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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第369話 迷宮都市 地下14階 迷宮都市を去った3人組の冒険者

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 月曜日。
 今日から5日間またダンジョン攻略。
 階段へ一直線に、地下1階から地下11・・階まで駆け抜ける。

 兄とフォレストを置いて、私と旭は再び地下11階から地下14階まで駆け抜けた。
 安全地帯に着いてマジックテントを設置後、休憩したら攻略開始。

 今週からダンジョンに1ケ月潜る事になるダンクさんとアマンダさんのパーティーは、まだ安全地帯に到着していないようだ。
 
 私はシルバーの背中に乗ってトレントの森へ、旭は川に迷宮ウナギを狩りに行く。

 トレントの森付近に到着したら、ハニーを迎えに行って一緒にダンジョン攻略を開始する。
 目に映るキウイフルーツを全て収納後、マッピングで見付けた迷宮タイガーの脳を石化して収納。

 果物の収穫が便利になったから、ダンジョン攻略の時間がかなり短縮されるなぁ。
 空いた時間は何をしよう?

 そう言えば今朝、兄から私の胸を触ろうとした3人組の冒険者は、ダンジョン攻略を中止したから安心しろと言われたっけ。

 隣で話を聞いている旭もうなずいていた。
 これはどうも、過保護な兄達が何かやらかした気がする。

 最近2人はダンジョンの安全地帯で寝泊まりしているから、その間の行動は把握してないんだよね~。
 シルバーとフォレストは知っていると思うけど、残念ながらあの子達はしゃべれない。

 可能性としては夜の間に3人組の冒険者の下に行き、私の胸を触ろうとした事に対して詰問したって所かしらね?

 彼らも突然、そんな冤罪えんざいをかけられて驚いた事だろう。
 でも暗殺しようとした事がバレるよりは、はるかにましだと思うから口裏を合わせたかもなぁ。

 見た目15、6歳の少女の胸を触ろうとする変態のレッテルを貼られる事くらい訳もないはずよね……多分。

 兄達2人が、どう問い詰めたのか知らないけど穏便に済んだのかしら?
 3人共、不能にされていたりして……。

 まっ、居なくなってくれたなら私にとっても都合がいい。
 兄達に暗殺されそうになった事がバレなければ、問題ないからだ。

 ダンジョンを攻略しないなら、迷宮都市も既に去っているだろう。
 彼らはきっと迷宮タイガーを狩って、今回の損失を補填する心算つもりだったんじゃないかな?

 その目論もくろみは、私が出現した迷宮タイガーを全て狩ったので達成出来なかったと思うけど。
 
 流石さすがにオリーさんも、3組目は依頼出来ないでしょ。
 他国に移転してあげたからね。

 今頃、コネもない国で馬鹿にしていた冒険者にでもなっているかしら?
 変にプライドの高い人だから、F級から始めるなんて恥ずかしいと思っていそう。

 無謀むぼうにも、スキップ制度でC級冒険者になろうとしてなければいいけど……。 
 ミリオネの町で旭が受けたスキップ制度は、森に出現するボアやベアの討伐の様子をギルドマスターに見せる事だった。

 ここで重要なのは、ギルドマスターは立ち会うだけで何もしないという事だ。
 元貴族のお坊ちゃんに、魔物を討伐した経験等ないだろう。

 ボアやベアは大型の魔物だけど、意外と動きが素早い。
 ボアの突進は受けると大怪我をするし、ベアの爪は狂暴きょうぼうだ。
 何も知らずに狩ろうとしたら命はないだろう。

 オリーさんは、命を大切にするタイプには見えなかったから案外もう亡くなっていたりしてね。

 私はハニーに教えてもらった魔力草をのんびりと採取する。
 シルバーは周囲の警戒をして、時々近付いてくるフォレストウサギをアイスボールで倒していた。

 指示をしなくても、私の意図を読み取って行動してくれるので楽ちんだ。

 あっ、ウサギの毛皮をマントの端に可愛く付けるのと、フードの仕様を教える事をすっかり忘れていたわ。
 それよりリッチのマントを卸す事に注意が向いていた。

 土曜日はサヨさんとスーパー銭湯に一緒に行く予定なので、華蘭からんに迎えに行く時に旦那さんにお願いしておかないと。

 日曜日は、子供達とさつまいも掘りの体験だ。
 それとガーゴイルの設置もしてあげなくちゃ!

 3時間後。
 シルバーに乗って安全地帯に到着すると、ダンクさんとアマンダさんのパーティーがそろっていた。

 挨拶を交わしていると、3人組の冒険者の話になる。

 ダンジョンから帰還した後、うちの店で『肉うどん』を食べようとして母親達に断られていたそうだ。
 確かに、オーナーの胸を触ろうとする客は店には入れないだろうな。
 その後に露店で串焼きを購入しようとしたけど、それも断られていたみたいだ。

 まぁ、私が噂を広げる様に仕向けたから町の人には白い目で見られた事だろう。
 結局、何も購入出来ず迷宮都市を去っていったらしい。

 大変、不名誉な噂とともに……。

 きっとしばらくは、迷宮都市での仕事は出来ないと思う。
 裏の仕事は顔を覚えられると困るからね。
 
 教えてくれた事にお礼を言って、少し大袈裟おおげさに3人が居なくなった事を嬉しがっているフリ・・をしておいた。
 私は彼らの被害者になっている立場だから、安心した様子を見せておかないと。

 その後マジックテントに入り、地下13階でフォレストに乗りながらピオーネを収穫している兄を回収してホームの自宅に戻ってくる。

 今日のお昼は旭からリクエストがあった、クラムチャウダーを中に入れたカンパーニュ。
 これは丸い形のフランスパンをくり抜き中にクラムチャウダーを入れ、上からとろけるチーズを掛けてオーブンで焼いてある。

 1個が大きいので、かなりボリュームがある昼食だ。
 それに野菜サラダと兄達には肉類が足りないので、フライドチキンを2本追加。

 旭がアイテムBOXから、1ℓ入りのコーラを取り出して兄のグラスに注いでいた。

 何だろう?
 2人の炭酸を飲みたくなる料理の基準が分からない。

 パン系?
 サンドイッチの時はコーヒーなのに不思議だわ。
 
 昔から旭は私の作るクラムチャウダーが大好きで、冬になるとよく作ってほしいとお願いしてきた。
 別に手間のかかる料理じゃないから、作ってあげると鍋ごと持って帰るんだよね~。

 今も熱々のクラムチャウダーを、にこにこしながら美味しそうに食べている。
 兄は隣で、そんな旭の様子を見ながら微笑んでいた。

 いや、いいんだけどさ~。

 なんかこう目の前で、恋人の雰囲気ふんいきを出されるとちょっと食べづらいんですけど……。

 私はそんな2人を、少しだけうらやましく思う。
 否定する癖に甘々な兄は、自覚が足りないんじゃないかしら?

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