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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第392話 ガーグ老 9 『製麺店』の開店準備&地下12階でのダンジョン内警護

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 御子は新しく契約した店に、元冒険者の男性達を案内し店内に入っていった。
 そして10人全員と面談をしている。

 その間、治癒術師の御二方おふたかたは店内に居て警戒しているようであった。
 高齢とはいえよく知らぬ男性ばかりが居るので、見た目が美少女である御子に不埒ふらちな真似をしないか見張っているのだろう。

 人族でいえば12歳くらいの少女にしか見えぬが、姿変えの魔道具で少々盛っておられるようだから用心するに越した事はない。

 勿論もちろん、儂らも目を光らせておるがの。

 幸いここに居る元冒険者の男性は、自分達の今後の生活が気になるようで御子の容姿にまどわされる事はなかった。
 全員が住み込みで働く事を希望したので、事前に購入された新しい服や下着等を渡され体を洗うようにと言付けられた。

 男性に気を使ってか御子はその場を後にして店内に戻ると、各部屋に生活用品を置いた後で料理を開始する。

 ここも、『肉うどん』を出すお店にするのだろうか?
 腕の不自由な者5人と足の不自由な者5人で、店を営業する事は可能かの……。

 作っているのは『肉うどん』らしい。
 長年の汚れを綺麗に洗い流し、さっぱりとした元冒険者達が戻ってくると全員で昼食となった。

 見ているだけの儂も、ちとお腹が空いたわ。

 そして御子は、今食べているうどん・・・の製麺を任せると言う。
 おぉ、この白くて長い食べ物を作る店にするのだな。

 儂も少々作り方が気になっておった。
 どのように作るのか知る事が出来るのは楽しみだわ。

 お店の従業員として雇う代わりに、様々な【約束事】を申し渡される。
 随分ずいぶんと細かい規則があるな。

 そして再び庭に行き、今まで着ていた服の洗濯の指導も行っている。
 御子達は魔法でたらいにお湯を出しているが、普通は井戸の水しか使えぬだろう。

 石鹸も充分な数を事前に準備してあった。
 ここに雇われた者達は、今日から部屋で布団に入って寝る事が出来るのだから運が良いな。

 洗濯が終了すると、銀貨5枚(5万円)の給料を先払いされた。
 まだ働いてもいないのに、信用買いをしているらしい。

 ファイヤースライムの魔石を大量に渡して、店の業務用寸胴鍋で湯を沸かしてもよい事を伝えている。 

 そして何故なぜか、ひげり方を詳しく指導して明日の朝までに切るように指示をされた。

 路上生活をしていた者達の不精髭ぶしょうひげが気になられたのか……。
 髭のある男性は、お嫌いなのかも知れん。
 
 儂らも髭を剃った方がよいだろうか?

 最後に手と足の爪を切る専用の『爪切り』を渡され、爪の切り方を指導された。

 そのような便利な物があるとは……。
 見た事もないが、どこに売っておるのだろう?
 
 翌日。
 時間通り店に現れた御子達の警護にく。

 従業員達は、髭を剃り頭に手拭てぬぐいを巻きエプロンを付けた状態だった。

 ふむ、こうみると昨日とは全然違うな。
 やはり見た目は重要であると強く感じた。
 
 この者達は元冒険者だからLvも高いだろう。
 毎日3食、食べる事が出来れば体重も増え体力も元に戻る。
 働く事に問題はない。

 御子がテーブルに変わった料理道具を出してうどんを作っていく。
 儂も作り方を見ておったが、時間が掛かり中々大変な作業だった。
 2人1組にして、作業が分担出来るように考えられてもいるようだ。
 
 これを母親達に任せるのは手に余るだろう。
 うどんという食べ物は、手間が掛かっておるらしい。

 しかし、その透明な布はどのような素材で出来ておるのかの?
 『爪切り』といい、御子は移転魔法を使用し別大陸で購入されたのか……。

 あまりこの大陸にない物を見せてはならんぞ?
 強欲な者も人族には多いでな。
 

 それから6日間。
 毎日、従業員達にうどんを作らせて店に出せるように完成度を上げていく。

 慣れぬ包丁を使用する事で初日は不揃ふぞろいだった麺の幅が、6日後には綺麗にそろった状態になった。

 やれば出来るものよな。
 皆が真剣に取り組んだ成果だろうて。

 御子は出来上がった麺に合格を出し、来週月曜日から『肉うどん店』で使用する事を伝えた。
 それを聞いた従業員は、ほっと安心して笑顔を見せた。   

 折角せっかく雇ってもらったのだから、役に立てると知り嬉しかったであろうな。
 もう路上生活者ではなくなったのだから、御子の恩に感謝して頑張って働く事だ。 

 こんな奇跡は、もう二度とないだろう。

 しかし今週は『肉うどん』を食べる事が出来んかった。
 あれが一週間の楽しみだというに……。

 月曜からまたダンジョンの警護に戻る。
 ふぅ~、本当に毎回これだけはきつくて敵わん。

 そして午前中は御三方おさんかたがバラバラに行動されるので、御子が独りになってしまわれる。

 本来影衆は王族だけが警護対象であったが、高名な治癒術師である御二方も御子が怪我をした時に治療してもらう必要から儂らも分かれて警護する事にした。

 御子に儂を入れて4人、御二方には3人ずつ付いている。

 その日の夕食時に、御子がまた見た事もない料理道具を出された。
 なんでも『バーベキュー』用の道具らしい。

 それは姫様が口にされていた料理ではないか?
 
 王宮の食事は不味まずいと文句を言って、よく『バーベキュー』がしたいと言われていた。

「でも『焼肉のタレ』がないのよね~」

 と悲しそうにされておったが……。
 
 4本の脚が付いた四角い鉄の箱の中に炭を入れ、上に編み目状になった鉄を載せた料理道具だった。
 炭に火を付けた後で、網の上に切った野菜や肉を載せて焼く料理らしい。

 皆、旨そうに食べておった。
 姫様、これが食べたかった『バーベキュー』ですか?

 御子が、どうやってこの料理道具を見付けたのか不思議だった。
 
 なんと、7パーティー全員に料理道具をプレゼントしていなさる。
 それは高価な物ではないのか?

 儂らにも1台欲しいものだ。
 ダンジョン内の粗食に耐えるのは飽きましたぞ。

 夕食を終えた冒険者の1人が御子に近付いてきた。

 一瞬警戒を強めたが、王都から来た『白銀はくぎんつるぎ』というクランの冒険者パーティーに対する忠告だったようだ。

 ふむ、儂らも注意しておかねばならん。
 きっと、シルバーウルフに魔物寄せを使用した者達だろう。

 拠点にしている階層は違えど、万が一御子の能力に気付かれる事になっては大変だ。
 人族は戦争ばかりしておるでな。

 戦況を一変させる能力を持った御子の事を、囲いたいと思うに違いない。
 我らエルフの秘匿ひとくされた至高の存在を奪われてなるものか!

 御子の事は、儂ら影衆が命をけてお守りする所存しょぞん
 息子が率いる50人の『万象ばんしょう』が、もう直ぐおそばに参ります。

 御子達は、自由にダンジョンを攻略していて下され。
 しかるべき時に出生の秘密を儂からお話ししましょう。 

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