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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略
第278話 迷宮都市 サヨさんからのおもてなし 1
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午後6時。
華蘭に入ると、老紳士が出迎えてくれる。
「ようこそいらしゃいました。昼食を、また家内がご馳走になったそうで恐縮でございます。今夜は新しい料理を作ると言っておりましたから、楽しみにして下さい」
「こちらこそ、よろしくお願い致します。これ、お土産です」
そう言って私は、フルーツの盛り合わせをマジックバッグから取り出した。
果物のチョイスは、桃・ピオーネ・シャインマスカット・マンゴーだ。
老紳士は果物を見て僅かに躊躇いを見せたけれど、受け取ってくれた。
王都の長男の店で売っている値段を考えたのだろう。
でも、元々は私が卸した商品だ。
受け取らないのも失礼に当たると考え直してくれたらしい。
「では2階に参りましょう」
老紳士に先導されて2階の自宅にお邪魔する。
老舗高級服店を経営しているだけあって、室内には貴族が使用するような複雑な意匠が彫り込まれた家具が置いてある。
床には綺麗な模様が描かれた絨毯が敷いてあった。
これ1枚で家が建ちそうな値段の物だろう。
日本でも手織りの絨毯は何百万円もする。
百貨店で売っているのを見た事があるけれど、目玉が飛び出るかと思う程高い。
ところどころに飾られた花瓶に生けられた花々は、きっとサヨさんの趣味だろう。
実家にも母がよく花を飾っていたからね。
総合的に見て、とても落ち着いた雰囲気の部屋だ。
一度リビングに通された後、サヨさんの準備が出来るまでもう少し待つ事になった。
先程から醤油の匂いが漂ってくるので、渡した調味料を使用し料理をしているらしい。
10分程すると、サヨさんが食事の用意が出来たと呼びにきてくれた。
ダイニングに移動すると、テーブルの上には沢山の料理が並べられてある。
「今日は夕食に招待して頂き、ありがとうございます」
「私の方こそ、夕食と昼食をご馳走になりました。初めて作った料理ばかりですが、沢山食べて下さいね」
「はい、頂きます」
サヨさんが作ってくれたのは、鳥の唐揚げ・トマトとツナのサラダ・ポタージュスープ・迷宮ウナギの蒲焼・ミノタウロスのステーキだった。
パンは露店で売っている物ではなくて、トルティーヤのような薄い物が置かれている。
きっとこの世界のパンは口に合わなくて作ったのだろう。
あのパサパサのパンは、日本のパンを食べ慣れている人間には辛かろう。
ドライイーストが手に入らないので、ナンやピザ生地は作れないものね。
沢山料理が並べてあるけど、私は迷宮ウナギの蒲焼に目が釘付けになってしまった。
果たして、日本のウナギと同じ味がするのか?
山椒がないのが少し残念。
身がふわふわの迷宮ウナギを一口食べると、正しく日本のウナギと同じ味がした!
やった~!
これで、うなぎの蒲焼食べ放題よ~。
兄達も、うなぎの蒲焼を食べて頷いている。
そして老紳士は、初めての料理ばかり並ぶテーブルを見て目を瞬かせていた。
日本の調味料を渡したので、これから料理が劇的に美味しくなりますよ~。
ポタージュは、じゃが芋を使用したスープだった。
あれ?
牛乳の味がする。
「サヨさん。このポタージュに使われている牛乳は、どこで購入したんですか?」
「あぁ、それは王都の長男の店から取り寄せたのよ。『ミルクカウ』という王都のダンジョンの魔物から取れる物だから、1ケ月は保存出来るの。少しお値段が張るから、輸送コストを考えて迷宮都市の店には置いていない商品らしいわ」
ええっ!
それ欲しい!
牛乳があれば、また料理の幅が広がる。
「それは、私でも取り寄せ可能ですか? 出来ればバターと一緒に欲しいんです。料金は幾らかかってもよいですから」
「サラさんなら大丈夫だと思いますよ。私から息子に伝えておくわね」
「ありがとうございます!」
念願の牛乳とバターだ!
