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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第415話 迷宮都市 魔道具屋で羽毛の魔法処理依頼&夢に出て来た妹 4

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 魔道具屋の店内に入ると、店主がにこやかに挨拶をしてくれる。

「サラちゃん、いらっしゃい。今日もまたマジックバッグの購入かな?」

 この店で私達はマジックバッグ30㎥・金貨410枚(4億1千万円)を6個も購入しているから、かなり売上に貢献した事になる。

 店主もマジック寝袋・金貨1枚(100万円)を、6個おまけとして付けてくれたくらいだ。
 愛想がいいのも当然だろう。

「こんにちは~。今日はコカトリスキングとクイーンの皮を持ってきたんです。子供達の羽毛布団にしたいので、羽毛の魔法処理をお願いしにきました」
 
 迷宮都市の住人達は私が子供達の支援をしている事を知っているので、こう言えば理解してもらえる。

「子供達の布団に使用するのかい? それは感心だね。コカトリスキングとクイーンの羽毛は、魔法処理をすれば100倍に膨らむからな。子供用の布団ならマジック寝袋より安く出来るだろう」

「そんなに量が増えるんですか? 1匹分の皮だと、どれくらいの羽毛布団が作れるんでしょう?」

 私は羽毛が100倍に膨らむと聞いてビックリしてしまう。
 何その謎仕様!

 でも考えてみたら、マジック寝袋は金貨1枚(100万円)だ。
 1匹の皮が金貨4枚(400万円)だから、そのまま使用すると計算が合わない。

「そうだな、子供用だと10枚以上は作れるんじゃないかと思う」

 今週狩ってきた60枚の皮で600人分も出来るの?

「教えて下さりありがとうございます。60枚の皮の処理は、お幾らですか?」

「1匹銀貨10枚(10万円)だが、銀貨9枚(9万円)に負けてあげよう。処理に必要な期間は、1ヶ月ぐらい必要になるが大丈夫かな?」

「はい、感謝します! では金貨5枚(500万円)と銀貨40枚(40万円)を先払いしますね」

 私は店主にお金を渡し、マジックバッグからコカトリス(キング・クイーン)の皮を取り出した。
 店主が店のマジックバッグに入れ替えるのを待ち店を出る。

 魔法処理は540万円と高く付いたが、60万円も値引きしてもらえたし600人分作る事が出来るなら1枚当たりの値段は安く済むだろう。
 
 これでミリオネ・リースナー・迷宮都市の子供達&店の従業員分を作る事が出来る。
 羽毛布団は軽いから、子供達が天日干しする作業も楽になるしね。

 どうせなら私達の分も作っておこう。
 日本製の物より魔物の羽毛の方が高品質かも知れない。

 来年のプレゼントの算段がついてウキウキしながら町を歩いていると、マッピング上に私の後を付けてくる不審者を見付ける。

 喜んでいた所に水を差されたようで、非常に気分が悪くなった。
 リースナーの町で散々誘拐されかけたため、1人で行動する時は常時マッピングを展開していたんだけど……。

 迷宮都市では、私を誘拐しようとする人間はいなかったのになぁ~。
 オリーさんが雇った暗殺者は別として、B級冒険者で従魔もいる私を狙うなんて迷宮都市の住人ではないのかも知れない。

 他領の人だろうか?
 リーシャの容姿は人目をくから、分からないでもない。

 だだ、これだけ有名になってからというのがどうにも理解不能だ。
 かなり距離が離れているけれど、私が歩く方向を確実に付いてきている。

 大事になる前に撃退した方がよいかしら?
 また、オリーさんのように他国へ移転させる?

 そんな事を考えていたら、なんと3人いた不審者達がその場で崩れ落ちた。
 それきりピクリとも動かない。

 ええっ!?
 私、まだ何もしてないのに……。

 突然意識を失った不審者達の事を不思議に思いながら、まぁ自分に害がないならよいかとホームの自宅に戻ったのだった。

 先程、後を付けられた事は兄達に言っておいた方がいいかな?
 でもその後の出来事をどう説明したらいいか分からず、結局今日の事は胸に仕舞っておく事にした。

 テーブルに準備した朝食は片付けられており、旭の字でメモ書きが残されている。
 『サンドイッチありがとう♥ 美味しかったよ~♥ 賢也と一緒にジムに行ってきます。9:00 旭より』

