自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

如月 雪名

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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第305話 迷宮都市 地下14階 狙われた沙良 3

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 35km先の対象に魔法が使えるなんて……。 
 考えたら自分の能力が怖くなったので次の行動に移ろう。

 3時間毎に安全地帯に戻らないと、ダンクさんとアマンダさんのパーティーが心配すると思うので理由を言いに行くのだ。 
 
 マッピングで2パーティーがいる場所を探して移転し、それぞれに今日は体調が悪いので安全地帯に戻らずこのまま帰還する事を伝える。

 旭のもとに行きアノ日が重くて自宅に帰りたいと言うと、心配し直ぐに了解してもらえた。
 そのまま地下13階に移転。

 ハニーと別れて兄を探す。
 地下13階にはいないようだ。

 今日はもうこのまま撤収するので、ついでにピオーネとシャインマスカットも収納。

 地下12階に移転。
 兄が大きなみかんを収穫している所だった。
 多分、最初に桃を採ったはずなので、兄から離れた場所にある大きなみかんだけを収納。

 その後兄の所へ行き、今日は体調が悪いので家に戻りたいと伝えた。

 兄はダンジョン攻略最終日の金曜日になると、何故なぜ度々たびたびお腹を壊す事が多かった。
 リースナーのダンジョン攻略中は余りに頻繁ひんぱんだったので、とても心配したものだ。

 同じ食事内容なのに兄だけがお腹を壊す理由が分からず、その日は一応消化の良い食べ物を作っていたけど、兄は出されたメニューを見てがっかりしていた。

 食べ盛りの若者には物足りない内容だったのかも知れないけど、お腹を壊している時に消化の悪い食べ物は作れないでしょ。

 それに対し、私が今まで不調を訴えた事は一度もない。
 異世界にきてLvが上がった所為せいか風邪を引く事も、疲れて体調を崩す事もなかった。

 長い間続いた栄養失調の状態が、嘘みたいに健康的になったのだ。

 兄はダンジョン攻略中に初めて私が体調を崩した事を、それはもうひどく心配しダンジョンから出ずこのままホームの自宅に戻ろうと言ってくれた。

 嘘をいてごめんなさい。
 心配性の兄の優しさが、この時ばかりは胸に痛かった。

 ホームで自宅に戻ると、兄が今日は昼食も夕食も2人で外食するから暖かくしてベッドで寝ているようにと言い、隣の部屋に戻っていった。

 そばで看病してもらう必要はないので、外食をするなら2人とも今日は私の部屋にはこないだろう。

 1人でケリをつける事が出来るのは明日の朝までだ。
 タイムリミットは、今が午前11時なので翌朝7時。
 
 朝食の時間になったら兄達が私の部屋にきてしまう。
 内緒で動ける時間は21時間。

 オリーさん、貴方には因果応報いんがおうほうという言葉を送らせてもらうわ。
 私は命を狙われ黙っているような人間じゃないの。
 
 19歳の小娘なら、お金を払えばダンジョン内で始末出来ると思ったんでしょうけど。
 お生憎様あいにくさま、実は私55歳でそれなりに人生経験豊富な方だから。
 自分に害を及ぼす人間は排除はいじょさせて頂くわ。
 
 貴方がいると兄がまた手を汚す事になりそうだもの。
 目障めざわりだから迷宮都市から消えてちょうだいね。

 自分の手を汚さないタイプの人間は、今回の件が失敗に終わっても必ず次を送ってくる。
 そう何度も兄をだませるとは思えないので、ダンジョン攻略中に刺客を送られると迷惑なのだ。

 ならばどうすれば良いか……。
 本人が迷宮都市にいなければ、依頼を出す事も出来ないだろうと考える。

 距離が離れている程、受ける人間は少なくなるだろう。
 暗殺対象者が他国にいる場合は特に。

 いくらお金を積まれても、移動距離だけで相当ある。
 必然、依頼料は高額になり冒険者ギルドを首になった無職の人間には払えない金額になると思う。

 私は再びダンジョン地下12階にホームで移転し、マッピングでダンジョンを出た。

 本当は治療が出来ない冒険者へオリーさんからお金を払わせる心算つもりだったけど、1人で行動出来る機会はそうないので今日中にカタを付ける事にする。

 ダンジョンから出た後、マッピングを使用して半径35km内にオリーさんがいないか根気こんきよく探していく。
 
 10時間後――。
 宿屋の部屋にいるオリーさんを発見。
 マッピングで都市中から人探しをするのは、かなり大変な作業だった。

 もう2度とやりたくない……。

 まずはオリーさんを宿から35km離れた場所に移転させる。
 彼は突然部屋から外に出された事で、かなり動揺どうようしているみたいだった。

 私はその間にオリーさんが宿泊していた部屋の荷物を収納する。
 その後、次々と35kmずつ彼を移転させ、陸続きでカルドサリ王国と隣接している他国(レバンダリニア皇国)に送る事に成功。

 唖然あぜんとしている彼から少し離れた場所に一瞬移動して、部屋から収納した荷物を地面に置いて去る。
 この世界の人は他国に旅行に行く事はほとんどないと聞いているので、彼が再び迷宮都市に戻ってくる確率は皆無だろう。

 今回は宿にあった荷物も渡してあげたし、無人島に置き去りにした訳でもない。
 冒険者ギルドの職員が出来るくらいなら、どこかの店で働く事も可能だ。

 他国で言葉が通じるか調べてなかったけれど、そのくらいは苦労して覚えてほしい。
 人の命を狙った犯罪者に対して、私は随分ずいぶん甘い対応をした方だと思うよ。

 ここまでに、かなり時間が掛かってしまった。
 冒険者達から聞いた話を参考にしながら移転したんだけど、私はそもそも方向音痴おんちだ。

 まともな地図がなく、マッピングで上空から何度も確認しながら他国まで行ったんだよね~。
 まだ半径35kmしか移動出来ないからそれはもう大変だった。
 
 迷宮都市から約1,000kmくらいは移動した計算になる。
 多少、迷いながらだったので直線距離には誤差があるだろうけど……。
 
 異世界で1,000kmも突然移動させられたら、普通は混乱して直ぐには対応出来ないと思う。

 他国でコネも無いだろうしね。
 定宿じょうやどを見る限りでは、それほど裕福な感じもしなかった。
 稼いでいる冒険者の方が、はるかに高級な宿に泊まっている。 
 
 これで彼との縁も切れたと願おう。

 自宅に戻る頃には、慣れない魔法の使用に疲労困憊ひろうこんぱいで本当に体調が悪くなってしまった。

 時計を見ると午前4時。
 
 兄達が朝食を食べにくるまで3時間しかない。
 とにかく疲れたので寝よう。

 目が覚めない事も考え、心配して兄達が部屋に入ってきた時のためになんとかパジャマに着替えると、ベッドに入った瞬間意識を失った。

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