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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第288話 迷宮都市 地下14階 転移者の痕跡

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 日本語の書かれた羊皮紙を、私は震える手で読んでいった。

『この日本語が読める方へ

 貴方が日本人、もしくは日本語を学んだ外国の方であると思い書きます。
 いずれにせよ地球からきた人で間違いはないでしょう。
 英語が堪能たんのうではないので、日本語でしか書けない事を断っておきます。

 私は15年前に、この世界に転移しました。
 当時の年齢は30歳で西暦1990年5月5日の事です。
 名前は高梨 聖たかなし ひじりと言います。

 仕事帰りに意識を失い、気が付いたらこの世界のカルドサリ王国に転移していました。
 一応【詫び状】と書かれた手紙がそばに落ちていたので現状を把握出来ましたが、貴方がもし同じようにこの世界に転移されたのなら大変だったと思います。

 手紙に書いてあった与えられた能力は、鑑定・火魔法・水魔法の3つです。
 鑑定と魔法が使用出来たお陰で私は冒険者になり、この迷宮ダンジョンを攻略している最中です。

 地下14階にマジックバッグを置いたのは、同じように地球から転移もしくは転生された方のために何か力にれないかと思ったからです。

 いつこの手紙を読んでもらえるかはけになりますが、お会い出来るといいですね。
 今はB級冒険者でセイ・・と名乗っています。

 手紙を書いている現在は西暦2005年の10月31日です。
 異世界と時間が連動しているのか分かりませんが……。

 追伸 マジックバッグに入っている物を有効活用し貴方も頑張って生きて下さい。』
 
 読み終わった羊皮紙を私はアイテムBOXに収納した。
 
 やっぱり『手紙の人』に転移させられた人がいた!
 そして1990年に30歳で移転してきたのなら、今は何歳になっているんだろう?
 
 私と同様に地球と時間が連動しているなら68歳~??歳。
 でもサヨさんみたいに時間軸がズレている場合は45歳~??歳。

 45歳ならまだ冒険者をしているだろうけど、60歳以上になっていたら冒険者は引退しているか……。

 探し出すのは難しいだろうなぁ。

 手紙を書いた時点ではB級冒険者のセイとしか分からない。
 A級やS級になっている可能性もあるし、既に亡くなっているかも知れない。

 迷宮ダンジョンで話を聞くとすれば、ダンクさんの両親が一番最適かも?
 20年間石化した状態だったけど、迷宮ダンジョンでは一番の古株だからね。
 もしかしたら同じクランにいた可能性もある。

 あと3ケ月後には地上に帰還する予定だから、その時にでも聞いてみよう。
 あっ内容を書いた手紙を配送便に追加してもらい、知っているか聞いた方が早いか!

 今日の攻略終わりに、早速さっそく手紙を書いてダンクさんお願いしよう。
 クランの配送担当者に渡してもらえれば、翌日には地下19階を攻略しているジョンさんへ手紙が届くだろう。 

 それにしても、与えられた能力に鑑定があるのはうらやましいなぁ。

 魔物のステータスとか見れたりするんだろうか?
 後は物の値段とか?
 武器や防具の素材やポーションの材料とか……。 

 どんな風に表示されるのか分からないけど、ぼったくりにあう心配だけはなさそうだ。
 まぁ私達も、そんな目にあった事はないんだけどね。

 異世界で購入するのは露店の野菜やパン、道具屋、魔道具屋、既製服店、奏屋かなでや華蘭からんくらいのものだ。
 
 外食もしないし宿屋に泊まった事もないので、ぼったくりにう機会が全くない。
 2人が綺麗なお姉さんのいる店に行ったら、もしかしてそういう事もあるかも知れないけど……。
 
 現状相手に困っていない兄達には興味の無い店だろう。
 
 その後、2匹と仲良く森の中を散策しながら薬草採取にはげんだ。
 ハニーが沢山魔力草を見付けてくれたので、3時間で20本も採取出来たよ!

 シルバーに乗り安全地帯のテントに到着すると、兄と旭が担架たんかで運ばれた怪我人の治療をしている所だった。

 幸い命に関わる重傷ではないみたいで、金貨を受け取りお礼を言われている。

 テントに入り自宅でトイレ休憩を済ませると、今日マジックバッグを見付けた事を話し日本語で書かれた羊皮紙を兄に渡した。

 一瞬驚いた表情を見せ、2人は顔を寄せて仲良く一緒に手紙を読んでいく。
 まぁ、ラブラブね~。

 旭はかなり興味を持ったようで、羊皮紙を凝視ぎょうししている。
 手紙を書いた人が、自分と同じく転移されたのにダンジョンマスターではない事に少しがっかりしていた。

 うん普通に考えたら、ダンジョンマスターになる確率は相当低いと思うよ?
 ダンジョンも沢山ある訳じゃないんだから……。

 手紙を読み終えた兄が少し考え込んでから言った。

「このセイさんという日本人が、まだ迷宮都市にいるといいんだが……」

「今の年齢がはっきりしないと、探すのは難しいんじゃない?」

 旭は兄の意見にうなずきながら答える。

「地球と時間が連動している訳じゃないし、手紙が書かれてから沙良が見付けるまでどのくらい経過しているのかも不明じゃ、確かに人探しは無理だろう」

「一応ダンクさんの両親に手紙を書いて、配送してもらう心算つもりだよ?」

 私はそれでも手掛かりがないか調べる方針ほうしんだ。
 
「それより、あの若作りのギルドマスターに聞いた方が早いと思うがな」

「若作りって……」

 兄が何気にギルドマスターの事を揶揄やゆする。
 女性に若作りしているなんて言ったら、口を利いてくれなくなるわよ?

「副ギルドマスターより姿が若い時点で、あの人は人間じゃないだろう?」

「そうなの? アマンダさんに聞くの忘れちゃってた」

「サヨさんが言っていたエルフかハーフエルフだと思うぞ」

 兄はそう言って羊皮紙を返してくれた。
 後で忘れないよう、アマンダさんに聞いておこう。
 
 しかし兄はオリビアさんの何を見て、エルフだと思ったんだろう?
 綺麗な人ではあったけど、飛び抜けて美人だって訳じゃなかったけどなぁ~。

 エルフは魔力量が多いイメージだから、魔力草を見付ける時みたいに魔素のようなものを感じたのかしら……。

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