 なんだか今日は、♥マークが付いていて笑ってしまう。

 玉子サンドに照り焼きチキンサンドと兄の好物であるカツサンドの3種類にしたから、朝から豪華な食事に嬉しかったのかもね。

 サヨさんと遅い時間にモーニングを食べたので昼食は取らず、私は午後からセーターの続きを編む事にした。

 ソファーに座って、兄のセーターを編んでいると段々と睡魔が襲ってくる。
 先週も昼寝をした事を、少し変だなぁと思いながら眠気には勝てず眠ってしまった。


 あぁ、これは香織かおりちゃんの夢だ。
 どうやら私は再び妹の夢を見ているようだ。

『今日も沙良お姉ちゃんの夢を見た。高校の卒業式らしい。仕事で来れないお父さんとお母さんの代わりに、大学生の賢也お兄ちゃんと旭さんが花束を持って沙良お姉ちゃんに渡してあげていた。後ろにいた男子生徒達は、お姉ちゃんに近付けないみたい。綺麗で優しい沙良お姉ちゃんは、男女共に人気の生徒だった。部活の後輩からも幾つか花束を貰って両手に抱えきれない程持っている。お姉ちゃん、卒業おめでとう!』

 高校の卒業式の夢を見ているんだね。
 懐かしいなぁ~。

 兄と旭が、勉強で忙しい合間を縫って駆け付けてくれたと知った時は、嬉しくて思わず泣いてしまった。
 学校に行くまで兄は何も言わなかったのに、2人とも大きな花束を持ってきてくれたんだよね。

 アルバイトもしていなかったから、あの花束はお小遣いを貯めて買ってくれたんだと思うと感謝で胸が一杯になった事を思い出す。

 3人で一緒に撮った写真は、アルバムの中に大切に保存してあるよ。
 あぁそうだ、サヨさんにアルバムを見せてあげよう。

 娘であるお母さんの結婚式の写真も、家族が映っている写真も見たいと思うに違いない。  
 それにお父さんがどんな姿をしているのか、気になっている事だろう。

 娘の結婚相手は、母親として吟味ぎんみしたかったはずだからね。
 まだ会っていない孫の、あかねや双子の遥斗はると雅人まさとも見せてあげなくちゃ。
 
 明日、演舞用の衣装を作る前にサヨさんと一緒に実家に行こう。

しずくちゃんが亡くなってしまった。まだ18歳だったのに……。頑張って医者になった賢也お兄ちゃんと旭さんの努力が報われる事はなく、お姉ちゃんも目を真っ赤にらして泣いている。はるちゃんとまぁちゃんが、ひつぎから離れず泣いている姿を見て私も沢山泣いてしまった。雫ちゃん、今度は健康な体になって産まれ直してね! 私も、お母さんに産んでもらえなかったけど、この世界に転生出来たよ。いつか会えるといいな……。』

 しずくちゃんか……。
 旭は、本当に悲しかっただろうな。

 人生の全てを懸けて妹の心臓移植を叶えるため、がむしゃらに勉学にはげんだのだ。    
 この世界で、雫ちゃんが生まれ変わっていたらいいのに……。

 どんな姿になっていようと兄が私を妹として大切にしてくれるように、旭は雫ちゃんの事をとても大事に守るだろう。

 ちょっと過保護過ぎる点が玉にきずだけどね~。
 門限は8時だし、男性冒険者の上半身裸姿は見ようとすると目隠しされちゃうし……。

 私は、もう高校生じゃないのよ?
 今の姿は19歳だけど、実年齢は55歳なんだから!

 でも雫ちゃんは18歳で亡くなったので、異世界で生まれ変わっていたら私達より年上の可能性もあるかも?

『あ~、テステス。沙良お姉ちゃん、聞こえる? 時間がないからよく聞いてね! 雫ちゃんは……転生して……いるよ! 早く……に行って、見付けてあげてね。名前はサ……。』

 そこで目が覚めた。
 最後は私宛のメッセージだよね?

 肝心な部分が聞き取れなかったよ!

 でも香織ちゃんが伝えたいのは、きっと雫ちゃんがこの世界にいるという事だ。

 一体、何処どこにいるんだろう? 
 
 転生とはっきり聞こえたから、別人の姿になっているはず。 
 私も姿が変わってしまったから、雫ちゃんには分からないだろう。

 兄と旭は36歳若返っているけど同じ姿のままなので、18歳当時覚えている年齢に近い。
 雫ちゃんの方が気付いてくれれば、再会する事は不可能じゃないかも?

 これは兄達に相談しないと!
 旭、良かったね!
 雫ちゃんに会える可能性が出てきたよ!

 私は2人が帰ってくるのを、今か今かと待つ事にした。

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