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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略
第312話 迷宮都市 貴族との接触 2
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ブチッと何かが切れる音がしたと思ったら、何と兄が若者の襟首を掴んでそのまま体を持ち上げているではないかっ!?
Lvが上がり筋力値も高いため、成人男性を平気で片手で持ち上げる事が出来るのよね~。
見せると驚かれるから内緒にしてあるんだけど……。
そして低く冷たい声で淡々と言葉を吐き出す。
「おい若造、今何て言った? うちの妹の従魔を買い取るとか言わなかったか?」
貴族の若者はいきなり体が宙に浮いた状態で兄に顔を近付けられ、顔を真っ赤にして怒りを露わにしようとした。
その瞬間、襟首を掴んでいる方の手がパッと離され地面に落ちる。
みっともなく尻もちをついた事で若者の怒りは更に増す。
当然、主人に害を与えられた護衛達は好戦的な態度に変わる。
先程は余りに兄の行動が予想外過ぎて守る事も出来なかったんだろう。
「おいっ、貴様! 自分が何をしたのか分かってるんだろうな! 平民の癖に貴族の俺様に手を掛けるとは、命は無いと思えよ! そこの娘も丁度良いから俺が可愛がってやろう。光栄に思うんだな!」
はっ?
何が光栄に思えだとっ!?
ノータリンのボンボンが笑わせてくれる。
私が貴族に向かって歩き始めようとしたら、珍しく旭が私の前に出た。
「貴族だから何? それは僕ちゃんの両親がでしょ? 後を継いでない時点で君も平民と変わらないよ。それとも、こんなバカな息子を後継ぎにする親がいるの?」
わぁ~、何だろう。
旭が凄く煽ってるし。
兄はお気に入りのフォレストを寄越せと言われてムカついたんだろうと思うけど、旭は一体何が地雷だったんだろうか……。
私は2人に先を越される形になり、怒りの衝動がすっかり冷めてしまった。
「なっ、うちは伯爵家だぞ! そんな無礼な態度が許されると思っているのか!?」
「だからそれが何? 君の爵位じゃないでしょ。頭悪すぎ~」
旭が更に煽っている。
普段のんびりと穏やかな性格をしているから、こういった好戦的な態度を取る事は滅多に無いんだけどなぁ。
そんなに貴族のボンボンの言う事が気に障ったのかしら?
シルバーを可愛がっているから、腹が立ったのかも知れない。
「あぁ後ろの護衛共、主人の命が惜しければ1歩たりとも動くなよ。動けば保障はしてやらない。死体を持ち帰るのが嫌なら大人しくしておけ」
「貴様ぁ~、さっきから聞いていれば何て言い草だ! 少し痛い目を見ないと分からないのか!?」
護衛の1人が帯剣していた剣を抜き兄に向って走ってくる。
このままだと護衛が再起不能になりそうだったので、仕方なく私がドレインで昏倒させておいた。
残り2名も面倒臭い事になりそうだったから一緒に寝てもらう。
貴族の若者は自分の護衛3人が何もしてない内に次々と崩れ落ちる姿を見て、先程の勢いがなくなり顔面を蒼白にさせていた。
「お前達は……魔法使いなのか? すっすまない、知らなかったんだ。テイムした従魔を寄越せなんて無理を言ってしまった。今回は俺が全面的に謝るからどうか許してほしい」
いきなり態度を豹変させた若者は、90度のお辞儀をして私達に詫びる。
何これ?
魔法使いだと何かあるの?
兄も旭も納得がいかない顔をしていた。
そして当然かなり激怒している兄の気持ちが収まる筈もなく、貴族の若者は兄に正座をさせられ本日の態度をこんこんと説教される羽目になった。
兄がお説教モードに入ると最低1時間は終わらないので、私は唖然としている母親達と子供達にもう大丈夫だと言い食事の続きをしてもらう。
子供達が食べ終わる頃になっても兄の説教は終わらない。
多分、少し言い返してしまったんだろう。
貴族の若造は普段お説教される事もないだろうからね~。
でもそれ、うちの兄には悪手だから。
反論したが最後、理詰めで納得するまで詰められるわよ。
怒られる事に慣れていないんだろうなぁ。
そして人生で初めての正座じゃないかしら?
きっと説教が終わる頃には、足が痺れて動けなくなっている筈だ。
私と旭は散々体験済みなので、兄からお説教される時は一切反論しませんよ!
例え心の中で思っていてもね。
今日は驚かせてしまったから、兄がいつも配るみかんを1個と梨(銀貨8枚)を各家に2個渡した。
初めて食べる果物だから喜んでくれるだろう。
母親達にも1つずつ渡しておいた。
教会から家に帰る子供達に手を振って見送ると、貴族の若者の様子を見る。
長時間の正座と兄の恐ろしい説教の所為か涙目だ。
上から見下ろされ身分なんか知った事ではないと正論を吐く兄の姿に、若者は恐怖を感じているのかずっと視線を逸らしている。
まぁ、親の権力を笠に着てやりたい放題のボンボンにはいい薬になった事だろう。
兄は普段青年のフリをするのが嫌で滅多に人前では話さないんだけど、今日は解禁らしい。
私が昏倒させた護衛3人は地面に横たわったままだ。
確かドレインで昏倒すると、1晩目覚めないんだっけ?
