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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第362話 【闇ギルド】からきた冒険者達 3

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 翌日、火曜日。

 俺は今回の計画が失敗した事で仲間を3人補充する必要や、完全に赤字になった今回の経費を考えダンジョンで割りの良い魔物を狩って帰還する事にした。

 地下14階の常設依頼の魔物の中に、迷宮タイガーが金貨10枚(1千万円)とある。
 王都のダンンジョン地下14階で、このランクの換金額は見た事がない。

 通常金貨10枚の魔物と言えば、地下20階層に出現する事がほとんどだ。
 幸いにも水・食料等やポーション類は、1週間分マジックバッグに入っている。

 10匹も狩れば金貨100枚(1億円)になるので、今回の損失はなかった事になるだろう。

 仲間にしばらく地下14階を拠点にして迷宮タイガーを狩る事を伝えると、朝食を簡単に済ませ安全地帯から移動する。

 迷宮タイガーを狩る1週間程度の事だから問題ないと判断し、効率を考えて地下14階に移る事にしたのだ。

 そもそも計画は失敗したのだから、サラという少女を暗殺しようとした事実は何もない。
 実際キングビーは俺達が交戦しただけで少女は居なかったため、トレインした事を誰も知らないだろう。

 依頼主からダンジョンの地図を貰えた事だけは良かったな。
 このダンジョンの地図は結構高い。
 
 地下1階から地下14階まで、全て自腹で購入すれば金貨9枚と銀貨40枚必要になる。
 この分だけでも経費が浮いた。

 地下14階に到着後、トレントの森の中に出現すると書いてあった迷宮タイガーを狩りに行く。

 このトレントは王都のダンジョンでも出現する魔物だったので、俺達3人は風魔法を直接受けないように盾を装備し森の中を進んだ。

 しかし、この森が全てトレントなのか?
 これじゃあ迷宮タイガーを見付けるまで、ずっと交戦しなければならないじゃないか!

 トレントは近付くと襲ってくるので、全てがトレントの森なら迷宮タイガーを狩るのは相当難易度が高い事になる。

 換金額の高さは、冒険者が狩ってこないからか……。
 確かに地下14階を拠点にしている冒険者では手に余る場所だ。

 俺達は王都のダンジョンで地下20階層を攻略した経験があるが、3人では少し難しいかもしれない。
 この森は直径1Kmあるらしいので、迷宮タイガーが居る場所に依っては交戦回数がとんでもない事になりそうだ。

 2時間程トレントの森を探索したが、迷宮タイガーは見付ける事が出来なかった。
 連続しての交戦で少々疲れが出てきたので、一度安全地帯に帰る事にしよう。

 もう少しで安全地帯という所で、ターゲットだった少女が従魔に乗って俺達を追い越していった。
 思わず今回の暗殺依頼が失敗した原因を思って、腹立ちまぎれに舌打ちをする。

 昨日、少女がトレントの森付近に居てくれさえすれば計画は成功しただろう。
 計画が漏れているはずがないのに、どうして居なかったんだ?

 しかし、あの従魔は一体……。
 
 王都にもテイムされた従魔を連れている冒険者はそこそこ居たが、初めて見る魔物だった。
 全身が金色のウルフなんて、迷宮都市のダンジョンに出現しただろうか?

 安全地帯に到着すると、俺達はなるべく冒険者が近くにいない場所を探してマジックテントを設置した。
 今回も外に出ることはせず、テント内で食事を取る事にする。

 ダンジョン内で食べる事が出来るのはパンとスープとステーキくらいだ。
 火を使わない魔道調理器があれば、テント内で作れば良い。

 料理担当だった者が抜けたのでスープを作る事が出来ず、メニューはパンと紅茶にステーキのみ。
 肉は焦げて中には火が入っていない状態だった。

 ちょっとこれはひどい……。

 早く迷宮タイガーを狩ってダンジョンから帰還しないと、食事をする度に心が折れそうだ。
 その後も途中で休憩しながら6時間程、場所を変えてトレントの森を捜索したが迷宮タイガーは見付からなかった。

 そして折角せっかく狩ったトレントも、手持ちのマジックバッグには全て入りきらず捨て置く事になってしまう。
 
 更に2日が経過。
 俺達は何度トレントの森に入っても、迷宮タイガーを見付ける事は出来なかった。
 
 その日の夜――。
 トイレに行こうとマジックテントの外に出ると、少女のパーティーメンバーである若い男2人が待ち構えていた!

 どうして!?
 計画は失敗して、少女を暗殺しようとした事はバレていないはずなのに……。

「おい、お前。うちの妹に手を出そうとしたらしいな。何故なぜそんな事をしようとしたのか正直に答えろ!」

 背の高い方が、年齢に似合わぬ物言いで詰問きつもんしてきた。
 かなり怒気をはらんだ言葉に、後ろめたい事がある俺は一瞬ひるむ。

 その瞬間、背の低い方の若者に後ろを取られ首にナイフを突きつけられた。
 しかもわずかに刃が食い込み皮膚が裂けたので痛みを感じる。

 これは、本気で殺そうとしてきているな……。

 暗殺を生業なりわいにしている俺は、自分に向けられた殺気に敏感に反応した。
 本来依頼主を話す事はタブーだが、今回に限っては最初から自分達もキングビーで処分しようとしていた節があったので、口を閉ざす必要はないだろう。

「依頼主は冒険者ギルドのオリーだ。俺は金を貰って仕事をしただけだ」

「そんな事を依頼する人間が居るのか? 嘘じゃないだろうな?」

 再び首に突き付けられた刃が押し付けられた。

「あぁ、間違いない。確認してもらっても大丈夫だ」

「冒険者ギルドのオリーだな? 今回の件は未遂だから、一度だけ見逃してやる。いいか、2度目はないと思え。そしてそんなくだらない依頼を受けるな」

「あぁ、もう彼からの依頼は受けない」

 俺がそう言うと2人は憮然ぶぜんとしたまま、その場を去っていった。
 かなり皮膚が切れている様なので、急いでエクスポーションを首に掛け治療する。

 こちらは暗殺しようとしたのだから、少女のパーティーメンバーが怒るのも当然だろう。
 むしろバレたのにも拘わらず、これだけで済んだ事が不思議だった。

 これはもうここには居られないな。
 明日、ダンジョンから帰還して迷宮都市を出よう。

 本当は依頼主から慰謝料をふんだくる心算つもりだったが、名前を伝えたので早晩消される事になるかも知れない。

 下手に接触する事は、しない方が安全だろう。 
 とばっちりを受けてはかなわない。

 今回の依頼は本当に地雷案件だった。
 王都に帰ったら、【闇ギルド】に報告させてもらおう。

 1匹も迷宮タイガーを狩る事なく、俺達は地上に帰還した。
 ダンジョン内のまずい食事に辟易へきえきしていたので、迷宮都市名物の『肉うどん店』に入ろうとした所、店員に入店を拒否される。

 そしてやけに視線が痛い。
 周囲を見渡すと、店内にいる客全員から白い目で見られている気がする。

 その後、串焼きを売っている店主やパンを売っている店主にも購入する事を拒否された。

 もしかして、俺達の仕事がバレたのか?
 それにしては反応が違うような……。

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