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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第452話 迷宮都市 武術稽古&『バーベキュー』&息子の嫁 

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「さて、稽古を始めるとしよう!」

 本日もガーグ老の一声で、全員が一斉に動き出す。
 騎士団出身者だから、指揮官の指示で行動する事に慣れているのだろう。

 ガーグ老は、かなり高い地位にいたようだ。
 命令する事に躊躇ちゅうちょがない。

 そして案の定、四男と五男は旭の稽古相手になった。
 旭の足が震えているみたいだけど、きっと武者震いよね……。
 
 8人を相手に、どうか最後まで生き延びてほしい。

 私と兄は、いつもと変わらずマンツーマンの稽古。
 ガーグ老に優しく教えてもらえるので、厳しいものではなかった。

 まずは槍の突きの型稽古をし、次はぎ払いを習う。

 これは遠心力を利用するので長槍の方が向いているそうだけど、短槍でも使い方によっては有効な一撃になるらしい。
 上段から振り下ろす型と横から切り払う型の2種類を教えてもらい、1時間くらい同じ動きを続ける。

 その後、ガーグ老を相手に実践だ。
 どんなに隙を突いて薙ぎ払いを試してみても毎回綺麗に受け流されてしまい、生来の負けず嫌いに火が付いてしまった。

 私の動きをじっと観察している2匹に、牽制けんせい役をお願いする。
 実際はダンジョンで魔物を狩る時を想定しながらの訓練なので、私の戦力である従魔を投入してもよいだろう。

 それまで大人しく座っていた2匹が急にガーグ老のもとへ駆け出したので、わずかな隙が出来る。
 そのタイミングを利用し、私は肉薄してガーグ老に横から薙ぎ払いを行った。

 今度こそいけると思った瞬間、ガーグ老が素早く後退して私の短槍は空を切ってしまう。
 そう簡単には取らせてくれないか……。

「おぉ、今のはひやっとしたわ。従魔と連携を取るのは良い事だが、これだとサラ……ちゃんの練習にならんでな。今は得物の間合いを覚えてもらうのに専念した方がいいだろう」
 
 残念……。
 従魔をけしかけるのは禁止だそうだ。
 
 2匹が本気でガーグ老に襲い掛かれば、やはり攻撃をかわす事は難しいんだろうか?
 少しどちらが強いか興味が湧いたけど、ガーグ老が怪我をしてしまったら大変だ。

 オリビアさんから従魔が人間に怪我を負わせた場合、テイムした本人に責任の所在があると言われていたしね。
 
 2匹を撤退させ、指示通り牽制してくれたお礼を言い頭をでてあげた。
 従魔には声に出さなくても気持ちが伝わるので、人間相手ならいざという時、油断を誘えそうだ。

 1時間程、ガーグ老相手に薙ぎ払いの実践をしたら終了の合図が出た。

 うん、今日も沢山頑張ったよ!
 普段運動をしない私には丁度よい。

 心配していた旭の方を見てみると、地面にせっている。
 回復するまで、そっとしておこう。

 兄も額から汗を流していたので、型稽古から相対稽古に変わったのだろう。

 私はこれから昼食を作らないとね。
 また人数が増えてしまったので、事前に準備をしていないと時間がかかる物は作れない。

 しかも全員が大食漢たいしょくかんだ!

 午後から予定があるので、『バーベキュー』と『コーンスープ』に『チーズナン』で勘弁してもらおう。
 各材料を切って、私も好きなねぎまを串に刺していく。
 
 いつも給仕をしてくれる三男のキースさんは、かたわらで待機状態だ。

 あれ? 
 四男と五男は動かないのかな?
 普通は弟の方が率先して役目を果たすものだけど……。

 『バーベキュー台』を5台出して、皿に盛った材料を各自で焼いてもらうスタイルにした。
 じゃないと熱々の状態で食べる事が出来ないからね。

 いつも私が席に着くまで待ってくれているから、冷めない方法を選んだのだ。
 皆が焼いている間に、キースさんが持ってきてくれた小皿へ『焼肉のタレ』を入れておく。

 私達の分は兄が焼いているので、私はフライパンで『チーズナン』を焼き、アイテムBOXに収納されている『コーンスープ』を温め直すフリをする。
 焼きあがった『チーズナン』と『コーンスープ』を、次男のアシュレイさんもキースさんと一緒に運んでくれた。

 弟さん達?
 お兄さんが運んでますよ?

