 魔物のトード・・・だと知らなければね……。

「最後は『幸せなら手をたたこう』です。歌に合わせながら、二人一組になって一緒に叩いてみて下さい」

 この曲は、聞いている方も楽しむ事が出来る。
 子供達も嬉しそうだ。

 3曲全て完璧な状態で演奏出来た事に、母子も自信が付いただろう。

「お姉ちゃん。僕も『木琴』弾いてみたい!」

「私達にも出来る?」

 小さな子供が楽器を演奏している姿を見て、自分達もやりたくなったようだ。

「練習すれば大丈夫。この家には、いつでも遊びにきていいからね!」

「本当!? やった~!」

 私は門の魔石に登録した人間の解除はしない心算つもりなので、家を開放する予定にしている。
 私達がダンジョン攻略中でも、子供達が部屋で遊ぶ場所になれば良いと思っていた。

 『肉うどん店』の子供達も、営業中は2階の部屋で大人しくしている必要があるから退屈だろう。
 私の家で、他の子供達に『木琴』を教えながら一緒にいる事も出来るしね。

 10歳以上の子供達は冒険者をしているから、家に遊びにくる事が出来るのは10歳以下の子供達になる。
 それだと行き帰りが心配なので、やはり馬車を購入し専属の御者を雇った方がいいだろうか?

 カマラさんに、信用出来る人を紹介してもらおうかな?

 さて、最後は兄達のサプライズ結婚式だ!
 2人には事前に華蘭からんで新調した服を、部屋に用意したから着替えてほしいとお願いしている。
 
 兄達が服を着替え2階の階段から降りてくる途中で、私が重大発表をした。

「これから兄達の結婚式を挙げます! 皆さん、盛大な拍手でお迎え下さい!」

 私からの発表を聞き、事前に知っていた『肉うどん店』の母子と子供達が一斉に拍手をする。
 同性同士の結婚と聞いても、異世界では普通の事なので子供達も戸惑とまどったりしない。

 むしろ冒険者達の方が、かなり驚いているみたいだ。
 アマンダさんとダンクさんは、驚き過ぎて口が空きっぱなしになっている。

 2人の仲睦なかむつまじい様子を見て、恋人同士だと気付けなかったのかしら?
 かなり態度に出ていたと思うんだけどなぁ~。

 まぁ、私も日本にいた時は全く分からなかったので人の事は言えないけどね!
 そんな事を考えていると、一瞬私の周囲に風がまとわりついたような気がした。

 それは以前ダンジョンで感じた事のある風の気配のようで……。

 風の精霊達?
 精霊なんて見た事もないのに、何故なぜかそんな事を思った。
 
 それにしても、兄達が階段から降りてこない。
 拍手をしている手が疲れてきたんですけど?

 兄は片手で目をおおい天井を見上げているし、旭は階段に座り込んでしまっている。

 嬉し過ぎて涙がこぼれないよう上を向いているんだろうか?
 旭は、ビックリして腰が抜けちゃった?

 しばらくして、兄が私に手招きする。
 これは少し時間が掛かりそうだと、皆へ状況を説明する事にした。

「兄達が少し恥ずかしがっているようなので、もう少しお待ち下さい」

 そう言って、兄達の方へ向かう。

「……沙良。聞き間違いだと思うが……、俺達の結婚式をすると言ったか?」

「うん、お兄ちゃん達が迷っているみたいだから、もうさっさと結婚したら良いと思って! するなら、両親を召喚する前がいいでしょ? 大丈夫、私も覚悟を決めたから。2人の子供は私が産むわ!」

 それまで階段に座り込んでいた旭が急に立ち上がる。

「沙良ちゃん、それって俺の・・子供を産んでくれるって事? もし結婚しなかったら、産んでくれないの?」

「そうよ! だから2人も子供の事は心配しなくて大丈夫! いい機会だから、心を決めて結婚してね」

 私の返事を聞いた旭が、真剣な表情をして兄に詰め寄った。

「賢也。俺達、結婚したらして・・いいって言ったよね?」

「馬鹿! お前それは相手が……」

 兄が何かを言う前に、旭が兄の口を両手でふさいだ。

「男に二言にごんはないはず! 沙良ちゃん、俺の・・子供を産んで下さい!」

「任せて! 両親は私が説得するよ!」
  
「旭、本当にそれでいいのか? 後で後悔しても知らないぞ?」

「うん。沙良ちゃんが子供を産んでくれるなら……、俺達結婚しよう」

 兄は旭の回答に、苦虫を噛み潰したような顔をして盛大に溜息を吐く。

「取りえず、今日はこのまま式を挙げよう。籍を入れる訳じゃないしな。俺は、この世界で誰とも結婚する心算つもりはないからいいが……。後でもう一度よく考えろよ?」

 往生際おうじょうぎわの悪い兄はそう言って、一応は了解したみたいだ。

 もう、素直じゃないな~。 
 旭は覚悟を決めたよ?

「じゃあ私の演奏が始まったら、ゆっくり中央まで降りてきてね」

 私は結婚式を進めるために足早に階段を降りて、定番の『結婚行進曲』を弾き始める。

 もう既に、旭は感激し涙目になっていた。
 兄も、もっと嬉しそうな表情をすればいいのに……。

 そして再び盛大な拍手で迎えられた2人は、無事結婚式を挙げる事が出来た。
 皆から祝福の言葉を掛けられて、恥ずかしいのかうつむいている姿が初々ういういしい。

 どうか幸せになってね!
 
 ちなみにダンクさんとアマンダさんが用意した子供達のプレゼントは、なんと各家に1個のマジックバッグ3㎥(金貨1枚・100万円)だった。

 E級冒険者には、とても手が出せない商品なので子供達は大喜びしている。
 かなり奮発してくれたようだ。

 これで常設依頼のモグラの討伐をしても、本体を持ち帰る事が出来て収入が増えるだろう。
 プレゼントをよく考え贈ってくれた事が分かる品だ。

 子供達に必要な物を準備してくれた事に感謝する。
 この日のクリスマス会は大成功の内に終了したのだった。

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