上 下
173 / 709
第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第309話 迷宮都市 編み物教室&『肉うどん店』の夕食会 1

しおりを挟む
 時間を確認すると12時を過ぎていたため『肉うどん店』に向かう。
 お店の中に入ると今日も店内は満席状態だ。

 母親達に挨拶をしてサヨさんの隣に座った。
 ダンジョン攻略を中止していた時に母親達のチョッキは編み終わったので、子供達のポンチョがあとどれくらい必要か尋ねる事にする。

「サヨさん、こんにちは。今日もありがとうございます。ポンチョの進行状況はどうですか?」

「サラさん、こんにちは。そうね、後は大サイズが10枚くらいかしら?」

「えっ? もう残り10枚で終了ですか?」

 ビックリし思わず聞き返してしまった。

「ええ、皆さん頑張って下さいましたのよ。今は、セーターを編んでる人が多いかしら?」

「わぁ~すごく編むのが早いですね! 本当に助かりました」

「全員、暇を持て余している人間ですから。良い暇潰しになりましたよ」

「そう言って頂けると嬉しいです。母親達も編み物が楽しそうなので、これからも時間があれば教えてあげて下さいね」

「分かりました。皆さんにそう伝えておくわ。サラさんは今日は何を編む予定なの?」

「私は兄と旭の分のセーターを編む心算つもりです。実はセーターを編んだ事がなくて、サヨさん教えてくれませんか?」
 
「いいわよ。じゃあ毛糸から選びましょうか」

 私はサヨさんからセーターの編み方を教わりながら最初に兄の分を編み出した。
 毛糸の色はグレーだ。

 余り複雑な模様は初心者には無理なので、シンプルな編み目の物を選択した。
 集中して編んでいると2階から子供達が降りてくる。

 おっと、3時の休憩タイムだ。
 編み物を中断して自宅で焼いたバタークッキーを皿に出す。
 母親達には紅茶を配ってもらった。

 この世界の素朴なクッキーとは違い、バターと砂糖がたっぷり入ったクッキーだ。
 貴族でも食べられないかも知れない。

 クッキーを一口かじった子供達が大興奮し大変な事になってる。
 子供達には先週購入した牛乳を温め、ハニービーの蜂蜜を入れたホットミルクを飲ませてあげた。

 迷宮都市に牛乳は売っていないから、初めて飲む飲み物だろう。
 5人全員がとろけるような顔をして両手でカップを持ち、大事そうに一口ずつ飲んでいる。

 いつかココアを飲ませてあげたいな。

 母親達にもサヨさんの知り合いの人達にも、クッキーは大好評のようでレシピを聞かれてしまった。
 砂糖とバターが必要なので、申し訳ないけど企業秘密とさせてもらったよ。

 クッキーは個包装にして人数分作っておいたのでお土産として渡す。
 ボランティア活動に参加してもらっている分、何かお礼をしたい。

 そう考えて、異世界にない甘味を用意する事にしたのだ。
 これなら老婦人達も子供達も喜ぶだろう。

 何せ、ドライフルーツが主な甘味の異世界だからね!
 今回はバタークッキーにしたけど、次回も美味しいデザートを用意しておこう。 

 その後、またセーターの続きを編んで午後5時に編み物教室は終了。
 今日は『肉うどん店』で夕食を食べる事にする。

 先週『製麺店』で食事会をしたので、母親達にも鰻の蒲焼を食べさせてあげたいのだ。
 スタミナ食だからね。

 庭で『バーベキュー台』を出して、鰻を焼き始める。
 母親達には食材を渡し切ってもらった。
 子供達が大好きなお肉もたっぷり用意してある。

 5歳児に鰻の蒲焼を食べさせても良いか分からなかったので、食べるのは母親達だけにする。
 鰻のタレにくぐらせて焼くと周囲に香ばしい匂いがただよい始めた。

「本日もお疲れ様でした。店の営業と編み物を頑張っている皆さんに、迷宮ウナギをご馳走ちそうします。子供達は、お肉を沢山食べてね。頂きます!」

「頂きます!」

 全員が食事の挨拶をすると、母親達がまず子供の分を取り皿に分けてあげている。
 焼き立てのお肉は火傷しやすいから、少し冷ましてあげているようだ。

 その後、本日のメイン料理である鰻の蒲焼を食べ出した。

「オーナー! 何ですかこれっ! 美味しすぎて止まらないんですけど!」

「迷宮ウナギって、こんなに美味しいんですか!? あ~この匂いもたまりません!」

 鰻の蒲焼の味に大絶賛してくれる。

「沢山焼いたから、遠慮しないで食べてね」

「はい。あ~幸せ~」

 そう言って、母親達は笑顔で迷宮ウナギをパクパク食べている。
 確認していなかったけど、女性にも何かしら効果はあるのかな?

