上 下
206 / 754
第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第296話 迷宮都市 優雅なランチ

しおりを挟む
 自宅に戻ってダイニングに行くと、テーブルの上に置いてあった2人分の朝食はなくなっており食器も片付けられていた。
 旭の書いたメモ書きが残されている。

『沙良ちゃん、朝食ありがとう。豚汁美味しかったです! 賢也とジムに行くので、昼食は用意しなくて大丈夫だよ。8:45 旭より』

 豚汁の鍋を見てみると、量が3分の1まで減っている。
 どうやら2人ともお代わりをしたらしい。

 味噌汁を作る時とは違い、豚汁はカレーのように大量に作った方が美味しいので10人分を作っておいたのだけど……。

 残りはアイテムBOXに収納しておこう。

 さて、私のお昼ご飯はどの店で食べようかしら?
 兄には内緒だけどLv35あるので、自宅から35km以内の飲食店にマッピングで行く事が可能だ。
 
 兄のマンション近くに、美味しいフレンチのお店があると聞いた事がある。
 あの周辺は高額所得者が多く住むから、お洒落しゃれなお店も多い。

 場所はどこだったかな~?
 確かお店の名前は……と考えながら、兄のマンション周辺をマッピングで拡大しながら見ていく。

 店の看板に視点を変えて見続けていると、目的のお店を発見する事が出来たので移転する。
 
 店内に入るとカウンター席とテーブル席に分かれていたので、誰もいないテーブル席に着いて電子メニューを開く。
 ランチコースがA(2,000円)・B(3,000円)・C(4,000円)と3種類あった。

 お肉と魚料理どちらか1つ選べるのがAコース。
 両方とも付いているのがBコース。
 Bコースに更にメインを1品追加出来るのがCコースだった。

 リーシャの体は量を多く食べられないので今回はAコースで、メインはたい香草こうそう焼きにした。
 他に前菜・スープ・サラダ・デザート・飲み物が付いてくる。

 当然のように電子メニューには「《お任せ》・《お好みで》・《タイミング》」が表示されていた。
 ここに旭はいないので《タイミング》をタップする。

 これでやっと本来の優雅な食事が出来るよ!

 テーブルに出現した前菜は色鮮やかで、どれを食べても新鮮で美味しい。
 スープは南瓜かぼちゃのポタージュで、これも味が濃厚で幾らでも入りそう。 

 メインのたい香草こうそう焼きは、身が厚くて充分な食べ応えがある。
 皮目はパリパリ身はふっくらジューシーで、掛けられた岩塩と非常に合う。
 
 最後に出て来たデザートは濃厚なフォンダンショコラで、ブラックコーヒーを飲みながら幸せな気分でランチを食べ終えた。

 これが本来の外食だよ!
 もし今回《お好みで》を選んだら、どのメニューを自分で作る事になったのか想像もしたくない。
 
 鯛の香草焼きは確実としても、南瓜のポタージュやデザートのフォンダンショコラを作れと言われたら泣いてたよ。

 ポタージュは作るのに時間がかかり過ぎるし、フォンダンショコラはそもそも作った事がない。
 デザート系は余り手を出してないから、作れる物が少ないんだよね。

 簡単に出来るプリンとかゼリー系、ドーナツ・クッキー・パウンドケーキくらいかしら?
 後はケーキ専門店の物を購入すれば良いのだ。
 
 ランチメニューで2,000円なら、このお店は正解だった。
 次回はメインを肉に変えて食べにこよう。

 私は優雅なランチに満足して異世界に移転した。
 魔道具屋に行って、マジックバッグ30㎥金貨410枚(使用者登録付き)を3個追加で購入する。

 12億3千万円もしたけど、アイテムBOX内にある大量のトレントを換金するのに必要だからね。
 毎週マジックバッグ4個分のトレントを換金すれば、いずれ元は取れるだろう。
 
 道具屋の店主が再び高額商品を追加で購入した事に感謝して、またマジック寝袋を3個おまけしてくれた。

 最近は兄と旭がマジックテント内で使用しているから、マジック寝袋をおまけしてもらって嬉しい。
 こういった物は消耗品のため、ある程度使用したらまた購入する事になるからね。

