自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

如月 雪名

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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第366話 オリー・リザルト 3 【闇ギルド】への暗殺依頼

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 突然、冒険者ギルドを解雇された俺は憤懣ふんまんやるかたない思いで定宿に向かう。
 いくらトップの冒険者だとしても、俺が下手に出る必要なんてないだろう!
 
 くそっ!
 たかが挨拶をしなかったくらいで、解雇されるとは思いもしなかった。

 公爵の叔父の顔を潰す気なのか?
 ギルドマスターの判断は正気とは思えない。

 迷宮都市はリザルト公爵領にあるっていうのに、しがらみを無視しやがって。
 俺を解雇した事で、迷宮都市の運営がやりづらくなるんだぞ。

 まぁ、どうせ自分から辞める心算つもりだったんだ。
 もう冒険者を相手に仕事をしなくても済むなら丁度良かった。
 俺にはもっと相応ふさわしい仕事があるはずだからな。

 ただ、このまま何もしないで引き下がる訳にはいかない。
 あの少女の所為せいで冒険者ギルドを解雇されたんだ。

 嫌な思いをさせられたお礼をしてやらないと!

 宿の部屋に戻り、金貨を数枚持ち出して再び宿を出る。
 まずは相手の情報を把握して、一番良い復讐の方法を考える必要がある。

 俺は情報屋が居る場所に行き、金貨を見せて今日会った少女の情報が欲しいと聞いた。
 すると情報屋のお婆があきれたように俺の事を見る。

「あんたは本当に迷宮都市の人間かい? あの有名な少女の事を聞きにくるなんて、悪い事は言わないから調べるのはおよし。少なくともこれから迷宮都市にまだ住む心算つもりならね」         

 有名だって?

 俺は冒険者には、全く興味がなかったので少女の事を何も知らなかった。
 それでも情報が欲しい俺は、お婆に金貨1枚(100万円)を渡して話を聞き出す。
  
 結果、分かった事だが……。
 まず、あの少女がリーダーでパーティーメンバーは2人だけだった。

 はあっ!?
 冒険者は普通6人組で行動するんじゃないのか?

 そしてメンバーの2人は、かなり優秀な治癒術師らしい。
 ダンジョンの安全地帯で、3時間毎の休憩時に怪我をした冒険者を治療しているみたいだ。

 どんだけMPがあるんだ?

 ダンジョン内では、常にMP残量を気にする必要があるのに……。
 リーダーの少女は、何で治療を許してるのか理解出来ない。

 そして3人は1年半くらい前に迷宮都市に来たばかりらしい。
 お人好しの少女は、路上生活をしている子供達に家を与えて住まわせていた。

 母子家庭の母親には住み込みで働けるように店を購入。
 あの『肉うどん店』は、少女の経営している店だった!

 身体に欠損がある高齢の冒険者には、同様に『製麺店』での職を与えていた。 
 
 なんとまぁ、世間知らずでお優しい事で!
 
 そして少女には『クランクラッシャー』との渾名あだながついている。
 なんだその物騒ぶっそうな名前は?
 
 聞くところによると、迷宮都市でトップクランだった『光輪こうりんやいば』を崩壊させたとか……。

 意味が分からない。
 少女には不用意に接触しない方がよいと言われた。

 だが俺は少女の所為せいで、冒険者ギルドを解雇された事に腹が立っていたので更に情報を依頼した。
 お婆は散々しぶっていたが、金貨3枚(300万円)を渡すとダンジョン内での行動を調べる事を請け負ってくれる。

 最後に、「そんなに生き急いでどうするんだね」と不穏ふおんな事を言われた。
 ギルドマスターといい、何故なぜ俺の未来を否定するんだ?

 今思えば、この時点で【闇ギルド】に暗殺の依頼をする事を止めておけばよかったのだ。

 こんな最期が待っていると知っていれば……。

 いくら後悔しても遅いが、この時の俺は復讐心で一杯になって目がくらんでいたんだろう。     

 3日後。
 情報屋のお婆から宿に手紙が届いた。

 少女はダンジョン内で午前中、いつもパーティーメンバーと別行動を取っており単独で居るらしい。
 単独行動をしているなんて、思った以上に冒険者として優秀なのか?

 そしてトレントの森付近で果物の採取をしているとあった。
 一体、ダンジョンで何をしているんだこの少女は。
 
 でもまぁ単独行動をしてくれているのなら、処理はしやすいだろう。
 
 俺はマジックバッグから通信の魔道具を取り出す。
 これは王都にいた頃、【闇ギルド】を利用するために購入した物だ。

 そして羊皮紙に、今回依頼する内容を書き始めた。
 
 俺の事を馬鹿にした少女の暗殺依頼をするのだ。
 相手が冒険者なので、不審に思われないようダンジョン内で処理をしてもらおう。
 
 地下14階を攻略しているらしいから、キングビーの集団に襲われた事にすれば問題ない。
 ついでに実行した人間も消えてくれれば秘密を知る人間が減るだろう。
 
 禁制品の魔物寄せを使用して、トレインしたキングビーをなすり付けて処理してほしいと書いておいた。

 キングビーの毒針で刺されたら、エリクサーでしか治療出来ない。
 エリクサーは貴族しか買えないから、少女も【闇ギルド】の連中も持っていないだろう。

 集団で行動するキングビーに魔物寄せを使用すれば、16匹に襲われる事になる。
 自分の立てた完璧な計画を読んで、俺はほくそ笑む。

 これで少女は死ぬ事になるだろう。
 俺を馬鹿にした事を、あの世でくやむんだな。

 通信の魔道具に、依頼内容を書いた羊皮紙を読み取らせ【闇ギルド】の番号を押す。
 直ぐに承諾しょうだくの返信が届いた。

 そこに書かれた依頼料は金貨50枚(5千万円)。
 急ぎの暗殺依頼なので提示された料金は妥当だとうなものだろう。

 その後、何度か遣り取りし来週実行する事に決まった。
 
 本当なら料金は半額を先払いする必要があるが、以前王都で俺をギャンブルでめた男の始末を依頼した実績があったので、今回は冒険者ギルドの早馬で金を送ればよいらしい。

 王都の屋敷を売却した金は老後に残しておきたかったが、少女が消える事を思えば痛くない出費だった。

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