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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第390話 ガーグ老 7 地下10階~地下11階でのダンジョン内警護&ハーレイ家とマケイラ家の確執

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 その週の金曜。
 御子達の前に、他領から来たと思われる冒険者が挨拶にきた。

 リーダーの男は御子の姿が若いからか、無遠慮に見ておる。
 無礼なヤツだ。
 そんなに御子の事をジロジロ見るでないわ。

 不快に感じたのだろう、そっけなく対応して御子はさっさと攻略に行かれた。
 
 翌週。
 地下10階を拠点にしているリーダー達に、御子が来週から地下11階を拠点にする話を聞いて、儂は頭が痛くなった。

 また走る距離が増えるのか……。
 我ら影衆、いついかなる時も御子のそばを離れませんぞ!
 皆の者、頑張って走るのだ!!

 そして地獄の月曜日がやって来た。
 今日からは地下1階から地下11階を走り抜ける必要がある。

 覚悟を決めて、御子の後を必死で付いていく影衆の者達。
 地下11階の安全地帯に到着した頃には、体力の限界を感じずにはいられなかった。

 しかも御子は地下10階で知り合った冒険者に、3ヶ月後には地下12階に拠点を移すと言っているではないか!?

 なんとっ!

 思わず儂は念話の魔道具を握り締め、息子に今どの辺りにいるか確認する。
 返ってきた答えはカルドサリ王国に隣接してもいない国の名前で、3ヶ月後の警護は儂らがする事が分かっただけであった。

 地下11階層は森のあるダンジョンになっている。
 エルフにはとても攻略しやすい環境だ。

 御子も森の空気に触れて楽しそうにしておられる。
 そして、ダンジョン攻略中に木の葉と薬草採取を始められた。 
  
 はて……。
 儂の知っている冒険者は、ダンジョン内でこんなに自由に攻略をする事はなかったはずだが?
 
 ダンジョンの常設依頼にない、薬草採取等して何が楽しいのか理解出来ぬ。
 採取しておられる木の葉は、肉の臭み取りに使用する物のようだな……。

 沢山稼いでいらっしゃるのに、乾物屋で売っている木の葉を嬉しそうに採取する姿を見ると、余り裕福な家庭で育ったのではないのかと心配してしまうではないか。

 御子よ、魔物を狩った方が効率が良いですぞ!

 更には、森の中に生っているリンゴを見付け歓喜されていた。
 ハーフエルフの御方は、攻略そっちのけでリンゴの収穫を楽しんでおられるようだ。

 人族の姿をした御方は、魔力草を次々と見付けていなさる。
 あれは中々見付からん薬草だというに、どうやって探し当てるのか……。

 金曜日。
 冒険者ギルドでは、御子がダンジョンで採取した薬草を換金出来ないか受付嬢に交渉していらした。

 この受付嬢はマケイラ家の諜報ちょうほう員だとカマラから聞いておる。
 ハーレイ家と仲の悪いマケイラ家の当主が、迷宮都市に潜り込ませている人物だ。

 御子の事をエルフの王族だと知っている受付嬢は常設依頼に追加しておくと、にこやかに対応しておった。

 冒険者ギルドマスターに確認も取らず対処するとは、剛毅ごうき女子おなごだわ。
 ここの冒険者ギルドマスターはハーレイ家の娘であったろうに。

 御子が提出した薬草を換金した後、受付嬢が席を外したので影衆の1人に後を付けさせてみた。
 報告を聞いた所、冒険者ギルドマスターの部屋に行き薬草を依頼に追加する許可をもらっていたらしい。

 これは、どうやらハーレイ家の娘も御子が王族である事に気が付いているようだな。
 となると、マケイラ家とハーレイ家、両家共がまだ秘密にしておるという事か……。

 あの両家は、いつまで仲違いをしている心算つもりだ。

 カルドサリ王国でハーフエルフを統括するハーレイ家の当主は、衆人環視の前でマケイラ家の当主にフラれた事をまだ根に持っておるようだな。
 
 そんなもの、エルフにはよくある事だろうに……。
 
 男の証を見せられたのは、ちとやり過ぎな感はいなめないがな。
 話を聞いた時は爆笑ものだったわ。

 マケイラ家の当主ガリアは思い切った性格をしておるようだ。
 大方、ズボンを脱ぐ心算つもりでパンツまで下げてしまったんだろう。

 真相は本人しか分からぬが、大勢に見られて恥ずかしい思いをした事を恨みに思っているのかの。

 まぁ、マケイラ家の当主は確かに容姿に優れておるわな。
 あそこは代々、諜報ちょうほうの名家という事もあって血筋ゆえか男女関係なく美人が多い。

 武の出身の者は例外なく面食いだ。
 儂の妻も若い頃は非常に美しかった。
 一目惚れした儂は、その場でプロポーズしたものだ。

 両家共、人族の妻をめとったと聞いているが……。
 お互いの子供を結婚させ、婚家になるのは無理だったらしい。
 
 もしそれが叶っておったら、両家の因縁も解消されたやも知れん。
 
 教会での炊き出しが終わった後、御子が子供達にダンジョンで収穫したリンゴを手渡されていた。
 ダンジョン産の果物は、滅多に市場に出回らない高価な物だ。
 子供達も初めてドライフルーツ以外の果物をもらい、嬉しそうにしておった。

 御子は本当に優しい。
 育ててくれた御方に会って礼を言いたい程だわ。

 やんちゃであった姫様も、そういった所がおありだった。
 姫様が120歳頃の事だったか……。

 突然、部屋にある服や装飾品を処分すると言われ女官達に下げ渡してしまわれた。

 姫様が身に着けられるのは人族の職人が作った高価な物であったため、装飾品をもらった女官達は家宝にすると泣いて喜んでおったなぁ。

 それから華美な服装は、お金の無駄だと言われて簡素な物を着られるようになられた。
 武芸にはげむ事も確か同時期であったと記憶しておる。

 姫様は剣術を、それは楽しそうに習っておいでだった。

 鍛錬の邪魔になるからと、ズボンを穿くと言うので女官達が急いで縫って用意していた事も懐かしい。

 王族は冒険者になれないと知った時は、一日中八つ当たりされて大変な思いをしたわ。
 冒険者にそれほどまでにあこがれるとは……。
 本当に変わっていらした。

 あれから事ある毎に「男のロマン」が口癖になられてしまった。
 姫様は何故なぜ、あんなにも「男のロマン」にこだわっていたのか……。

 儂は最後まで知る事は出来なかった。

 ただ……御子を産むのは「男のロマン」ではなかったようで、王に文句ばかりつけられ喧嘩される事が多かったの。

 今の所、御子は姫様よりは大人しい様子。
 月曜と金曜の、行き帰りの全力疾走しっそうさえなければ儂らの警護は問題なさそうだ。

 ダンジョン攻略の警護中、御三方が魔物の魔法を避けず身に受けている場面に遭遇そうぐうする。

 いつも遠距離から魔法で瞬殺されるので、何をしているのか気になって注意して見ていると、その後に身に受けた魔法を使用されるではないかっ!?
 
 何故なぜ、習得してもいない魔法を撃つ事が出来るのだ!

 これは……。
 儂らには理解出来ぬことわりがあるらしい。
 
 いずれにせよ知られるのは不味いため、影衆の者に見た事は忘れるように言い付けたのであった。

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