 まぁ旭の方は、どれだけシルバーと一緒に寝てもテイム魔法を習得出来そうもないので、ダンジョン攻略中の数年は1人寝が続きそうだ。

 ちなみにこれ以上入るマジックバッグは、迷宮都市には売ってないみたい。
 マジックバッグ50㎥やマジックバッグ100㎥は、摩天楼まてんろうの塔のダンジョンがある都市で購入出来るらしい。

 100階層もあるダンジョンなので、塔を攻略しているのはA級やS級の冒険者ばかりだ。

 魔道具屋にも高額商品が置いてあるんだろう。
 他にも私の知らない便利な魔道具があるかも知れないなぁ。
 お店をのぞいてみるだけでも楽しそう。

 やっぱり攻略に行きたい!
 A級冒険者になるまで10年は、ちょっと長すぎない?

 それだけA級になるための資格を難しくしているって事は、A級以上じゃないと入れないダンジョン攻略はベテラン勢じゃないと厳しいのかもね~。

 一体、どんな魔物が出てくるんだろう?
 そして海の階層はあるんだろうか?

 大きな蟹や海老の魔物がいたら嬉しいんだけどなぁ~。
 海老、大好きなんだよね!

 兄も蟹が大きければ、ちまちま食べる必要がないので喜ぶと思う。
 蟹味噌もたっぷり入っていると更にお得だ。

 まっ、現在B級冒険者の私達じゃ攻略するのは無理なんだけど……。
 食材を探しに内緒で夜間攻略しに行っちゃ駄目かしら?

 兄の大激怒する様子を思い浮かべて無理だとさとった。
 これがバレたら大目玉どころの騒ぎじゃない気がする。

 延々と続くお説教に、心が折れている自分を想像してゲンナリとしたのだった。

 --------------------------------------
 お気に入り登録をして下さった方、エールを送って下さった方とても感謝しています。
 読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。
 応援して下さる皆様がいて大変励みになっています。
 これからもよろしくお願い致します。
 --------------------------------------
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】身売りした妖精姫は氷血公爵に溺愛される

鈴木かなえ
恋愛
第17回恋愛小説大賞にエントリーしています。 レティシア・マークスは、『妖精姫』と呼ばれる社交界随一の美少女だが、実際は亡くなった前妻の子として家族からは虐げられていて、過去に起きたある出来事により男嫌いになってしまっていた。 社交界デビューしたレティシアは、家族から逃げるために条件にあう男を必死で探していた。 そんな時に目についたのが、女嫌いで有名な『氷血公爵』ことテオドール・エデルマン公爵だった。 レティシアは、自分自身と生まれた時から一緒にいるメイドと護衛を救うため、テオドールに決死の覚悟で取引をもちかける。 R18シーンがある場合、サブタイトルに※がつけてあります。 ムーンライトで公開してあるものを、少しずつ改稿しながら投稿していきます。

最強で美人なお飾り嫁(♂)は無自覚に無双する

竜鳴躍
BL
ミリオン=フィッシュ(旧姓:バード)はフィッシュ伯爵家のお飾り嫁で、オメガだけど冴えない男の子。と、いうことになっている。だが実家の義母さえ知らない。夫も知らない。彼が陛下から信頼も厚い美貌の勇者であることを。 幼い頃に死別した両親。乗っ取られた家。幼馴染の王子様と彼を狙う従妹。 白い結婚で離縁を狙いながら、実は転生者の主人公は今日も勇者稼業で自分のお財布を豊かにしています。

いらないと言ったのはあなたの方なのに

水谷繭
恋愛
精霊師の名門に生まれたにも関わらず、精霊を操ることが出来ずに冷遇されていたセラフィーナ。 セラフィーナは、生家から救い出して王宮に連れてきてくれた婚約者のエリオット王子に深く感謝していた。 エリオットに尽くすセラフィーナだが、関係は歪つなままで、セラよりも能力の高いアメリアが現れると完全に捨て置かれるようになる。 ある日、エリオットにお前がいるせいでアメリアと婚約できないと言われたセラは、二人のために自分は死んだことにして隣国へ逃げようと思いつく。 しかし、セラがいなくなればいいと言っていたはずのエリオットは、実際にセラが消えると血相を変えて探しに来て……。 ◆表紙画像はGirly drop様からお借りしました🍬 ◇いいね、エールありがとうございます!