多分異世界の牛乳は成分を調整していないので、上澄みは生クリームとして使えそうだ。
カルボナーラや、グラタンなんかも作れる。
次に食べたのはトマトとツナのサラダ。
ツナは迷宮サーモンをオイル煮にした物だろう。
トルティーヤに挟んで食べると美味しい。
ミノタウロスのステーキには、やはりニンニクが使われていた。
そしてバター醤油のソースが掛けられている。
柔らくて美味しいお肉だ。
肉が好きな兄達が、もう完食している。
鳥の唐揚げは、片栗粉が無いので小麦粉使用の物だった。
こちらも醤油・みりん・酒・生姜で下味をつけたのだろう。
サヨさんが作ってくれた料理は、日本人の私達には食べ慣れた物ばかりで兄も旭も完食だ。
旭は更に、迷宮ウナギの蒲焼をお替りしている。
そんなに沢山食べて夜は大丈夫かしら?
ダンクさんが男性機能の回復に役立つと言っていたから、〇イアグラみたいな効果があるんじゃないかと思うのだけど……。
付き合わされる兄が大変そうだわ。
まぁ2人は若いから問題ないか。
明日、寝坊しないでね。
老紳士は、初めて食べる料理に舌鼓を打ち満足そうに微笑んでいる。
サヨさんが作った日本料理は口に合ったようだ。
今まで調味料と言えば塩・胡椒のみだったから、サヨさんが今回使用した調味料の味は新鮮に感じると思う。
きっとこれから製麺店でうどんを購入して、サヨさんが美味しい麺つゆを作りそうだね。
具は油揚げが無いからきつねうどんは難しいけど、素うどんでも充分美味しいし肉うどんも作る事が出来るだろう。
本当はお米が食べたいかも知れないけど、流石に渡す事は出来なかった。
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お気に入り登録をして下さった方、エールを送って下さった方とても感謝しています。
読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。
応援して下さる皆様がいて大変励みになっています。
これからもよろしくお願い致します。
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華蘭に入ると、老紳士が出迎えてくれる。
「ようこそいらしゃいました。昼食を、また家内がご馳走になったそうで恐縮でございます。今夜は新しい料理を作ると言っておりましたから、楽しみにして下さい」
「こちらこそ、よろしくお願い致します。これ、お土産です」
そう言って私は、フルーツの盛り合わせをマジックバッグから取り出した。
果物のチョイスは、桃・ピオーネ・シャインマスカット・マンゴーだ。
老紳士は果物を見て僅かに躊躇いを見せたけれど、受け取ってくれた。
王都の長男の店で売っている値段を考えたのだろう。
でも、元々は私が卸した商品だ。
受け取らないのも失礼に当たると考え直してくれたらしい。
「では2階に参りましょう」
老紳士に先導されて2階の自宅にお邪魔する。
老舗高級服店を経営しているだけあって、室内には貴族が使用するような複雑な意匠が彫り込まれた家具が置いてある。
床には綺麗な模様が描かれた絨毯が敷いてあった。
これ1枚で家が建ちそうな値段の物だろう。
日本でも手織りの絨毯は何百万円もする。
百貨店で売っているのを見た事があるけれど、目玉が飛び出るかと思う程高い。
ところどころに飾られた花瓶に生けられた花々は、きっとサヨさんの趣味だろう。
実家にも母がよく花を飾っていたからね。
総合的に見て、とても落ち着いた雰囲気の部屋だ。
一度リビングに通された後、サヨさんの準備が出来るまでもう少し待つ事になった。
先程から醤油の匂いが漂ってくるので、渡した調味料を使用し料理をしているらしい。
10分程すると、サヨさんが食事の用意が出来たと呼びにきてくれた。
ダイニングに移動すると、テーブルの上には沢山の料理が並べられてある。
「今日は夕食に招待して頂き、ありがとうございます」
「私の方こそ、夕食と昼食をご馳走になりました。初めて作った料理ばかりですが、沢山食べて下さいね」
「はい、頂きます」
サヨさんが作ってくれたのは、鳥の唐揚げ・トマトとツナのサラダ・ポタージュスープ・迷宮ウナギの蒲焼・ミノタウロスのステーキだった。
パンは露店で売っている物ではなくて、トルティーヤのような薄い物が置かれている。
きっとこの世界のパンは口に合わなくて作ったのだろう。
あのパサパサのパンは、日本のパンを食べ慣れている人間には辛かろう。
ドライイーストが手に入らないので、ナンやピザ生地は作れないものね。
沢山料理が並べてあるけど、私は迷宮ウナギの蒲焼に目が釘付けになってしまった。
果たして、日本のウナギと同じ味がするのか?
