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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第286話 迷宮都市 地下14階 人形劇が何故か演劇に……そして私も強制参加

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 ダンクさんに迷宮ウナギを渡してテントから出ると、皆は先週教えてあげた浦島太郎の配役について相談していた。

 アマンダさんのパーティーは、アマンダさん以外全員男性なので乙姫役の女性がいない。
 何故なぜかアマンダさんが、亀の役をパーティーリーダーの特権で奪い取っていたので……。

 竜宮城のおもてなしは、男性が演舞をする事に決まったみたいだ。
 それはちょっと興味がある。
 
 あれかな?
 上半身裸になってくれたりしないかしら?

 男性の演舞を踊る人は、大抵上着は着ていない事が多いんだけど……。
 私が期待を込めたキラキラした目で話を聞いていると、兄からすかさず注意が飛んだ。

「あ~演舞は子供達の前でするんだろうから、ちゃんと服を着るようにしてくれ」

 が~ん。

 何故なぜそんなにかたくなにガードするのよ!
 私は箱入り娘かっ!? 
 
 一応、この世界の文字で紙芝居の内容を書いた羊皮紙を渡してあるけど、きっと意味のないものになるんだろうな……。

 だってもう演舞の練習始めてるし!
 人形劇の前提ぜんていどこいった!?

 本人が主演するならもう演劇で良いか……。
 私はリリーさんの乙姫の衣装を作成しよう。
 これはサヨさんと一緒にミシンで作れば早く出来そうだ。

 でも折角せっかく演舞をするなら、御揃おそろいの衣装を着て踊ったら素敵よね?
 
 土曜日は奏屋かなでやに果物を卸して、午後から編み物教室。
 日曜は教会で炊き出しをした後、フリーになるのでサヨさんと毎週一緒に作業すれば6人分の衣装は作成出来るかな?

 亀の衣装は……着ぐるみでどうだろう?
 着ぐるみの作り方の本が売っているといいけど。

 まずは採寸からね。

 私はアマンダさんのパーティー全員のサイズを、ひもを何本か用意し必要な部分を測り紐に印をつけていく。

 流石さすが採寸さいすんまでは兄に止められなかった。
 旭が何か言いたそうな顔をしていたけど、2人はちょっと過保護すぎる。

 ダンクさんの所はリリーさんが1人で舞を踊るみたいだ。
 異世界に踊りの文化はあるのだろうか?

 子供達は知らないみたいなので、マイムマイムとオクラホマミキサーと盆踊りを教えてあげたけど……。

 リリーさんの採寸を終えると、相談があると言われた。

「どうかしましたか?」

「私1人で舞をするのは寂しいから、サラちゃんも一緒にどうかしら?」

 えっ?
 私も一緒に踊れと?

「私は見ている方が好きなので遠慮えんりょさせて頂きます」

「え~、そんな事言わないで一緒にお願い!」

 いやお願いされても無理な物は無理。
 もう何年も踊ってないから体がなまってるし。

「サラちゃん踊るの? 久し振りに見てみたいな~」

 もう一度断ろうとした所に、タイミング悪く旭が話を聞いて口を出してきた。

「いやだから、今それを断ろうとしていたのよ」

「何で? 踊るの好きだったでしょ?」

 あ~さ~ひ~、どうしていつも余分な事を言うの!
 だから兄に怒られるのよ!

「じゃあ決まりね!」

 リリーさんは、そう言って足取り軽く去っていった。
 ああぁ~、私やるなんて一言も言ってないんですけど~。

 私は無言で旭の後頭部に鉄拳制裁しておいた。

「痛いよサラちゃん! 馬鹿になったらどうするの!」

「大丈夫、もう馬鹿だから!!」

「それはひどいよ~」
 
 全然ひどくない。
 兄は旭のこの馬鹿な所が可愛いと思っているのかも知れないけど、私は違うからっ!

 日本にいた時は10年くらい現代舞踊を習っていたけど、もう随分ずいぶん踊ってないのに~。
 
 この日――。
 人形劇なのか演劇なのか演舞なのか分からない練習が、深夜まで続いたのであった。

 お願いだから寝させて下さい。
 
 本当に冒険者達は楽しむ事に貪欲どんよくだ。
 普段ダンジョン内では張りつめた生活をしてるから、緊張感をほぐす意味もあるんだろうな。

 異世界に娯楽が少ない事が理由なのかも知れないけど、皆さん明日も攻略ですよ~。
 夜更かしをしない私は、まぶたがくっつきそうです……。

 異世界にきてから前より規則正しい生活になったので、午後10時を過ぎると眠たくなっちゃうんだよね。
 兄達を見てみると、旭は兄に寄りかかって半分寝落ちしていた。

 兄は旭のそんな姿を見ても、何とも思っていないようだ。
 自分に寄りかかって眠り出した旭の肩に上着を掛けてあげている。

 甘い雰囲気ふんいきの無い2人だけど、こういう時の何気ない仕草しぐさを見ていると優しい気持ちになれる。
 
 やっぱりお似合いよね。
 末永くお幸せに~って言いたくなってしまう。 
 
 2人のために頑張るから、両親の説得は私に任せて頂戴ちょうだい
 
 翌日。
 案の定、兄がフォレストに乗って果物の採取に行ってしまった。
 
 フォレスト?
 私が主人だって覚えてる?

 尻尾を振って兄のもとに駆けていくんだけど……。

 旭は今日も川方面へ迷宮ウナギを全滅しにいった。
 私はシルバーに乗ってトレントの森方面に向かう。
 
 付近に冒険者がいない事を確認してから、ハニーを迎えに行き2匹と一緒に攻略開始。

 フォレストウサギを2匹発見。
 跳躍ちょうやくする前に昏倒させると、シルバーが首をんで息の根を留める。
 
 哺乳類を見ると狩猟本能が刺激されるのか、シルバーはまだ魔法を使わないようね。
 ダンジョン内の魔物同士で交戦する事はないんだけど……。

 それは種族の違う魔物でも同様で、攻撃するのは相手が人間の場合だけだ。
  
 キラープラントは心臓部分を石化させ収納。
 もうドレインと石化魔法だけで無双出来る気がする。

 遠距離攻撃で昏倒するドレインは最強じゃないかしら?
 これだけ安全に魔物狩りが出来る魔法は他にないのでは?
 
 アンデッドにも有効だし……。
 この間、兄に内緒でスケルトンを何体か収納しておいたのよね~。

 骨格標本に良いかと思って1人でつなぎ合わせてみたんだけど、よく分からない生き物になってしまった!?

 おかしいな?
 
 胴体に手と足をちゃんとくっつけたのに……。  
 これは2人に見せたら笑われそうなので、アイテムBOX内に封印しよう。

 槍は、そろそろお払い箱かな?
 どう頑張っても槍術はステータス表記されないようだしね。

 魔法が効かない魔物が出た時は、旭に空手で倒してもらおう。
 Lvのお陰で身体能力も高いから何とかなるだろう。

 最悪の場合は、兄が解体ナイフを急所に投擲とうてきし倒してくれるはず
 ひそかに練習している事を知っているので心配は不要だった。

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