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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第419話 迷宮都市 地下14階 『お好み焼き』&他国の諜報員

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 月曜日。
 今日から5日間またダンジョン攻略。
 階段へ一直線に、地下1階から地下11・・階まで駆け抜ける。

 兄とフォレストを置いて、私と旭は再び地下11階から地下14階まで駆け抜けた。
 安全地帯に着いてマジックテントを設置後、休憩したら攻略開始。

 アマンダさん・ダンクさんと挨拶を交わしながら、子供達の話を併せ伝えていく。
 2パーティーは今週の攻略が終了したら一度地上に帰還するので、子供達の家に様子を見に行ってくれるだろう。

 シルバーの背に乗り安全地帯を出ようとした所で、担架で運ばれた冒険者がこちらに向かってきている事をマッピングで発見した。

 旭に怪我人が来る事を伝えて、その場で待機する。
 3時間後に戻ってきてからじゃ治療が手遅れになるかも知れない。

 私は医者じゃないので怪我の程度は分からないけど、安全地帯まで来るという事は手持ちのハイポーションでは治らなかったのだろう。

 10分程すると、私達のテント前に怪我人が運ばれてきた。
 まだ若い女性だ。

 キングビーに刺されてしまったのか、左の太股が紫色にれている。
 これは待っていて正解だった。
 キングビーの毒針はエリクサーでしか治らない。

 貴族しか購入する事が出来ないエリクサーを、冒険者は持っていないのだ。
 薬師ギルドに行く時に、少し事情を聴いてみよう。
 毒消しに特化したポーションを作れたらいいのに……。

 旭がヒールとホーリーの両方を掛けて、治療は数秒で終わる。
 女性冒険者がそのままでは恥ずかしいだろうと、旭は治療後直ぐに足に布を出して隠してあげていた。

 パンパンになって痛かっただろう太股の状態が一瞬で普通の肌色に戻り腫れも引いた事に、女性冒険者とそのパーティーメンバーはとても驚いた様子でお礼を言ってくれる。

 治療代の金貨16枚(1千6百万円)を受け取り、私達は安全地帯を出た。
 トレントの森付近までシルバーの背に乗り移動後、ハニーを迎えにいく。

 私を見付けるとハニーが上空から降りてきた。
 口にはマジックバッグ3㎥をくわえている。

 私達がダンジョンを攻略しない間にも薬草採取をしてくれていたらしい。
 中身をアイテムBOXに入れ替えて、ご苦労様と頭をでる。

 空になったマジックバッグ3㎥は、ハニーがコロニーの中から呼んだ1匹の首に掛けておいた。
 これで夕方には、また薬草が一杯になっている事だろう。

 地下14階に戻ると、まずはキウイフルーツの収穫&2匹の迷宮タイガー狩り。
 それが済んだら楽しい薬草採取の時間だ。

 これじゃあアレクさんから、ダンジョンに薬草採取に来ているのかと言われても仕方ないわよね。

 偶には冒険者らしく魔物を狩っておこうかな?

 マンゴーが生っている場所をマッピングで調べ、トレントの森にない事を確認すると外周を残してトレントの脳を石化し次々とアイテムBOXに収納。

 森が消失しなければ、兄には怒られまい。
 外から見ればトレントはいるように見える。
 
 フォレストと同じ迷宮タイガーを兄は狩ったりしないので、マンゴーが生っていなければトレントの森の中には入らないだろう。

 私が狩れないキングビーとクインビーを優先的に狩ってくれているからね!

 あぁ、またトレントが増えてしまった。
 ダンクさんとリリーさん、早く結婚しないかなぁ。

 新築の家の家具も、トレントで作ってもらえるかしら?
 日曜日、ガーグ老にお願いしてみよう。
 6部屋分の家具ならトレントも少しは減るだろう。

 その後、ハニーが見付けてくれる魔力草を採取しながらご機嫌な状態で安全地帯に戻る。
 旭と兄を回収してホームの自宅に戻り昼食だ。
 
 お昼にうどんを食べたいと、朝リクエストがあったので具沢山のおかめうどんを作る。
 でた法蓮草・椎茸の含め煮・蒲鉾かまぼこ・だし巻き卵・削り節をうどんの上にいろどりよく配置すれば完成。

 よく食べる兄達の分は1.5玉使用した。
 お肉も食べたいだろうと、作り置きのコカトリスとネギの串焼きも皿に盛る。

 麺つゆもかなり優秀なので、冷凍うどんを入れればうどん屋さんに近い味になる。
 昔は白玉うどんしか売っていなかったけど、この冷凍うどんが販売されてからは家でうどんを食べる機会が増えた。
 