山椒がないのが少し残念。
身がふわふわの迷宮ウナギを一口食べると、正しく日本のウナギと同じ味がした!
やった~!
これで、うなぎの蒲焼食べ放題よ~。
兄達も、うなぎの蒲焼を食べて頷いている。
そして老紳士は、初めての料理ばかり並ぶテーブルを見て目を瞬かせていた。
日本の調味料を渡したので、これから料理が劇的に美味しくなりますよ~。
ポタージュは、じゃが芋を使用したスープだった。
あれ?
牛乳の味がする。
「サヨさん。このポタージュに使われている牛乳は、どこで購入したんですか?」
「あぁ、それは王都の長男の店から取り寄せたのよ。『ミルクカウ』という王都のダンジョンの魔物から取れる物だから、1ケ月は保存出来るの。少しお値段が張るから、輸送コストを考えて迷宮都市の店には置いていない商品らしいわ」
ええっ!
それ欲しい!
牛乳があれば、また料理の幅が広がる。
「それは、私でも取り寄せ可能ですか? 出来ればバターと一緒に欲しいんです。料金は幾らかかってもよいですから」
「サラさんなら大丈夫だと思いますよ。私から息子に伝えておくわね」
「ありがとうございます!」
念願の牛乳とバターだ!
多分異世界の牛乳は成分を調整していないので、上澄みは生クリームとして使えそうだ。
カルボナーラや、グラタンなんかも作れる。
次に食べたのはトマトとツナのサラダ。
ツナは迷宮サーモンをオイル煮にした物だろう。
トルティーヤに挟んで食べると美味しい。
ミノタウロスのステーキには、やはりニンニクが使われていた。
そしてバター醤油のソースが掛けられている。
柔らくて美味しいお肉だ。
肉が好きな兄達が、もう完食している。
鳥の唐揚げは、片栗粉が無いので小麦粉使用の物だった。
こちらも醤油・みりん・酒・生姜で下味をつけたのだろう。
サヨさんが作ってくれた料理は、日本人の私達には食べ慣れた物ばかりで兄も旭も完食だ。
旭は更に、迷宮ウナギの蒲焼をお替りしている。
そんなに沢山食べて夜は大丈夫かしら?
ダンクさんが男性機能の回復に役立つと言っていたから、〇イアグラみたいな効果があるんじゃないかと思うのだけど……。
付き合わされる兄が大変そうだわ。
まぁ2人は若いから問題ないか。
明日、寝坊しないでね。
老紳士は、初めて食べる料理に舌鼓を打ち満足そうに微笑んでいる。
サヨさんが作った日本料理は口に合ったようだ。
今まで調味料と言えば塩・胡椒のみだったから、サヨさんが今回使用した調味料の味は新鮮に感じると思う。
きっとこれから製麺店でうどんを購入して、サヨさんが美味しい麺つゆを作りそうだね。
具は油揚げが無いからきつねうどんは難しいけど、素うどんでも充分美味しいし肉うどんも作る事が出来るだろう。
本当はお米が食べたいかも知れないけど、流石に渡す事は出来なかった。
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