 後で怒られたりしないか心配になってしまう。
 騎士団員って、上下関係に厳しいところじゃないのかしら?

 部外者がいる私達の前では、叱責しっせきされないかも知れないけど……。

 全員に行き渡ったところで、私から挨拶をする。

「お待たせしました。皆さん、今日もありがとうございます。お昼のメニューは、『バーベキュー』・『チーズナン』・『コーンスープ』です。『チーズナン』は中にチーズが入っているので、火傷しないように注意して食べて下さいね。それではいただきましょう」

「いただきます!」

 全員が力強く復唱すると、早速さっそくガーグ老が『コーンスープ』に口を付けた。

「おおっ、これは今までのスープと違い甘みがあって優しい味がするのぅ。黄色の粒が、『とうもろこし』という野菜だな?」

 へぇ~。
 異世界にはない野菜なのに、ガーグ老は転生者の姫様から本当に色々教えてもらっていたんだなぁ。

「はい、そうです。よくご存じですね。今年、野菜屋さんで栽培してもらったばかりなんですよ~」

「そうだったか。儂も見た……事はないが、形状を知っておったのだ。『チーズナン』は『ピザ』とよく似ておるな。こちらは上ではなく、中にチーズが入っているのか」

「熱いので、気を付けて食べて下さいね。あっ、甘い物が平気なら蜂蜜を掛けて食べても美味しいですよ!」

「ふむ、試してみようかの。誰か、蜂蜜を持って参れ」

 言われる前から、三男のキースさんが家具工房へと走り出していた。
 そして即座に蜂蜜が入っている陶器の壺を持ってくる。

 ガーグ老は、私のお薦めした食べ方をしてくれるらしい。
 6等分に切り目を入れた『チーズナン』の上に、蜂蜜をたっぷりと掛けてから一切れ手に取り口に入れる。

 すると味に満足したのか頬がゆるんでいた。

「チーズと蜂蜜の相性が良いわ。これなら幾らでも食べられるわい」
 
 そう言って、バクバクと熱々の状態なはずの『チーズナン』を完食してしまった。
 口の中を火傷していそうね。

 食べている間、ガーグ老の分を焼いていたキースさんが取り皿に盛り持ってくる。
 初めて『バーベキュー』台を使用し野菜や肉を焼いたので、少し焦げてしまっているところはご愛敬あいきょうだ。

 普段、料理をしない人なんだろう。
 兄達も料理は出来ないけど、焼肉屋さんで肉や野菜を焼いた経験はある。

 『バーベキュー』も、子供の頃から慣れ親しんでいるので失敗する事はなかった。

「もう少し精進しょうじんせよ」
   
 焦げた状態を見て、ガーグ老が一言らす。

「はっ、次は良い具合に焼いて参ります!」

 2人のやり取りを聞きながら思わず笑ってしまった。

 黙々と食べている部下達は、今日も美味しそうな表情をしているのでお礼になっているだろう。

 初参加の2人の様子はどうかな?
 うん、なんか味に感動したのか目が赤くなっているよ。

 私も兄が焼いてくれた分を食べよう。
 焼いた玉ねぎが甘くて美味しいなぁ~。
 ハイオークのねぎまは絶品だし、コカトリスキングの肉はジューシーだ。

 焼く材料がなくなる頃、4男のフランクさんがガーグ老へと話しかけた。

「ごと……父上。実は私、結婚しておりまして……。相手を紹介したいのですが、会って頂けますか?」

「? お前の嫁はよく知っておる。うちのには勝てんが、綺麗な女子おなごだったろう」

「いえ、妻は既に亡くなりました。再婚相手です」

「そうだったのか……。まぁ儂らは寿命が長いで、そういう事もあろう。息子の嫁だ、連れて参れ」

「はっ、ありがとうございます!」

 おおっと、今度はお嫁さんがくるらしい。
 女性なら旭の稽古相手は増えないだろう。

「……父上。私も妻が亡くなり再婚しております。是非ぜひ一度、会ってやって下さい」

 四男のフランクさんに続いて、五男のジルさんも再婚していたようだ。

「なんと、お主もか!? 時の流れを感じるわい。一緒に連れてくるがいい」

「有難き幸せに存じます」

 そうしてガーグ老には、義理の娘さんが2人増える事になった。

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