 うどんを食べるとほっとするのは何故なぜかしら?
 兄達は1.5玉を余裕で完食したようだ。

 2人をそれぞれ送り届けて、私はホームの自宅に帰ってくる。
 いまから今日の夕食の準備をしよう。
 
 ソースを解禁したので、2パーティーにお好み焼きをご馳走ちそうする予定でいるのだ。
 まずは15人分のキャベツとネギを大量に切らなくてはいけない。

 次はハイオーク肉の薄切りを作る。
 私はチーズも入れたいので、これも細かく刻んでおいた。

 空いた時間に、せっせとお弁当用の総菜を作っていく。
 兄達が2回目の攻略を終えるとテントから出て、ダンクさんとアマンダさんに今日の夕食は私が作る事を伝える。

 バーベキュー用の鉄板と大きな2枚のヘラを2パーティーに渡して、ケンさんとリリーさんに『お好み焼き』の作り方を教え一緒に作り出す。

 これは簡単で時間が掛からないから、料理担当も楽だろう。
 鉄板の上に丸く成型した種をひっくり返すのは、兄の出番だ。

 兄のやり方を見ていた2人だったけれど、やはり最初は上手くひっくり返す事が出来ず半分に割れてしまっていた。

 それを見て、ダンクさんとアマンダさんが挑戦。
 2人は見事に丸い状態のまま、ひっくり返していたよ!

 初めてなのにすごい!
 メンバーから、流石さすがリーダーと言われ照れていた。

 見ていたら自分達もやりたくなったのだろう、各自挑戦しているようだ。
 でも上手く出来た人はいなかった。

 ひっくり返すのは、意外と難しい作業なんですよ~。
 私はいつも兄にお願いしてますからね!
 
 それでも、半分に割れた『お好み焼き』を皆が美味しそうに食べている。
 口に入ってしまえば形なんか関係ない。

「サラちゃん、『ソース』を使った料理はまだ沢山あるのかい?」

「はい、ありますよ~。定番は『焼きそば』と『たこ焼き』ですね! あっ、海にいるタコって分かります?」
 
「タコ? ここいらじゃ海の物は入ってこないからねぇ、それは美味しい魚なのかい?」

「魚ではないんですけど……。軟体動物? のような感じです」

 私の説明を聞いた冒険者達から悲鳴が上がる。

「そんな生き物を食べるのか!?」
 
「ちょっとそれは、食べたいとは思わないよ」

 一体、どんな生物を想像したんだろう?
 私が軟体動物と他に思い付くのは、ミミズとか芋虫か……。

 イカやタコを知らなければ、異世界でもゲテモノの類になりそう。

「タコは美味しいんですよ~。機会があれば作りますね!」
   
 そう言ってはみたものの、今の所タコは入手出来ないだろうなぁ。
 海に面した領に行くか、類似の魔物がいなければ難しい。

「『お好み焼き』、旨かった! 作ってくれてありがとな」

 余程、『たこ焼き』は食べたくないらしい。
 ダンクさんは強調しながらお礼を言う。

 私も、ミミズや芋虫を料理しようとは思っていませんよ?
 他に美味しい食材があるのに、食べたいとは思わないです。

「そう言えば、最近他国から人が迷宮都市に来ているらしい。何故なぜか、路上で死んでいるのが発見されるそうだ」

 おや?
 いきなり物騒な話題になったな。

「どうして亡くなったのが他国の人だと分かるんですか?」    

 私は不思議に思って聞いてみる。
 異世界人は、髪の色や肌の色が統一されていない。

 カルドサリ王国の人間しか見た事がないけど、それなのに他国の人だと直ぐに分かる特徴があるのかしら?

「あぁ、亡くなった人間は他国の魔道具を持っていたんだ」

 魔道具は国によって違いがあるのか……。

「それは、どんな魔道具なんでしょう?」

「通信機だ」

 通信機と言われて、電話のような物があるのだと知る。

「それは遠く離れた場所でも連絡を取る事が出来る物ですか?」

「まぁそうだが、かなり高価な物だし使用する度に魔石が必要になるから、普通は個人で持ち歩いたりはしない」

「その通信機を持った他国の人が亡くなっているんですね? 考えられるのは、諜報員ちょうほういんかなぁ~」

「おっ、サラちゃんいい線だな。まぁ、ちょっと俺も気になるからもう少し情報を調べておくよ」

「教えてくれてありがとうございます。また何か分かったら、聞かせて下さいね」

「おうっ、旨い飯の礼だ!」

 ダンクさんの話題に、アマンダさんのパーティーは驚いていなかった。

 クランに入っている冒険者は、毎日1階層下の拠点までマジックバッグを運ぶので地上の出来事を知る機会は多い。
 
 私達はクランに入っていないので、情報にうといだろうと話をしてくれたのだろう。
 話を聞いた兄が、また眉間にしわを寄せて考え込んでしまっている。
   
 私は今聞いた話に、心当たりが大あり・・・だった。
 これ、ひょっとしてやばいかも……。

 数日前、後を付けられ地面に倒れ込んでしまった人達じゃないかしら?
 だとしたら私が他国の諜報員に狙われている事になる。

 それにしては、亡くなった状況が分からないけど……。
 オリーさんを他国に送ってからは、何事もないと思っていたのになぁ。

 これは私も気を付けなければいけない。
 ダンジョン攻略中も気を抜いちゃ駄目だ。

 シルバーとハニーにフォレストにも、警戒を強めるよう指示を出しておこう。
 従魔だって狙われるかも知れないしね。

 私が決意を固めていると、どこかから一瞬風が舞った。
 それは私の体の周りをふわりと一周して消えてしまったのだった。

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