【R18】ひとりで異世界は寂しかったのでペット(男)を飼い始めました

桜 ちひろ
恋愛
最近流行りの異世界転生。まさか自分がそうなるなんて… 小説やアニメで見ていた転生後はある小説の世界に飛び込んで主人公を凌駕するほどのチート級の力があったり、特殊能力が!と思っていたが、小説やアニメでもみたことがない世界。そして仮に覚えていないだけでそういう世界だったとしても「モブ中のモブ」で間違いないだろう。 この世界ではさほど珍しくない「治癒魔法」が使えるだけで、特別な魔法や魔力はなかった。 そして小さな治療院で働く普通の女性だ。 ただ普通ではなかったのは「性欲」 前世もなかなか強すぎる性欲のせいで苦労したのに転生してまで同じことに悩まされることになるとは… その強すぎる性欲のせいでこちらの世界でも25歳という年齢にもかかわらず独身。彼氏なし。 こちらの世界では16歳〜20歳で結婚するのが普通なので婚活はかなり難航している。 もう諦めてペットに癒されながら独身でいることを決意した私はペットショップで小動物を飼うはずが、自分より大きな動物…「人間のオス」を飼うことになってしまった。 特に躾はせずに番犬代わりになればいいと思っていたが、この「人間のオス」が私の全てを満たしてくれる最高のペットだったのだ。

ドン引きするくらいエッチなわたしに年下の彼ができました

中七七三
恋愛
わたしっておかしいの? 小さいころからエッチなことが大好きだった。 そして、小学校のときに起こしてしまった事件。 「アナタ! 女の子なのになにしてるの!」 その母親の言葉が大人になっても頭から離れない。 エッチじゃいけないの? でも、エッチは大好きなのに。 それでも…… わたしは、男の人と付き合えない―― だって、男の人がドン引きするぐらい エッチだったから。 嫌われるのが怖いから。

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

姫プレイがやりたくてトップランカー辞めました!

椿原 守
BL
上月千尋(コウヅキチヒロ)は人気VRMMOのランキング上位チームに所属していた戦士だった。 ある日、性別や名前を変更できる課金アイテムが追加された。(※ただし使用は1回切り) ゲームアップデートが無ければ、先行攻略組こと通称ガチ勢はやることが少ない。 ここ最近、マンネリを覚えていたチヒロはこれを機に男キャラから女キャラへ転身を決意。 ちょうど良い機会だからと、ずっとやってみたかった姫プレイ(ネカマプレイ)を始めてみることにした。 あれ? 楽勝ウハウハの貢がれプレイを期待してたのに、なんか思うように上手くいかないんですけど!? ※ムーンライトノベルズにも掲載中です。

愛を知らない僕は死んじゃう前に愛を知りたい

しおりんごん
BL
「そうか、ぼくは18さいでしんじゃうんだ。」 僕、ルティアーヌ・モーリスは いわゆる異世界転生をした元日本人だった   前世の記憶をたどり、、、思い出したことは、、、 ここはBL小説の世界だった そして僕は、誰からも愛されていない 悪役令息 学園の卒業パーティーで主人公を暗殺しようとして失敗した後 自分の中の魔力が暴走して 耐えきれなくなり、、、 誰とも関わりを持たなかった彼は 誰にも知られずに森の中で一人で 死んでしまう。 誰も話してくれない 誰も助けてくれない 誰も愛してくれない 、、、、、、、、、。 まぁ、いいか、、、前世と同じだ 「でも、、、ほんの少しでいいから、、、        、、、愛されてみたい。」 ※虐待・暴力表現があります (第一章 第二章の所々) ※主人公がかなりネガティブで病んでいます(第一章 第二章の所々) ※それでも超超超溺愛のストーリーです ※固定カプは後々決まると思いますが 今現在は主人公総受けの状況です ※虐待・暴力表現など、いろいろなきついシーンがある話には※をつけておきます ※第三章あたりからコメディ要素強めです ※所々シリアス展開があります

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。