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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第317話 迷宮都市 地下14階 再び狙われた沙良 2

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「旭~、そろそろ安全地帯に戻ろ」

「俺の事、迎えに来てくれたの? 何かあった?」

 うっ、旭の癖にするどいじゃん。
 まぁいつも安全地帯のテントで集合だからね。

「うん、何かお腹が痛くて早く自宅に帰りたいの」

「大丈夫!? 賢也を迎えに行って直ぐに帰ろう!」
 
 ちょろいな……。

「ごめんね、もしかしたら午後から休むかも」

「そんな事、気にしなくていいよ!」

「ありがとう」

 地下12階で大きなみかんを収穫している兄の下に行き自宅に戻る。
 アマンダさんとダンクさんが心配しないよう、後で旭とシルバーを地下14階の安全地帯に送り届け説明してもらわないとね。

 兄にお腹の具合が悪いので午後から家で休むと言うと、直ぐに整腸剤を救急箱から取り出して持ってきてくれた。

 心配性の2人は、今日もダンジョン攻略を中止してリビングで待機するらしい。
 何かあった時、直ぐ対応出来るようにだ。

 こういう事は医者らしい判断なのよね。
 患者が急変する可能性を常に視野に入れて動く事が身に付いているんだろうな。
 
 お弁当を食べて薬を飲んだら旭とシルバーを安全地帯に送る。
 旭が2人に事情説明をして、私はテントの中で休んでいる事にしてもらった。

 そのまま旭も看病のため、テントの中で過ごしている事にして自宅に連れ帰る。

 シルバーは別のマジックテント内で少し待機だ。
 食事とトイレの心配をしなくて良い従魔は助かる。

 これでもし治療をして貰う心算つもりで冒険者が来ても、マジックテント内に居るので誰も入れない。

 壊死えしが始まると大変なので、あきらめて地上に帰還するだろう。
 
 ええ、絶対治療なんてしませんよ!

 先週体調を崩した事もあり、兄はとても心配してくれた。
 が、今回は本当に仮病なのでバレないように直ぐに寝室に引きこもる。

 兄は紳士なので妹の部屋に勝手に入る事は滅多にない。
 前回は朝食時に起きてこない私を心配して見に来たら、熱があったので看病してくれただけだ。

 お腹が痛いだけの症状なら様子見に来る事はないだろう。
 私はホームで安全地帯のマジックテント内に移転し、先程の冒険者の様子を調べる事にした。

 6人中3人がキングビーに刺されたみたいで、安全地帯に戻ってきていた。
 私達のテント前にいるけど残念ながらいくら待っても、今日はテントから出る事はないよ。
 
 ついでに出現していた迷宮タイガー2匹を倒して収納しておいた。

 アマンダさんとダンクさんには事情説明を旭がしているので、地下14階を拠点にしている迷宮都市の冒険者には直ぐに周知をしてくれただろう。

 もし他領から来ている冒険者なら、皆知らぬ存ぜぬを通すはずだ。
 冒険者は自己責任、何かあればパーティーリーダーの采配さいはいに問題があっただけの事。

 クラン内の人間じゃなければ、態々わざわざ教える必要も無い。

 そもそも私達が安全地帯で治療行為をするのは善意からだ。
 パーティー内に治癒術師がいるからと言って、義務が発生する訳じゃないので当てにして貰っては困る。

 それにしてもオリーさんは本当にたたるなぁ。

 兄があの手のタイプは粘着質ねんちゃくしつだから気を付けろと言っていたけど、まさか依頼を2パーティーに出しているとは思わなかったよ。

 そんなに冒険者ギルドを首になった事が腹立だしいなら、ちゃんと職務を全うすればよかったのに。
 秘書という役割は、あらゆる事を想定しなければ出来ない仕事なのよ?

 上司のスケジュール管理をするだけじゃなく、冒険者とも良好な関係を保つ必要性がある。
 彼はそれをおこたったに過ぎない。

 迷宮都市でトップの稼ぎを叩き出す私達のパーティーを、ないがしろにするような態度を見せる事は絶対にしてはいけなかった。
 
 冒険者ギルドマスターのオリビアさんから切られても文句は言えないだろう。

 他国に放り出しただけじゃ処置が生ぬるかったかも知れない。
 部屋に置いてある荷物も渡しちゃったし……。

 死ぬ気で迷宮都市に戻ってきたりしないよね?
 もし戻ってきたら、今度はもっと遠い国に荷物も無しで放り出すしかないか。

 しばらく6人組の冒険者は安全地帯で待っていたけど、私達がテントから出てこないのであせりだした。

 そしてキングビーに刺された3人と仲間割れを始める。
 まぁ刺された本人は呑気のんきに待っていられないんだろう。

 声は聞こえないけど地上に帰還したそうな様子だ。
 派手にめた後、怪我人の3人は残りの3人を置いて安全地帯を出ていってしまった。

 体に毒が回っている状態で、地下14階から地上まで3人で帰還出来るのかしらね?
 私はそこまで見てシルバーと自宅に戻ってくる。

 あの3人は最悪ダンジョン内で命を落とすかも知れないけど、自業自得じごうじとくだから何とも思わない。

 人の命を奪おうとするなら、自分も同じ覚悟を持っている事だろう。
 問題は残りの3人だ。
 
 3人ではダンジョン攻略は出来ないから一旦いったん地上に帰還して、事の顛末てんまつを話しにオリーさんの定宿じょうやどに行くと思う。
 
 でも本人は既に宿には居ない状態だ。
 依頼料だけで3人の負傷を出し、今後の冒険者活動はいつ始められるか不明。

 かなり痛い代償だいしょうを払った事になる。

 B級冒険者でパーティーを組んでいない人は迷宮都市にはほとんど居ないので、3人の追加メンバーを集めるのは至難しなんわざだ。

 しかも今回の不祥事ふしょうじは、直ぐに冒険者内に広がるから誰もパーティーを組んではくれないだろう。

 あとはさっさと迷宮都市から出ていってくれれば良い。
 原因が私を狙った事だと逆恨みさえしなければ……。

 夕方部屋から出てリビングで待機している兄達に、薬が効いて腹痛が治ったよと笑顔で伝えると2人はほっとした表情を見せる。

 まだ本調子じゃないからと言って私は雑炊を作って食べた。

 一応体調不良だと言って休んだので、申し訳ないけど夕食は出来合いの物で我慢してもらおう。

 兄達にはアイテムBOX内にあるチキン南蛮なんばん弁当を出す。
 味噌汁はインスタントを飲んでもらった。

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