この人達、誰が運んで帰るんだろう。
貴族のボンボンに鎧を着ている成人男性は担げないから、家の人間を呼び出すしか方法はなさそうだ。
旭と2人で、いつ終わるか分からない説教を待っている時間はない。
私は1人でサヨさんを迎えに行く事にした。
1人残された旭がそんな~って顔をしたけど、私今日も忙しいのよね。
恋人なんだから兄が終わるまで待っていてあげて。
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お気に入り登録をして下さった方、エールを送って下さった方とても感謝しています。
読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。
応援して下さる皆様がいて大変励みになっています。
これからもよろしくお願い致します。
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Lvが上がり筋力値も高いため、成人男性を平気で片手で持ち上げる事が出来るのよね~。
見せると驚かれるから内緒にしてあるんだけど……。
そして低く冷たい声で淡々と言葉を吐き出す。
「おい若造、今何て言った? うちの妹の従魔を買い取るとか言わなかったか?」
貴族の若者はいきなり体が宙に浮いた状態で兄に顔を近付けられ、顔を真っ赤にして怒りを露わにしようとした。
その瞬間、襟首を掴んでいる方の手がパッと離され地面に落ちる。
みっともなく尻もちをついた事で若者の怒りは更に増す。
当然、主人に害を与えられた護衛達は好戦的な態度に変わる。
先程は余りに兄の行動が予想外過ぎて守る事も出来なかったんだろう。
「おいっ、貴様! 自分が何をしたのか分かってるんだろうな! 平民の癖に貴族の俺様に手を掛けるとは、命は無いと思えよ! そこの娘も丁度良いから俺が可愛がってやろう。光栄に思うんだな!」
はっ?
何が光栄に思えだとっ!?
ノータリンのボンボンが笑わせてくれる。
私が貴族に向かって歩き始めようとしたら、珍しく旭が私の前に出た。
「貴族だから何? それは僕ちゃんの両親がでしょ? 後を継いでない時点で君も平民と変わらないよ。それとも、こんなバカな息子を後継ぎにする親がいるの?」
わぁ~、何だろう。
旭が凄く煽ってるし。
兄はお気に入りのフォレストを寄越せと言われてムカついたんだろうと思うけど、旭は一体何が地雷だったんだろうか……。
私は2人に先を越される形になり、怒りの衝動がすっかり冷めてしまった。
「なっ、うちは伯爵家だぞ! そんな無礼な態度が許されると思っているのか!?」
「だからそれが何? 君の爵位じゃないでしょ。頭悪すぎ~」
旭が更に煽っている。
普段のんびりと穏やかな性格をしているから、こういった好戦的な態度を取る事は滅多に無いんだけどなぁ。
そんなに貴族のボンボンの言う事が気に障ったのかしら?
シルバーを可愛がっているから、腹が立ったのかも知れない。
「あぁ後ろの護衛共、主人の命が惜しければ1歩たりとも動くなよ。動けば保障はしてやらない。死体を持ち帰るのが嫌なら大人しくしておけ」
「貴様ぁ~、さっきから聞いていれば何て言い草だ! 少し痛い目を見ないと分からないのか!?」
護衛の1人が帯剣していた剣を抜き兄に向って走ってくる。
このままだと護衛が再起不能になりそうだったので、仕方なく私がドレインで昏倒させておいた。
残り2名も面倒臭い事になりそうだったから一緒に寝てもらう。
貴族の若者は自分の護衛3人が何もしてない内に次々と崩れ落ちる姿を見て、先程の勢いがなくなり顔面を蒼白にさせていた。
「お前達は……魔法使いなのか? すっすまない、知らなかったんだ。テイムした従魔を寄越せなんて無理を言ってしまった。今回は俺が全面的に謝るからどうか許してほしい」
いきなり態度を豹変させた若者は、90度のお辞儀をして私達に詫びる。
何これ?
魔法使いだと何かあるの?
兄も旭も納得がいかない顔をしていた。
そして当然かなり激怒している兄の気持ちが収まる筈もなく、貴族の若者は兄に正座をさせられ本日の態度をこんこんと説教される羽目になった。
兄がお説教モードに入ると最低1時間は終わらないので、私は唖然としている母親達と子供達にもう大丈夫だと言い食事の続きをしてもらう。
子供達が食べ終わる頃になっても兄の説教は終わらない。
多分、少し言い返してしまったんだろう。
貴族の若造は普段お説教される事もないだろうからね~。
でもそれ、うちの兄には悪手だから。
反論したが最後、理詰めで納得するまで詰められるわよ。
怒られる事に慣れていないんだろうなぁ。
そして人生で初めての正座じゃないかしら?
きっと説教が終わる頃には、足が痺れて動けなくなっている筈だ。
私と旭は散々体験済みなので、兄からお説教される時は一切反論しませんよ!
例え心の中で思っていてもね。
今日は驚かせてしまったから、兄がいつも配るみかんを1個と梨(銀貨8枚)を各家に2個渡した。
初めて食べる果物だから喜んでくれるだろう。
母親達にも1つずつ渡しておいた。
教会から家に帰る子供達に手を振って見送ると、貴族の若者の様子を見る。
長時間の正座と兄の恐ろしい説教の所為か涙目だ。
上から見下ろされ身分なんか知った事ではないと正論を吐く兄の姿に、若者は恐怖を感じているのかずっと視線を逸らしている。
まぁ、親の権力を笠に着てやりたい放題のボンボンにはいい薬になった事だろう。
兄は普段青年のフリをするのが嫌で滅多に人前では話さないんだけど、今日は解禁らしい。
私が昏倒させた護衛3人は地面に横たわったままだ。
確かドレインで昏倒すると、1晩目覚めないんだっけ?
この人達、誰が運んで帰るんだろう。
貴族のボンボンに鎧を着ている成人男性は担げないから、家の人間を呼び出すしか方法はなさそうだ。
旭と2人で、いつ終わるか分からない説教を待っている時間はない。
私は1人でサヨさんを迎えに行く事にした。
1人残された旭がそんな~って顔をしたけど、私今日も忙しいのよね。
恋人なんだから兄が終わるまで待っていてあげて。
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