 沢山食べさせちゃったけど、皆夜にもんもんとしないだろうか……。
 相手がいないから、もしそうなったら可哀想かわいそうな事になってしまうわ!
 
 私は食べても全然平気だったから気にしなかったけど、これが女性だからか若いからか異世界人と違うからなのか判断つかないんだよね~。

 まっ、大丈夫でしょう。
 アマンダさんとリリーさんが食べた後でも、クレームは入らなかったし。

 子供達も普段食べる事が出来ないミノタウロスのお肉を、焼肉のタレにつけてニコニコしながら食べていた。

 ちゃんと野菜も一緒に食べてて偉いね!
 人気の野菜は意外にもマジックキノコだった。
 他にもじゃが芋を焼いた物をよく食べている。

 味は椎茸に近いから子供達には苦手かと思っていたけど、ダンジョン産のマジックキノコはジューシーで美味しいから食べやすいみたい。

 バター醤油で食べるのも良いんだけど、それは次回のお楽しみにしておこう。
 
 お腹も一杯になった所で母親達に恋バナを振ってみるか。
 彼女達は私の娘も同然だ。

 折角せっかく店の従業員として知り合ったのだから幸せになってもらいたい。

 --------------------------------------
 お気に入り登録をして下さった方、エールを送って下さった方とても感謝しています。
 読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。
 応援して下さる皆様がいて大変励みになっています。
 これからもよろしくお願い致します。
 --------------------------------------
しおりを挟む
感想 2,333

あなたにおすすめの小説

家ごと異世界ライフ

ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!

異世界でお取り寄せ生活

マーチ・メイ
ファンタジー
異世界の魔力不足を補うため、年に数人が魔法を貰い渡り人として渡っていく、そんな世界である日、日本で普通に働いていた橋沼桜が選ばれた。 突然のことに驚く桜だったが、魔法を貰えると知りすぐさま快諾。 貰った魔法は、昔食べて美味しかったチョコレートをまた食べたいがためのお取り寄せ魔法。 意気揚々と異世界へ旅立ち、そして桜の異世界生活が始まる。 貰った魔法を満喫しつつ、異世界で知り合った人達と緩く、のんびりと異世界生活を楽しんでいたら、取り寄せ魔法でとんでもないことが起こり……!? そんな感じの話です。  のんびり緩い話が好きな人向け、恋愛要素は皆無です。 ※小説家になろう、カクヨムでも同時掲載しております。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

野草から始まる異世界スローライフ

深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。 私ーーエルバはスクスク育ち。 ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。 (このスキル使える)   エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。 エブリスタ様にて掲載中です。 表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。 プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。 物語は変わっておりません。 一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。 よろしくお願いします。

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!

七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」 その天使の言葉は善意からなのか? 異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか? そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。 ただし、その扱いが難しいものだった。 転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。 基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。 ○○○「これは私とのラブストーリーなの!」 主人公「いや、それは違うな」

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

私の家族はハイスペックです! 落ちこぼれ転生末姫ですが溺愛されつつ世界救っちゃいます!

りーさん
ファンタジー
 ある日、突然生まれ変わっていた。理由はわからないけど、私は末っ子のお姫さまになったらしい。 でも、このお姫さま、なんか放置気味!?と思っていたら、お兄さんやお姉さん、お父さんやお母さんのスペックが高すぎるのが原因みたい。 こうなったら、こうなったでがんばる!放置されてるんなら、なにしてもいいよね! のんびりマイペースをモットーに、私は好きに生きようと思ったんだけど、実は私は、重要な使命で転生していて、それを遂行するために神器までもらってしまいました!でも、私は私で楽しく暮らしたいと思います!

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う

たくみ
ファンタジー
 圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。  アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。  ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?                        それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。  自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。  このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。  それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。 ※小説家になろうさんで投稿始めました

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。